汎武 さん プロフィール

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汎武さん: はなし汎武ん
ハンドル名汎武 さん
ブログタイトルはなし汎武ん
ブログURLhttp://hanbu-y.blog.so-net.ne.jp/
サイト紹介文日常のあれこれ、本の事、誰彼の事、合気道の事等々、諸事への思いを整列させることもなく書いております。
自由文写真やイラストなど殆どない、文字だけの地味なブログです。全体のトーンはエッセイ風でありましょうか。ま、ちょっと創作ものも入っていますし、批評めいたものも煩わしくない範囲で書いております。よろしければ覘いてみてください。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供153回 / 365日(平均2.9回/週) - 参加 2009/02/10 14:27

汎武 さんのブログ記事

  • あなたのとりこ 183
  • 「ああそうですか。それならそれで。・・・」 均目さんとしては情勢不利、と云ったところでありましょうか。均目さんが逐一無意味で些末な議論を小賢し気に持ち出す事で、徒に議事進行を滞らせていると云った雰囲気であります。そんな軽率なヤツと思われるのは大いに心外であるためか、均目さんはそう皮肉っぽく云ってからその後は目立って口を開くのを慎むのでありました。「じゃあ、この闘争方針に異議はありますか?」 山尾主任 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 182
  • 「先程の山尾主任が喋った、と云うか、多分その目の前の紙を読み上げたんだろうけど、贈答社の闘争方針、とやらは今ここで考えたんじゃないですよね?」 均目さんが山尾主任に笑い気皆無の表情で質問するのでありました。「うん。横瀬さんと予め練ったものだよ。まあ、結成時に採択される闘争方針の、よくあるパターンとかを教えて貰って、無難な辺りを文章にしたんだ」「方針と云うのは、我々がこれから創る贈答社労働組合の性格 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 181
  • 「要するにウチの問題も然る事ながら、ウチの組合の活動は全総連と云う上部団体の活動方針に強烈にコミットしなければならない、と云う事になる訳ね、そう云う方針なら」 那間裕子女史が首を傾げるのでありました。「いや、何を置いても単組個別の問題が最優先です。ただ加盟単組の中には贈答社よりも深刻な、雇用を守れるかどうかとか、或いは会社内差別の問題に直面しているところもあります。そう云った単組も仲間として応援を [続きを読む]
  • あなたのとりこ 180
  • 「闘争、と云う言葉は別に左翼の専売特許と云う訳でも無いよ」 頑治さんが唐突に云い出すのでありました。「ヒトラーの『我が闘争』と云う著作もあるんだし。ヒトラーは確か左翼じゃなかったと思うけど。いやまあ、俺は高校生の時にはあんまり世界史の勉強が好きじゃなかったから記憶違いかも知れないけどさ」 その頑治さんのほんの少し冗談を交えたような云い草を聞いて、横瀬氏と隣の派江貫氏が頬の緊張を緩めるのでありました [続きを読む]
  • あなたのとりこ 179
  • 「しかしそう云ってもここは話しを進めるために、・・・」 山尾主任は口籠もって困じたように横瀬氏の方を見るのでありました。「まあ、形式、と云うだけです」 横瀬氏が助け舟を出すのでありました。「初回の会議の手続きみたいなものです」「形式的手続きなら、省いても構わないのじゃありませんか?」「いやいや、幾ら形式的手続きだと云っても、手続きは手続きですから、人が集まって創る組織である以上省けません。そう云った [続きを読む]
  • あなたのとりこ 178
  •  会議と云うものはとかくこのような形式張った体裁を取るのでありましょうが、考えて見れば奇妙で一種ちゃんちゃら可笑しい律義さに溢れているものなのでありましょう。しかし形式と云うものを無性に有難がる人種も居るようで、山尾主任はどうやらそう云ったタイプの人なのかも知れないと、目の前で現在進行している営為とはさして関係の無い事を頑治さんは考えているのでありました。まあそれは人夫々の勝手でありますが。 山尾 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 177
  • 「さて、今云いましたようにこちらの組合は小規模単組連合の贈答社分会として活動していただく事になりますが、分会の第一回会議を始めるに当たり先ず議長と書記を選出して貰いたい訳ですが、何方か自分がやると云う立候補はありますか?」 横瀬氏が左右に居並ぶ社員連中を見渡すのでありました。「特に立候補が無いようですから、ここは僭越かもしれませんが私の方から提案させていただきますが、山尾さんに議長を、那間さんに書 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 176
  •  山尾主任と袁満さんは既に来ているのでありました。それに先日喫茶店で逢った横瀬氏と、その折横瀬氏が一緒に連れて来ると云っていた組合関係の男が二人、横瀬氏を挟むようにして大きな会議用テーブルの奥の一辺に並んで座っているのでありました。山尾主任と袁満さんが窓を左手に見る辺に座っていたので、遅く到着した三人はその向かいの窓を右に見る席に、那間裕子女史を真ん中に挟んで着席するのでありました「惨憺たる支給額 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 175
  •  那間裕子女史が片久那制作部長の居る前で冗談めかして、山尾主任に向かって結婚を間近に控えてこれでは式の資金の足しにもならないだろう、等と勿論ボーナスを支給する側の片久那制作部長に当て付けるためにものしたところ、片久那制作部長はその言葉を聞きとがめて、出せるものなら俺だってもっと出したいよと、如何にも不愉快そうに横から口を挟んだと云う事でありました。これは後に均目さんから聞いた話しであります。 片久 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 174
  • 「判りました。それでは今後共よろしくお願いします」 山尾主任が横に座る横瀬氏の顔を見ながらお辞儀するのでありました。それを見て他の四人も銘々に頭を下げるのでありました。「こちらこそよろしくお願いします。伴に頑張りましょう」 横瀬氏も丁寧に五人の顔を夫々見ながら五回浅いお辞儀を繰り返すのでありました。 一日置いた木曜日、結局ボーナスは形式通りには出ず、慰労金と云う名目で、日比課長に十万円、山尾主任に [続きを読む]
  • あなたのとりこ 173
  • 「じゃあ、木曜日の午後六時から、と云う事で決めて大丈夫かな?」 山尾主任がまたもや夫々の顔を見渡すのでありました。皆も再度頷いて見せるのでありました。特段の異議無しというところでありますか。「那間さんは残業しないで良いの?」 均目さんが念のために訊くのでありました。「大丈夫よ。仕事は遅れているけど未だ尻は先だから、どうしてもその日に残業しなければならないと云う謂れはないわ。ご心配の段は深く感謝しま [続きを読む]
  • あなたのとりこ 172
  • 「さて、どうだろう、全総連加盟の労働組合結成、と云う事に決定して良いかな」 山尾主任が話しを進めようとするのでありました。「それしか手は無いかな、社長や土師尾営業部長を慌てさせるには」 袁満さんが頷くのでありました。「そうね。個々や、何もバックが無い状態で騒いでいても無力だもんね」 那間裕子女史も二回頷くのでありました。「均目君は?」 山尾主任は均目さんを見るのでありました。「流れとしてはそのよう [続きを読む]
  • あなたのとりこ 171
  • 「それはそうですけど、でも上部組織になる全総連の事も詳しく知らないし」「全総連は日本に在る労働組合連合組織の中では二番目に大きい組織です」 横瀬氏がここで全総連について解説を始めるのでありました。「一番大きな組織は全日本労働組合総協議会、所謂労総協で、これは皆さんご存知でしょう?」「良く春闘の時期やメーデーでテレビに取り上げられる組織ですよね」 袁満さんがあっけらかんとした笑みを浮かべて応えるので [続きを読む]
  • あなたのとりこ 170
  •  山尾主任がその均目さんの言に少し不愉快そうな顔をするのでありました。「それはそうです」 横瀬氏の方は均目さんのような意見に大いに配慮しているところを見せるためか、静穏な顔で頷くのでありました。「それは貴方達がこれから決める事ですから、私は口を差し挟みません。今日は請われて単にアドバイスにしゃしゃり出て来ただけですからね」 横瀬氏のこの辺の腰の引き方なんと云うものは、身熟しが臨機応変で老獪なのか、 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 169
  •  横瀬氏は土師尾営業部長の事をこの段階では殆ど何も知らない筈であります。その為人も風貌も、社員からどのように思われているかも。依ってその人の事を語るのに、この段階ではある種の敬意を払った云い方をするのが普通の感覚でありましょうか。 しかしその物腰からはそんな気配は微塵も感じられないのでありました。寧ろ社員から全く疎んじられていると云う予備知識のためにか、一定程度軽侮したような云い方をしても構わない [続きを読む]
  • あなたのとりこ 168
  •  袁満さんが何となくイメージしたのかそんな事を云うのでありました。「まあ、それも闘争手段の一つではありますね。一企業を越えて団結していると色んな交渉戦術があると云う事ですね、つまり」 そう云って横瀬氏はここでコーヒーを飲み干すのでありました。「矢張り全国組織下の労働組合を創るしかないかなあ」 山尾主任もまるで横瀬氏を真似るように自分のコーヒーカップを空けて、独り言のように呟きながら首を何度か縦に振 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 167
  • 「甲斐さんとやらの事はそのくらいにして、・・・」 横瀬氏は先程の話しに戻ろうとするのでありました。 横瀬氏はコーヒーをまた一口飲んで続けるのでありました。「会社に少し無理をさせるためには、実は企業内だけで交渉しても弱いのです。留保金の事にしても、云ってみれば社内の事情ですから、切り崩すとこの先経営が困難になると云われれば、こちらの根拠よりも向こうの経営的根拠の方が切迫感に於いて些か優る。一時金が出な [続きを読む]
  • あなたのとりこ 166
  •  横瀬氏は少し間を取るためかコーヒーを一口悠長に啜るのでありました。那間裕子女史の方は何を勿体付けているのかと云ったような、苛々を隠さない目でその様子を睨み付けながら氏の次の言葉を待つのでありました。「無い袖は振れない、と云う事は至極尤もな理屈ですよ」 横瀬氏はコーヒーカップを小さな音を立てて受け皿に戻すのでありました。「しかしその理屈を覆させるためにはあれこれ手が必要なのですよ。一つは、一般的に [続きを読む]
  • あなたのとりこ 165
  • 「いや、俺もここで初めて知ったんですよ」 袁満さんが那間裕子女史の些かきつそうな視線に怖じたのか、慌てて両手を横に何度も振って見せるのでありました。「もう明後日がボーナス支給日なんだから、早く対策を決めて置かなければならない。昨日の話し合いで俺達だけではとても手に負えないような感じだったから、その道の専門家に助けて貰うしかないと思うんだよ。そうじゃないかい、那間君?」 今度は山尾主任が小首を傾げる [続きを読む]
  • あなたのとりこ 164
  •  袁満さん経由の山尾主任の指示はすぐに均目さんから那間裕子女史に、それから倉庫で仕事をしている頑治さんにも齎されるのでありました。内心の安堵も午前中だけで、矢張りその日の従業員会合は開かれると聞いて頑治さんは少しの落胆を覚えるのでありました。別に流れたからと云って夕美さんと逢える訳ではないけれど、秘かな億劫であるのは間違いの無い事でありました。前日考えたように特段の益も無いのでありますし。 仕事が [続きを読む]
  • あなたのとりこ 163
  • 「時間とか変更があるようなら電話するわ」「判った。まあ、その前にもこっちから特に用は無くとも電話すると思うけどね」 頑治さんは自分のこの云い草が、その気は特に無かったのに甘えた調子になったような気が、云った直後にして少しきまりが悪いような心持ちがするのでありました。「うん。じゃあ、土曜日」 夕美さんはそう云ってから、切るのを躊躇うようなほんの少しの間を置いた後に、耳にしていた受話器を静かに掛け台の [続きを読む]
  • あなたのとりこ 162
  • 「へえ、そう。頑ちゃんの初ボーナスね」 夕美さんの声が弾むのでありました。「まあ、そう云う事になるんだけど。・・・」「だったら丁度良いじゃない。初ボーナスを祝って何処かでお食事しましょうよ」「いやまあ、ちゃんとボーナスが出るのなら、ここが一番日頃の恩返しの総決算、と云う感じで得意になって驕るんだけどね」「と云う事は、ちゃんと出ないの?」 夕美さんの声の勢いが萎むのでありました。「その可能性が大かな」 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 161
  •  結局新宿駅まで一緒に歩いて、頑治さんは二人とは反対方向に向かう中央線の電車に一人乗るのでありました。どうしたものか電車は空いていて頑治さんは座席に座る事が出来たのでありました。頑治さんは前方斜め下にある自分の太腿を見るのでありました。ずっとそこに載せられていた那間裕子女史の掌の感触が消え残っているのでありました。 本郷のアパートに帰り付くと頑治さんは酒に火照った頬を持て余しながら電話の受話器を取 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 160
  • 「ハワイで山登りと云うのもちょっとピンとこないから、矢張り結婚式は軽井沢かな」「ハワイで結婚式を挙げて、その後日本に帰ってから山登りに行けば良いんで、それは別にどっちだって構わないんじゃないの」「ハワイじゃないとしても、何処か外国の山と云う手もある訳で」 頑治さんが一応愛想から話しに参加するのでありました。「それはそうだわね。でもエベレストに登るとか云う事はないでしょうね。山尾さんもそこまで本格的 [続きを読む]
  • あなたのとりこ 159
  •  グラスを差し上げる時の無意識の体の反動として手指が動いたのか、それとも意識的な掴む動作だったのかは頑治さんには判然としないのでありました。しかしどこか意志的な挙動だったようだと云う思いが六分四分で優るのでありました。 では何のために那間裕子女史は頑治さんの太腿を掴んだのでありましょうや。何かのサインでありましょうや。そうなら何のサインでありまじょうや。・・・ この後はまたもや山尾主任の頼り無さとか [続きを読む]