はんきち さん プロフィール

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はんきちさん: 新・はんきちのつぶやき
ハンドル名はんきち さん
ブログタイトル新・はんきちのつぶやき
ブログURLhttps://hankichi.exblog.jp/
サイト紹介文音楽、小説、そして酒を愛する方々との空間です
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供325回 / 365日(平均6.2回/週) - 参加 2010/06/27 20:56

はんきち さんのブログ記事

  • 逆境を跳ね除ける料理
  • 美味しいもの食べた?と尋ねられると英国の場合やはり困る。ドライジンはどれもが美味かったよと言うと怪訝な顔をされるから、一連の食事を振り返って一つを見つけた。「マッシュルーム炒めとトーストのホワイトクリーム掛け」だ。ちょっとじめじめした英国の森林の木の下に生えたキノコは、その瑞々しさが最高だ。軽めに炒めたその柔らかさは、薄くスライスしてパリパリに焼いた小さなトーストと対照的な食感になる。これらの間を [続きを読む]
  • 屋根裏部屋の生活
  • 屋根裏部屋といえば、ヨーロッパの貧乏作家や貧乏画家がなけなしの金をはたいて漸く暮らし、そしてそのなかから驚くような作品が生まれるところだと相場が決まっていた。そんな部屋を憧れていたからかもしれない。僕に充てがわれたのはまさにそういうところ。嬉しいようなちょっと情けないような複雑な気持ちに包まれる。古いものを大切にする人々の工夫。そのことを身を以て体験した。 [続きを読む]
  • 静謐という言葉は自然のなかにもあった
  • ターナーはこんな風景を心の底の記憶に留めながら、それとは対照的な都会の風景、街角、蒸気機関車、港の日の入りを描いていたのだと思った。車窓から眺める英国の田園風景は、どこまでもどこまでも何事もなく広がっている。羊や牛、馬が草原にいても、それは全く静かで、首を垂れているものは音もなく食んでいる。静謐という言葉は自然のなかにもあるのだと分かった。 [続きを読む]
  • まなこ見開き術に掛かる
  • 西洋の島国は東洋の島国と共通のところがある、と思っているのは我々だけかと思っていたら、「同じ島国だから仲良くしようぜ、大陸のやつらとは違うからさ!」と声を掛けられて、嬉しさと意外な気持ちが入り混じりながら、その相手を見上げた。その男は、そういうような同意を求めたり強調しようとするときに、カッ、と眼を開いてじっとこちらを見つめる。人間のまなこはこんなにも大きく開けるのか、というほどで、「眼見開き訓練 [続きを読む]
  • 『日の名残り』の人々と対峙する
  • その次の打ち合わせに出てきたのは、映画『日の名残り』の執事長役のアンソニー・ホプキンスとダーリントン卿役のジェームス・フォックス、に似た容姿と振る舞いをする人たちだった。専門的な話をするようでいて、しかし何を考えているのか雲を掴むようで何も分からない。心のなかが読めない。深い哲学があるのか、それとも素朴だけの人なのか。これでは、ミス・ケントン役のエマ・トンプソンに愛想をつかれるのも仕方がない。市井 [続きを読む]
  • 映画俳優似の人々に気持ちが乱れる
  • 三人を目の前にしての打ち合わせは気持ちを集中させるのに苦慮した。時差ボケがあったからではない。次世代技術開発がテーマだったのに、どうしてもその相手の顔つきと喋り方が気になって、上の空になりがちになったのだ。それぞれは映画俳優にそっくりだった。マネジメントディレクターは、ヒュー・グラントに似ていて、喋りかたと仕草、ウィットの入れ方までがそのもの。カッコいいなあと思い、『ノッティングヒルの恋人』とかの [続きを読む]
  • 女の悲哀が為せるもの
  • 出張の機内で映画『女は二度決断する』(原題: Aus dem Nichts)を観た。日本で観逃していたから有り難かった。トルコからの移民の男性と愛し合い結婚したドイツ女性(ダイアン・クルーガー演じる)は、息子も授かり幸せな生活を送っていた。そんななか夫と息子は爆弾テロ事件に巻き込まれて即死する。実行犯はネオナチの女とわかり、やがて逮捕されて裁判となる。犯行は確実なのに、有効な目撃証言がなく、また犯人とその一味はギ [続きを読む]
  • うつくしむ心・・・「花へんろ」のもとにあるもの
  • 昨晩はNHK・BS のスペシャルドラマ『花へんろ特別編 春子の人形』を観た。早坂暁脚本。?https://www.nhk.or.jp/dsp/hanahenrosp/番宣によれば次のようにある。「早坂暁さんが“これだけは未来のために書き残したい”と考えたのは、13歳で亡くなった妹のことだった。早坂さんが自らの体験をもとに作った、遺作ともいうべきドラマ。」日本人は古来、“うつくしむ”ということを大切にしてきた。無くした(亡くした)ものに思いを馳 [続きを読む]
  • 真夏の夜はグリーグのヴァイオリンソナタ
  • ロシアの若い女性ヴァイオリニスト、アレクサンドラ ・サム(Alexandra Soumm)という人がグリーグのヴァイオリンソナタを全曲弾いた音盤を手に入れて、真夏の夜に聴き入った。第3番はよく聴くことがあったけれど、1番2番は知らなかったから、それも良い機会だった。第1番はノルウェーの海を臨んだ丘の上から吹きそよぐ風を受けているような作品。とても純朴でしかも第2楽章は民族舞踊の趣きがあり爽快だ。第3楽章もカッコ良い。第 [続きを読む]
  • 吉田健一の命日から迷宮入りに陥った
  • 今日が吉田健一の命日だということを、調べ物をしていて初めて知った。1977年のことだから、僕がまだ高校生のときになる。三年生だった僕は、運動部の現役最後として夏合宿やら練習に明け暮れ、受験勉強もその合間にしたりして(とは言え殆ど身に入らずに)、暑い毎日を過ごしていた。吉田さんという作家・文芸評論家の存在を全く知らずにいた、いわば愚鈍である。今から思えば、もっと早くから彼の文学に親しみその真髄か、あるい [続きを読む]
  • 個々人が持っている薄情さを指摘されるような小説
  • 神主の仕事はあるものの、夏から秋は嬬恋高原でキャベツ収穫のアルバイトに身を粉にする。やりたいからではなく仕方がないからという惰性の人生。時には女を求めるものの深追いはしない。相手の領域には入り込まない。しかか自分が傷つけられそうになると極端な防衛に走る。客観的に自分を見つめられない。そんな遣る瀬無さと自己中心さが満載の男の日々を描いた作品だった。『薄情』(絲山秋子、河出書房新社)。2016年間の谷崎潤 [続きを読む]
  • 語り手の復活・・・『真夜中の子供』
  • えっ、そんなことが有るのか?というような境遇。ふつうにいつも歩き回っている都街角の片隅で起きている出来事。触れたこともなく卑近な例も知らない世界なのに、そこに引き込まれていく。『真夜中の子供』(辻仁成、河出書房新社)は、博多中洲に生まれた無国籍児の物語だった。可哀想な話だと思いながら、しかしその先を知りたいともどかしくなる。狭い街区のなかで逞しく成長していくそのさまに拍手を送りたくなる。ついには博 [続きを読む]
  • 数学記号を駆使してでも続けるべきシリーズ
  • この本いつか読んだことがあるよなあ、と思いながら手に取ってページを繰るが何の記憶もない。仕方なく買い求めた。読んでみたらこれは初めて読むもので、少し記憶を巡らせたら、似て非なるものと分かった。『にょにょにょっ記』(穂村弘、フジモトマサル、文春文庫)。昔読んだのは『にょっ記』だった。ということは『にょにょっ記』という題名のものが有るのかと勘ぐって調べてみたら案の定、本当にあった。しかし紛らわしいこと [続きを読む]
  • 花火に覚醒した長い夜
  • 絢爛豪華なる佇まいと腹の底が共鳴する大音響の一時間半に、精神が覚醒し続けたからかもしれない。またその夜に何気なく開いた冊子に、以前世話になった人の記事が出ていてそれが意外な迄に温厚かつ殊勝に読めたからかもしれない。疲れた脚を休めたいと思って早めに床についたが、まんじりともできぬまま様々なことが頭を駆け抜け、始末に負えなかった。この先幾度この花火を見るだろうか。人生の岐路に際して自分の選択は正しかっ [続きを読む]
  • おかえりなさい・・・『一億円のさようなら』(白石一文)
  • 久しぶりに切れ味の良い白石節が炸裂する作品だった。『一瞬の光』を読んだ衝撃を懐かしく思い出した。“自らを信じられなくなった人間は、その事実に目をつぶりたくて、信頼すべき相手を裏切者と見做すようになる。忠言を拒否するだけでなく、その忠言者のせいで何もかもがうまく運ばないのだと責任転嫁を図る。そして、ついには身の内にある謙虚さを滅ぼし、どす黒い猜疑心だけを養うようになるのだ。”(第一部より)“どんな理 [続きを読む]
  • 炎のごとくのフランス映画と昭和の満喫
  • 昼前から観た映画は眩暈のようで、フランスとドイツが舞台なのに、そこはまるで夢のなかの場所のよう。観終えてもまだその女の美しく官能的でしかし圧倒的な我儘さに、登場人物でもないのに翻弄されている気持ちだ。長く船に乗り続けた人の船酔いのようで、しかしこれが恋愛というものがもたらす余韻というものなのだと気づくのに間も無かった。『突然炎のごとく』(原題: Jules et Jim ‥‥全然違うやん)■監督: フランソワ・ト [続きを読む]
  • ごろごろ野菜のオーブン焼きで暑さに処す
  • あまりの暑さに、食事も熱いものを避けたくなる。素麺が好きなので其ればかり欲していたが、それでは栄養が偏る。というわけで、「ごろごろ野菜のオーブン焼き」が登場。赤、青ピーマン、とうもろこし、ミニトマト、茄子、かぼちゃ、じゃがいも。ザックリと刻んでオリーブオイルを少々たらし、あとはオーブンで焼くだけ。肉も焼いて野菜たちと交互に食べて行くだけで活力がみなぎってくる。暑さ対策のオーブン焼き。心身に沁みる優 [続きを読む]
  • 『胡蝶、カリフォルニアに舞う』の時間
  • 「文學界」2018年7月号を漸く読み進めている。村上春樹の三つの短編は、村上節が溢れ、シニカルとウイットが混在して成る程と思った。そんななか面白かったのは、多和田葉子の『胡蝶、カリフォルニアに舞う』。海外へ学びに行った、或いは行こうとする者たちが必ず直面する極度の緊張とそれが生み出す眩暈が描かれている。浦島太郎的な展開でもあるのだけれど、お伽話と違うのは、時間は未来になっていたのではなく、進まずに止ま [続きを読む]
  • 日本の名匠が出した初めてのバッハアルバム
  • 名高い弾き手でもバッハアルバムを出すのは初めて、ということがあるのを知ったのはルドルフ・ブッフビンダーの音盤に出くわしたからだったのだけれど、実はこちらも同じだった。小山実稚恵による『ゴルトベルク変奏曲』(ソニーミュージック SICC19032)。収録: 2017.2.7-10, 於 軽井沢大賀ホール。彼女は第30変奏のことをライナーノーツで次のように書いている。“第1変奏から始まったバッハの歩みが、第29変奏でクライマックス [続きを読む]
  • ライオンハート(Lion Heart)という名のドイツジン
  • 最近ドイツ人からドイツジンを頂くことが続いたけれど、こちらは日本のコンビニエンスストアで売っているれっきとした商品だったから、おお、ドイツジンよ、とうとうここまで来たのね、と優しく眼差しを向けて手を差し伸べた。Lion Heartという名のジンだ。ジンフィズが合います、美味いですよ、と作り方まで裏のラベルに書いてあるから嬉しい。味は少し淡白だけれど、様々な香草のかおりがして、ロンドンを憧れつつそれに負けまい [続きを読む]
  • 音楽が記憶を呼び覚ました物語
  • 様々な働き掛けでも絵画によっても、また医療によってでも失った記憶を呼び覚ませなかった。しかし音楽がそれをもたらした物語であることをようやく知った。題名は有名でも観たことがなかった映画『銀座の恋の物語』(日活、1962)。先週のテレビ放映。それはしっかりとした楽曲、楽器によってではなく、オモチャのピアノで覚束なくあの有名な主題歌の旋律を弾きながら、音が出ないキーが絡んだ部分を繰り返すことで、浅丘ルリ子は [続きを読む]
  • ひょうたんが屋号の昭和の居酒屋にたゆたう
  • 昭和のことを懐かしむことが多くなった。何かといえばあの時代の事柄と比較して物を言ったり考えたりする。食い飲みすることについてだってそうだ。そんななか、東京駅の目と鼻の先にある老舗居酒屋を訪れ、その素晴らしき昭和感に度肝を抜かれることになる。まさに小津の映画に出てくるようなお店だったからだ。屋号のマークまで、ひょうたんである。何から何まで深く安堵させられ身を任せられてよい気持ちにさせる雰囲気に、時の [続きを読む]
  • 「焼き肉ドラゴン」の大切な思い出
  • 昭和44〜46年といえば、僕は小学校の高学年。そのころが題材の映画を観ていた。観たあと、いまも何故かしゅん、とした気持ちが心身のなかにある。大切な大切な思い出を暫く忘れていた、そしてそれは途方もなく大切だった、そんな想い。『焼肉ドラゴン』。大阪の空港近くの国有地に、肩を触れ合いながら建てられた住宅兼商売の家屋群。このなかに、焼肉屋「ドラゴン」があった。主人と妻はそれぞれが、戦後の喧騒や朝鮮半島での出来 [続きを読む]
  • 澄み通って美しかった世界を思い出した
  • 大切にしていた砂糖菓子を軽く軽く齧ってみたらいとも簡単に崩れてしまって、そのことに驚いて急に悲しくなる、でも母親からいいのよ美味しいお菓子ほど壊れやすいのだから、と優しく言われて嬉しくなる。そんな感じのどこまでも爽やかな小説だった。友人から教えてもらった『あこがれ』(川上未映子、新潮文庫)。忘れていた大切な大切な感覚が蘇ってきた感じがする。吐息もなにもかもが清く澄み通っている。 [続きを読む]
  • 思想家の遺言を前に立つ瀬が
  • 読後、どうにかしないといけないのだ、という焦燥と不安に駆られて、しかし僕はまた(仕事でもなければ)深い午睡についてしまうのではないか、という予感に苛まれた。『保守の遺言』(西部邁、平凡社新書)。副題に、“JAP.COM衰滅の状況”とつく。著者が自死する直前の絶筆の書だという。僕のような非政治的人間にとって、西部さんのテレビでの論説は常に敬遠してきた。しかしどうしても気になってこの論評を読んでしまった。客 [続きを読む]