白雪丸 さん プロフィール

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白雪丸さん: 金色のウイスキー、青いライオン
ハンドル名白雪丸 さん
ブログタイトル金色のウイスキー、青いライオン
ブログURLhttp://gold-blue-lion-by-shirayukimaru.blogspot.jp/
サイト紹介文1週間に1回程度の割合で更新しています。
自由文自分が好きな本や音楽、気になった出来事をとりあげています。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供81回 / 365日(平均1.6回/週) - 参加 2012/07/08 16:52

白雪丸 さんのブログ記事

  • 緑字/円城塔
  • 「文字渦」からの一篇。この作品も変わっている。文字の話であることは同じなのだが、主人公の森林は、どうやら相当のファイルサイズを持ったテキストファイルを探索しているのだ。「平文の記録ではなくデータベース化を検討するべき規模といえたが、まだ力押しできる程度とも言えた」とは言い得て妙である。そのテキストファイルは、機械向けの命令文が大半だが、島々のように浮かぶヒト向けの文章が偏在している。漢訳の金光明最 [続きを読む]
  • 文字渦/円城塔
  • 表紙の「文字渦」がばっと目に入り、書店で思わず手に取ってしまう。中島 敦の「文字禍」を思い浮かべながら、その美しい表紙を眺める。その時は気づかなかったが、この本の「渦」は、中島敦の「禍」とは違う。「禍」は、わざわい、原因の意味であるが、「渦」はうずまきの意なのだ。この小さな違いを、しかし、この決定的な違いを気づいた人は、この本を楽しめると思う。その感性は、例えば、秦始皇帝の陵墓から出土した等身大の [続きを読む]
  • 蛍・常夏/源氏物語 中 角田光代 訳/日本文学全集 5
  • 「蛍」は、相変わらず、玉鬘にちょっかいを出す光君の振舞いが描かれている。特に、光君の弟である兵部卿宮が玉鬘に恋文を送っているのを知り、玉鬘の女房を呼び出し、自分が考えた返事の内容を書かせて反応を楽しむというのは、常軌を逸している。のぼせた兵部卿宮が玉鬘の部屋を訪れた際、容易にうちとけない玉鬘の部屋に捕りためていた蛍を放つ。蛍の怪しい光に照らされる姫の美しさで、さらに兵部卿宮を惑わそうという光君のた [続きを読む]
  • 日曜美術館「ムンク 自我の叫び」
  • NHK Eテレの日曜美術館で、ムンクの絵画を藤原新也が解説していた。ノルウェーの画家 エドヴァルド・ムンクは、80年の生涯で二万点もの作品を残したという。軍医で厳格な父は精神障害を患い、母は結核を患う。その両親の間に生まれ、病の遺伝と死の恐怖は身近にあった。実際、母と姉を結核で失い、父と弟は肺炎で亡くなる。ムンクというと、「叫び」を思い浮かべるが、この作品も一つだけではないらしい。ムンクは気に入ったモチー [続きを読む]
  • 家具/筒井康隆
  • この短編も不思議な読後感を残す。病床にある寝たきりの男が見る白昼夢、あるいは残存思念。彼が思い続けるのは、自分を捨てた(と思っている)妻と弟が浮気をしていたのではないかという疑念だ。その思いは、湖畔に立つ別荘の窓から、湖で全裸で泳ぐ妻の姿をカメラのレンズのような眼で眺めている弟の姿に収斂される。その男の思念に、突然、机、花瓶、ピアノ、カーテン、ベッド等の家具の思念が入り込んでくる。やがて、家具たち [続きを読む]
  • 原始人/筒井康隆
  • まず、原始人を主人公にした小説を書こうという作者の意欲を買いたい。言葉は当然しゃべれないし、記憶力もほとんどない。コンピュータで言えば、一時的に記憶するRAMの領域が著しく小さい。一人の原始人の男が、食料を奪うため、自分の父親であることさえ認識できずに老人を棍棒で撲殺し、若い女を見れば性欲を制御できず、調達した食料も忘れ、棍棒で加減して叩き、襲いかかる。洞窟で共に暮らす女房役的な女にも飽き、若い女を [続きを読む]
  • 本の森の狩人/筒井康隆
  • 筒井康隆が1992年に読売新聞朝刊の読書欄に連載していた文芸批評集らしい。今では見る影もない同新聞の読書欄に、そんな時代があったのだと読後に諸行無常の気分になった。文芸批評とは、露骨にその人の知性と感性、世界観が滲み出てしまうため、文藝というジャンルの中ではある意味恐ろしいセクションである。特に新聞に掲載されるものは、書く分量は制限されるし、読み出しで退屈そうだなと感じるものは、さっとめくられ、読み飛 [続きを読む]
  • 胡蝶/源氏物語 中 角田光代 訳/日本文学全集 5
  • 玉鬘は、光君がかつて愛し、それが原因で生霊の六条御息所に殺された夕顔が遺した姫で、かつて使えていた女房の右近の引き合いで、今は光君の邸宅 六条院に住んでいる。この姫の美しさに、様々な男たちが心動かされ、恋文を送り付けている。光君の弟で、妻に先立たれた兵部卿宮や右大将、そして実は異母弟である中将の柏木(内大臣 頭中将の息子)も、その中にいる。光君は、まるで実親であるかのように、それらの恋文に対する対処 [続きを読む]
  • ダンシング・ヴァニティ/筒井康隆
  • 美術評論家の主人公 渡真利の半生?を描いた作品だが、これ程かというぐらい実験的にパロディ化された作品だ。時々家族の前に顔を出す死んだはずの主人公の父親と息子、人を投げ飛ばす体格のいい妹、コーラスガールとしてデビューする娘、何故か壁に激突する癖がある友人の精神科医、取引先の出版社で鳥の格好をする美しい女性社員、主人公の快楽願望を体現したようなコーラスガールの十人組の女の子たちコロス、主人公の保守性を [続きを読む]
  • 玉鬘・初音/源氏物語 中 角田光代 訳/日本文学全集 5
  • 「玉鬘」は、光君がかつて愛し、それが原因で生霊の六条御息所に殺された夕顔が遺した姫(頭中将との子)玉鬘をめぐる物語だ。母親の死後、玉鬘は乳母の夫が筑紫に赴任する際に連れていかれ、二十歳の美しい姫になっている。その美しさは評判になり、地元の武士からも言い寄られるようになり、姫の身の危険を感じた乳母は、親族の一部とも別れ、京に姫を連れ戻ってくる。そして、京に無事にたどり着けたお礼参りに初瀬の観音に参詣 [続きを読む]
  • 朝顔・少女/源氏物語 上 角田光代 訳/日本文学全集 4
  • 「朝顔」は、光君の叔父にあたる式部卿宮の娘 賀茂の齋院(朝顔の姫君)をめぐる話だ。光君は、幼い頃から彼女を好きだったらしい。「いったん恋をしたら忘れない心癖なので」と文中にもあるが、朝顔の姫君の父が死んだのを機に、お見舞いの手紙を何度となく送ったり、彼女と同居する叔母の見舞いにかこつけて会おうとしたりと、光君は相変わらずの振舞である。しかし、この朝顔の姫君は、しっかりした女性らしく、今までの光君の [続きを読む]
  • 松風・薄雲/源氏物語 上 角田光代 訳/日本文学全集 4
  • いよいよ、中巻が発売されたため、残りの章を慌てて読む。「松風」は、光君が明石に流されていたときに関係を持った明石の御方が、光君の誘いもあり、京の都に移り住むことになるが、他の姫との出自との違いに悩み、父親の入道が、昔領地であった大堰の家を修理し、娘である御方を住まわせることにする。明石と京の距離は、この時代はやはり遠かったのだろう。父親の入道は、生涯の別れのような言葉を口にする。しかし、大堰の家を [続きを読む]
  • J・ハバクク・ジェフスンの遺書・あの四角い小箱/コナン・ドイル
  • 「J・ハバクク・ジェフスンの遺書」は、乗員乗客十四名を乗せて、アメリカのボストンを出航し、ポルトガルのリスボンに向かっていたマリー・セレスト号が、1か月後、無人の状態で海洋を漂っていたところを発見される。一体、船で何が起きたのか?その事実を乗客の一人で、唯一の生存者であった結核症専門医ジェフスン博士が告白するという物語だ。船では、船長の妻と子供が行方不明になり、次いで気落ちした船長がピストル自殺す [続きを読む]
  • 文学部唯野教授の虚構理論/筒井康隆
  • 「文学部唯野教授」の最後のほうで、唯野教授が語っていた文学理論「虚構理論」について語った内容が文藝別冊に載っていた。筒井康隆は、「虚構理論」を「読者の側から小説に対して感情移入した感情移入論による文学史」と説明している。1.自然主義的リアリズム・私小説的リアリズム 田山花袋の「蒲団」に代表される日本の自然主義文学に否定的なところは、ほぼ、丸谷才一と同じ主張のように思ったが、フランスでは、遺伝や社会 [続きを読む]
  • たる工場の怪・ジェランドの航海/コナン・ドイル
  • 「たる工場の怪」は、蝶の採集のため、アフリカ辺りを航海していた船の船長が、水の補給のために立ち寄った島の交易所で経験した怪事件だ。船長は、現地でたる工場を経営している交易所の支配人から、工場で立て続けに起きているの怪事件を聞く。それは、たるのたがが盗まれないようにと警備をしていた夜警が二人とも行方不明になってしまったという事件だ。暴行の跡や血痕、島から出て行った形跡も見られない。船長は、支配人から [続きを読む]
  • エディプスの恋人/筒井康隆
  • 本作では、火田七瀬は地方の進学高校の教務課で働いている。そして、その高校で、一人だけ異質な精神構造をした不思議な「意志」の力で守られている男子生徒を見つける。野球のボールが彼にぶつかりそうになれば、寸前でボールがさく裂し、彼を殴ろうとした同級生は空のプールに突き落とされる。彼が念動力を持っているわけではなく、何かの「意志」が彼を傷つけようとする者から守っているのだ。興味を持った七瀬は、彼の謎を探る [続きを読む]
  • 家族八景/筒井康隆
  • 火田七瀬が主人公の最初の作品。この物語は、タイトルの通り、七瀬が「お手伝いさん」として八つの異なる家族の家に住み込み、そのテレパスの能力から、各家族の裏事情(それはどちらかというとネガティブな感情の集積といってもいいかもしれない)を読み取り、ある時はその家族に敬遠され、ある時はわが身に迫る危機を脱するためにその家を立ち去るまでの物語だ。この小説を読むと、確かに“家”というのは、ある意味、閉ざされた [続きを読む]
  • 縞のある衣類箱・ポールスター号船長/コナン・ドイル
  • 「縞のある衣類箱」は、濃霧に包まれた海で一隻の漂流船を見つけた船長とクルーが遭遇した奇譚だ。その漂流船には大きな衣類箱と後頭部を斧のような鈍器で潰された死体だけが乗っていた。残されていた航海日誌には、この箱が宝物箱であること、そして取り扱いに注意すべきことが書かれていていた。船長とクルーは、唯一価値のあると思われる衣類箱を自分たちの船のキャビンに積み替えたが、その日の夜明け前、キャビンから人の叫び [続きを読む]
  • ヘル HELL/筒井康隆
  • 人間、生きていれば、誰しも後ろめたい過去は心当たりがあるはずだ。自覚しているものもあれば、無意識のものもある。ふとした時に自分の人生の善悪の収支を数えてみて、天国行きだと思う人がどれだけいるのだろうか?おそらく地獄は、多くの人にとって身近な存在に違いない。この本で描かれているヘル(地獄)は、リアリティがある。信照、勇三、武の幼馴染の三人を中心に、三人に絡んだ人々も含めて物語は展開していく。武は、信 [続きを読む]
  • 悪夢の部屋・五十年後/コナン・ドイル
  • 「悪夢の部屋」は、美しい妻に対して贅沢を許し、愛情を注いできた夫が、その妻に毒殺されそうになっており、夫は妻のたくらみを問いただすのだが、そこから、妻が別に愛している男が判明し、その男が登場するという三角関係を描いている。しかし、まるでジョークのように、この物語は唐突に終わる。コナン・ドイルらしくない、ある意味、雑ともいえるこの作品は、彼の珍品ともいえるものかもしれない。「五十年後」は、ある資本家 [続きを読む]
  • 膚黒医師・ユダヤの胸牌/コナン・ドイル
  • 「膚黒医師」 英語ではBlack Doctorとそのまま読むと、黒人の医師の話かと思うが、この物語では、インディアンの系統にありながら、容貌はヨーロッパ人的というイギリスの小さな村では目立つ風貌のラナ医師の話だ。外科医としても内科医としても有能なラナ医師は独身で、大地主の娘と恋仲になり、婚約するが、海外から届いた一通の手紙を受け取った後、突然婚約を破棄する。そして、その数日後、ラナ医師は自宅で謎の死を遂げる。 [続きを読む]
  • 熊野川
  • 自分にとって和歌山県というのは、全く空白の土地だった。大阪、奈良、三重の下にあるこの県を訪れてみたくなったのは、やはり、中上健次の熊野集を読んだせいだと思う。世界遺産の熊野神社の一つである熊野本宮大社は、紀伊半島下部の真ん中に位置していて、大阪から阪和自動車道で南紀田辺で降りても、三重から紀勢自動車道で尾鷲北で降りても、ましてや奈良から下っても、ずっと普通道路の曲がりくねった山道で真ん中に向かって [続きを読む]
  • 七瀬ふたたび/筒井康隆
  • この作品は、とても興味深く読んだ。作者特有のパロディ、ブラックユーモア気質が見られず、シリアスな仕上がりになっているからだ。最初の「邂逅」で、テレパスの七瀬が雨の山間部を走る電車の車両の中で、三歳児のテレパシスト トシオと、予知能力者 恒夫と出会う話。今にも脱線しそうなあぶなかっしい電車の中で、七瀬の超能力によって、あからさまになる乗客の厭らしい思惑や、テレパシスト同士の言葉を介さないコミュニケーシ [続きを読む]
  • 時計だらけの男・漆器の箱/コナン・ドイル
  • 「時計だらけの男」は、列車で起きた殺人事件を描いたミステリだ。喫煙車両に乗った赤ら顔の男とその隣の客車に乗った背の高い男と、連れのこれまた背の高い女性。駅に着いたところで、駅員がこの3人の乗客が消えうせた事に気づく。そして、その代わりに見慣れない若い男が胸をピストルで撃ちぬかれ、死んでいることに気づく。「消えた臨急」同様、この作品でも、名のある犯罪研究家による推理が新聞へ投稿されるのだが、その推理 [続きを読む]