梨野礫 さん プロフィール

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梨野礫さん: 文芸茶話・《文学・映画・演芸・テレビ・「雑考」》
ハンドル名梨野礫 さん
ブログタイトル文芸茶話・《文学・映画・演芸・テレビ・「雑考」》
ブログURLhttp://bungei565.blog.fc2.com/
サイト紹介文「文学」「映画」「演芸」「テレビ」に関する駄文を綴ります。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供61回 / 365日(平均1.2回/週) - 参加 2012/03/09 11:55

梨野礫 さんのブログ記事

  • 映画「夜ごとの夢」(監督・成瀬巳喜男・1933年)
  •   この映画の面白さ(見どころ)は、何と言っても「配役の妙」にある。小津安二郎作品でお馴染みの坂本武、飯田蝶子コンビが阿漕な仇役、齋藤達雄が救いようのない無様な男を演じ、吉川満子、新井淳が思い切りお人好し、善人夫婦の景色を醸し出す、そのコントラストがたまらなく魅力的であった。 主人公はおみつ(栗島すみ子)という名のシングルマザーである。一人息子の文坊(小島照子)が出世することだけを生きがいに、酒場 [続きを読む]
  • 映画「路上の霊魂」(監督・村田実・1921年)
  •   ヴィルヘルム・シュミットボンの『街の子』(森鴎外訳)とマクシム・ゴーリキーの『夜の宿(どん底)』(小山内薫訳)が原作で、ナ、ナ、ナント、日本の演劇界の革新に半生を捧げた小山内薫自身が出演しているとは・・・。ウィキペディア百科事典では〈『路上の霊魂』は同時に進行する出来事をクロスカッティングしたり、回想場面を挿入したりする近代映画の技法をふんだんに取り入れた、日本映画初の芸術大作というべきものだ [続きを読む]
  • 映画「女の歴史」(監督・成瀬巳喜男・1963年)
  •  この映画には三組の男女が登場する。一は清水幸一(宝田明)と信子(高峰秀子)の夫婦、二は幸一の父・清水正二郎(清水元)と母・君子(夏原夏子)の夫婦、三は幸一の息子・功平(少年期・堀米広幸、成人後・山崎努)と恋人・富永みどり(星由里子)のカップルである。 時代は戦前、戦中、敗戦直後から戦後にかけて、舞台は東京深川、栃木の疎開先、東京自由が丘へと移りゆく中で、男は次々と死に、女だけが「たくましく」生き [続きを読む]
  • 映画「驟雨」(監督・成瀬巳喜男・1956年)
  •   結婚してから四年、まだ子どもは生まれない。これからも期待できないだろう。たまの日曜日だというのに、夫婦には予定がない。朝食後、妻は編み物をし、夫は庭を眺める。夫が欠伸をすれば、妻もつられて欠伸をする。夫婦の会話。夫「晩のおかずは何だい?」妻「晩は未定です」夫「何かご馳走していただけますか?」妻「・・・(無言)」。夫は横腹をさすりながら「胃薬を飲み忘れた」と言う。妻は黙ってコップの水と薬瓶を差し [続きを読む]
  • 映画「泥だらけの純情」(監督・中平康・1963年)
  •  出会ってから、わずか七回の「逢瀬」で、見事な「情死」を果たした男女がいる。 日活映画「泥だらけの純情」(原作・藤原審爾 脚本・馬場当 監督・中平康 昭和38年)に登場した、次郎(浜田光夫)と真美(吉永小百合)である。  物語の梗概は以下のとおりである。 ◆組長・塚田に頼まれてヤクを森原組の事務所に届けていたチンピラヤクザの次郎は、不良学生にからまれている外交官の令嬢・樺島真美を助ける。しかし、その [続きを読む]
  • 映画「にごりえ」(監督・今井正・1953年)
  • 樋口一葉の「十三夜」「大つごもり」「にごりえ」が原作、三話の長編(130分)オムニバス映画である。文学座、前進座、東京俳優協会の錚々たるメンバーが顔を揃えており、第一話「十三夜」では、丹阿弥谷津子、芥川比呂志、三津田健、田村秋子、第二話「大つごもり」では、久我美子、中村伸?、荒木道子、長岡輝子、竜岡晋、仲谷昇、岸田今日子、北村和夫、子役として河原崎健二、第三話「にごりえ」では、淡島千景、宮口精二、 [続きを読む]
  • 映画「芸者ワルツ」(監督・渡辺邦男・1952年)
  • DVD(新東宝【歌謡シリーズ】傑作選)で映画「芸者ワルツ」(監督・渡辺邦男・1952年)を観た。その内容は「元伯爵の令嬢から一転、花柳界へ身を沈めた薄倖の女性。芸者ゆえに身にしみる恋の辛さに隠れて泣いた舞扇」と要約されているが、大詰めはハッピー・エンドで締めくくられる。元伯爵・朝吹誠通(高田稔)の令嬢・千恵子(相馬千恵子)が、花柳界へ身を沈め、芸者として出会った新興実業家・六郷信太郎(龍崎一郎)と結 [続きを読む]
  • 映画「三百六十五夜」(監督・市川崑・1948年)
  • 原作は小島政二郎の恋愛通俗小説(メロドラマ)である。登場人物は、川北小六(上原謙)、大江照子(山根寿子)、その母(吉川満子)、その父(河村黎吉)、小牧蘭子(高峰秀子)、津川厚(堀雄二)、姉小路三郎(田中春男)、大江家の女中・お咲(一宮あつ子)、おでん屋のおかみ(清川玉枝)、宮田龍之助(大日向伝)、キャバレーの歌手(二葉あき子)といった面々である。この映画が封切られたとき、私は4歳だったので、もしユ [続きを読む]
  • 映画「母を恋はずや」(監督・小津安二郎・1934年)
  •  「(この映画の)フィルムは現存するが、最初と最後の巻が失われている不完全バージョンである」(ウィキペディア百科事典)。 裕福な家庭・梶原家が、父の急逝により没落していく、そこで展開する家族の人間模様がきめ細やかに描き出されている。父(岩田祐吉)は、今度の日曜日、家族と七里ヶ浜へピクニックに行く約束をしていたが、長男の貞夫(加藤精一)と次男の幸作(野村秋生)が小学校の授業中に呼び出され、「お父さん [続きを読む]
  • 映画「ことぶき座」(監督・原研吉・1945年)
  • この映画が作られたのは、敗戦直前の昭和20年6月、当時の社会状況、日本人の意識を知るには恰好の作品であると思う。登場人物の服装は、男は戦闘帽に軍服、女はモンペ姿、「撃ちてし止まん」「欲しがりません勝つまでは」といった意識が津々浦々にまで行き渡っていたことがよく分かる。私は当初、これは軍隊の映画だと思ったが、主人公は梅中軒鶴丸(高田浩吉)という浪曲師であった。北海道に慰問に訪れる芸人一行のリーダー格 [続きを読む]
  • 映画「愛の世界 山猫とみの話」(監督・青柳信雄・1943年)
  •  戦時下における教育映画の名作である。 主人公は、小田切とみ(高峰秀子)16歳、彼女の父は行方不明、母とは7歳の時に死別、母が遊芸人だったことから9歳の時、曲馬団に入れられた。現在の保護者は伯父になっているが折り合いが悪く、放浪を繰り返し、警察に度々補導されている。性格は強情、粗暴で、一切口をきかない・・・、ということで少年審判所に送られた。その結果、東北にある救護院、四辻学院で教育を受けることに [続きを読む]
  • 映画「簪(かんざし)」(監督・清水宏・松竹・1941年)
  • 1941年(昭和16年)、山梨の下部温泉で一夏を過ごす人々の物語(原作・井伏鱒二)である。長逗留をしているのは学者・片田江先生(齋藤達雄)、復員兵とおぼしき納村猛(笠智衆)、商家廣安の若旦那夫妻(日守新一、三村秀子)、老人(河原侃二)とその孫・太郎(横山準)に次郎(大塚正義)といった面々である。そこに身延山詣での団体客(蓮華講中)が押し寄せてきた。入館するや1階では按摩の予約で大騒ぎ、18人のうち [続きを読む]
  • 映画「秀子の車掌さん」(監督・成瀬巳喜男・1941年)
  • 甲府の甲北乗合バスに勤務する運転手・園田 (藤原鶏太)と車掌・おこま(高峰秀子)の物語である。冒頭場面は、山村の街道を走るバスの中、乗客は一人も居ない。「この分だと今月の給料、払ってもらえるかなあ」「あぶないものね」などと園田とおこまが話していると、後ろから一台のバスが近づきたちまち追い抜いて行く。商売敵の開発バスである。こちらのバスはおんぼろ車で誰も乗ろうとしないのだ。しかし停留所でもない所で一 [続きを読む]
  • 映画「虞美人草」(監督・中川信夫・1941年)
  •   冒頭の字幕に「征かぬ身はいくぞ援護へまっしぐら」とあるように、日本が「決意なき開戦」(真珠湾攻撃)を行った年の作品である。原作は夏目漱石の小説に拠る。時代は明治、大学を卒業して2年経つのに、未だに身の固まらない青年たち(27〜8歳)の物語である。一人は甲野欽吾(高田稔)、母とは死別、父も客死、甲野家の長男として相続すべき立場だがその意思をはっきりと示さない。家も財産も継母の豊乃(伊藤智子)と妹 [続きを読む]
  • 映画「君と行く路」(監督・成瀬巳喜男・1936年)
  •   タイトルに「三宅由岐子作『春愁紀』より」とある。舞台は神奈川・鎌倉海岸の別荘地、ある別荘に母・加代(清川玉枝)とその息子、長男の天沼朝次(大川平八郎)、次男の天沼夕次(佐伯秀男)が住んでいた。母は芸者上がりのシングル・マザー、亡くなった旦那から別荘と財産を貰い受け、女手一つで二人の子どもを育て上げた。兄の朝次はすでに会社勤め、弟の夕次はまだ大学生である。この家の隣は、尾上家の別荘、そこには娘の [続きを読む]
  • 映画「旅役者」(監督・成瀬巳喜男・1940年)
  • 大変おもしろい。田舎町を旅する中村菊五郎(高勢実乗)一座の物語である。一座の当たり狂言は「塩原太助」。馬の役を務めるのは俵六(藤原鶏太)と仙平(柳谷寛)のコンビである。俵六は、馬の脚を演らせたら自分が日本一だと自負している。町に到着すると一行は、リヤカーや人力車に乗って街道を練り歩くが、俵六と仙平は稽古に余念がない。一段落して、開演までのつかの間を、氷屋で過ごす。その途中、折しも出会った出征兵士と [続きを読む]
  • 映画「残菊物語」(監督・溝口健二・1939年)
  • 原作は村松梢風、五代目尾上菊五郎(河原崎権十?)の養子・二代目尾上菊之助(花柳章太郎)の物語である。冒頭は歌舞伎座の楽屋裏、これから「東海道四谷怪談」隠亡堀の場が始まろうとしている。有名な「戸板返し」後の「だんまり」で、菊之助は与茂七を演じたのだが、直助役の菊五郎は、いたって不満足、「ダイコ」(大根)役者だと決めつける。火の玉(人魂)の扱いまでもなっていないなどと当たり散らす始末、周囲の連中は「二 [続きを読む]
  • 映画「浅草の灯」(監督・島津保次郎・1937年)
  •  東京・浅草を舞台に繰り広げられるオペラ一座の座長、座員、観客、地元の人々の物語である。  冒頭は、オペレッタ「ボッカチオ」の舞台、座員一同が「ベアトリ姉ちゃん」を合唱している。その中には、山上七郎(上原謙)が居る。藤井寛平(斎藤達雄)が居る。飛鳥井純(徳大寺伸)が居る。香取真一(笠智衆)が居る。そして、新人・小杉麗子(高峰三枝子)の姿もあった。その麗子の前に、二階席から花束が投げ込まれた。投げた [続きを読む]
  • 映画「桃中軒雲右衛門」(監督・成瀬巳喜男・1936年)
  • 原作は真山青果、明治から大正にかけ、浪曲界の大看板で「浪聖」と謳われた桃中軒雲右衛門の「身辺情話」である。成瀬作品にしては珍しく「男性中心」の映画で、女優は雲右衛門の曲師であり妻女のお妻を演じた細川ちか子、愛妾・千鳥を演じた千葉早智子しか存在感がない。(他は、ほとんど芸者衆である。)  筋書きは単純、九州から東京に凱旋する桃中軒雲右衛門(月形龍之介)が、先代からの曲師・松月(藤原釜足)と、途中の静岡 [続きを読む]
  • 映画「東京の英雄」(監督・清水宏・1935年)
  • 冒頭のタイトルに続き、「配役」になると、女性の歌声が流れ出す。耳を澄ませると、「並ぶ小窓に はすかいに 交わす声々日が落ちる 旅暮れて行く空の鳥 母の情けをしみじみと」と聞こえるが、定かではない。主なる登場人物は、根本嘉一・岩田祐吉、春子・吉川満子、寛一・藤井貢、加代子・桑野通子、秀雄・三井秀夫(後の三井弘次)である。さらに、寛一の少年時代を突貫小僧、加代子を市村美津子、秀雄を横山準(爆弾小僧)が [続きを読む]
  • 映画「故郷」(監督・伊丹万作・1937年)
  • 信州の山村にある酒屋の家族の物語である。タイトルバックには、ニワトリ、牛、犬の鳴き声、小鳥の囀り、子どもたちの唱歌「水師営の会見」が聞こえる。やがて映し出されたのは「喜多の園」という看板の酒屋で、味噌、缶詰なども扱っているようだ。店先では、小学校5年生の剛(船越復二)が、教科書を音読しながら店番をしている。別荘から注文の電話がかかってきた。自転車で品物を届けると、使用人の婆やが「姉ちゃんが帰ってく [続きを読む]
  • 映画「サーカス五人組」(監督・成瀬巳喜男・1935年)
  •  この映画、タイトル、スタッフ、キャスト紹介までの画面は鮮明であったが、物語が始まった途端に、どこがどこやら、誰が誰やら、茫として判らない。要するに、フィルムが劣化して霞がかかっているのだ。それもまた一興、古文書を解き明かす思いで、画面に見入った次第である。鮮明なタイトルには「古川緑波原作、成瀬巳喜男演出」と添えられている。「配役」には、以下の名前があった。大川平八郎|宇留木浩|藤原釜足|リキー宮 [続きを読む]
  • 映画「浪華悲歌」(監督・溝口健二・1936年)
  •  19歳の女優・山田五十鈴主演の傑作である。冒頭は、薬種問屋の主人・麻居(志賀廼家弁慶)が、けたたましい嗽いの音を立てて洗面・歯みがきをしている。タオルで顔を拭きながら縁側に出る。女中に「このタオル、しめってるがな」。朝の太陽を仰ぎながら「商売繁盛、家内息災」、やがて朝食。茶を啜ると「ああ、苦い」、「卵がない」「海苔がない」、女中の手を見て「汚い」、小言が止まることがない。「あれは、どうした。すみ [続きを読む]
  • 映画「祇園の姉妹」(監督・溝口健二・1936年)
  •  祇園の芸妓として生きる姉妹の物語である。姉は梅吉(梅村蓉子)、妹はオモチャ(山田五十鈴)と呼ばれている。その借家に、木綿問屋主人・古沢(志賀廼家辯慶)が転がり込んできた。店が倒産、骨董・家具などが競売されている最中、夫人(久野和子)と大喧嘩して家を飛び出して来たのだ。古沢は梅吉がこれまでお世話になった旦那、「よう来ておくれやした」と梅吉は歓迎するが、オモチャは面白くない。新しい女のあり方を女学校 [続きを読む]
  • 映画「阿部一族」(監督・熊谷久虎・1938年)
  • タイトルの前に「国民精神総動員 帝国政府」という字幕が一瞬映し出される。原作は森鷗外、九州肥後藩で起きた、一族滅亡の物語である。監督・熊谷久虎も九州出身、女優・原節子の叔父として知られているが、この映画を制作後(1941年)、国粋主義思想団体を結成し教祖的存在になる。一方、出演は、1931年に歌舞伎大部屋(下級)俳優が創設した(民主的な)「前進座」総動員、というわけで、その取り合わせが、たいそう興 [続きを読む]