Writer さん プロフィール

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Writerさん: きみの靴の中の砂
ハンドル名Writer さん
ブログタイトルきみの靴の中の砂
ブログURLhttp://air.ap.teacup.com/writer/
サイト紹介文『それは言わない約束』のようなもの。
自由文Writer / Blogger
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供119回 / 365日(平均2.3回/週) - 参加 2009/09/13 08:00

Writer さんのブログ記事

  • 誰か発音してくれないか
  • [画像] 十七歳のアルチュール・ランボーが学業を放棄し、三度目の家出をした頃、つまり1871年頃に書いた韻文を、突然、深夜に読みたいと思ったとき、それが手の届くところにある幸せ。 ああ、韻律の美しい一節を、誰か発音してくれないか。【Claire Trévien / "Ma bohème" by Arthur Rimbaud + translation】  [続きを読む]
  • 8月20日
  • [画像] 父が亡くなったあと、母は世田谷の家を手放し、鎌倉の稲村ヶ崎を見下ろす高台に引っ越してしまった。そこは、祖父が避寒の家として建てた別荘だった。 しばらくはなんの問題もなかったが、やがて母は、とても人恋しがるようになり、ぼくに青山のマンションを整理し、鎌倉に引っ越して一緒に住んでもらえないかと懇願した。いわゆる勤め人ではなかったぼくには、鎌倉に引っ越すのにはなんの障害もなく、むしろ、家賃が節約 [続きを読む]
  • 初めてきみを見たのは...
  • [画像] スイスに似た気候と斑尾山や黒姫山の山容が好きだという人達が夏の野尻湖に集まってくる。 開けているのは西側の湖畔だけで、反対側のYMCAや東洋英和女学院のコテージが並ぶ辺りまで行くと、堀辰雄が『晩夏』で描いた頃の空気がいまだに残る。 1960年代の終わりからの数年間、ぼくの夏は、YMCAの長期サマーキャンプに集約される。 七月後半から始まる男女中高生による短期キャンプから参加するので、夏休み中は、ほとん [続きを読む]
  • 想定外の夏休み
  • [画像] 高校最後の夏休み。 友達は、みんな塾へ行くけど、私は遊び暮らしてやろうという算段でいた。 ところが先週末、祖父の七回忌の法要の席で、お茶の水で美術印刷会社をしている伯父に、なんの気なしに装丁を学びたいと話したら、夏休みの間、見習いにおいでと言う。 さて、そういう夏休みは、まったく想定外だったのだが...。【Electric Light Orchestra / I'm Alive】  [続きを読む]
  • 村の緑地保護組合
  • [画像] その頃のぼくと水口イチ子の音楽趣味は、クラスの中では異端だった。 当時、音楽を好きか嫌いかと言ったら、そりゃあティーンエイジャーなのだから大方の高校一年生なら好きだと答えただろう。さらに邦楽と洋楽のどちらが好きかと問えば、まだまだGSブームの名残で、邦楽好きが多かった時代、洋楽一辺倒はクラスでは精々二割ほど。そんな洋楽好きにしても、本当にそれが好きなのか嫌いなのかよくわからず、時流に乗ったサ [続きを読む]
  • パトリシア
  • [画像] パトリシア・ハイスミスは使い切れない程のお金を残して、最後は独身で生涯を閉じたようだ。テレビは持たず、木工と水彩を趣味として暮らしたという。 ほんの少しの食べ物の他は、お酒と煙草があれば、それ以上の贅沢は望まなかったらしい。欧州を旅して、気に入った場所にしばらく住み着いてしまうのを贅沢と言わなければの話だが。                            *** 散文家の書く短い文 [続きを読む]
  • ピンチョンではそこまで騒げない
  • [画像] トマス・ピンチョンが久し振りに小説『メイソン・アンド・ディクソン(1997)』を上梓したとき、ニューズウィークだったかが、「これ程までの天才文学者がいるアメリカを祝福しよう」のような絶賛記事を書いて大騒ぎしていたのを憶えている。日本のピンチョン研究家の第一人者S氏だって、そこまで大騒ぎはしなかったように思う。まあ、同時代に稲垣足穂や澁澤龍彦を読んでいた日本の読書人としては、ピンチョンではそこまで [続きを読む]
  • なにもかも
  • [画像]八月 ティーン・エイジの休暇中の記憶瞼に古い音楽堂の風景が映るなつかしさの欠片は今も 日比谷の夏の公園の木立の陰から見つかるかも知れない『昨日読んだ 古い本も 青いカビの生えた本』BBの歌った あの曲名だけがなぜか なぜか思い出せない【石田長生 × 忌野清志郎 × 三宅伸治 × 藤井裕 / The Weight】  [続きを読む]
  • 正午に湯島聖堂で
  • [画像] いつもどおりの潮騒が聞こえて、海に永遠の夏が覆い被さっているような午后のことだ。「お互い、覚えていたら、来週の今日、東京でまた会いませんか」 防波堤の焼けたコンクリートの陰で、知り合って間もないきみが言う。「うん」と答えはしたものの、すぐに大変な賭けをしたことに気付く。「来週の正午に湯島聖堂ではどうですか。本堂の中は涼しくて、待ち合わせにはいいかも」と彼女は小さく笑うのだったが...。【ONCEM [続きを読む]
  • 午睡の夢 ----- カリブの風
  • [画像] 午睡の夢。 大汗をかいて目覚める。 傍らの時計を見れば、費やした時間は小一時間ほど。短いながら、不思議な次元を生きたようだ。 夢の中できみに会った。 ただ、きみの肌の色はぼくと違って、スペインとインディオのハーフ・ブラッドらしいカフェ・オ・レ色。 きみは、その豊満な褐色の太ももを作業台代わりにして巻いた ----- まだ、きみの体温の残る ----- 巻き立てのハバナ葉の葉巻をぼくに手渡しながら、「お昼 [続きを読む]
  • 写真はがき
  • [画像] 赤く焼けた肌がパラソルの色と良くマッチした観光客向けの写真はがきをきみが送ってくれたのは、タイのカオラックのビーチからだったろうか、それともジャマイカのネグリルの海辺の街からだったろうか。「次のフライトの交代が来るまでの合間に遊ぶから、知らない人が思うほどリラックスできないのよ」なんて言い訳のような走り書きがしてあったっけ。【MonaLisa Twins / You’re Going to Lose That Girl】  [続きを読む]
  • すももの花の咲く頃
  • [画像] 春もまだ浅い頃、イチ子さんと旧甲州街道最大の難所、笹子峠を歩いて越えた時のことだ。 眼下に広がる三角州の痕を左右に見ながら、国中へと下る道すがら、イチ子さんが、「あっ、山桜かしら?」と言って指差したのが、ちょうど色も大きさもよく似た、野生のすももの花盛りだった。 そして夏 ----- すももが旬を迎えている。 夕方、西日を浴びながら冷やした実をかじると、早春の、あの甲斐路の山旅を思い出すのです。E [続きを読む]
  • この夏のお気に入り
  • [画像] 手縫いのサックドレス ----- これ、この夏のお気に入り。生地は薄い黄檗色(きはだいろ) ----- 都内方々の生地屋さんを探し回ってやっと見つけた。 足もとは、藍白(あいじろ)のミュール ----- これは、この間、アメリカのプレイボーイ・マガジンに英文の原稿が採用されたという、大好きなアイツからの誕生日プレゼント。The Buffalo Springfield / On The Way Home  [続きを読む]
  • 夏のスタジアム
  • [画像] 遅刻した。「あれほど今日は府中球場だって言ったのに、一本杉へ行こうとしてたでしょ? 知ってるんだから...」 確かにイチ子さんは怒っていた。「府中は次の試合だと思い込んでた。ひとつ前の予定と勘違いしてた」 謝る他はない。 スコア・ボールドを見ると、我がチームは毎回加点していて、とりあえずひと安心。「こないだ言ってた、いいピッチャーって、今投げてるあの子?」とイチ子さんがマウンドを指差す。「そ [続きを読む]
  • なぜならば...
  • [画像] デイヴ・クラーク・ファイヴのアメリカ進出は、わずかな差ではあるが、ビートルズよりも早く、当初はビートルズの人気をしのいだ。確かに、映画『ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!』以前の、地方港湾都市リバプール出身のビートルズの田舎っぽさと比べれば、大都会ロンドン出身のデイヴ・クラーク・ファイヴの垢抜けたカッコ良さは理解できよう。 この曲『ビコーズ』の歌詞は極めて他愛ない。しかし、秀麗なメロデ [続きを読む]
  • 忘れた頃、突然
  • [画像]【Portrait of Mademoiselle Marie Fantin-Latour】部分 いまだ細々と読み続けている『吉田健一著作集』の第二十七巻に『昔話』という昭和五十一年十二月に青土社から出版された単行本を底本とした作品が入っている。青土社というからには、もちろん『ユリイカ』に連載されたものである。 その後記で著者本人が書いている。『かういふ題を付ければ昔のことは幾らでもあるから材料に困ることはないと考えて初めのうちはその [続きを読む]
  • エフカイ・ビーチは、西の風が7マイル
  • [画像] ノースショアのエフカイ・ビーチパークの外れにある一軒のビーチハウス。 客のほとんどが地元のサーファーなので、ラジオが伝える波情報に客数は左右される。                                 * モータープールに停めたオンボロのコンバーチブルのカーラジオから聞こえるビーチFM。「さーてみんな、今のエフカイ・ビーチは、西の風が7マイルだ。8〜9フィートの波が [続きを読む]
  • その先の200メートル
  • [画像] 夏の岬は、西南の風が吹く。 簡易舗装こそされてはいるものの、その先の緩い上り坂の道幅は狭く、父のサマーハウスの前庭へは小さな車しか乗り入れられなかった。止むなく、200メートル手前・坂下の大清水さんの蜜柑畑の片隅を父が駐車場として借り、ぼくの古いトライアンフもまたそこに止め置かれることとなった。 その夏、あるきっかけから頻繁に遊びに来るようになった近所に住む女子高生・水口イチ子とその小さな弟 [続きを読む]
  • 1977年8月16日
  • [画像] ラスベガスで不本意な散財をした果ての帰り道、15号線をロスへ向け、レンタカーをぶっ飛ばしていた夕方、カーラジオからニュースが聞こえていた。 エルヴィスが亡くなったという。 だからそれは1977年8月16日、バーストウの街を過ぎてヴィクターヴィルまでの間、モハビ・フリーウェイを南下していたときのことであった。Elvis Presley / Shoppin' Around  [続きを読む]