とに さん プロフィール

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とにさん: 短い歌の日記
ハンドル名とに さん
ブログタイトル短い歌の日記
ブログURLhttp://tankayfugue.seesaa.net/
サイト紹介文できるだけ簡潔に、わかりやすく。難しいですけれど。
自由文ぽつぽつと短歌を作っています。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供90回 / 365日(平均1.7回/週) - 参加 2011/04/15 13:12

とに さんのブログ記事

  • 虫の声は音楽だ
  • 魯迅の「あひるの喜劇」を読みました。ロシアの詩人ワシリー・エロシェンコが社会主義者との関わりを疑われ日本を追放された後、たどり着いた北京。エロシェンコはそこでの秋を「さびしい。さびしい。沙漠にいるようにさびしい」と言うのです。魯迅は、そうかねえ、私には寂しくないけれどねえ、と首をかしげます。このロシア人が寂しいのは、かつて滞在していたビルマの夏の夜の虫の声を思い出すからでした。「ビルマでは至るとこ [続きを読む]
  • カナダの秋
  • カナダの秋もまた美しい。でも日本の27倍という広い国なので、場所によって秋の姿もさまざまです。この時期にここに来るのは鮭目当て鴎、鷲、熊、釣り人、吾も渾身の力に滝を上らむとジャンプする鮭あれは何度目 大滝詔子「ひょいと飛び立つ」より(合同歌集 冬雷の113人 2015年)大滝さんはカナダ西海岸、ブリティッシュコロンビア州にお住まいの方。鮭の遡上はこの地域の秋の風物詩と言えましょう。人も獣も鳥も鮭の到来を待 [続きを読む]
  • 虫は歌う
  • 「あれマツムシが鳴いている…」で始まる「虫のこえ」。マツムシ、スズムシ、コオロギ、ウマオイ、クツワムシが登場する楽しい歌ですが、きっとこういう鳴く虫は暖かいところが好きなのでしょう。ここカナダではコオロギにさえ私は出会ったことがありません(もっともカナダは広い国なので、内陸や島や南の国境近くに行ったらいるのかもしれません)。私にとって、彼岸花、秋祭りのお囃子と並ぶ「日本の秋を恋しく思う」ものが虫の [続きを読む]
  • 素晴らしき先輩がた
  • 左利きの指よく曲がらねど手順よく掃除機料理難なく出来るバス停の椅子に腰掛け休みつつ歌を詠むなり一石二鳥老いたれど臥すこともなく料理をば作れる日日を良しと思はむ耳遠く補聴器あればこそなりと会話の出来るこの幸せよ眠れない事はあらざり朝目覚しの鳴るまで殆ど休める幸よこの齢老い先短しと思ふかな然れども人生これからなりとも池亀節子 「卒寿を越えて」より(冬雷2017年9月号 今月の30首 p.12~13)ああこの前向きさ [続きを読む]
  • ジョン・ケージの歌
  • ジョン・ケージ「四分三十三秒」のすずしさよ茸すぱすぱと伸ぶ 渡辺松男「泡宇宙の蛙」より音楽を扱った歌もたくさんあるのですね。バッハ、モーツァルト、ショパン…でもケージの歌には私は初めて出会いました。「四分三十三秒」はもうすっかり有名になりましたが、ざっくり言えば4分33秒の間、演奏者はまったく音を出さないという、音楽とはいったい何か?と改めて問われるような、何か哲学的ともいえる作品です。いったい茸が [続きを読む]
  • 蜘蛛の百合
  • 約束のありたるやうに彼岸にはきつちりと野に曼殊沙華咲く土なかに球根は生きて季なれば茎突つ立てて彼岸花咲く水谷慶一朗(冬雷2016年12月号 p.2)「約束のありたるやうに」という美しい句がずっと印象に残っていました。「季」がめぐると言いますが、久しぶりにこの歌を読み返して、太陽の動きに連動して豊作の祝いと祖先の供養が脈々と行われてきた日本のことを考えています。我が家の庭にも群生しているよ、と実家の父が写真を [続きを読む]
  • 緊張するのです
  • 短歌の楽しみ。それはとてもたくさんあるのですが、その一つが自分と同じような体験をした人の歌を見つけることかもしれません。少なくとも私はそうして慰められ力づけられてきています。発表会サマーコンサート緊張でピアノ鍵盤弾く手震う  鵜崎芳子 (冬雷2017年9月号 p.64)ああとてもよくわかります、鵜崎さん、私も同じでした…!8月に友人が企画したサロンコンサートで私はぜんぜん弾けませんでした。重たい鍵盤に転びそう [続きを読む]
  • 猫の歌
  • 暗がりに激しく争ひゐる猫のあふむき叫ぶはわが猫なりや戦ひに負けたるわが猫毛の抜けて額より血を流しもどりぬ痛からう悔しからうと敗れたるわが猫の傷に軟膏ぬりやる負け犬にならうとどんな姿でもきつと帰り来よこの猫のごと   橘美千代(冬雷2015年11月号p.72)猫のけんかの凄まじさがよく伝わってくる歌です。「あふむき叫ぶ」にやはり小さくても猫は猛獣なのだなと改めて思います。そして傷ついた猫に、痛いだろうね、悔し [続きを読む]
  • つぶやき短歌
  • 痛む手のおきどころなく過ごす夜に小鳥の歌を待ちわびている私の人生初の短歌です。2014年の晩秋に作りました。手は治らないわ、仕事はないわ、雨は止まないわで、途方に暮れていた時でした。誰もそう言ってくれないので、ああ何とかわいそうな私!と言葉を書きつけ始めたのでした。他人に愚痴を聞いてもらうには限度がありますが、この方法だと気が済むまで続けられましたので。さんざん書いていっぱいになったらノートを処分する [続きを読む]
  • 短歌を必要とする理由
  • TEDでアメリカの文芸評論家スティーブン・バート氏の講演、「人は何故詩を必要とするのか」(原題:"Why people need poetry")を聞きました。特に印象に残った箇所があるので拙訳を載せます。…私たちはみないつか死にます。このことを受け入れさせてくれるのが詩です。…詩は共有しやすく、伝えやすい。そして詩を読むとき、私たちは誰かが自分に話しかけているように感じます。その誰かはどこか遠くにいる人かもしれません。架 [続きを読む]
  • 日食の歌
  • わが庭の薔薇垣に朝のひかり差すまさしく日食まへの太陽  木下孝一『霜白き道』(現代短歌社)今朝のバンクーバーでは86%の日食が見られました。私は自室のPCで仕事をしていたところでした。ふと気が付けば南の窓から差し込む太陽の光線が、色が、雰囲気がどことなく違います。空はいつにも増して青いのに。これを「まさしく日食まへの太陽」と言うのでしょうか。今では人間も日食が起きる日時もその原理もよく知っていますが [続きを読む]
  • 浴衣に必要なもの
  • 七夕の花火見物に行く人の浴衣の多き白百合の映ゆ  中村哲也(冬雷 2015年10月号 p.27)ああこれぞ日本の夏だなあと、懐かしい思いでこの歌を読みました。カナダにももちろん花火大会はあるし、夏らしい野外コンサートやそれこそ日系人コミュニティによる「夏祭り」なども開催されます。もともと着物好きの私はこれぞチャンスとばかりにいそいそと浴衣を着て出かけます。やっぱり好きなものを身に着けると幸せな気持ちになります [続きを読む]
  • コヨーテ
  • コヨーテに食われし子犬に涙してコヨーテをなお憎めずにおり私は子供の時に「シートン動物記」のティトオというコヨーテの話に泣き、そして学生時代にカナダのマニトバ州で初めて野生のコヨーテを見て憧れて、今はコヨーテが闊歩する町に暮らしています。おとといの地元の新聞記事の写真より。コヨーテは猫だけではなく犬、人間の子供も襲うことがあります。でも私はコヨーテを害獣とは呼びたくないのです。そもそも害獣も害虫も雑 [続きを読む]
  • 庭仕事の愉しみ
  • 春の日に鳴きつつ遊ぶ小雀をけふの友にして庭の草引く 橋本佳代子(冬雷 2017年7月号 p.31)ブログでは今の季節にあった歌を取り上げたいと思っているのですが、今日はこの歌の気分でした。「小雀をけふの友にして」というところがとても好きなのです。庭仕事は瞑想だと言ったのはヘルマン・ヘッセでしたか。土に触れていると無我の境地になります。Traffic calming space(交通静穏化のために設けられた緑地帯)の園芸ボランティ [続きを読む]
  • 夏休みの歌
  • A4の書類が入る仕事鞄よけて広げるシフォンのドレスクローゼットの中で小さく萎みたるシフォンがふんはりしたら夏休みスニーカーぎりぎり踝まで日灼けしてゐる脚が駆け抜けてゆく幼馴染の彼はどうしてゐるだらう逢つてみたくなる八月の朝  中島千加子(冬雷 2016年10月号 p.24)中島さんの短歌はロマンチック。昨年詠まれた一連の歌を読み返しているうちに、サミュエル・バーバーの組曲「思い出」…私はこの4手連弾バージョンを [続きを読む]
  • 腱鞘炎
  • カデンツァを弾きたる友の年若く痛み無き手を少しうらやむ腱鞘炎になってしまった頃に作った歌。サポーターでがっちり固定された両手を鍵盤に乗せている私。このときは美しいアンティークのスタインウェイを前に、一音も鳴らすことができませんでした。今でも一度に30分以上連続して弾くことはできませんが、あのころに比べたら右手は各段によくなりました。左手はまだ少し不安定です。先日のレッスンで、「物語性のある比較的長い [続きを読む]
  • ユジャ・ワンの歌
  • ツイッターやブログでも、おお、と思う歌に出会うことがあります。今朝いちばんに目にした歌。ピアニストは筋力がいるユジャ・ワンの露出の多き衣装におもふ 柊慧(短歌人2017年7月号)ユジャ・ワンはマイクロミニや深いスリット入りの衣装についていろいろ言われているようですが、彼女の場合、セクシーさよりアスリートっぽい印象が強く残りますね。こういうの弾けちゃうからですね、やっぱり。Yuja Wang plays "Flight of [続きを読む]
  • 星の祭り
  • 色とりどいの短冊下げたる笹の枝は願ひ重きか頼りなく垂る  鈴木やよい(冬雷2016年9月号)願い事の短冊をたくさんつけられた笹の様子がユーモアのある調子で描かれていて、七夕を楽しむ人たちの様子が想像されます。幼稚園の七夕の行事ででもあったのでしょうか。もしもひとつだけ望みがかなうとしたら?私なら何をお願いするでしょう。お金も欲しいし健康も欲しい。美人になりたいし、頭もよくなりたいし、ピアノだってもっと [続きを読む]
  • まんまると
  • まんまるとまるめよまるめわが心まん丸まるく丸くまんまる  福士香芽子(冬雷 2016年6月号 p.36 )なんとも快い調べです。もしかしたら作者には何か嫌なことがあって気持ちがとがってしまったのかもしれません。それを嘆き節ではなく、なだめるように慰めるように、穏やかでユーモラスな呪文にしたところが素晴らしい。同じ作者の歌をいくつかご紹介します。「初恋」の歌唄ひつつ遠き日を想ひだしてひとり楽しむみちのくの我が [続きを読む]
  • 魂が宿る
  • 老人のひとり暮らせる家のなかイヌ型ロボットAIBOがあゆむ九年間育てこしロボット犬壊れ 「ペットロスです」 と媼うなだる  橘美千代(冬雷)短歌誌「冬雷」に連載されている、橘美千代さんの「身体感覚を歌う」をいつも楽しみにしています。上記の二首を含む2017年7月号の「ロボット犬に魂は宿るか」にはことに深く胸にしみいるものがありました。それはこんな風に締めくくられています。「AIに魂が宿るとは、そう思 [続きを読む]
  • Happy Summer Solstice!
  • 寝ころびて輝く夜の青空を飽かず眺むる今日は夏至の日これを書いている現在、カナダはまだ21日。そう、夏至の日です。待ちに待った明るい季節の始まりです。長い雨もようやく去り、しばらく青空の日が続くという予報に小躍りしています。自作の歌には「輝き」「輝く」という言葉がよく使われていることに最近気が付きました。語彙力が弱いせいもありますが、光輝く明るいものに憧れる気持ちがあるのだと思います。一年の半分近くも [続きを読む]
  • 百合の木
  • いつまでも冬の冷たい雨を引きずっていたせいなのでしょうか。今年は近所の百合の木の開花が6月になってからでした。この世に百合の木という木があることを知ったのは去年のことです。ああ今日はいい青空だなあと空を見上げたら不思議な花が目に入りました。それがたまたま、中国の植物が見られるチャイナタウンの公園の近くだったので、これも中国から来たのかしらなどと思っていたら、実は北アメリカ中部原産とのことでした。ネ [続きを読む]
  • バッハの時間
  • 何十回何百回とさらえどもバッハははるかに輝く恒星子供の頃からJ.S.バッハの音楽がいちばん好きでした。仕事をすべて終えた夜半11時過ぎ、よくフーガを練習します。複雑なフーガは私にはなかなか理解できないし、演奏のほうもちっとも上達しません。一生片思いなのかなと思うことがよくあります。でもこの時間が私を平静に戻してくれるのです。そろそろ調律が必要な私のピアノ。 [続きを読む]