野鶴善明 さん プロフィール

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野鶴善明さん: 風になりたい
ハンドル名野鶴善明 さん
ブログタイトル風になりたい
ブログURLhttp://blog.goo.ne.jp/noduru
サイト紹介文投稿した小説やエッセイです。純文学系の書き手です。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供66回 / 365日(平均1.3回/週) - 参加 2011/02/20 13:38

野鶴善明 さんのブログ記事

  • 八瀬の秋
  •  あの人と過ごした 何気ない日々 長い髪に ふと手をやる仕草が 愛おしかった 旅を終えれば 帰ってくると 約束したが そのあてはないと わかっている 今は独り 渓流に佇み あの人の横顔を 想い出す  秋の瀬音  さみしくて  八瀬の水音(みなおと)  暮れなずむ空に  過ぎ去りし夏を想う 短い日々で よかったのかもしれない 美しいまま ふたりの物語を 飾っておけるから 交わした言葉が 心のなかを  [続きを読む]
  • 白萩の詩
  •  懐かしい人に会いました ほんの偶然 慌ただしい日々の間に ぽっかりと時間の空いた なにげない昼下がり 花の店の前に立ち 色とりどりにならんだ 季節の花を 選んでいた時のことです あの人はふわりと 花の笑顔 そよ風に揺れる 白萩のようでした あの頃 私が愛した 笑顔のままでした  逆さになった砂時計  透きとおる風の向こうから  甦る青春の日々  学び舎の窓際に  ぽつりと佇むあの人  グランドの [続きを読む]
  • 雨乞いのダンス(連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第378話)
  • (今回は寓話です。)激しい旱魃かんばつがある村を襲った。  小さな川はほとんど干上がり、乾燥し過ぎた地面はひび割れ、田畑は枯れ始めた。  これでは作物をまともに収穫できないと危機感を覚えた村人たちは、村の呪術師に相談した。呪術師はしわがれた老人だった。村の祭事を取り仕切り、赤子が生まれれば名付け親になり、病人が出れば悪魔祓いの儀式を行なって村人の病気をなおした。村人からは尊敬を集め、頼りにされていた。 [続きを読む]
  • 風を抱いて
  •  誰かのかわりに ならなくていい なにかのかわりなんて しなくてもいい 僕は僕のままで ありつづければいい そうさ 僕のまま 星のない砂漠に 迷いこみ 夜明けを求めて さすらったのさ ずいぶん歩いた後で 気づいたことがある 僕は 僕でいい 移りゆく景色を おそれないで 変わらぬ想いが 胸に燃えるかぎり 届かない地平線でも ここから始めよう そうさ 一歩ずつ  君がそばにいてくれれば  君さえそばに [続きを読む]
  • 車庫証明制度がないと(連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第374話)
  •  中国では開発業者が十数棟のマンションを一挙に建て、周囲をぐるりと塀で囲み、出入り口には警備員を置いて管理しているところがよくある。このようなマンション群を中国語では「小区」と呼ぶ。僕も上海郊外のとある小区に住んでいる。  夕方になれば小区のなかは車があふれかえる。駐車場はすでにいっぱいになり、小区のなかの道路脇は車がびっしり並んでとまっている。固定駐車場の数が限られていてまったく足りないので、後 [続きを読む]
  • のんびりカップル(連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第373話)
  •  たまたま、中国国内の旅先であるカップルと知り合い、一緒に食事したことがある。  育ちのよさそうな北京人の男性とやさしそうな日本人女性のカップルだった。男性は三十歳をちょっと過ぎたくらい。女性は二十代後半だった。  レストランへ入り唐辛子でスープが真っ赤になった四川火鍋の注文を始めたのだが、どうも二人の様子がおかしい。鍋のなかへなにを入れるのかが決まらない。二人でなにごとかを話しているのだが、ちぐ [続きを読む]
  • 東京イリュージョン
  •  いつまでも終わらない きらびやかな 夢を見せてあげる ほんとうのような幻 幻のようなほんとう ここは魔法の街 そろわない夢はない かなわない夢もない ビルも車も人さえも 無限色幻想コンテで 描き出したのさ 麗しの イリュージョン あなただけの イリュージョン 言葉の魔術で あなたを変えてあげる 東京 東京 イリュージョン 美しい月に濡れたまま 妖しい星に浸ったまま 人生をそっくり忘れて 素敵なダ [続きを読む]
  • 星屑の子
  •  名前のない星が砕けて はらはらと飛び散った 星のかけらが さらさら降りそそぎ はねて 転げて 命になった ぼくらはみんな 星屑の子なんだ 流れる夜空は 僕らのふるさと もやもやして 闇にただよっていた わくわくして なにかを期待してた はやく命になりたいと またたいていた ここから見える星明りは 生まれたいって はしゃいでいるのさ ぼくらの胸には 清らな光がある だって星屑の子だもの 輝いている [続きを読む]
  • きれいに暮らしたいなら
  •  まだらな夕映えが 硬いビルのガラスに 照り映える 夕立の後 墨を含んだちぎれ雲 強い風に踊りながら 西へ北へ 吹き飛ばされ 家路を急ぐ人たちは 地下鉄の入口へ 週末の約束に 華やぐ恋人 心を削る仕事から 解き放たれ 安堵を浮かべた勤め人  この世は  存在の地獄か  はたまた  現象の天国か 存在は 仕組まれた罠を 突き破り 自由の歌を 謳歌できるだろうか 現象は 騒がしい宴のなかで 悟りの享楽 [続きを読む]
  • 日傘と君と
  •  さびしくなった浜辺 おとなしくなった陽射し 君は白いレースの日傘を ゆらゆらと揺らして 暑い季節には熱い恋 穏やかな季節にはやさしい愛 まっさらな海原を眺めながら ゆっくり歩いてみようか 青い空が吸い込む 僕たちの想い出 ふたりの足跡はそのままに ふたりの心もそのままに すこしくらいの過ちなら かばいあって生きていける 大切なものがなになのか わかっているから  日傘をくるりとまわして  魔法を [続きを読む]
  • あんなことがあったあと
  •  あんなことがあったあとも 私なりに生きてみました 誰よりも愛してくれた あなたから遠く離れて ひとりきりになりたくて あんなことがあったあと もう生きてはいけないと 思いつめた私でしたが 千切れた心を針金で縛って こらえていました  あんなことがあったあとも 私なりに考えてみました どうしてああいうことになったのか そのわけを知りたくて 本当の意味をわかりたくて あんなことがあったあと ちっぽけ [続きを読む]
  • 去りゆくものたちよ
  •  消えていく 失せていく 俺の心から 逃げていく 去りゆくものたちよ 夏の光がつらぬく 八月の路上 強すぎる光は毒さ 心の奥で なにかがはじけた そばにいるお前を 抱きしめようとは思わない もうお前を愛せない やり直すのは 時間の無駄さ そこに意味など なにもありはしない 出逢ったことも 抱きしめあったことさえ お笑い種だと 吐き捨ててしまえばいい もうお前を愛さない  焼けつく暑さが  うんざり [続きを読む]
  • フランスへ厄介払い(連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第366話)
  •  上海へ里帰りしている家内の姪が友達と遊びに出かけるというので繁華街まで送っていった。我々夫婦はその足で買い物をする予定だった。姪っ子は高校二年生だ。  タクシーに乗っていると、姪っ子は友達に電話を掛ける。ふだん、家の中で姪っ子は内弁慶全開で騒いでいるのだが、友達へ電話する時は、華やいだかわいらしい声を作る。お人形さんのような声だ。 「あなた、この声をどう思う?」  家内が訊いてくるので、 「かわいい [続きを読む]
  • 落ちるシャッター(連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第364話)
  •  勤め先では倉庫のシャッターが時々落ちた。  倉庫の出入口に取り付けたモーター付の自動巻き上げ式のシャッターだ。わりと広い倉庫なのでシャッターが十数台ある。危ないったらありゃしない。ひと巻きのシャッターがまるごと、人の一メートル横にどすんと落ちたこともあった。頭の上に落ちでもしたら、たいへんだ。あんな重いものに人間が耐えられるわけがない。下手をすれば死者が出てしまうかもしれない。  以前、倉庫のシ [続きを読む]
  • 寿司は握れるのか?(連載エッセイ『ゆっくりゆうやけ』第362話)
  •  アメリカへ移住した家内の姉夫婦とその娘が上海へ里帰りして我が家に滞在している。今は、僕、家内、お義母さん、義姉夫婦、家内の姪の六人で暮らしている。僕以外はみんな上海人だから、家のなかは上海語が飛び交う。にぎやかだ。あまりにもうるさいので喧嘩でも始まったのかとリビングまで様子を見に出たら、みんな興奮しておしゃべりに興じていることが何度もあった。とにかく、みんな大声でよくしゃべる。  一緒に食事をし [続きを読む]
  • かげろう
  •  ぼくのこころに生まれた 青い 透明な ほっそりとした かげろうの幼虫 あなたを想うと 幼虫は ことりと動く のどもとが つまりそう 息が苦しくて 幼虫が 寝返りを打つ 透明な尻尾が ぼくの白い心臓を そっとくすぐる 誘われるのは やわらかなめまい あなたのことしか 考えられなくて あなたの横顔ばかり 思い浮かべて 夕霞のような うすいさびしさが あたり一面に折り重なる これが恋なの? それとも  [続きを読む]
  • きれいに暮らしたいなら
  •  まだらな夕映えが 硬いビルのガラスに 照り映える 夕立の後 墨を含んだちぎれ雲 強い風に踊りながら 西へ北へ 吹き飛ばされ 家路を急ぐ人たちは 地下鉄の入口へ 週末の約束に 華やぐ恋人 心を削る仕事から 解き放たれ 安堵を浮かべた勤め人  この世は  存在の地獄か  はたまた  現象の天国か 存在は 仕組まれた罠を 突き破り 自由の歌を 謳歌できるだろうか 現象は 騒がしい宴のなかで 悟りの享楽 [続きを読む]