花瀬実 さん プロフィール

  •  
花瀬実さん: 2097
ハンドル名花瀬実 さん
ブログタイトル2097
ブログURLhttps://ameblo.jp/lanevoiv/
サイト紹介文今回の新作はSFです。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供85回 / 365日(平均1.6回/週) - 参加 2009/01/16 00:54

花瀬実 さんのブログ記事

  • クライシス2097 −71−
  •  −71− その異変とは異常潮位だった。 世界中で海水面の高さが異常値を示すケースが目立ってきているのだ。 特に北半球の高緯度地域で、軒並み海水面の上昇が観測されている。 中でも目立つのはバルト海とオホーツク海だ。 北側を陸地に取り囲まれたこれらの海では、入り込んだ海水の逃げ場がなくて、増えた海水は陸地の低い部分に浸食を始めた。 バルト海の入り口に突き出たデンマークは、国土の殆どの標高が低いせいで [続きを読む]
  • クライシス2097 −70−
  •  −70− ノアの機内では出航に向けての最終チェックが連日にわたって繰り返され、住民たちもここでの生活に備えて、ルールなどを徹底周知され学習させられていた。 コロニーの壁を隔てた向こう側は、果てしなく広がる地獄なのだ。 その地獄に放り込まれ、孤立するコロニー内での事故、事件、トラブルは絶対に避けたいところだった。 万が一、致命的な事が起こっても、誰も助けに来ないのは誰もが理解するところだ。 だから [続きを読む]
  • クライシス2097 −69−
  •  −69− ディスタンスが待機態勢に入ってから約一時間後、バーンズは計器を見ながらタイミングを見計らって、担当クルーに起爆を命じた。 その直後、ディスタンスは機首を上げてアイスマンの傍を急速に離れた。 起爆指令を受けた起爆装置は、設定されていたディレイ・タイムを過ぎた瞬間に仕込まれていた爆薬が一斉に火を噴いた。 爆薬をセットしていた直径200メートルの範囲から、大量の氷のかけらと噴煙が舞い上がり、 [続きを読む]
  • クライシス2097 −68−
  •  −68− そうこうしているうちに縦穴の深さが想定値に達し、スプリッターは作業を停止した。 確認が済むと直ちに電源ケーブルが抜かれ、ミハエルはスプリッターを移動させる。 その時、外にいるクルーたちはファイヤー・ワームを用意し、設置していたリール装置のケーブルを接続した。 次にスプリッターから外したケーブルをリール装置に接続して、ファイヤー・ワームを開けたばかりの縦穴に挿入した。 ここまでの作業を終 [続きを読む]
  • クライシス2097 −67−
  •  −67− 全員がイザベルの行動に注目し、モニターの画像に視線を移した。 「今回の作業区域のスキャン画像よ・・・やっぱり・・・見て」イザベルは深刻そうな表情をした。 「何か問題でも・・」バーンズは言いながらモニターを覗き込んだ。 「ここ」彼女はボイドのある部分の裏側、切断面を表すラインの地下を指差した。 そこにはレントゲン写真の患部を示すような白い影が大小含めて広範囲に多数広がっていた。 「・・こ [続きを読む]
  • クライシス2097 −66−
  •  −66− クルーたちはすぐにシートベルトを外して立ち上がったが、微小重力の元では思うように体を動かすのが難しいことを改めて思い知った。 しかし、それはさきほどまでいたフォーチュン号の中と変わりはない。 では、なぜそう思ったのか。 人類が月に初めて降り立ったのが今から約130年前。 それ以降、人類が地球以外の天体に直接足を踏み入れたことはなかった。 恐らくビジター問題が発生していなければ、今世紀の [続きを読む]
  • クライシス2097 −65−
  •  −65− 2095年8月 “フォーチュン号”は太陽系中心から18億キロまで近づいたビジターの周回軌道に無事乗ることができていた。 この後は“アイスマン”こと衛星V-104に近似した軌道に移ってアイスマンを近距離で追いながら、詳細を観察し、作戦の細部を決定することになる。 そんな中、クルーたちは間近でみるビジターの姿に圧倒されていた。 地球で見る満月の20倍はありそうなビジター本体と、それを取り囲 [続きを読む]
  • クライシス2097 −64−
  •  −64− 次に向かった先は日本の温帯林、東北の白神山地をモデルとした森だった。 ここも先のジャングルと同じ仕組みで管理されており、違いは気候の違いに基づく各種パラメータの設定差のみと思えばいい。 ブナを中心に再現された森は、日本人の水摩にとって、DNAに組み込まれた原風景だからか、どこか懐かしい香りがする。 自分もいつかここを歩いてみたいと思ったが、自分が乗るコロニーはこの“ノア”ではなく“パシフ [続きを読む]
  • クライシス2097 −63−
  •  −63− 2094年7月 月初めのこの日、軌道上の“ノア”がついに完成を迎えたとの発表がなされた。 この完成を機に連邦政府はこの建造に直接かかわっていない有識者を集めて、政府代表と共に“ノア”の視察に向かわせることも発表した。 新たな視点から全体を見直し、内包するかもしれない問題点をあぶり出すのが最大の目的である。 ノアが一旦地球を離れてしまえば、その後の修正が難しいのはもちろん、絶対に不可能な [続きを読む]
  • クライシス2097 −62−
  •  −62− 両家族は地上2000メートルの待機スペースに直行すると、クルー専用フロアの待機ルームに案内された。 彼らは最後の日々を同室で過すことを希望していたので、2ベッドルームの広い部屋に通された。 落ち着く間もなく、翔一郎とジョージ、マリーは部屋に葵と子供たちを残して、同じフロアにあるブリーフィング・ルームに集合した。 集まったのはパイオニア両機の最高責任者である艦長と運行責任者である機長、副 [続きを読む]
  • クライシス2097 −61−
  •  −61− このツイン・ロック・シティを上空から俯瞰で見れば、“エアーズロック”を宝石に見立てた指輪のように見えるだろう。 リングに囲まれた空間の中心部には、一辺が1000メートルもある正方形の建物が二棟、対角線を一直線に結ぶ配置で、少し間をおいて並んでいる。 その両方を正面に見て内側の向かい合う角にあたる部分は、高さが100メートルほどの高層ビルになっている。 外観だけ見れば、大規模な工場か何か [続きを読む]
  • クライシス2097 −60−
  •  −60− 「それで、皆は知ってるのかい」 「親父たちにだけは昨日こっちに着いてから報告したよ」 「じゃあ他は誰も知らないんだな」 「多分・・」 「今日、この場で皆に報告するんだな」ジョージは念を押すように訊いた。 「うん、そのつもりだ」 「皆、喜ぶぞ」 「だろうな・・」 翔一郎にはその時の皆の様子が目に浮かんだ。 実際、後でそのとおりになったことは言うまでもない。 全員が揃ったところで饗宴は始ま [続きを読む]
  • クライシス2097 −59−
  •  −59− 2090年10月 連邦政府は一年半後の2092年4月に、現在スイスのジュネーブにある首都を、オーストラリアの大陸中央部に移転することを正式に発表した。 あの有名な一枚岩“エアーズ・ロック”のすぐ傍に建設されていた世界最大の地下コロニー“ツイン・ロック・シティ”が、ほぼ完成したことを受けての発表だった。 ビジター・ショックの被害がより集中するであろう北半球側の、それも孤立が懸念される山岳 [続きを読む]
  • クライシス2097 −58−
  •  −58− 2086年11月 約束どおり、月が替わって最初の日曜日、藤縄悟子は自宅から数ブロック離れた同じ官舎が集まる基地内の居住地区にある鮎川奈菜の家に向かって歩いていた。 住宅街は緩い山の斜面に広がっており、もともと人気のない閑静な土地であるから、ひっそりと静まり返っている。 正午を過ぎて太陽は南中付近にあったが、11月ともなるとその位置は随分と低く感じるものだ。 空は高く、どこまでも青い。  [続きを読む]
  • クライシス2097 −57−
  •  −57− 「わざわざすみません」咲子は奈菜を見つけると、近寄って丁寧に頭を下げた。 「とんでもない、私の方こそ昔から先生にはお世話になった身ですもの。当然ですわ」奈菜は咲子を制するような手振りで言った。 二人はエントランスから受付の前を通ってエレベータに乗り込み、最上階の五階まで上がると、正面の廊下を突き当りまで進んだ左側が藤縄精次の病室だった。 中は8畳ほどしかないが、個室になっていて、東側壁 [続きを読む]
  • クライシス2097 −56−
  •  −56− 「だけど、地対連合は必ずしもそうなるとは考えていないのかしら」葵は再度頭を起こして、疑問を口にした。 「いや、当然そう認識しているだろう。ただ、圧倒的にデータ不足で数値化ができていないから、今は無視するしかないのさ。多分・・」翔一郎も推理を披露した。 「データが集まってはっきりすれば、手を打つのかしら」 「間違いなく。このままじゃ必ずどこかで想定外の大きな被害が発生することは目に見えて [続きを読む]
  • クライシス2097 −55−
  •  −55− ホライズン打ち上げを実行するにあたり、最初に取り掛かったのは、水タンク・モジュール10基をノア2号へ搬送することだった。 モジュールは水を満タンにすると80トン近い重量となるため、その状態ではシャトルで運ぶには重すぎる。 したがって、タンクの水を上限値に達しない範囲まで注入して、一つずつノアに運び、残りの分の水は別に運んで軌道上で注水することにした。 そしてこの作業が終わる翌月初めには [続きを読む]
  • クライシス2097 −54−
  •  −54− 「それにしても藤縄先生は相変わらずお元気そうで、とても90歳をとうに過ぎているようには見えませんよ」奈菜は藤縄の全身を舐めるように見て言った。 「そうかね。ここは喜ぶべきかもしれないが・・最近じゃ、なんだか無駄に長生きしているように思えてきてなぁ。どうせ長生きしたのなら、最後まで見届けたいところだが、あと21年はどだい無理な話だしなぁ」藤縄は自嘲的な笑みを浮かべ、遠くを見る目で視線を上 [続きを読む]
  • クライシス2097 −53−
  •  −53− 誰しもが一抹の不安を感じていた。 リラックスしろと言ったムーア自身も、そう単純でないことは重々承知していた。 「前例のないことですから、シミュレーション自体が絶対に正しいともいえないし、リラックスなんて出来そうもありませんよ」鮎川は正直に言った。 「そうですよ。初めてのことですから完璧なシミュレーションは不可能と言ってもいい。もしかしたら想定していない隠れた変数が存在するのかもしれませ [続きを読む]
  • クライシス2097 −52−
  •  −52− 「では早速君たち二人で理想的なロガー・データの計算に取り掛かってもらおう。ミスター大庭なら必ずやってくれるだろうから・・」ムーアは大庭を振り向いて頷いた。 「わかりました、大至急やってみましょう。それで、チェック・ポイントの間隔はどの程度で・・」 「それは鮎川と相談して決めればいいと思うが、マシュー機長はどう思う?」 「そうですね・・・15秒くらいがいいかと・・」ジョージは考えながら答え [続きを読む]
  • クライシス2097 −51−
  •  −51− 一週間後、順調に作業を終え、アセンブリーに分割された原子力エンジンを収めたコンテナを積みこんだ貨物列車は、強力なディーゼル機関車に牽かれて専用線を南下し、メキシコ湾沿いにメキシコを通り抜け、パナマ地峡を渡って南米を目指した。 列車は更に一週間かけてベネズエラのバベル3の麓に到着。 合計16個のコンテナは早くもその翌日には順次タワーのリフトに乗せられて、最上部へと運ばれた。 その数日後か [続きを読む]
  • クライシス2097 −50−
  •  −50− 二人はひどくゆっくりと歩を進めた。 今年で89歳になる精次は、真冬の日本から灼熱のインドに短時間で移動したことで体力を奪われ、加えて一人息子を失ったショックも大きく、その足取りは普段の彼とは別人のように弱々しかった。 「先生、大丈夫?」奈菜は精次の手を引きながら、いたわるように耳元で訊いた。 「うん・・大丈夫だ・・心配かけて・悪いなぁ」精次はきつそうにしゃがれ声で答えた。 彼の額に汗が [続きを読む]
  • クライシス2097 −49−
  •  −49− 藤縄を診ていたのは三十代と思しき若い黒人医師だった。 「ドクター、チーフの容体は?」大庭は部屋に入って、コクーンの周りを取り巻く医師らを見つけるや、真っ先に尋ねた。 不意の問いかけに彼らは振り返って大庭を見た。 「・・たった今、一応の全身検査を済ませたところですが、肋骨が完全に折れていて、それが肺を傷つけているようで、そこから大量の出血が起きているのは間違いないでしょう」ドクターは冷静 [続きを読む]
  • クライシス2097 −48−
  •  −48− 奈菜は悟がこんな状況で自分に通話回線をつないだ理由が見えていた。 彼が万一を考えて、その時は覚悟を決めるという決心を示していると思った。 悟は子供のころからシャイでおとなしいイメージだったが、反面では芯の強いところもあって正しいと思ったことはなかなか曲げないし、でも思いやりがあって正義感の強い性格だったことを奈菜は思い出した。 だから彼がこの危機において思い切った行動をとることは、ある [続きを読む]
  • クライシス2097 −47−
  •  −47− 「他に方法はないのですか。ガスを抜かなければ危険極まりないと思いますが・・」大庭は興奮気味に訴えた。 「確かにそうだが、かといって不用意にベントすれば爆発の危険性が極めて高いし・・」 「外から手動でハッチを開けたらどうです」 「それはできない。外から開けられる構造になっていないからな。内側からなら開けられるんだが・・」 「そうだ、K層にはスラスター・タワーに面した部分に、隙間へと通じる [続きを読む]