白雪丸 さん プロフィール

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白雪丸さん: 金色のウイスキー、青いライオン
ハンドル名白雪丸 さん
ブログタイトル金色のウイスキー、青いライオン
ブログURLhttp://gold-blue-lion-by-shirayukimaru.blogspot.jp/
サイト紹介文1週間に1回程度の割合で更新しています。
自由文自分が好きな本や音楽、気になった出来事をとりあげています。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供75回 / 365日(平均1.4回/週) - 参加 2012/07/08 16:52

白雪丸 さんのブログ記事

  • ヘル HELL/筒井康隆
  • 人間、生きていれば、誰しも後ろめたい過去は心当たりがあるはずだ。自覚しているものもあれば、無意識のものもある。ふとした時に自分の人生の善悪の収支を数えてみて、天国行きだと思う人がどれだけいるのだろうか?おそらく地獄は、多くの人にとって身近な存在に違いない。この本で描かれているヘル(地獄)は、リアリティがある。信照、勇三、武の幼馴染の三人を中心に、三人に絡んだ人々も含めて物語は展開していく。武は、信 [続きを読む]
  • 悪夢の部屋・五十年後/コナン・ドイル
  • 「悪夢の部屋」は、美しい妻に対して贅沢を許し、愛情を注いできた夫が、その妻に毒殺されそうになっており、夫は妻のたくらみを問いただすのだが、そこから、妻が別に愛している男が判明し、その男が登場するという三角関係を描いている。しかし、まるでジョークのように、この物語は唐突に終わる。コナン・ドイルらしくない、ある意味、雑ともいえるこの作品は、彼の珍品ともいえるものかもしれない。「五十年後」は、ある資本家 [続きを読む]
  • 膚黒医師・ユダヤの胸牌/コナン・ドイル
  • 「膚黒医師」 英語ではBlack Doctorとそのまま読むと、黒人の医師の話かと思うが、この物語では、インディアンの系統にありながら、容貌はヨーロッパ人的というイギリスの小さな村では目立つ風貌のラナ医師の話だ。外科医としても内科医としても有能なラナ医師は独身で、大地主の娘と恋仲になり、婚約するが、海外から届いた一通の手紙を受け取った後、突然婚約を破棄する。そして、その数日後、ラナ医師は自宅で謎の死を遂げる。 [続きを読む]
  • 熊野川
  • 自分にとって和歌山県というのは、全く空白の土地だった。大阪、奈良、三重の下にあるこの県を訪れてみたくなったのは、やはり、中上健次の熊野集を読んだせいだと思う。世界遺産の熊野神社の一つである熊野本宮大社は、紀伊半島下部の真ん中に位置していて、大阪から阪和自動車道で南紀田辺で降りても、三重から紀勢自動車道で尾鷲北で降りても、ましてや奈良から下っても、ずっと普通道路の曲がりくねった山道で真ん中に向かって [続きを読む]
  • 七瀬ふたたび/筒井康隆
  • この作品は、とても興味深く読んだ。作者特有のパロディ、ブラックユーモア気質が見られず、シリアスな仕上がりになっているからだ。最初の「邂逅」で、テレパスの七瀬が雨の山間部を走る電車の車両の中で、三歳児のテレパシスト トシオと、予知能力者 恒夫と出会う話。今にも脱線しそうなあぶなかっしい電車の中で、七瀬の超能力によって、あからさまになる乗客の厭らしい思惑や、テレパシスト同士の言葉を介さないコミュニケーシ [続きを読む]
  • 時計だらけの男・漆器の箱/コナン・ドイル
  • 「時計だらけの男」は、列車で起きた殺人事件を描いたミステリだ。喫煙車両に乗った赤ら顔の男とその隣の客車に乗った背の高い男と、連れのこれまた背の高い女性。駅に着いたところで、駅員がこの3人の乗客が消えうせた事に気づく。そして、その代わりに見慣れない若い男が胸をピストルで撃ちぬかれ、死んでいることに気づく。「消えた臨急」同様、この作品でも、名のある犯罪研究家による推理が新聞へ投稿されるのだが、その推理 [続きを読む]
  • 日本以外全部沈没/筒井康隆
  • これは、もちろん小松左京の「日本沈没」のパロディ小説だ。地球温暖化で北極と南極の氷が溶け、ほとんどの陸地が水没する一方、大洋底マントルと大陸底マントルの交差点で押し上げられた日本列島だけが海の真ん中で陸地を確保している。新聞記者の溜まり場だった飲み屋にも著名な外国人の政治家が顔を出し、パーティーや客引きに有名な外国人の女優が顔を見せる。出てくる名前が古いが、今風に置き換えて読むことが可能だと思う。 [続きを読む]
  • 小説「私小説」/筒井康隆
  • この作品は、とても、よくできたパロディだと思う。主人公の能勢灸太郎は、赤河馬派(アカカバハ)の巨匠で、私小説の大家である。文芸時評で若い作家の作品に嘘があると評したことがきっかけで、若手の作家たちから、彼の書く私小説がすでにネタ切れで全く面白みがないものだと逆に批判されてしまう。そんな中、新しい小説の依頼を受けた灸太郎は、浮気を経験して、それを基に小説を書くことを思いつく。しかも、住み込みの若い女 [続きを読む]
  • 消えた臨急・甲虫採集家/コナン・ドイル
  • 「消えた臨急」は、小柄な中年男の依頼でリヴァプール駅を出発した臨時列車が、乗客2名、火夫1名、機関士1名、車掌1名を乗せたまま、線路上で消失してしまう事件。この当時、お金さえ出せば、臨時で列車を走らせることも出来たというのが、まず面白い。まるで、ホームズを思わせる町で著名な推理家の推理を紹介されたり、消えた列車の車掌が妻に宛てた手紙が紹介されるが、どれも直ちには真実に結びつかない。やがて、別の殺人 [続きを読む]
  • ビアンカ・オーバースタディ/筒井康隆
  • 筒井康隆が書いたライトノベル。SF学園もの?である。でも、さすがというか、過激な内容になっている。美少女のビアンカは、生物研究部の部員で、ウニを使った生殖の研究に興味を抱いていたが、それにあきたらず、自分を恋い慕っている後輩の男子生徒の塩崎の精子を採取し、観察を始める。そして、別の男子の精子をと触手を伸ばした生物研究部の先輩部員が未来から来たことがわかる。彼の世界では食用家畜として生物を巨大化させる [続きを読む]
  • 佇むひと/筒井康隆
  • ビタミンAからZまでのエピソードをインデックス形式で並べた「ビタミン」や、情報が伝聞されていくうちにデマに代わっていくプロセスを描いた「デマ」など、実験的な内容の短編小説より、「佇むひと」のような作品のほうが個人的には好きだ。人や犬や猫が地面に植えられた植物のような存在に変えられてしまう物語。犬や猫は食糧不足や緑化のために「犬柱」、「猫柱」にされ、社会に批判的な言動を行う人間は「人柱」にされてしまう [続きを読む]
  • 万引き家族/是枝裕和
  • 樹木希林が死んだせいもあったのだろうか、普段なら絶対に見ないであろう映画「万引き家族」を見た。この映画に出ている俳優の魅力が溢れんばかりに伝わってくる作品だと思う。樹木希林演じる祖母役の年寄り独特のずるさとやさしさ。リリー・フランキー演じる父親役のだらしないやさしさ。安藤サクラ演じる母親役の色っぽさとやさしさ。子役もすばらしかったと思う(特に虐待されてこの家族に保護された女の子)。小栗康平の「泥の [続きを読む]
  • フェミニズム殺人事件/筒井康隆
  • 今、この題名を読んで時代を感じるのは、やはり「フェミニズム」という言葉だろう。今の潮流で言うと、耳につくのは「ジェンダー」「ジェンダーフリー」であって、「フェミニズム」という言葉は、少なくとも公の場では滅多に聞かなくなった。女性への性差別の解放から、男女の性差別の解放に範囲が拡大されたということなのだろうか。しかし、この作品は、1989年の作品なのだから、その違和感はしかたがない...と思いつつ、その「 [続きを読む]
  • 最高級有機質肥料・腸はどこへいった/筒井康隆
  • どちらも読むのは覚悟がいる短編かもしれない。人間の排泄物についての物語だからだ。「最高級有機質肥料」は、ミトラヴァルナという惑星に大使として赴任した男の悲劇だ。彼の前任の大使は皆、栄養失調かつ自閉症になって地球に戻っていたが原因が分からない。それでも、男は、行けば上役の美しい娘と付き合える特典に目がくらみ、惑星に赴き、植物から進化したミトラヴァルナ人の首相や大臣たちに豪奢な料理で歓待される。腹一杯 [続きを読む]
  • カメロイド文部省・火星のツァラトゥストラ/筒井康隆
  • どちらも、地球で書かれた小説を地球外の惑星で盗作することを仕事とする男たちの話だ。筒井康隆のパロディ気質が遺憾なく発揮されていて楽しい。「カメロイド文部省」は、小説を書くことを請われた主人公が、宇宙の僻地 カメロイド星に妻とともに赴き、地球では名作といわれる小説「レ・ミゼラブル」「罪と罰」「チャタレイ夫人の恋人」の盗作を書こうとする物語だ。しかし、カメロイド星には、日本の文科省の役人のような通俗的 [続きを読む]
  • たそがれてゆく子さん/伊藤比呂美
  • 出だしから、惹きつけられて買ってしまった。なぜか知らないが、最初、小説だと思ったのだ。ご無沙汰してました。ご無沙汰していた間、ずんずん老いていきました。つい先日には六十歳になりまして。肉体はたるみ、顔も首も皺だらけ。吊り目だった目は垂れ目になり、生え際は全部白い。この老いに対する容赦のない描写。この後もっと続くのだが、自分の老いをここまでさらけ出してリアルに書ける人は、そうはいない。詩人でもある伊 [続きを読む]
  • 青の洞窟の怪・ブラジル猫/コナン・ドイル
  • 「青の洞窟の怪」は、肺結核で死んだ医師が残した手記に、治療のために訪れた高原の農場で、ローマ人が掘ったといわれるムラサキホタル石が採掘できる洞窟の噂を聞く。その洞窟の周りでは、真っ暗な晩に羊が姿を消し、洞穴に血がついた羊毛のかたまりがみつかっているという不気味な話だった。好奇心が強い主人公は洞窟に入り込み、奥へ奥へと進むが、誤って洞窟の中の川に落ちてしまう。濡れたマッチが乾くのを待つうちに、巨大な [続きを読む]
  • 短編小説講義/筒井康隆
  • 筒井康隆が1990年に書いた「短編小説講義」を読む。時期としては、「文学部唯野教授」が騒がれていた時期なので、唯野教授風の軽いタッチで説明しているのかと思ったら、意外とまじめな内容だった。今読んでも、古びた印象がなく、むしろ新鮮に感じたのは、事例として扱った短編小説のどれもが、なじみがないもので、古典といってもよい時代の作家の作品を扱っているせいだろう。それぞれの作品の着眼点も面白い。ディケンズ「ジョ [続きを読む]
  • 新しい地下墓地・サノクス令夫人/コナン・ドイル
  • 「新しい地下墓地」は、ケネディとビュルガーというローマ遺跡を研究している二人の考古学研究者が登場人物。ビュルガーの部屋に置いてあった珍しい蒐集品をみた友人のケネディが、新しい地下墓地をビュルガーが発見したことに気づき、その場所を教えてほしいと頼む。ビュルガーは、地下墓地の場所を教える代わりに、奇妙なことをケネディに要求する。それは、ケネディが起こした恋愛の醜聞の詳細を話してほしいということだった。 [続きを読む]
  • 大空の恐怖・皮の漏斗/コナン・ドイル
  • コナン・ドイルの恐怖小説を読む。「大空の恐怖」は、大空で数多く起こっていた遭難事故の原因を突きとめるため、飛び立ち、帰らぬ人となった一人の航空士が残した文書に、空に住む未知の怪物との遭遇が書かれていた...というSFチックな小説だ。航空機の創世記、数多く発生する遭難事故にヒントを得たものであろうが、今や、単なる移動空間と化した空に未知の世界をイメージできた時代があったのだという貴重な小説だと思う。この [続きを読む]
  • お紺昇天/筒井康隆
  • 1964年12月の著者の作品。しかし、今読んでも作品の質は落ちていないと思う。車に搭載されたAI(人工知能)お紺との愛。彼女は老朽化のため、スクラップ工場で壊される運命にある。主人である私に理由を言わず立ち去ろうとするが、真相がばれてしまう。お紺との別れを何とか引き延ばそうとする私と、スクラップ工場までついてこようとする主人を気遣うお紺との会話。まるで人間の恋人同士のやり取りのように、相思相愛感が漂う。平 [続きを読む]
  • 誰にもわかるハイデガー/筒井康隆
  • 筒井康隆が、1990年ごろ、胃に穴が二つあいて、死を感じた時に、入院先の病室で1か月かけて、ドイツの哲学者ハイデガーの哲学書「存在と時間」を読み終え、その難解な内容を自署「文学部唯野教授」の語り口を使って、分かりやすく説明しようとした作品だ。唯野教授の説明を聞いて、私の理解が正しければ、この哲学書は、人間と死の関わり方について考察している。簡単に3つにまとめてみよう。①人間(現存在)は、自分が死ぬと知 [続きを読む]
  • 文学部唯野教授のサブ・テキスト/筒井康隆
  • 小説「文学部唯野教授」のおまけみたいな本で、唯野教授への100の質問とか、インタビューが収録されているだけと切り捨てようと思ったが、この本に収められている『ポスト構造主義による「一杯のかけそば」分析』は、読む価値がある作品だと思った。「一杯のかけそば」と言って、この作品を覚えている人はどれだけいるのだろうか。この作品が今、安倍政権による道徳教育推進の最中でさえ、話題にすら上がらず消え去った事実が全て [続きを読む]
  • 聖痕/筒井康隆
  • 聖痕とは、よくも付けたタイトルだと思う。その象徴は、この物語でいえば、美少年ゆえに変質者によって切り取られた主人公 葉月貴夫の陰茎及び陰嚢の痕を指すのだろうが、その切除によって、色欲や闘争心、金銭欲から解き放たれ、平和に暮らすことができた貴夫の奇跡的な半生も指すのかもしれない。貴夫の周りに群がる多くの男女の欲望から、自分の身を守るように、彼はその男女を結びつける仲人のような役割を果たす。そして、彼 [続きを読む]
  • 文学部唯野教授/筒井康隆
  • 哲学書のコーナーで、なぜか筒井康隆が書いたハイデガーの「存在と時間」の解説本「誰にもわかるハイデガー」があった。難解なハイデガーの思想が洒脱な文章で書かれていて、ついつい読み切ったのだが、この本を書いた背景として、筒井康隆が1989年ごろ、胃に穴が空いて下血して死の存在を意識していたことと、この本の執筆の契機および病の原因だったのが自身の作品「文学部唯野教授」であることが分かった。ということで、「文学 [続きを読む]