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- 2018/04/26 22:05消えゆく whom への挽歌 (エコノミスト誌 "For whom, the bell tolls")
- 英誌 The Economist のバックナンバーを眺めていたら、"Johnson" という言葉についてのコラム欄で whom について取り上げていたので、読んでみた。"For whom, the bell tolls" という題で、ヘミングウェイおよびジョン・ダンの「誰がために鐘は鳴る」をもじっている(カンマを入れているが)。否応なく目を引く、うまいタイトルだ。サブタイトルもうまい。"In the court of common usage, an old pronoun is losing its case" とい [続きを読む]
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- 2018/04/11 21:40「壁にとまったハエ」は適切な訳か? 〜 fly on the wall #2
- 面白そうな本が次々に出版されているが、時間も金も限りがある私としては、各種の書評をウェブで見てあれこれ想像をめぐらせるのが精一杯だ。そんな調子である最新の書評を眺めていたら、「あれ?」と思ったことがあった。対象となっていたのはトランプ政権の内幕を描いた「炎と怒り」で、私は未読だが、今年はじめ、出版直後の騒ぎにちなんで英語の表現を取り上げたことがある(→ tell-all, exposé 「すっぱ抜き」「暴露もの」 [続きを読む]
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- 2018/04/10 20:35昔の「基礎英語」は今より音声面に力を入れていた
- 5年前の今ごろ、ラジオ講座の「基礎英語」について「初学者に不親切な内容では」と書いたが、その記事を先日お読みいただいた方から「今年の講座にも同じような感想を持った」というコメントが寄せられた(→こちら)。そこで、今年の4月号テキストを書店で読み、公式サイトでストリーミングも聞いてみたが、確かに5年前と方針に変わりはないように見受けられた。若いころ、オジサン連中から「昔はよかった」的な話をされると「 [続きを読む]
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- 2018/03/20 09:50「メルカリ」から market という単語が生まれた
- 先日スマホを新調した。何か役に立つアプリはないかと電脳空間をうろうろしていたら、最近よく耳にする「メルカリ」が目にとまった。といっても、このフリマアプリを利用しようと思ったのではない。おもしろい響きの名前だが、何か意味があるのだろうか。そんな疑問が浮かんだのである。答えはすぐに見つかった。「ウィキペディア」に、次のような記述があった。- 「メルカリ」の名称は、ラテン語で「商いする」との意味の「mercar [続きを読む]
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- 2018/03/15 09:30parting shot 「捨てぜりふ」 (トランプ、ティラーソン長官をクビに)
- アメリカのティラーソン国務長官がクビになったというニュースには驚いたが、これを報じるBBC
の記事で parting shot という表現が使われていた。「捨て台詞」というような意味である。BBCのトッ プページで、この記事のタイトルの下にある見出し的な文で使われていた。- Sacked Tillerson issues Ru ssia warningThe secretary of state fired by Mr Trump warns of Russia's "troubling behavior" as a parting shot.突 然の解任、そ [続きを読む]
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- 2018/02/28 09:15ace in the hole 「最後の切り札」「奥の手」
- このところ wall の出てくる表現を続けて取り上げていて、前回は hole in the wall について書いたが、尻取りの逆のような形で ace in the hole を連想したので触れてみたい。「ここぞという時まで取っておく切り札、決め手」という意味である。日本語の「奥の手」に似ているが、英語では”切り札”を「奥」ならぬ「穴」に置いておくのかと思うとおもしろい。そう考えたが、由来を見ると、ace はもちろんのこと hole もトランプ( [続きを読む]
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- 2018/02/21 19:50hole in the wall (続き)〜パスタのチェーン店とシェイクスピア
- 前回 hole in the wall 「パッとしない場末の店」を取りあげた際、この表現を知るきっかけとなったのは、パスタの某チェーン店の名前と何か関係があるのだろうかと思ったことだと書いた。しかし、店としてふさわしくないような意味を持つ言葉をわざわざ店名に選ぶとは考えにくい。そこでこのチェーン店のホームページを見たら、店名の由来についてこんな記述があった。- 実はこれはシェイクスピアの戯曲「真夏の夜の夢」に出てくる [続きを読む]
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- 2018/02/19 21:45hole in the wall 「場末のパッとしない店」
- このところ wall を使った表現について書いている流れでもうひとつ。hole in the wall は、「へんぴな所にある狭苦しい家・薄汚い店」を指す言葉である。何かの英文を読んでいて出てきたので覚えたのではない。きっかけとなったのは、この英語を直訳したような名前のスパゲッティのチェーン店である。ある時ふと、「おもしろい店名だが何か意味があるだろうか、もしかしたら英語の表現だろうか」と疑問を持ち、調べてみて探り当て [続きを読む]
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- 2018/02/13 09:10a fly on the wall 「誰にも気づかれずにこっそり見聞きしている」
- 先日取り上げた fly 「計画がうまくいく」からの連想で、同じ単語が使われた (to be a) fly on the wall という表現を紹介したい。「壁のハエ」とは何のことかと思うが、「他人に気づかれない形で観察している・聞き耳を立てている人」という意味である。英語圏の辞書から引用しよう。- a person who watches others without being noticedI'd love to be a fly on the wall when he tells her the news.(OALD)- to be able to wat [続きを読む]
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- 2018/02/01 08:25flop 「(作品や案が)うまくいかない」「コケる」「ポシャる」
- 前回、「うまくいく」を指す fly について書いたが、似たような響きで反対の意味の単語があったはず、と思い当たった。しかしトシのせいか出てこないので調べてみて、flop であることを再確認した。辞書から引用しよう。動詞のほか、名詞としても使える。- (計画・映画・本などが)完全に失敗する(fail badly)(通例 a〜)完全な失敗作(failure) (ジーニアス英和辞典)- informal if something such as a product, play, or idea fl [続きを読む]
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- 2018/01/30 08:35fly 「(案や計画が)うまくいく」「ものになる」 (映画「ブレードランナー」)
- 引き続き、映画「ブレードランナー」メイキング本の最新改訂版で目にとまった英語表現を紹介したい。fly には「(計画などが)成功する」「(考えなどが)受け入れられる」という意味があり、主演のハリソン・フォードが著者とのインタビューで使っていた。引用する前に背景を説明しよう。先日も触れたように(→ ride off into the sunset 「ハッピーエンド」)、この映画は sneak preview (作品の詳細を明かさずに見てもらう試 [続きを読む]
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- 2018/01/23 19:35make (romantic) overtures 「口説く」「言い寄る」 (映画「ブレードランナー」)
- 引き続き、SF映画の金字塔「ブレードランナー」のメイキング本から拾った表現を取り上げる。私は overture という単語をまず「序曲」の意味で覚え、複数形で「打診、申し入れ」となることを後に知ったが、今回読んだ本には、後者を男女関係に使った場合の実例が出てきた。ヒロインを演じたショーン・ヤング Sean Young のプロフィールを紹介しているくだりである。ヤングは女優歴のごく初めにこの映画に出て注目を集め、その後は順 [続きを読む]
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- 2018/01/12 10:30tell-all, exposé 「すっぱ抜き」「暴露もの」 (トランプの暴露本が話題に)
- トランプ政権の暴露本が出版され、あっという間に売り切れとなって話題を呼んだ。これについて報じる英文記事を読んでいて目につくのが tell-all や exposé という単語だ。どちらも「暴露(記事・本)」「すっぱ抜き」を指す。前者は今回初めて知ったが、「内幕を全部ぶちまけてしまおう」ということだろうか、面白い単語である。後者は expose と関係があるのは一目瞭然だが、アクサン記号がついているようにフランス語由来で、 [続きを読む]
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- 2018/01/08 09:152017年の英単語大賞は「フェイクニュース」 (fake news)
- 英語に関係する団体がそれぞれ選んでいる "Word of the Year" は毎年この時期の私の愉しみだが、注目度の高い「アメリカ英語学会」の選定が先日発表された。大賞になったのは、やはりというべきか、fake news だった。「今年の英単語」を選んでいる団体のうち、英米の辞書出版社はそれぞれのサイトでの検索数を参考にしているのが多いのに対し、この The American Dialect Society は会員が検討して投票で決めるのが特徴だ。今回は [続きを読む]
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- 2017/12/28 09:30woulda, coulda, shoulda 「今さらウダウダ、グダグダ言っても…」
- 前回は to が発音の影響で a になってしまうことについて英語の歌を例にして書いたが、連想で woulda, coulda, shoulda という表現を取り上げたい。3つの助動詞のあとの -a は have が変化したもので、would have などのいわば短縮形だ。目にした範囲では、見出し語として掲げているのはオンライン辞書しかなかった。「ああすべきだったのに」「こうだったらよかったのに」などと、今さらグチグチ言っても始まらない、どうにもな [続きを読む]
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- 2017/12/26 09:20「カモナ マイハウス」〜不定冠詞ではない a
- 若い時から音楽好きだったとはいえトシには逆らえず、今の若年層のヒット曲や歌手・グループに不案内なのは仕方がない。Hey!Say!Jump も名前を聞いたことがあるだけだが、今年の紅白歌合戦で歌う曲が Come On A My House と書かれているのが目にとまった。ジャズやスタンダードナンバーが好きな私がすぐに連想したのが、アメリカの歌手ローズマリー・クルーニー(映画俳優ジョージ・クルーニーの叔母)がヒットさせた「家へおいで [続きを読む]
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- 2017/12/24 13:05mistletoe 「(クリスマスで使われる)ヤドリギ」
- 毎年この時期にはクリスマスがらみの話を書くようにしているので短くひとつ。典型的な日本人学習者である私は目で覚えた英単語が多いが、mistletoe はその昔、高校生の時にFEN(現AFN)で耳にして知った。英語なのに一瞬「味噌トウ」っていったい何だ、と思ってしまった。こう聞き取ったのは後述する/l/の発音の特徴のためだが、miso- と綴ると思い込んだので、スペリングを想像して辞書を引いても正体にたどりつけるわけがない。F [続きを読む]
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- 2017/12/14 09:15感動的だったサーロー節子さんのノーベル平和賞授賞式演説
- 師走を迎えて公私ともに慌ただしく英語学習も疎かになっているが、先日行われたノーベル平和賞授賞式についての記事を読み、被爆者の Setsuko Thurlow さんが行った演説に興味を抱いた。そしてウェブの動画を視聴したところ、思わず涙腺が緩んでしまった。平易な英語を使ってゆっくり話しているので、理解するのは難しくないだろう。というより白状すると、このスピーチを素材に単語や表現について何か書けるだろうかと思いつつ聴 [続きを読む]
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- 2017/11/21 08:50「わずか20秒の列車早発で謝罪」の海外報道に思うこと
- 先週ある鉄道会社が、定刻より20秒早く列車が発車したことを謝罪したところ、外国メディアが驚きをもって伝え、それを日本のメディアが「海外で話題になっている」と”逆輸入”して報じた。関連する記事をいくつか読んだが、見過ごされたのではと感じたことがあるので、少し書いてみたい。私がこの話を知ったのはBBCのサイトだった。記事が most read のランキングに入っているのが目にとまったからだ(確か5位だった)。よほどの [続きを読む]
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- 2017/11/07 09:40liberal 「気前のいい」「ケチケチしない」「たくさんの」 (カズオ・イシグロ 「日の名残り」)
- 先日に続いて、ノーベル賞作家カズオ・イシグロの代表作 The Remains of the Day で実例を拾った単語について書く。liberal は政治や主義主張についてよく使われるが、人や物を形容して「惜しみない」といった意味もある。「日の名残り」では、主人公が仕える貴族の邸宅で行われた非公式の国際会議が終わった場面に出てくる。貴族が皆に感謝するスピーチを行うのだが、参加者たちの雑談がしだいにうるさくなってくる。- ...soon al [続きを読む]
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- 2017/11/02 09:35leapfrog 「馬跳び」「(軍隊の)交互前進」 (ハインライン「宇宙の戦士」)
- 前回取り上げた frogmarch 「後ろ手に縛って連行する」からの連想で、leapfrog という単語について書いてみたい。字面通りだと「かえる跳び」という感じだが、そう考えていいだろうか。私がこの単語を知ったのは、アメリカのSF作家ロバート・A・ハインラインが書いた「宇宙の戦士」という小説だった。宇宙を舞台にした少年兵の成長物語だが、東西冷戦のさなかに書かれたという時代背景もあってか、「力の礼賛」とも取れる内容が論 [続きを読む]
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- 2017/10/30 09:20frogmarch 「後ろ手に縛って引っ立てる」 (カズオ・イシグロ 「日の名残り」)
- ノーベル賞授賞をきっかけに再読した日系イギリス人作家カズオ・イシグロの代表作 The Remains of the Day (邦題「日の名残り」)から今回も単語を拾ってみたい。frogmarch という言葉が出てきたが、人間について使われていて、「カエルの行進」ではありえない。主人公である執事が、同業者から聞いた話を綴っている場面である。- And I recall also some years ago, Mr Rayne, who travelled to America as valet to Sir Reginal [続きを読む]
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