福元早夫 さん プロフィール

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福元早夫さん: 作家 福元早夫のブログ
ハンドル名福元早夫 さん
ブログタイトル作家 福元早夫のブログ
ブログURLhttps://blogs.yahoo.co.jp/hayaofukumoto
サイト紹介文文学、小説、生きる事を追求しながら毎日書いています。
自由文         著書
1981年 「労働者文学作品集」 日本社会党刊
1985年 小説集 「工場」
1991年 小説集 「家」
1994年 小説集 「蒸気機関車を降りてから」
    (いずれも編集工房ノア刊)
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供121回 / 365日(平均2.3回/週) - 参加 2012/04/28 23:12

福元早夫 さんのブログ記事

  • 連載小説「神々たちのすみか」
  •                連載小説          神々たちのすみか               連載第十回      (四)の1 あるときだった。滝にむかって手をあわせて、祈りをささげる女性がいた。このうそぬきの滝は、母子滝ともよばれている。母滝と子滝からなっていて、見えているのは子滝である。母滝はその後方の山にかくれて、わずかに見えているだけである。滝には女性を守護する神がやどっていると [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  •               連載小説         神々たちのすみか              連載第九回      (三)の3 この滝へくると、人も大地も生きものであることがわかる。断層がかすかに揺れ動いて、落石がしばしばおこっている。霊媒師がいったように、地磁気の強いところほど生命の力が強くはたらくそうである。それは地球がもつ磁性のことで、磁石を持ち歩けばわかるように、磁界は人の生活のあらゆ [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  •               連載小説         神々たちのすみか              連載第八回      (三)の2 いまひとつの伝説は、あるとき老婆が滝からの流れで洗濯をしていると、滝つぼの中から突然に大きな波がおこってきて、それが老婆のほうへやってきた。何事かと思ってよくみると、目の玉をむきだした大蛇が、炎のような赤い舌を長くのばして襲ってきた。 あまりの恐ろしさに老婆は気絶して [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  •                連載小説          神々たちのすみか               連載第七回      (三)の1 滝では霊媒師によって、神事がおこなわれているところだった。滝つぼにむかって清酒がまかれ、塩と米がそえられ、線香の束に火がともされて、淡い煙が風になぶられていた。十メートルをこえる滝口からの水の流れは、ごうごうと滝つぼを揺るがして、和太鼓のような響きを天空にとどろ [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  •                 連載小説          神々たちのすみか                連載第六回      (二)の3 この地の農家で生まれ育って、十五歳で関西へ職をもとめて故郷を離れてから、四十五年の歳月がすぎて去ったときだった。タケルは心も身体も疲労困憊しきっていた。製鉄所の現場の仕事を定年退職した彼は故郷へもどってきて、子どものころに親しんだこの滝へ行こうとした。だけど [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  •               連載小説         神々たちのすみか              連載第五回      (二)の2 その遊歩道はケヤキの高い樹木や、唐竹の生い茂った山裾へとつながっている。山のふもとには公園の案内板があって、大きなソテツが人を出むかえる。センダンの巨木もあって、それを背に水神がまつられている。「自然界の水と火をつかさどるこの神は、四百年ちかい長い歳月を、山や川や田畑 [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  •                連載小説          神々たちのすみか               連載第四回      (二)の1 夏の暑い日の午後のことだった。うそぬきの滝へむかってタケルは歩いていった。滝への遊歩道の入口に乗用車がとめてあって、だれか人がむかっていった気がしたからだった。また霊媒師とあの事業家がやってきて、滝の流れにむかって祈りをささげているのかもしれない。水神をはじめに [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  •                連載小説          神々たちのすみか               連載第三回      (一)の3「霊能者は、霊界や守護神である先祖様と交信ができますから、お墓参りに行こうということになったのです。わが家の先祖代々の方たちは、薩摩半島の東シナ海のみえる町に祀られておられますから、高速道路でそこへむかう途中だったのです」「すると車の窓から滝が見えて、ここにやどる [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  •               連載小説         神々たちのすみか              連載第二回      (一)の2 滝から一キロメートルばかり離れた南の方角に、国道や高速道路が東西に横断していて、乗用車や大型のトラックなどがたえまなく走っている。そのむこうに、湖のような錦江湾がひらけて、桜島の山々がどっかりと腰をすえている。 この山は活火山である。たえず爆発して噴煙をあげている。滝 [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  •              連載小説        神々たちのすみか             連載第一回      (一)の1 霊媒師をともなった夫婦連れが、うそぬきの滝へはじめてやってきたのは、十年まえのことだった。前人未到ともいえる密林をタケルが切りひらいて、むはじめて訪れた遠来客人でもあった。 ここが神々たちの住処であることを信じて疑わなかった彼は、滝口から滝つぼへの水のながれにむかって、長い [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  •              連載小説        神々たちのすみか             連載第一回      (一)の1 霊媒師をともなった夫婦連れが、うそぬきの滝へはじめてやってきたのは、十年まえのことだった。前人未到ともいえる密林をタケルが切りひらいて、むはじめて訪れた遠来客人でもあった。 ここが神々たちの住処であることを信じて疑わなかった彼は、滝口から滝つぼへの水のながれにむかって、長い [続きを読む]
  • 連載小説 「工場模様」
  • 連作連載小説 工場模様 「技能士の友」1976年8月号掲載・東京 「自転車にゆられて」 連載第四回       (四)  工場の門にむかって自転車を走らせていくと、ちょっとした町工場のような、技能訓練生のころの実習教室がみえてきた。ここへ来るときまってあのころの、笛の音とハンマーでタガネをたたく甲高い金属音がよみがえってくる。 「ピー、ドスン。ピー [続きを読む]
  • 連載小説 「工場模様」
  • 連作連載小説 工場模様 「技能士の友」1976年8月号掲載・東京 「自転車にゆられて」 連載第三回       (三) 「ドーン、ドーン、ドーン……」  朝の点呼のおわりを告げる和太鼓の大きな音が、寮の廊下のすみずみに高く鳴りひびいた。すると訓練生たちは別人になって、食堂にむかって子どものように走っていくのだった。誰も腹をすかしている。われ先にと、 [続きを読む]
  • 連載小説 「工場模様」
  • 連作連載小説 工場模様 「技能士の友」1976年8月号掲載・東京 「自転車にゆられて」 連載第二回       (二) 「……起床、起床」と叫ぶ大声のあとに、ドーン、ドーン、ドーンと大きな和太鼓の音が、広大な寮のなかに鳴りひびいた。午前六時だった。技能訓練生のぼくたちは布団からとび起きて、すぐに上半身を裸にして、タオルをつかんで廊 [続きを読む]
  • 連載小説 「工場模様」
  • 連作連載小説 工場模様 「技能士の友」1976年8月号掲載・東京 「自転車にゆられて」 連載第一回       (一)  午前六時。きのうと同じ時刻だった。自転車のペダルをぐいっぐいっと足で踏みつけながら忙しく風をきって、鉄をつくる工場へぼくはむかった。仕事が三交替の変則勤務だから、早朝、午後、真夜中と、まちまちな時間帯に工場へむかって急がなければ [続きを読む]
  • 連載小説 「工場模様」
  • 連作連載小説 工場模様 「技能士の友」1977年3月号掲載・東京 「指定休日」 連載第二回       (二)  行く手に防潮堤の高いコンクリートの壁がみえてきた。海はすぐそこだった。自転車をとめ、息子をだきあげて地面におろすと、手をひいて階段をのぼっていった。防潮堤に立って海をながめると、太陽にむかってまぶしく光っていた。そこからは大阪湾をひと目で眺めることができた。左右の半月状の湾岸線は、巨大な阪神工業地 [続きを読む]
  • 連載小説 「工場模様」
  • 連作連載小説工場模様「技能士の友」1977年3月号掲載・東京「指定休日」連載第一回     (一) 鉄をつくる工場ではたらくぼくたちの勤務の態様は、四組三交替制になっている。製鉄所は一年の365日を、昼に夜に徹夜にと休みなく生産活動をつづけている。それに主要な設備は、連続操業である。だから食事も休憩も、働くひとりひとりが交替でとらなくてはならない。 四組三交替制とは、ひとつの職場のメンバーを四つのグルー [続きを読む]
  • 連載小説 「工場模様」
  • 連作連載小説 工場模様 「技能士の友」1977年1月号掲載・東京 「居酒屋」 連載第三回       (三) 「このまえの、夜勤帰りのことよ。この居酒屋でお前とふたりで飲んでかえったあの日のできごとよ」  ビールを手につかんで門田がぼくにいってきた。門田はぐっとひと息のんでから、仲間にきこえるように声を大きくしてつづけた。 「途中で赤信号につかまったんや。ちょうど交番の前やった。左足一本でオートバイをささえながら [続きを読む]
  • 連載小説 「工場模様」
  • 連作連載小説 工場模様 「技能士の友」1977年1月号掲載・東京 「居酒屋」 連載第二回      (二)  倉村はぼくと同世代の、三十歳代のはじめだった。こいつの自転車の乗り方も、まだ堂にいっているとはいえない。どことなく競輪選手をまねているところがある。ギャンブルが好きで、競輪場へたびたび足を向けているせいかもしれない。  工場では倉村にかぎらず、娯楽にパチンコや競馬や競輪や競艇などの、ギャンブルにはしる [続きを読む]
  • 連載小説 「工場模様」
  • 連作連載小説 工場模様 「技能士の友」1977年1月号掲載・東京 「居酒屋」 連載第一回      (一)  工場の門で守衛室の警備員に一礼してから、ほくらはならんで自転車置場へむかった。班長の永井のおっさんを先頭に、南野と倉村と門田と、それに益田のおっさんとぼくの、現場ではたらく六人のメンバーである。 「仕事の帰りに一杯やろう」といったのは、若い南野だった。ぼくは右手の指をОの字にまるめて、「行こう、行こう、 [続きを読む]
  • 連載小説 「工場模様」
  • 連作連載小説工場模様「技能士の友」1977年1月号掲載・東京「現場の人々」連載第四回     (四)「こらっ、しずかにしろ。風呂場で騒ぐな」 湯舟のふちでふざけあっている二人の若者に、誰かが怒鳴った。だけど本心から怒っている声ではなかった。 怒鳴られたせん断の現場の若者のうち、背の高いパーマネント頭の男が、なにおっ、といったふうに目をむいてから、洗面器に湯をくみあげるとそいつを手に、湯舟のなかを川を渡る [続きを読む]
  • 連載小説 「工場模様」
  • 連作連載小説 工場模様 「技能士の友」1977年1月号掲載・東京 「現場の人々」 連載第三回      (三)  湯舟から洗面器に湯をくんで、石鹸を手にぬってぼくは両手を丹念に洗いはじめた。それから顔を洗い、全身に湯をかぶってからほっとひと息つくと、周囲を見わたした。  湯舟をとりまくメンバーはいつも決まっている。こちらに圧延の現場の若者たちがいる。もう一方のこちらには、研磨の現場の連中である。  圧延の若者た [続きを読む]
  • 連載小説 「工場模様」
  • 連作連載小説 工場模様 「技能士の友」1977年1月号掲載・東京 「現場の人々」 連載第二回      (二)  ぼくはマッちゃんや南野たちとならんで工場の中を急ぎ足であるき、階段を駆けあがって三階のロッカールームへとさらにいそいだ。  ロッカーにむかって番号合わせのカギをあけ、仕事着をぬぎ、下着をぬぎすてていく。朝、六時半にここへやってきたときと、まったく逆の動作をやるわけだった。  仕事着も下着も、汗をめい [続きを読む]
  • 連載小説 「工場模様」
  • 連作連載小説 工場模様 「技能士の友」1977年1月号掲載・東京 連載第一回 「現場の人々」      (一)  ぼくは足首にまいていたホック止めの脚胖をはずし、腕から手甲をぬきとった。それから、腰のベルトにはさみこんでいた軍手をぬきとり、それらをひとつにまとめて、作業用具専用の小型のロッカーにしまいこんだ。  午後三時五分まえである。間もなく終業のベルとサイレンが鳴りひびく。焼鈍炉のなかでステンレス鋼帯の継 [続きを読む]
  • 連載エッセイ
  • 連作エッセイ 「労働者作家の条件」 文芸誌「黄色い潜水艦」 1984年11月号掲載・大阪  製鉄所の冷間圧延工場の現場で働くぼくたちの仕事仲間であるNさんが、高血圧が原因で仕事中に倒れ、意識不明が長くつづいていた。そのあいだぼくたちは、Nさんが一日も早く元気になって、ふたたび一緒に仕事ができるようになるのを待った。  だがNさんは、一週間ちかく意識不明をつづけたまま、やがて永遠の眠りについてしまった。 [続きを読む]