汎武 さん プロフィール

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汎武さん: はなし汎武ん
ハンドル名汎武 さん
ブログタイトルはなし汎武ん
ブログURLhttp://hanbu-y.blog.so-net.ne.jp/
サイト紹介文日常のあれこれ、本の事、誰彼の事、合気道の事等々、諸事への思いを整列させることもなく書いております。
自由文写真やイラストなど殆どない、文字だけの地味なブログです。全体のトーンはエッセイ風でありましょうか。ま、ちょっと創作ものも入っていますし、批評めいたものも煩わしくない範囲で書いております。よろしければ覘いてみてください。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供153回 / 365日(平均2.9回/週) - 参加 2009/02/10 14:27

汎武 さんのブログ記事

  • あなたのとりこ 131
  •  頑治さんも那間裕子女史のもう一方の脇から遠慮気味に腕を差し入れて助けるのでありました。遠慮気味なのは均目さんにとってこれは余計なお節介にならないかと云う点を危惧したためでありますが、均目さんは特に拘らないような素振りでありました。 ジャズ酒場を出ると靖国通りまで、那間裕子女史を両脇から二人で支えながら歩くのでありました。那間裕子女史は足を縺れさせながらも、一応は両足を互い違いに出して歩行するので [続きを読む]
  • あなたのとりこ 130
  •  そんな均目さんの様子は、那間裕子女史と均目さんが別にデキていると云う訳ではないと云う証明のようにも頑治さんには思えるのでありました。しかしだからと云ってこの儘那間裕子女史の自分の腕への接触を許し続けるのは、何やら夕美さんと云う存在に対する忠義立て上、慎に律義でないような気もしてくるのでありました。 頑治さんはそれとなく那間裕子女史の接触から自分の腕を遠ざけるように、那間裕子女史に対して背中を向け [続きを読む]
  • あなたのとりこ 129
  •  那間裕子女史はジントニックを一口、と云っても殆どグラス半分くらいの量を口中に銜んで、やや頬を膨らませてからそれを二口に分けて飲下するのでありました。「でもその話をする時には何時も、悔しそうな口振りで話すじゃないか」「まあ、人は人よ。それにあたしだって将来一廉の編集者になって見せるわ」 なかなか勝気な、プライドの高い女性のようであります。「だから要するに唐目君、将来性の無いウチの会社は適当に見限っ [続きを読む]
  • あなたのとりこ 128
  • 「そんな気は更々無いわ」 那間裕子女史はあっけらかんと掌を横に振って見せるのでありました。「営業としてあたしはウチの会社に入ったんじゃないもの」「でも営業の仕方に一家言あるようじゃないか」「見ていたらもどかしくなるのよ。ただそれだけ。前に云ったけどあたしは元々旅行雑誌の編集がやりたかったの。ウチの会社は地図も作っているから、云ってみれば地図作成とかオフセット印刷の知識とか、グラビアの目利きのスキル [続きを読む]
  • あなたのとりこ 127
  •  こちらの方にも那間裕子女史は辛辣でありました。「どんどん新規を開拓しようと云う気も無いし、向こうに何か云われたりしたら云われたなりにオタオタしているし」「まあ、広いエリアを車で順に回って、と云う昔の富山の薬売りみたいな仕事だから、顔出しの頻繁さも限界があるし、持ち込む商品の数にも限りがあるからね」 均目さんが袁満さんと出雲さんの肩を持つのでありました。「電話と云う道具があるんだから、それを上手に [続きを読む]
  • あなたのとりこ 126
  • 「制作部は新聞の求人広告で、他は職安でと云う採用の決まり事ですか?」「別に決まり事じゃないと思うけど、何となくそんな風だよね」 均目さんが那間裕子女史に同意を求めるのでありました。仕事中は均目さんは先輩後輩及び歳上歳下の間柄から那間裕子女史とは敬語を使って話すのでありましたが、一端仕事を離れるとぐっとくだけた話し振りのようであります。これも二人が好い仲である事の左証と、勘繰れば勘繰る事の出来る言葉 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 125
  •  この日の会合は二時間程でお開きとなるのでありました。当初の集まった目的からすれば何の成果も無い単なる飲み会と云う事になったのでありますが、頑治さんとしては日頃あんまり交流の無い社員の気心が知れる好い機会ではありました。特に那間裕子女史とのインフォーマルな席での接触は、意外な女史の側面を見せられた思いでありましたか。 随分お高くとまった、会社の人間なんぞには興味の欠片も持っていない人だと云う先入観 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 124
  •  頑治さんは居心地悪そうに那間裕子女史との脚の接触を、勿論その気持ちを噯にも出さずシレっとした顔で遣り過ごしているのでありました。まあ、このような意図しない偶然の女性との接触を歓迎する心根も、頑治さんの内には無い事も無いのでありましたか。 この脚の接触は頑治さんがトイレに行こうと中座する時にようやく解消されるのでありました。それに頑治さんが立ち上がって那間裕子女史の背後に移動すると、頑治さんは更に [続きを読む]
  • あなたのとりこ 123
  • 「仙川駅の近く、と云うにはかなり遠いけど、でも、そこよ。良く知っているわね」「大学時代の友人が一時その学校に通っていた事があるので、名前は知っています」「ふうん。唐目君は通わなかったの?」「ええ。俺は外国語の勉強はあんまり好きな方じゃないですから」「那間さんは来年か再来年、アフリカのケニア辺りに旅行する予定だから、それで今必死にスワヒリ語を勉強しているんだよ」 均目さんが女史の事を良く知らない割り [続きを読む]
  • あなたのとりこ 122
  • 「唐目君は均目君と同い歳だったわね?」「ええそうです」 頑治さんもやや上体を前のめりにして、挟まれた均目さんの顎の前で那間裕子女史と言葉の遣り取りをするのでありました。均目さんは二人の邪魔にならないようにと慮ってなのか、二人とは逆に上体を後ろに逸らせるようにしているのでありました。「この前の昼休みに二人で喫茶店から出て来るところを目撃したわ。仲良さそうね」「同い歳の気安さから、均目君には色々懇意に [続きを読む]
  • あなたのとりこ 121
  •  この女史の変化に山尾主任は立ち上がろうとする動作を中断するのでありました。山尾主任は中腰の姿勢の儘、那間裕子女史の方に視線を向けるのでありました。那間裕子女史はその山尾主任を横目で見上げながら続けるのでありました。「この六人の面子でこうやって一緒にテーブルを囲んでお酒を飲むなんて事、多分今まで一度も無かった事じゃないかしら?」 那間裕子女史は今度は袁満さんの方に視線を移すのでありました。「そうね [続きを読む]
  • あなたのとりこ 120
  • 「そこが曖昧なままで、これから一体何の話し合いをするの?」 那間裕子女史はそう云って小さく舌打ちをするのでありました。この会合の抑々の辺りを無効にするようなこの発言に、山尾主任が嫌な顔をするのでありました。「まあそうだけど、出ない可能性があるんだから、その場合も考えて今から対策を話し合って置くのも決して無駄じゃないだろう」 まあ、呼び掛け人としてはそう云って会合の意義を強調するしかないでありましょ [続きを読む]
  • あなたのとりこ 119
  •  刃葉さんが居なくなって何となく社内が落ち着いたと思ったのに、今度は冬のボーナスカットと云う問題が間を置かず出来するのでありました。頑治さんは陰鬱な気分になるのでありましたが自分だけ蚊帳の外で知らん顔をしている訳にもいかないでありましょう。あんまり気乗りはしないものの、山尾主任に誘われた従業員会合には出なければならないでありましょう。慮れば何かとゴタゴタの多い会社に入ったものであります。 この水曜 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 118
  • 「地位の上下関係の秩序以上に、と云う事かな」「そうね。何かオドオドしているようにも見える」 その辺の詳しい事情に関しては頑治さんには全く判らないのでありました。 月曜日に池袋の宇留斉製本所から帰って、納品書を制作部の山尾主任に渡した後、頑治さんが引き取って来た荷を車から下ろしているところに、山尾主任が上の事務所から下りて来るのでありました。何か納品書の記載に不首尾があってその確認に来たのかと思うの [続きを読む]
  • あなたのとりこ 117
  • 「誰の売り上げがどのくらいあるとか、数値としてはっきりしているのかな?」「その辺は結構曖昧かな。出張営業は分担があるけど、日比課長と土師尾営業部長に関しては大まかにと云うのか、何となく担当はあるみたいだけど、どの会社が何方の担当とはっきり区分してあると云う訳でもないようだし。まあ、全日本地名総覧社時代から取引のある会社は、主に土師尾営業部長が総取りで受け持っていているようだけど」 その辺の詳しいと [続きを読む]
  • あなたのとりこ 116
  •  均目さんは少し大袈裟に深刻そうな顔をするのでありました。「支給しないと云うのは片久那制作部長がそう云ったのかい?」「いやそうじゃない」「じゃあ、土師尾営業部長から直接聞いたの?」「いや、それもそうじゃない」「じゃあ、何処から出た情報なんだい?」「日比課長からそうらしいよと袁満さんが聞いて、袁満さんから俺が聞いたんだ」「日比課長にボーナスを支給するかしないかの決定権があるのかい?」 頑治さんは眉宇 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 115
  •  刃葉さんは人里離れて、山籠もり、のような空手修行に入るという事でありますが、さて、この身を寄せて同じ歩調で歩くこちらの羽場さんは、来年になったらどのような身の振り方を決断するのでありましょうか。大学院に進むのかそれとも就職するにしても東京に残るのか、或いは郷里に帰って博物館職員とか学校の先生と云う道を選ぶのか。 勿論頑治さんとしては東京に残って欲しいと願うのでありましたが、しかしながら頑治さんが [続きを読む]
  • あなたのとりこ 114
  • 「そうね」 頑治さんは何食わぬ顔であっさり受け応えるのであありました、「長滞在のようだからひょっとしたら、網走の顔を立てて刑務所観光はする事もあるかも知れないけど」「長滞在って、十日くらい?」「いやいや、十年とか聞いたけど」 夕美さんはそう聞いて眉をヒョイと上げて少しの驚きを表するのでありました。「それじゃ旅行で長滞在って云うより、向うに移住するって事だわね」「そうね。そう云う方が正しいかな」「向 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 113
  •  頑治さんは両手に一本ずつ持っているコーヒーと葡萄ジュースの缶を見るのでありました。予期せぬ刃葉さんとの再会と思わぬ長話しのせいで、買った時には熱くて同じところを長く持てないくらいだったコーヒーの缶は、すっかり冷めて仕舞っているのでありました。まあしかし、夕美さんに頼まれた葡萄ジュースの方は、どだいそんなに冷えていた訳ではなかったから、こちらの温度はさして変わらないようでありました。 頑治さんはベ [続きを読む]
  • あなたのとりこ 112
  • 「刃葉さんはご両親と一緒に暮らしているんでしたよね?」 頑治さんが懸念を眉宇に湛えて訊くのでありました。「そうだけど」「ご両親は刃葉さんの網走行きを承諾されたのですか?」「ああ、ウチの両親ね」 刃葉さんはあっけらかんと笑うのでありました。「それは何も問題は無いな。ウチの両親は出来損ないの俺の事なんか、もう疾の昔から眼中にないからね。何処で野垂れ死にしようと知った事じゃないだろう。それに俺には兄貴が [続きを読む]
  • あなたのとりこ 111
  • 「じゃあ旅行ですか?」「いやそんなんじゃなくて、向こうに云ったら数年、いやひょっとしたら十年くらい留まる事になるかも知れないかな」「十年留まる?」 頑治さんはこの意外な報告に少し驚いて見せるのでありました。「そんなに長く北海道の網走で一体何をすると云うんですか?」「空手だよ」 刃葉さんはあっさりそう云ってから思わせ振りに無表情をするのでありました。「空手、ですか?」「そう。空手。今通っている道場の [続きを読む]
  • あなたのとりこ 110
  •  動物園入り口ゲート近くの自動販売機で自分の温かい缶コーヒーと、夕美さんの冷たい葡萄ジュースを買っていると頑治さんは誰かから肩先を不意に叩かれるのでありました。振り向くとそこに立っていたのはこの前会社を辞めた刃葉さんでありました。「久し振り。また妙な処で逢ったもんだな」 刃葉さんはニコニコと笑い掛けるのでありました。「ああ、羽葉さんじゃないですか。お久し振りです」 頑治さんも笑い返すのでありました [続きを読む]
  • あなたのとりこ 109
  • 「山へ行く予定でここに集まったんだけど誰かあの中の一人の気持ちが挫けて、それでその挫けたヤツの気持ちを尊重して、それで皆で上野公園散歩に切り替えたとか」「でも、そうだとしても公園散歩と登山の間には余りに落差があり過ぎない?」 夕美さんが頑治さんの説に異を唱えるのでありました。「本当は殆どのヤツが登山に乗り気でなかったんだけど、中に矢鱈と押しの強いヤツが居て、そいつの意見に引き摺られて不承々々ながら [続きを読む]
  • あなたのとりこ 108
  • 「俺としては夕美が兎に角東京に居てくれるのが一番嬉しいかな」「あたしもそうしたいと思ってはいるんだけど。・・・」 夕美さんはそう云ってから頑治さんの方に気持ちの籠った強い視線を投げて、それからゆっくり俯くのでありました。「思ってはいるけど、そうもいかない障害でもあるのかな?」 頑治さんが訊くと夕美さんは顔を上げるのでありました。「ううん、東京に残れないような特別な障害なんか何もないわ。でも、・・・」「で [続きを読む]
  • あなたのとりこ 107
  • 「博士課程に進むかどうか未だ迷っているの?」 頑治さんはその辺りが今の夕美さんの心根の中で、ふと明滅し始めた思念であろうと当たりを付けて少し躊躇いがちに訊くのでありました。「そうね、未だ迷っているわね」 夕美さんはそう云ってから目の前の書を眺め遣るのでありましたが、それは眼前の書に意を集中しているとは決して云えない瞳容でありましたか。「せっかく今迄考古学を熱心にやってきたんだし、これから先も続けて [続きを読む]