福元早夫 さん プロフィール

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福元早夫さん: 作家 福元早夫のブログ
ハンドル名福元早夫 さん
ブログタイトル作家 福元早夫のブログ
ブログURLhttps://blogs.yahoo.co.jp/hayaofukumoto
サイト紹介文文学、小説、生きる事を追求しながら毎日書いています。
自由文         著書
1981年 「労働者文学作品集」 日本社会党刊
1985年 小説集 「工場」
1991年 小説集 「家」
1994年 小説集 「蒸気機関車を降りてから」
    (いずれも編集工房ノア刊)
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供119回 / 365日(平均2.3回/週) - 参加 2012/04/28 23:12

福元早夫 さんのブログ記事

  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 「神々たちのすみか」 連載四十四回 (最終回)       (十五)の? 裏山の竹林でウグイスが鳴いている。夏が近づいて繁殖期にはいったようである。オス鳥が縄張りをつくって、ホーホケキョとさかんに鳴いている。スズメとほぼ同じ大きさで、羽はオリーブ褐色で腹が白く、目につきにくい地味な色をした野鳥である。 横穴型のツボの形をした巣をつくったウグイスは、そこに卵を産んでメス鳥が子育てをする。オス鳥が [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 「神々たちのすみか」 連載四十三回       (十五)の?  馬屋のとなりの更地で、ヤギが日差しをあびて寝そべっていた。生まれ育ってから十五歳でこの地をはなれるまで、祖父母とタケルが暮らした古い母屋は、いまはない。台風に倒されてから、解体して整地された。  通りに面した広い牧草地になったそこで、白ヤギがいまは生活をしているのだった。東京で暮らすむ末っ子の娘が、千葉県のヤギの飼育農家から空輸 [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 「神々たちのすみか」 連載四十二回       (十五)のⅠ  息子や娘や孫たちが、関西や東京へと鹿児島空港から飛び立っていった。アカネとふたりだけの生活にもどったタケルは、田植えの準備をはじめた。祖父が建てて残していった馬屋へいって、トラクタのエンジンをかけて、要所に油をさしていった。  田んぼや畑も祖父は残していった。農業機械をつかってタケルは田にイネを植えなければならない。畑にはサツマ [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 「神々たちのすみか」 連載四十一回       (十四)の?  火葬場の納骨室に親族があつまって、ハルの遺骨が台車にはこばれてきた。まだ熱をもっていて、この世に産んでくれた母親の白い骨とタケルは向きあった。そのときである。喉仏が意思をもった生きものになって、タケルの前にとびだしてきたのである。それは小指の先ほどの、正座した仏像にそっくりであった。阿弥陀如来の化身と思えた。  納骨式でよばれる [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 「神々たちのすみか」 連載四十回       (十四)のⅠ  三歳の幼い子どもだったタケルを両親にあずけて、北九州の炭鉱へ再婚していったハルは、家族をともなって南九州の夫の実家へ帰ってきていた。石炭から石油へと化石燃料の需要がかわって、炭鉱が閉山になったからだった。  ハルの夫は実家で農業をやっていて、牛や馬を飼いながら米や麦をつくっていた。だが、これまでの過労がもとで六十五歳のときに他界し [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  •  連載小説 「神々たちのすみか」 連載三十九回       (十三)の? 「世間の人は、だれもかれも、ギャーギャーいうばっかりの、カラスじゃ。あんたはタカじゃ、ハヤブサじゃ。ハヤブサやタカは、高いところから眼を光らせて生きておる。子は、親のまねをするもの。カラスはカラスのまねをしてカラスになる。あんたはハヤブサじゃ、タカじゃ」  四人の子の親になったタケルに、祖母はこういってからさらにつづけた。 「この [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 「神々たちのすみか」 連載三十八回       (十三)の?  妻のアカネとタケルが出会ったのは、ベトナムの南北の統一をめぐる戦争がはじまったころだった。一九六〇年に結成された南ベトナム解放統一戦線は、北ベトナムの支援をもとに、南ベトナム軍を支援するアメリカと戦って、一九六九年に臨時革命政府を樹立したのだった。  ベトナムに平和を合言葉にした市民運動が、このときアカネとタケルを結び付けたので [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 「神々たちのすみか」 連載三十七回       (十三)のⅠ  子や孫たちはアカネに導かれて、滝見台へと山道をのぼっていった。そこからの眺めは、希望と幸福を象徴するとてつもなく大きな、エメラルドブルーの宝石を目にしているようである。 濃い緑がかった滝つぼを見下ろしていると、高い崖から深い海をのぞきこんでいるようで、はっと息をのむ。滝の左右は荒々しい岩肌をむきだした断崖が、天にむかって険しくそ [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 「神々たちのすみか」 連載三十六回       (十二)の?  中学生になると、高度な漁獲の方法へと挑戦した。潜水である。滝へ深くもぐっていく。大きなウナギが巣穴から顔をのぞかせている。祖父の手ほどきで作った竹筒の水中鉄砲をかまえる。 「なんだ、メガネザルじゃないか。何か用事か」  口をぱくぱくさせてウナギがこういい、首を長く出してきた。二つ目の水中メガネのタケルを小馬鹿にしている。 「いただ [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 「神々たちのすみか」 連載三十五回       (十二)のⅠ  小学生のころだった。日ぐれになるとウナギ筒を手に、祖父と滝の見える鈴玉川へよくいった。川の流れの中に一メートルほどの竹筒を沈めて、重い石で固定しておく。筒のなかにはエサのドジョウが、小刀で刻んでいれてある。ウナギが中へはいると、出られない仕掛けになっているのだった。  夜が明けると、跳んでいく。竹筒のフタをあけると、なかにウナギ [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 「神々たちのすみか」 連載三十五回       (十二)のⅠ  小学生のころだった。日ぐれになるとウナギ筒を手に、祖父と滝の見える鈴玉川へよくいった。川の流れの中に一メートルほどの竹筒を沈めて、重い石で固定しておく。筒のなかにはエサのドジョウが、小刀で刻んでいれてある。ウナギが中へはいると、出られない仕掛けになっているのだった。  夜が明けると、跳んでいく。竹筒のフタをあけると、なかにウナギ [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 「神々たちのすみか」 連載三十四回       (十一)の?  水天である水神は、安産や子育ての神であって、子どもの守り神でもある。自然界では龍のかわりに蛇が、水天である水神を象徴する生きものになったのである。子や孫たちのこの先の健康と安全な日々をねがって、真言の聖音をふたたびタケルはとなえた。 「オン、バロダヤ、ソワカ。オン、バロダヤ、ソワカ。オン、バロダヤ、ソワカ。オン、バロダヤ、ソワカ [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 「神々たちのすみか」 連載三十三回       (十一)のⅠ  五月の大型連休がやってきて、うそぬきの滝自然公園への遊歩道を、タケルは家族と連れだって歩いていった。きびしい冬の寒さで枯れ果てたように裸木だったカエデが、路傍で黄緑色の葉をつけていた。ひとりごとのように彼はいった。 「モミジと呼ばれて、紅葉と文字にされるこのカエデは、葉の形がカエルの手に似ているから、そう呼ばれるようになったらし [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 「神々たちのすみか」 連載三十二回       (十)の?  春をむかえるころになると、河川敷の草原は年にいちどの火祭りだった。滝の流れにむかって、広大な草原の枯れ草を火が焼きつくして、炎が生きものになって走った。ススキもカヤもシダ類も、南の風にあおられて火柱を高くあげて、パチパチと快い音をたてた。それが水神をはじめにここにやどる神々たちの、手をたたいてよろこぶ音にきこえた。  やがて遊歩道 [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 「神々たちのすみか」 連載三十一回       (十)の2  気象予報士がテレビのニュース番組で異常気象だといってから、解説をくわえてきかせた。日ごろの太平洋の熱帯域では、貿易風とよばれる東風がつねに吹いていて、海面の温かい水は、西側に吹き寄せられている。  インドネシアの近海では、数百メートルの海面下まで暖かい水がたまっていて、南アメリカのペルーやチリの沖では、冷たい水が海面に沸きがってい [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 神々たちのすみか 連載三十回       (十)の1  春になってうそぬきの滝自然公園は花ざかりになっていった。ヤマザクラが滝を抱きかかえた断崖の絶壁に,白い花を咲かせていた。ここに自生したこの桜は、葉芽と花がいっしょに開きはじめる。樹形は大きな庭ホウキのようで、ケヤキの木に似ている。寿命が長く、大木になっていく。 「あの桜は春に花を咲かせ、やがて実をむすぶ。田んぼのイネもそうじゃ。人もその [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 神々たちのすみか 連載第二十九回       (九)の4 「あなたは社会人として失格ね、なによその態度は」  こういって母親に叱られたといった若い女性がやってきたのは、タケルが遊歩道を整地しているときだった。二十二歳になる歯科助手だといった。  専門学校を出て職についた一年目のころ,不器用な彼女は仕事をこなすことが精一杯で、家と職場の往復で疲れはてていた。そんなある日のことだった。休日に家でご [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 神々たちのすみか 連載第二十八回       (九)の3  用水路の研究者と出会ってから、しばらくたったある日のことだった。三十二歳になるといった女性が、またやってきて滝の流れとむきあっていた。 「疲れてきました」  あのとき彼女は、こういって疲労の色をみせていた。顔に化粧がなかったせいかもしれなかった。夫の母親との同居に、そろそろ疲れてきたというのである。結婚して四年目だといった。母親とはと [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 神々たちのすみか 連載第二十七回       (九)の2  そのころに建てられたと思われる水神は、この地の田園地帯を向いて祀られている。断崖を切りぬいた男たちの魂が、この神にやどっているとタケルは周囲を掃き清めながらいつも思う。金山ではたらく男たちがここに動員されたのは一千人だろうか。二千人だろうか。記録が残されていない。延べにすると何万人にのぼるかもしれない。  男たちは石斧と金鎚を手に、 [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 神々たちのすみか 連載第二十六回       (九)の1  歴史のある古い時代の用水路を研究しているという大学の職員が、うそぬきの滝自然公園へやってきたのは、冬の寒い日だった。ことばに訛りがあって、長崎からきたといった。いまにやってくる春にそなえて、山クワをつかってタケルは遊歩道の整地をしていた。 「うそぬき切りぬきがこの滝にあると聞いて、やってきたのですが、見えませんよね」  滝の断崖を見あ [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 神々たちのすみか 連載第二十五回       (八)の4  そのときタケルは、明治生まれの祖父と祖母が、干支暦にたよって暮らしていたことに思いあたった。干支は中国をはじめに、アジアの漢字の文化圏で、年、月、日、時間、それに方位、角度、出来事などの順序をあらわすのに用いられていた。  干支暦では一年のはじまりが立春からである。子どものころだった。旧暦の正月を祖父と祖母は餅をついて祝ってくれた [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 神々たちのすみか 連載第二十四回       (八)の3  あるときのことだった。ツルハシを振りあげて滝への道をタケルが整地していたときのことである。大型の乗用車が滝公園への駐車場にとまって、テレビカメラをかついだ男性や音声の長いマイクを手にした男性などの四人がやってきた。デレクターとリポーターの男性もいてタケルの方へむかってきた。 「高速道路を走るたびに、この滝が気になっていたんですよ。案 [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 神々たちのすみか 連載第二十三回       (八)の2  それから何日かたった日のことだった。霊媒師をともなった東京の事業家がまたやってきて、二人は滝つぼにむかって神事をおこなっていた。かれが帰ってしばらくしてからだった。三十歳代だと思える女性がやって [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  •                           連載小説                        神々たちのすみか                         連載第二十二回       (八)の1  秋が深まってきた。うそぬきの滝自然公園の背景の山々は、樹木が紅葉して火がついて燃えているように染まってきた。遊歩道のナンテンは赤い実をむすび、カエデも葉が紅色にそまって、アジサイは眠りにつ [続きを読む]
  • 連載小説「神々たちのすみか」
  • 連載小説 神々たちのすみか 連載第二十一回       (七)の3  放送室へ行って」『女神様』と題した作文のなかの女の子と、ふたたび出合った。マイクに向かって原稿用紙をタケルは読んでいった。聞いている人の顔が見えない。味気のない作り話のようである。マイクの声が、あの一年生の女 [続きを読む]