葉菜 さん プロフィール

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葉菜さん: タイトルのないミステリー
ハンドル名葉菜 さん
ブログタイトルタイトルのないミステリー
ブログURLhttps://ameblo.jp/mio-r
サイト紹介文長編推理小説です。 犯人を想像しながらゆっくり読んで頂ければ嬉しいです。
自由文人間関係が複雑に絡み合って誰が犯人か分からない・・正直作者もまだ決めていない???
お楽しみ頂ければ幸いです。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供191回 / 365日(平均3.7回/週) - 参加 2010/07/14 18:49

葉菜 さんのブログ記事

  • 壱百拾(百十)
  •  実家はこの三年の間に苦しい経営状態から何とか脱出する事が出来ていた。寛子の嫁ぎ先からの援助と二年前に大学を卒業して家業を手伝うようになった弟の晴治(せいじ)が呉服を使って現代的なアートの企画をしたり、モダンな小物類の制作といった色んなアイデアを出したのが功を奏して売り上げが上がり始めたのだ。昔ながらの呉服を重んじていた父は少し不満気味ではあったが背に腹は代えられないというのもあったのであろう、 [続きを読む]
  • 壱百玖(百九)
  • 「そうでしたか、それは大変申し訳ない事を致しました。てっきりあなたもご存じの事かと思いましたので、それならお互いにとって悪い話ではないと思い縁談を進めて貰いました。僕には世間体や親の手前結婚しなくてはいけない事情があり、あなたは家の為に嫁がなければいけない事情があるからと」家がそんなに大変だなどとは全く知らなかった。両親は寛子に何も言わなかった。ましてそんな目論見があって結婚を勧めていたなんて。 [続きを読む]
  • 壱百捌(百八)
  •      二. 「花音、学校まで送っていくわね」「大丈夫、ひとりで行けるよ。お母さん」「駄目駄目、何があるか分からないのだから」寛子がそう言うと娘の花音は小さく笑う。花音は今、小学校五年生。寛子にとってかけがえのない娘だ。夫の宜之は三歳年下であるがとても優しくて頼り甲斐がある。幼馴染であるが子供の時はまさか宜之と結婚するとは夢にも思っていなかった。 寛子にとって今が生涯で一番幸せな時間だ。思えば幸 [続きを読む]
  • 壱百七(百七)
  • 「医療刑務所?」「ええ、ちょっと別件で行く用事があって。そしたらそこに居たの」「あなた三芳さんの顔知っていたの?」「そりゃ、あの頃、何度か見に行っていたもの。あなたの話聞いて増々興味も沸いていたし、どんな人間なのかと思って」「そうだったんだ」「それでね、自分から志願してある患者さんの担当になっていたの」「ある患者さんって?医療刑務所って、罪を犯した人が入るところでしょう」「そうよ。えっと、覚えて [続きを読む]
  • 壱百陸(百六)
  • 「サイコパス?」受話器の向こうで桃香が聞き返す。「それって精神障害って事?」「あ、うーん、まだ、そうとは言い切れないんだけど。ちょっと普通とは違う感じを受けた」「普通と違うって?」「何て言うのかな、人との共感能力がないみたいな感じを受けたし、特に変に思ったのが彼女には恐怖心が存在していないって事かな」「恐怖心がない?それって怖い物がないって事?」「そう、自分が殺される羽目に落ちても恐怖心が沸かな [続きを読む]
  • 壱百伍(百五)
  • 鳴海の問いに梗子は不敵とも思える笑みを浮かべる。「殺人者ってどういう?」「どういう?」「ほら、自分を殺そうとしている人か、逃げている連続殺人者に出会うとかでは対処の仕方が変わるでしょう」「え、あ、ああ、そうね」意気込んで質問したのに初っ端から梗子に呑まれてしまっているようだ。「じゃ、その両方で」「えっと、そりゃ私を殺そうとしている人に会ったら逃げると思うんですけど…」そこで梗子は一度言葉を止める [続きを読む]
  • 壱百肆(百四)
  • 「それで殺してしまうかもというのはそのお友達の事ですか?」「友達?ああ、まあ、そうね。だって酷いと思いません?横から入って何もかも奪って、考えてみたらどうして私がこんな目に合わなければいけないのかしらって、好きでもない男の子を産んで、一人で苦労して、これと言うのも元を辿れば全部あの子のせいですもの。そうですよね、先生」ここは肯定すべきが否定すべきか、鳴海は少し考える。安易に肯定してもそれはそれで [続きを読む]
  • 壱百参(百三)
  • 「思うままになるような人生なんてそうそうないと思いますよ。もう、必死です。うちはそれほどお金持ちじゃないので何年も頑張れるほどの余裕もなかったので」「でも頑張ってもどうにもならない人沢山いますよ、世の中には。そういう人から見れば先生は勝ち組に見えます」「頑張ってもどうにもならない事があったのですか?」鳴海の言葉に梗子はじっと顔を見返したが口の端でニッと笑って首を横に振った。「いいえ、モノの例えで [続きを読む]
  • 壱百弐(百二)
  • 「何か可笑しいですか?」「あ、いえ。でも心の闇って誰でも抱えているんじゃないですか?」「どうしてそう思うんです?」「何となくです。人間って見えているところが全てってわけじゃないでしょう。誰にだって裏と表、明と暗があると思うんですよ。それに上手く折り合いを付けながら生きている様な気がします」「あなたもそうですか?」「さあ、どうでしょう。でも、人生ってなかなか思う様になりませんね、上手に生きている人 [続きを読む]
  • 壱百壱(百一)
  • 「じゃ、ここだけの話で。あなたにも守秘義務ってあるものね。お医者様なんだし」「それは患者さんの事であって。友達から聞いた話に守秘義務って存在しないんじゃないの」「へえ〜」鳴海の返事に桃香は笑みを浮かべる。「何?」「私達って友達だったんだ」「え、あ、それは…」そう言われると友達ってわけではないような気がする。「言葉の例えよ、でも同級生だったことに間違いはないんだから。そんな事より結局何が聞きたいの [続きを読む]
  • 壱百
  • 「朱音は…幸せだったんですね」鳴海は自分自身に念を押すように朱音の母と同じ言葉を口に出した。高校を卒業して八年、この八年間を朱音が幸せに暮らしていた事がせめてもの救いだと感じる。「ええ、それは本当。朱音は公洋さんと一緒になって本当に幸せだったのよ。公洋さんは朱音をとても大事にしてくれた。本当はね、最初は心配していたの。二人とも若過ぎるから。公洋さんはまだ就職が決まったばかりでこれから社会人になる [続きを読む]
  • 玖拾玖(九十九)
  • 「だけどおまえが心療内科医を選ぶとはな。てっきり外科医目指していると思った。そっちの方が鳴海っぽい」「それどういう意味よ」「なんか、悪いところ見付けたら直ぐに『はい、切りましょう』ってスパスパメス持つ感じ。な、お前もそう思うだろう」そう言って大祐は弟の寛太(かんた)に同意を求めた。「まあ、確かに」弟は直ぐに大祐に同調する。寛太は大学を卒業したものの、結局、就職はせず家業の酒屋を手伝っている。一応 [続きを読む]
  • 玖拾捌(九十八)
  • 「まあ、それはそうかも知れないけど。でも、あの島崎さんがねえ、なんからしくない感じ。最初、卒業してすぐ結婚するって聞いた時、耳を疑ったわよ。と言うより、嘘だと思った。島崎さんってそういう事には無縁みたいな感じに思っていたし」「それは、私もそうだったよ。だから余計、かな。もう、信じられなくて、人間不信になりそうだったもん。でも…まさか、こんな事になるなんて。今日、ここに来るまで、何かの間違いじゃな [続きを読む]
  • 玖拾質(九十七)
  • 鳴海が意外そうな顔をすると桃香は苦笑した。「意外?」「あ、えっと、うん」桃香は確か大会社のお嬢様だったと記憶している。法曹の世界に行くような人種ではないと勝手に思っていた。「正直ね」「あ、ごめん」「良いわよ。みんなそうだから。うちの家族でさえ未だに不思議に思っているくらいだから」そう言えば、桃香は法科へ進んだという話を聞いていた。その時も意外に思ったがじきに忘れてしまっていた。高校時代同じクラス [続きを読む]
  • 玖拾陸(九十六)
  •     第二部     一.  朱音が殺された。鳴海がその事件の事を知ったのは研修医を終えて漸く一人前の医者となったその年の事であった。信じ難いその事件を直ぐには受け入れる事が出来なかった。朱音とは高校を卒業して以来、音信不通となっていた。鳴海には朱音の選んだ道がどうしても納得出来なかったのだ。高校三年間、共に将来の夢を目指して勉強に励んできた。大学受験直前まで朱音は裁判官になるという夢を見続けて [続きを読む]
  • 玖拾伍(九十五)
  •  朝、目覚めた朱音はゆっくりと起き上がると両手を握り締めて自分のお腹めがけて打ち付ける。「あ…ぐっ…」鈍い痛みを全身が感じる。そのまま何度も何度も自分で自分のお腹を打ち付けた。(死んで…死んで、お願い、いなくなって!早く、死んでしまって)まるで呪文のように心の中でその言葉を唱えながら打ち続ける。胃の中から何かが込み上げて慌ててトイレに駆け込む。込み上げてきた物をトイレの中に何度も嘔吐する。でもお [続きを読む]
  • 玖拾肆(九十四)
  •  どのくらいそうしていたのか分からない。朱音は頭からシャワーを浴びたまま浴室に座り込んでいた。洗っても洗っても身体に着いた汚れが取れない。体中が擦り切れる程に擦ってもその汚れは取れない。気持ちが悪い、喉から胃液のようなものが上がってきて何度も何度も吐いた。身を引き裂くような痛みがいつまでも身体の中に残っている。「助けて…誰か…助けて……助けて…」無意識にそう呟き続けていた。心と身体がまるで別々に [続きを読む]
  • 玖拾参(九十三)
  •  公洋がいなくなっても朱音は今まで通り勉強した。お陰で二学期の成績が落ちるという事もなかった事に朱音は一安心した。先生がいなくなった途端、成績が落ちたのでは今迄教えて貰っていた事を台無しにするも同じである。そして今は大学受験に向けてひたすら勉強あるのみだと思う。朱音は国立大の法学部を目指している。裁判官になりたいという思いは今も持続している。それに対して鳴海は医学部を受けるという。政治家になる夢 [続きを読む]
  • 玖拾弐(九十二)
  •  鳴海の兄が席を取ってくれていたので朱音は岳の隣に座る事を余儀なくされた。演奏中、岳が話し掛けてくる事は無かったが時々その視線が朱音に向けられているように感じて朱音は極力岳の方に目をやらず壇上の方に意識を集中した。それでもゾワッとするような得体のしれない感覚をどうしても拭い去る事は出来なかった。 鳴海達は二位に入賞した。朱音は凄いと思ったが鳴海は少し悔しそうだった。やはり優勝を目指していたのだろ [続きを読む]
  • 玖拾壱(九十一)
  • 「そうかしら、なんだかこの学校にそぐわない感じ。公立出の子ってなんだか貧乏臭いんだもの。凰琳って良家の子女が多いって評判なのに一部の残念な人達のせいでイメージが悪くなってしまいそうで私、心配しているの。ね、みんなもそう思うでしょう」桃香が周りの人間に同意を求めると彼女達は小さく笑う。一年の時は誰もこんな事を言ってこなかった。でも時折そういう視線を感じる事はあった。ただいつも鳴海と一緒だったので特 [続きを読む]
  • 玖拾(九十)
  • 「で、何の科目を見て貰っているの?」「何の科目?」「だって、英語とか数学とか色々あるじゃない。でも朱音は英語も数学も得意だもんね」「あ、えっと、特に決まっていない」「決まっていない?どういう事?」「その時、見て貰いたい科目を見て貰っている。先生がそれで良いからって。最初は化学から入った」「へえ〜、そんな便利な先生いるの?」「うん、でも家庭教師ってそういうもんなのかなって思っていたけど違うの?」「 [続きを読む]
  • 捌拾玖(八十九)
  • 「私、家庭教師なんて…それに、」そこまで言って朱音は目の前の男性をちらっと見る。その先の言葉を言うのを躊躇った。高校一年生にもなって男の先生が嫌だなんて言うのは子供っぽい気がしたのと、男性だから嫌、と言うのが悪いような気がした。「でも、成績が思う様に上がらなくて悩んでいたでしょう。勉強のコツを教えて貰うだけでもプラスになるのじゃないの。勿論、あなたが嫌だったら無理にとは言わないけど」「私は…」「 [続きを読む]
  • 捌拾捌(八十八)
  • 「君が朱音ちゃん。鳴海からしょっちゅう話、聞いているよ。初めまして、兄の大祐(だいすけ)です」鳴海の兄は鳴海と同じような人懐こい笑みを浮かべて朱音を見た。笑顔が鳴海とよく似ていて何となく安心した。「は、初めまして」「君も公立中学から凰琳に行ったんだって?」「はい」「頑張ったんだね、俺、鳴海は絶対落ちると思っていたのに受かったりして、ちょっと心配していたんだ。凰琳には公立中学出の子は殆どいないって [続きを読む]
  • 捌拾質(八十七)
  •  クラブに入るのは断念した。何かやりたいとは思っていたがこれがやりたいという決めていたわけでもなく、ただ漠然としたものに過ぎなかったからだ。それより勉強の方が優先だと思った。でも鳴海は中間試験が終わった後、吹奏楽部に入った。鳴海も当然勉強を優先すると思っていたから正直意外だった。聞けば中学から吹奏楽部に所属していたらしい。入学して直ぐに入らなかったのは様子を見ていたらしい。この学校の吹奏楽部は過 [続きを読む]
  • 捌拾陸(八十六)
  •  朱音も鳴海も勉強は嫌いではない。中学までの成績も二人共上位クラスに入っていた。朱音は殆どトップを取っていた。だから授業についていけないという事は無かったが互いに思っていた以上に大変だという事を一学期半ばにして意識し始めていた。学習のペースが速い、他所の高校より課題も多い。想像していたよりずっとレベルが高い。国立大学進学率を誇る学校だけの事はあると改めて感じる。それでもクラブ活動も盛んでテニス部 [続きを読む]