汎武 さん プロフィール

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汎武さん: はなし汎武ん
ハンドル名汎武 さん
ブログタイトルはなし汎武ん
ブログURLhttp://hanbu-y.blog.so-net.ne.jp/
サイト紹介文日常のあれこれ、本の事、誰彼の事、合気道の事等々、諸事への思いを整列させることもなく書いております。
自由文写真やイラストなど殆どない、文字だけの地味なブログです。全体のトーンはエッセイ風でありましょうか。ま、ちょっと創作ものも入っていますし、批評めいたものも煩わしくない範囲で書いております。よろしければ覘いてみてください。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供153回 / 365日(平均2.9回/週) - 参加 2009/02/10 14:27

汎武 さんのブログ記事

  • あなたのとりこ 210
  • 「勿論それは当然の言葉だ」 片久那制作部長は山尾主任に向けていた視線を下に落とすのでありました。「営業部長の仕事振りに関しても色々改善すべきところはあるし、この自分の仕事に関しても反省点はある。しかし今日は再三云っているように人事の件が主題だ。その話しをし出すととても時間が足りなくなるから、今日のところは勘弁してくれるか」 自分の仕事振りに改善すべきところがあると云われた時に、土師尾営業部長が眉間 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 209
  •  土師尾営業部長は声を一オクターブ程上げて荒げて見せるのでありました。紛う事無く見事に喧嘩腰になっていると頑治さんは秘かに笑うのでありました。 片久那制作部長が背凭れから上体を起こして横の土師尾営業部長の方に視線を向けるのでありました。片久那制作部長の挙動の一々を終始過剰に気にしていたのであろう土師尾営業部長は、その自分に向けられた視線に思わずおどおどと狼狽えるのでありました。「もういい加減にして [続きを読む]
  • あなたのとりこ 208
  •  土師尾営業部長が今度は袁満さんの方に険しい視線を向けるのでありました。「ああそうですか」 袁満さんは少しふてた語調でそう云ってその後は口を噤むのでありました。「確かに袁満君一人で全国を出張でカバーするのは難しい事になる。だから勿論、一部の地域は暫くの間は出張を継続して貰う事になるだろうけど、後は漸次電話を駆使するとかあれこれ、他の適切な遣り方を袁満君自身で考えて貰いたいと思っている」「後の事は俺 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 207
  • 「どうして日比君は何時もそうなの。新しい仕事にもっと意欲的な態度を示しても良いじゃないか。そんな事だから今迄も新規開拓がちっとも出来なかったんだ」 土師尾営業部長の云い草は、この事だけに限らず、日比課長に対する日頃の苛々が混じっているように聞こえるのでありました。これはなかなか険悪な雰囲気であります。「やれと云われれば、そりゃあ、やりますけどね」 日比課長は話しても無駄だと思ったのか、ふてたような [続きを読む]
  • あなたのとりこ 206
  •  土師尾営業部長も一瞬顔を向けるのでありましたが、怖じたようにすぐに目を逸らして手元の紙に視線を落とすのでありました。それから声のトーンを今迄とは違ってやけに落として、本題を続けようとするのでありました。「ええと、それから日比君だけど、・・・」 ここで名前が出た日比課長が少し背筋を伸ばすのは、お次は自分がとんでも無い配置転換を云い渡されるのかと体を強張らせたからでありましょう。 土師尾営業部長は紙に [続きを読む]
  • あなたのとりこ 205
  • 「そう云う風にしか考えないから袁満君はダメなんだよ」 口を閉ざした日比課長の代わりにと云う訳ではないでありましょうが、及び腰ながら反論を試みた袁満さんに土師尾営業部長は頭ごなしの否定を投げ付けるのでありました。「でもウチみたいな人数の少ない小さな会社は、他社との関係こそ何より大事だと考えるなら、思い付いた事を後先考えないで勝手都合で何でもして良いという事にはならないでしょう。ひょっとしたらそれは命 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 204
  •  次に名前を呼ばれた出雲さんは、ビクッと体を小さく震わせてから顔を起こすのでありました。これ迄の話しの流れからすると、今度は自分に対して好都合でない理不尽な提案がなされるものと身構えたのでありましょう。「出雲君も今迄の出張営業から特注営業の方に回って貰います」 土師尾営業部長は出雲さんの動揺に頓着せずに続けるのでありました。「と云っても都内や近郊の特注営業ではなく、地方の特注営業と云う事になります [続きを読む]
  • あなたのとりこ 203
  • 「人事の事以外にあるかな」 片久那制作部長は土師尾営業部長の顔にそこで視線を向けるのでありましたが、その眼相に恐れをなしたかのように土師尾営業部長は慌てて視線を逸らして、俯いて手に持つ紙を見るのでありました。手が心なしか震えているように見えるのでありました。「では先ず、制作部の山尾君ですが、・・・」 土師尾営業部長はまた丁寧口調に戻って先を続けるのでありました。「特注営業の梃入れと云う事で、好都合に [続きを読む]
  • あなたのとりこ 202
  •  土師尾営業部長は慌ててそんなフォローを口に上せるのでありました。「しかし俄かにオロオロし出しても始まらないじゃないですか」 山尾主任は土師尾営業部長の片久那制作部長に対する見苦しい程の小心さか、或いはそれ以前に、事をやけに大袈裟に深刻化して、それに依って人を圧倒し委縮させようとする遣り口に反発したのか、呆れたような表情でぞんざいに吐き捨てるのでありました。「オロオロなんかしていないよ」 頑治さん [続きを読む]
  • あなたのとりこ 201
  • 「いや、二社共私が専門に担当していると云う訳じゃない。部長だって関与している会社じゃないですか。どう云う用事か知らないけど顔出しも偶にしているようだし」 日比課長は抗弁するのでありましたが、何となく責任逃れの言葉のように聞こえるのでありました。日比課長としては受注が来なかったのは自分だけのせいだと暗に責められているように受け取って、それは大いに不本意だと表明したかったのでありましょう。「でもその二 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 200
  •  片久那制作部長はソファーに深く背を凭せ掛けて不機嫌そうに腕組みしているのでありました。片久那制作部長が口をへの字にして全く開かないものだから、ここは自分の出番と思ってか土師尾営業部長が小難し気な顔で重々しく喋り始めるのでありました。「新年の仕事始め早々、こうして全員に集まって貰ったのは、これから会社の将来とか喫緊の人員配置なんかについて話すためです」 一応丁寧な物云いはしているもののその実、問答 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 199
  • 「そう云う事なら」 夕美さんはあっさり頑治さんの厚意に甘える気になったようであります。「多分東京の叔母の家とかその他に、こっちの親類から預かったお土産とか届け物があれこれあると思うから、荷物が多くて大変になると思っていたの。来てくれたら本当は大助かりよ」「そう云う事なら張り切ってお迎えに参上いたしますぜ」 頑治さんはここが忠義の見せどころと意気込みを見せるのでありました。「頑ちゃんにもお土産買って [続きを読む]
  • あなたのとりこ 198
  • 「ご明算」 頑治さんは寝惚け眼を擦りながら少し掠れた声で肯うのでありました。「寝正月なんて羨ましいわね」「正月は寝る以外に遣れる事があんまり無いからね」 頑治さんはここで欠伸をして見せるのでありました。「どうだいそっちは?」「何時ものお正月より暖かいみたい」「こっちも温かくて寝正月日和だね」 頑治さんはもう一度欠伸するのでありました。「今お父さんと兄は夕方迄あっちこっち年始回りに行っているのよ」「 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 197
  •  年末も三十日までは三日間程、寒風の吹くどんよりとした天候で時折冷たい雨もしと降っていたのが、大晦日と正月三が日は打って変わってうららかな日和が続くのでありました。そう云えば子供の頃迄は東京よりは暖かな郷里でも冬には冷たい雨や雪の翌朝には、必ず軒先から氷柱が下がって居たりしたものでありましたが、東京に来て以来氷柱等と云う冬の季題のような代物は見た例が無いのでありました。こう温暖になると歌詠みの人も [続きを読む]
  • あなたのとりこ 196
  • 「あの人はどういう仕事をしているんだったっけ?」 均目さんが先ず那間裕子女史を、それから頑治さんの顔を見るのでありました。「会社の本業は工作機械を作っているメーカーらしいけど、一方で王様のアイデアとか玩具屋なんかで売っている、知恵の輪みたいなものとか、トランプとか花札とかいろはカルタとか、卓上将棋盤とか囲碁盤とか、そんな風な小玩具も製造している、浅草の方に在る会社の社員だと仰っていたんじゃなかった [続きを読む]
  • あなたのとりこ 195
  •  那間裕子女史は鮸膠も無いのでありました。「片久那制作部長の方が未だシャープな感じがするかな」 均目さんも頑治さんの意見に不同意のようであります。「陰気さはそっくりだけど」「来見尾さんは片久那制作部長と違ってお酒もあんまり飲まないようだし、話しをしても冗談も云わないし、ちょっと気の利いた云い回しもしないし、全般に当り障りのない返事しかしないものね。如何にも頼りない感じがする。でもああ云う人は自分が [続きを読む]
  • あなたのとりこ 194
  •  それは明快にそうだと云う訳ではないにしろ、那間裕子女史の意向に沿っての事でありました。那間裕子女史は頑治さんと均目さん以外の会社の連中と酒席を同じにする気は殆ど無いようでありました。これは那間裕子女史の人の好き嫌いに依るのでありました。と云っても、他の連中を那間裕子女史が忌み嫌っていると云う訳では全くなくて、一緒に酒を飲みながら談笑の時間を共有したいとは敢えて思わないと云う、好き嫌い、と云うより [続きを読む]
  • あなたのとりこ 193
  •  まあ、袁満さんは楽天的な人柄なのでそれを苦にしているようには見えないのでありました。案外この活動に、自分の本来の居場所を見つけた心地なのかも知れませんし。 と云う事で、メンバーの中では山尾主任と袁満さんが突出して活動に積極的な風情でありました。しかし山尾主任は年が改まった早々に結婚を控えているのでありますが、こちらの方は一体どのような具合になっているのでありましょうや。全くの他人事には違いないの [続きを読む]
  • あなたのとりこ 192
  •  夕美さんはそう云って小首を傾げて笑い顔をして見せるのでありました。「矢張り、映画とその後で新宿御苑散歩だけ、と云うプランにしよう」「寄席はいいの?」「是が非でも行きたいと云う訳じゃないし。夕美が行きたいのなら別だけど」「あたしも、別にどうしても行きたい訳じゃないけど」 夕美さんは落語とか漫才が殊更好きだと云う訳ではないのでありました。前に何度か頑治さんに連れられて新宿末広亭や浅草演芸ホールに行っ [続きを読む]
  • あなたのとりこ 191
  • 「それで、お母さんの件もあるからここはちょっと帰るか、と云ったところかな」「そうね、そんな感じ」 夕美さんは箸を置いて手をテーブルの下に隠すのでありました。恐らく別にどうと云う心算ではない何の気無しの仕草でありましょうが、頑治さんの目には何やら改まった風に映ったものだから、ふと心の中で小さな不安が閃くのでありました。 ひょっとしたらこれから先に起こる諸々の経緯から、最終的に夕美さんは東京を離れて故 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 190
  • 「頑ちゃんは相変わらず気楽ね」 夕美さんが笑うのでありました。「貰う時に他の連中は苦虫を噛み潰したような顔で受け取っていると云うのに、俺は竟々笑みが毀れそうになって仕舞って、少し困ったよ」「それはそうよ。経緯から、嬉しがる局面じゃないもの」「でもまあ、竟ね」 頑治さんは海老のチリソースに箸を伸ばすのでありました。「で、その二万円の臨時収入でこの食事を驕ってくれている訳ね」「そう云う事。だから遠慮し [続きを読む]
  • あなたのとりこ 189
  • 「入社して間もないと云うのに色々大変そうね」 夕美さんはあんかけの蟹玉を自分の小皿に取り分けながら云うのでありました。「そうね。ちっとも知らないで就職したけど、業績不振らしい」「それで結局、暮れのボーナスは二万円ポッチしか貰えなかったのね」「ま、そう云う事だね」 頑治さんは細切り牛肉と苛の炒め物を頬張りながら頷くのでありました。「しかし例えば去年と同じに二か月半出たとしても、中途入社の俺は色々小難 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 188
  • 「これから同じ目的に向かって共に闘おうとしている同士が、今から角突き合わすような関係になるのは幸先が好くないわ。協調性と云うところを均目君はもう少し考えた方が良いと思うわよ。第一、目上の人に対してさっきのもの云いは遠慮が無さ過ぎね」 那間裕子女史が、重い空気に言葉の接ぎ穂を失ったように誰もが沈黙している中でその打開を図ろうとしてか、そんなご高説をしかつめ顔で垂れるのでありました。日頃の言動に鑑みれ [続きを読む]
  • あなたのとりこ 187
  •  均目さんは派江貫氏の服装への揶揄を交えて、如何にも意地が悪そうに体を斜にして見せるのでありました。意地から、先程黙って引き下がったのはアンタの剣幕にたじろいだからではないと云う意志表明を、ここで敢行しようとしているのでありましょうか「俺がどんな服装をしようと俺の勝手だ」 派江貫氏は憮然として均目さんから目を背けるのでありました。「勿論その通りです。好みは人夫々ですからね。それにそのセンスに対して [続きを読む]
  • あなたのとりこ 186
  • 「じゃあ、取り敢えずは委員長が俺で副委員長が袁満君、それから書記が那間さん、会計担当が唐目君、均目君と出雲君が執行委員と云う人事案は承認と云う事で良いかな?」 山尾主任が先ずそちらの方の了承を全員に求めるのでありました。那間裕子女史が異議無しの態度を表すると他の連中も積極的な反応ではないにしろ頷くのでありました。「それから組合費の一パーセント徴収の件はどうかな」 こちらも積極的賛成とは云い難いなが [続きを読む]