白雪丸 さん プロフィール

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白雪丸さん: 金色のウイスキー、青いライオン
ハンドル名白雪丸 さん
ブログタイトル金色のウイスキー、青いライオン
ブログURLhttp://gold-blue-lion-by-shirayukimaru.blogspot.jp/
サイト紹介文1週間に1回程度の割合で更新しています。
自由文自分が好きな本や音楽、気になった出来事をとりあげています。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供91回 / 365日(平均1.7回/週) - 参加 2012/07/08 16:52

白雪丸 さんのブログ記事

  • 遠い山なみの光/カズオ・イシグロ
  • 読んでいて、とても不思議な気持ちになる小説だ。まるで、小津安二郎の映画のような世界が再現されているからだ。今は英国の片田舎に住む主人公の悦子は、夫を亡くし、二人の娘のうち、長女の景子が自殺で亡くなり、次女のニキはロンドンで暮らしていて、一人の生活を送っている。次女のニキは、長女の景子が自殺したことは、母の悦子の責任ではないという事を励ましてくれるのだが、悦子はそれと関係するかのように、日本で最初の [続きを読む]
  • 若紫・末摘花/源氏物語 上 角田光代 訳/日本文学全集 4
  • 若紫は、わらわ病(熱病の一種)にかかった光君が、加持祈祷を受けに山深い寺に行った際、偶然見かけた可愛らしい女童(若紫)が、思いを寄せる藤壺の宮の兄の娘という事を知り、自分のもとに引き取って育てようと、あれこれと画策する物語だ。また、その一方で、光君は、病気にかかって宮中を退出した藤壺の宮となかば強引にふたたび逢瀬を交わす。読者は物語の流れで行くと、ここで初めて、光君が藤壺の宮(自分の父の後妻で亡き [続きを読む]
  • 日の名残り/カズオ・イシグロ
  • ノーベル文学賞の受賞のインタビューで、カズオ・イシグロが、彼よりも先に受賞すべき作家として、村上春樹の名前を何のけれんもなく挙げていたのを見て、やっぱり、この人はいい人だなと思った。「日の名残り」しか、読んだことのない読者であるが、私の中では、あの忠実なおそろしいくらい不器用でまじめな執事のスティーブンスのイメージが、カズオ・イシグロに重なってしまう。久々にページをめくって読むと、やはり、いい作品 [続きを読む]
  • 空蝉・夕顔/源氏物語 上 角田光代 訳/日本文学全集 4
  • 空蝉(うつせみ)の編は、前編「帚木(ははきぎ)」で、光君が一度は関係を持った臣下の紀伊守の父である伊予介の若い後妻である空蝉に、つれなくされたことを悔しく思い、再び、彼女に近づく機会をうかがい、伊予介が屋敷を留守にするタイミングを狙い、空蝉の年の離れた弟 小君(こぎみ)を使って、彼女の寝室に忍び込もうとする話だ。しかし、忍び込もうとする光君に気づいた空蝉に逃げられ、彼は誤って紀伊守の妹の“西の対の [続きを読む]
  • 桐壺・帚木/源氏物語 上 角田光代 訳/日本文学全集 4
  • 約一千年前に生まれた恋愛小説。その作品が書かれたことも、そして現代まで生き残ったことも確かに奇跡のような出来事なのかもしれない。池澤夏樹は「源氏物語」を、こんな風に評する。『源氏物語』ではすべての登場人物が作者の頭の中から生まれた。だから「小説」なのだ。光君の誕生以前から浮舟の出家まで前後七十年に亘る登場人物たちの運命を、作者は一人で糸を紡いで染めて織って大きな緞帳にまとめ上げた。 五十四編からな [続きを読む]
  • 池澤夏樹、文学全集を編む/河出書房新社
  • 池澤夏樹が個人編集した世界文学全集/日本文学全集に関するイントロダクションのような本書。まず、池澤夏樹が日本文学全集において古典を翻訳することとなった訳者たち(殆どが小説家)に宛てた手紙がすばらしい。池澤は、三島由紀夫が日本の古典を天女のように崇め、現代語に訳すのは冒涜であると捉えていたことに触れ、「俗物であるぼくは天女を現世に連れてきて一緒に暮らしたいと思う」という。そのためにはひらひらの衣装を [続きを読む]
  • スクープドキュメント 沖縄と核/NHKスペシャル
  • 一昨年、米国防総省は「沖縄に核兵器を配備していた事実」を初めて公式に認め、機密を解除したらしい。番組では当時の機密資料と元米兵へのインタビューをもとに、沖縄への核配備がどのようなものであったかを明らかにしている。元軍人のアイゼンハワー大統領の積極的な核利用の姿勢を受け、当時、共産主義国であるソ連、中国との対立から、沖縄への核配備が進められ、極東の核戦略の拠点と位置付けられた。嘉手納の核弾薬庫に核爆 [続きを読む]
  • 知の仕事術/池澤夏樹
  • まるで、立花隆の「知のソフトウェア」のような印象のタイトルの本を、池澤夏樹が書いていることへの好奇心から買ってみた。冒頭、「自分に充分な知識がないことを自覚しないままに判断を下す」ような社会の大きな変化が目立ってきており、本書は、反・反知性主義の勧めであること、その知の継承のため、今まで自分の仕事場を公開してこなかったが、規制を緩めて自分の「知のノウハウ」を公開すること、が述べられている。以下の章 [続きを読む]
  • 三月の毛糸 川上未映子 近現代作家集 III/日本文学全集28
  • 仙台で暮らす妊娠8か月の妻と夫。実家の島根から帰る際、妻から京都に寄りたいと突然言い出す。何かに不安といら立ちを抱えている妻との会話に、半ば疲れ、頻繁に睡魔に襲われる夫。二人がホテルで寝ている時に、妻は、毛糸で生まれてくる子供の夢を見た話ををする。「その世界では三月までもが毛糸でできあがっているのよ」 「いやなことがあったり、危険なことが起きたら一瞬でほどけて、ただの毛糸になってその時間をやりすご [続きを読む]
  • 一十三十一 Billboard Live東京 8月31日
  • 六本木駅の長いエスカレータを昇って、東京ミッドタウンへ。エレベータ4階で降りると、 Billboard。19時開演のライブだったので、18時頃会場に着いたのだが、すでに1階の自由席は満席に近かった。このBillboardの会場の面白いところは、1階のアリーナ席のようなテーブル席が自由席で、2階の席が指定席になっている。たぶん、2階の眺めも良いのだろうが、アーティストを間近で見れる1階も捨てがたい。早速、飲み物と食事を始 [続きを読む]
  • 神様/神様2011 川上弘美 近現代作家集 III/日本文学全集28
  • 1993年に書かれた「神様」は、熊と川原に散歩に行く物語だ。誠実でやさしい熊と親しくなった幸せな一日。原発事故後、その「神様」をアレンジして書かれた「神様2011」。「神様」とストーリーは同じだが、 いたるところに、放射能の影が見える。この作品を読んで、久々に2011年という年を思い出した。それは、日常生活の中で、ベクレル(Bq)、マイクロシーベルト(μSv)、ミリシーベルト(mSv)という聞きなれない単位を強く意識し [続きを読む]
  • 桟橋 稲葉真弓 近現代作家集 III/日本文学全集28
  • 夫とうまくいっていない女が、幼い男の子を連れて、友人が所有している別荘を訪れる。解放された環境の中で、やることもなく、海と山に囲まれた入江の桟橋で子供が海の中の蟹をみつめている間、彼女は、小屋でアコヤ貝に真珠の核入れをしている男の作業の様子をみつめる。キール文字Эのような形の入江、 開口器で押し広げられた貝の肉の奥に真珠の核を挿入する作業、貝や魚の腐臭、ねっとりと全身にまとわりつく潮風、串刺しにさ [続きを読む]
  • 『月』について、 金井美恵子 近現代作家集 III/日本文学全集28
  • まるで詩のような小説だ。むくわれることのない恋をして嫉妬に苦しめられている男が見た月について書かれた短編小説『月』を読み返している作者が、その物語に次々と新しいイメージを追加してゆく。靴、生垣、犬、商店街、砂岩段丘、小道...そして、話は小説に戻り、男が獣医の妻を送る道すがらに見た月の場面に戻る。どこまでが男の書いた小説で、どこからが作者が付け加えたイメージか判別できない。 私は書いて、それからそれを [続きを読む]
  • 暗号手/大岡昇平
  • 大岡昇平が、フィリピンの旧日本軍 サンホセ警備隊の暗号手を務めていた時のはなし。大岡が説明する旧日本軍の暗号の説明が面白い。「部隊換字表」という暗号の単語表。発信する際に加えられる3数字の「乱数」。その数字を加工するために用いる「非算術加法」と解読するために用いる「非算術減法」。電文を暗号に変える「組立」。受信した暗号文を普通の文章に直すことを「翻訳」。これら総称の「作業」。大岡は、部隊唯一の暗号 [続きを読む]
  • 村上春樹翻訳ほとんど全仕事/村上春樹
  • この本を読むと、村上春樹という人は、本当に仕事をする人だなという実感が湧く。1979年の小説家としてのデビュー直後の1981年、フィッツジェラルドの「マイ・ロスト・シティー」から始まり、以来、36年間、80弱の作品を翻訳し続けている。小説家で、これほどの数の翻訳をこなしたのは、森鴎外以来ということらしいが、彼の仕事の実績のおかげで、日本の出版界において海外文学がこれだけ裾野を広げたと言っても過言ではないだろう [続きを読む]
  • スタンス・ドット 堀江敏幸 近現代作家集 III/日本文学全集28
  • 妻を亡くし補聴器を着けないと耳も聞こえない難聴のオーナーが経営する古いボウリング場の最後の営業日。客が誰も来ぬまま閉店になるはずだったが、トイレを借りに若いカップルに無料で1ゲーム楽しんでもらうことにする。しずかなボウリング場に、ボールが転がりピンが倒れる音がよみがえる。骨董品のような古い機械。ストライクの時、すばらしい和音をたてるこだわりのピン。そして、オーナーに全盛期のボウリング場の記憶がよみ [続きを読む]
  • 半所有者 河野多惠子 近現代作家集 III/日本文学全集28
  • 夫婦の関係を、相手の肉体の所有という観点から描いているこの作品も独特の雰囲気がある。夫が亡くなった妻の身体に激しく所有欲を感じ、葬儀前、二人きりになったところで、死姦する。己(おれ)のものだぞと、冷たくなった妻の死体を抱きしめ、性交を試みる行為を、愛情の表れと見るか、異常性欲と見るか。もし、ひそかに妻が夫を嫌っていたとすれば、レイプに近い行為とさえいえるかもしれない。最後、息子が寝ずの番を代わろう [続きを読む]
  • 魚籃観音記 筒井康隆 近現代作家集 III/日本文学全集28
  • 永井荷風の『四畳半襖の下張』が最高裁でわいせつ文書と判決されたのが、1980年11月28日。その時の判決の要旨がこれ。一、文書のわいせつ性の判断にあたつては、当該文書の性に関する露骨で詳細な描写叙述の程度とその手法、右描写叙述の文書全体に占める比重、文書に表現された思想等と右描写叙述との関連性、文書の構成や展開、さらには芸術性・思想性等による性的刺激の緩和の程度、これらの観点から該文書を全体としてみたとき [続きを読む]
  • 鳥の涙 津島 佑子 近現代作家集 III/日本文学全集28
  • 母親が子供を寝つかせる時に話す物語。しかし、それは『おまえのお父さんはまだ帰らない』からはじまり、他国に徴収され、不在となった父が、頭のない鳥となって家族のもとに戻ってくるという、どこか呪術的な話である。作者が母から聞いた『お話』は、祖母から母に伝わったものであることがわかる。そして、作者は、その『お話』をアイヌの民話集に見つけ、祖母の出身地が青森であったことから、祖母がアイヌの少女と海岸で知り合 [続きを読む]
  • 連夜 池澤夏樹 近現代作家集 III/日本文学全集28
  • 池澤夏樹の作品の特徴の一つは、現代と過去という異なる次元をむすびつけて、重ね絵のように物語に厚みを持たせる手法を用いるところだ。それは、谷崎潤一郎や丸谷才一も好んで用いた手法でもあるが、池澤夏樹の場合は、彼らと違って雰囲気が軽い。そう感じるのは、谷崎が母性、丸谷が前近代的な日本という重たい要素を重ねていたのに対し、池澤は、例えば最新作のキトラ・ボックスでは古墳の埋葬物という即物的なものを、そして、 [続きを読む]