清水長崎 さん プロフィール

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清水長崎さん: しあわせはどこにある
ハンドル名清水長崎 さん
ブログタイトルしあわせはどこにある
ブログURLhttps://blogs.yahoo.co.jp/simizunagasaki
サイト紹介文しあわせとかなしみをテーマにオリジナル小説を書いています。趣味でです。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供61回 / 365日(平均1.2回/週) - 参加 2012/12/06 17:28

清水長崎 さんのブログ記事

  •                   その一 母親と娘二人は、重い足取りで小屋の前に立った。出入り口の戸は開いていて、奥に祖母が座っているのが見えた。「おかあさん、トキです、カナと来ました」「おう、よう来たな、入ってくれ」「ばあちゃん」「カナか、お帰り、久しぶりじゃったのう」「うん、二年になる」 しばらくありきたりな話で、笑い声が交じった。しかし、カナが姿勢を正して要件を話すと、祖母も一変した。「お [続きを読む]
  • 星(つづき)
  •                  その三                  ☆ 人が生きることで、何が一番大事なことか? これをしっかりと持っていないと、まちがった生き方をすることになる。一番と二番は大きな違いだ、どっちか選ばなければならないときがあるからだ。“やさしさ”と“お金”、第一になるのはこれしかないだろう、他にはない。“やさしさ”を第一とするか、“お金”を第一にするか、日頃から考え、そし [続きを読む]
  • フィンセント
  •                    その一 おれはいろんな仕事を失敗して、画業が最後に残された仕事だと何度も自分に言い聞かせて決断した。そして、四つ下の弟に生活費の前借りを頼んだ。 テオは画商をしている、おれも一時期その仕事をしていた、だからテオの月給のこともわかっているし、テオは絵がうまく売れればどのくらいになるかを知っている、そんなこともあって、おれはテオに契約を申し出た。ただ、あくまでもテ [続きを読む]
  • フィンセント(つづき)
  •                  『星・異聞』               その一「地球上で、人が一人生まれると、夜空に星が一つ生まれるの」「いいねえ」「そして、その人が生きている間、ずっと星も夜空に輝いている」「うん」「そうして、その人が死ぬと、星は流れ星になって消えていく」「うーん」「本当は天空の小天体(塵)が、地球(または他の天体)の大気に衝突、突入して発光したものなんだけれど、“夜空”と“ [続きを読む]
  • フィンセント(つづき)
  •              『星・異聞2(小さな星、大きな星)』                その一「あああ、ついてない、それに失敗した、さらに嫌な目に合った、きょうはほとほと参った、きょうは厄日だ」「しょうがない、こんな日もある、あきらめるしかないね」「わかってる、だがこんなことばかりだ、ちょっと多すぎるよ」「贅沢を言ってはいけないよ、もっと多い人もいる、そして毎日の人もいる」「毎日だって? 誰 [続きを読む]
  • テオ
  •                    その一 おれとアニキと、どっちの道がよかったんだろう? それはわからない、たまたま二人はそれぞれの道を歩き始めて、そして歩き続けているんだ。  アニキは長男で、次男のおれは4才離れている。アニキは27才のとき画家になる決心をした、しかしすぐにそれで飯が喰えるはずはない。 そのときからおれはアニキに生活費を送っている、兄弟だからという理由だけではない、オヤジが死ん [続きを読む]
  • テオ(つづき)
  •                     ☆ アニキの絵が売れたら、アニキは自信をもって、さらに絵に打ち込める。生活も自立でき、世間からも評価される、そうなったらどんなにいいだろうか。 いや、よそう、愚痴は言わない、泣き言は言わないぞ、今をがんばるんだ、この状況をしっかり生きていくんだ。                    ☆ 嫌な気持ちも、つらいと思っても、かなしい気持ちも、苦しいと思うことも、 [続きを読む]
  • やさしさの数
  •                 その一 ミコが夕方、アパートに帰ってきたら、部屋の電気もつけずに、チコが片隅に座っていた。「チコ、どうしたの? 仕事で何かあったの?」「嫌なこと」 からだはそのままで、ポツリともらした。「大変だねえ、人が多いところは人付き合いが大変だからねえ」「姉ちゃんとこは少ないからいいなあ」「まあ、そういうことね」 そう言って、壁のスイッチを入れて部屋の電気をつけた。「元気づけ [続きを読む]
  • やさしさの数(つづき)
  •  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・「父ちゃんから、ギャンブルのお金をいっぱいとられているんじゃない?」「かあちゃんの給料は高が知れている、とうちゃんに何と言われようが、ないものはないんだから。かあちゃんはとうちゃんが借金するのが恐かった、あんたたち二人を保証人にだけはさせたくなかった」「ひとりで父ちゃんといて、つらいだろうね」「かあちゃんは大丈夫 [続きを読む]
  • 狭き道
  •                 その一 図書館のロビーで一人イスに座っているおじさんに、おじいさんが声をかけた。二人はここでいつも見かけていて、話をしたことはないが顔見知りだった。 それで、きょう初めて話をしたことになるが、そういうことで、気安く話せた。「どうした、元気がないな」「ああ、恐いんだ」「何が?」「死ぬのが恐くなったんだ」「病気か?」「いや、病気じゃない」「何があったんだ?」「ちょっとな [続きを読む]
  • 狭き道(つづき)
  • 「わかる、やってみる、おれの心なんざあ、うっちゃっていいんだ」「いや、恐いと思う心も大事なんだ、その心があるから正しい心をもつことができる」「おれみたいな役立たずでも、面倒みてくれるんだな、すまないな」 お互い、いま何をしているのか? これまで何をしてきたのか? 聞かなかったし、自分からも言わなかった。論点はただ一つ、それだけに絞って話した、そして普遍性を求めた。「おぬしが死ぬことを恐いと思うのは [続きを読む]
  • 草木の命と心と
  •                  その一 ハルとアキは、高校時代に同じ部活で大の友だちだった、そして卒業してからもときどき会ってきた。 その日、外は晴天で、入道雲がたくさん並び、蝉の声が鳴り響いていた。昼前、アキがハルの家にやってきて、久しぶりに二人は会って近況を語り合った。 ハルは母の話をした、アキは何度も遊びにきて泊ったこともあったから、おばさんのことはよく知っている。でもいまハルが話すことは [続きを読む]
  • 草木の命と心と(つづき)
  •                 その三 ハルは一冊の画集をもってきて、アキの前に置いた。「母はゴッホの虜になった、暇があったら図書館に行って、画集を見たり本を読んだりしていたの。もちろんすばらしい、きれいな絵がたくさんあった、それでも謎のある絵もあった、それはわからなくてもよかったんだけど、いつかわかりたいと思っていたの。謎がある絵は、夜空がある絵だとはわかっていたの」「そう」 ハルは画集の、ある [続きを読む]
  • 夜空に月と星と雲と
  •                  その一      夜、フェリー・ターミナルの前の公園で、少年と老人が話をしていた。少年はベンチに座って、その前に老人が立っている。「どうした、坊、元気ないみたいだな」「うん、ぼくは元気なんかないよ、ひとりぼっちのかわいそうな子どもだよ」「そうか、それはつらいな」「おじいさん、平気な顔だね、こんなぼくを見て同情しないの?」「まあ、坊のような人をたくさん知ってい [続きを読む]
  • 夜空に月と星と雲と(つづき)
  •  少年は縁側に置いている『15輪のひまわり』を見た、絵がこんなにも語りかけている。初めてその絵を見る思いだった、きれいだけではない、いろんな意味が込められている。「きのうの夜空は、どうじゃったかのう?」「きれかった、初めて見たんだ、星がすごかった、あんなにたくさんあるなんて、知らなかった」「そうか、よかったのう、今夜も見れるよ」「うん」 少年はうれしそうだった。 ここは街灯が少ないからもっとたくさん [続きを読む]
  • おもしろい
  •                     その一 アサとサトは高校時代の同級生で、卒業してからもよく会っていた。部活で3年間いっしょに汗を流した、お互いの家に泊まりに行って家族とも親しくしていた。 気が合うのか、二人っきりて話をしてゆっくり過ごした。 昼はドリップしたコーヒーを飲み、夜は数種の酒を飲んだ。久しぶりに会うその日のために用意した、少しだけだったがいい銘柄のものを味わった。 アサはニヤリと [続きを読む]
  • おもしろい(つづき)
  •               その三  酒は二人とも強かった。だが酔う前にはこの話も少しはしたが、酔ってからはしなかった、そこはわきまえていた。「“この世”だけで人間の一生を考えると、いろんな“無理”が出てくる。“理不尽”や“苦しみ”、“かなしみ”も尽きることがない」「おまえは、やさしいからなあ」「“次の世”を考えると、それらが緩和できる、がまんできるようになる」「そして、“次の世”は二つあるんだな [続きを読む]
  • 誰と?
  •                 その一 高校時代の友だちと年に一度、一泊の泊まりがけで会っている。部活でいつもいっしょにいて、仲が良かった四人が、卒業してからもよく会っていた。結婚してからも、正月二日に家族で集まった。子どもたちが中学生になってからは中断していたが、還暦を機会にまた集合するようになった。     いつもアッという間に時間が過ぎてしまう、「今度はゆっくり飲もう」と言って別れる。 まあ [続きを読む]
  • 誰と?(つづき)
  •                その三 おれは誰と一緒に考えてきたんだろう? 神か? いや、おれは神が何たるものか知らない。おれの理想の人間か? いや人間じゃないようだ。誰だ? 自然か? 自然が近いかもしれないなあ。草や葉の緑色、野の花の黄色、いつもそのきれさに感動する。タンポポの黄色、ヒマワリの黄色、鮮やかだ。そして緑色も黄色も、太陽の日差しを浴びると格別だ。どうして、あんな色がつくられるのか?  [続きを読む]
  • 戦う
  •                    その一 会社の寮の談話室に、トコが一人、テレビも付けずにぼんやりイスに座っていた。先輩がトコの肩をポンと一つ叩いて、横に座った。並んで座った二人の前には小さいテーブルがあり、そんなイスとテーブルがテレビに向ってぐるりと半円状に並んでいた。「どうしたの、元気ないわね」「はい、ちょっと落ち込んでしまって」「どこに落ち込んだの?」「どこにって?」「どこじゃなくて、何 [続きを読む]
  • 戦う(つづき)
  •  あたしは貧しい人たちのことを思うとき、心がやさしくなる。そんなとき、幸せを感じる。同じように、自然の中にいると心がやさしくなる。緑の草木、色とりどりの野の花、そして青い空と青い海、その自然の営みのふしぎを思う、感謝や喜びを覚える。 野原に座って、寝そべって、目の前の草花を見る。緑がきれい、どうしてこんなにきれいなんだろう。花の色の、あまたの原色のきれさと鮮やかさはどんなに褒め称えても尽くすことは [続きを読む]
  • 傍らに
  •                 その一「ずっと見てきたんだが、いいなあとよく見ていたつもりだったんだけど、気づかなかった」「そうか」「いま初めて気づいたんだ、“ひまわり”は花びらが落ちた、そしてしおれた花だったんだ」「そうだよ」「へっ、何だかなあ、おれ、笑っちゃうよ、いや、自分にだ、見てたんだけど、見てなかったんだな。へっ、世間も甘く見ていたんだ、きれいなものしか見ていなかった、事実を見ていなかっ [続きを読む]
  • 傍らに(つづき)
  •                  その三「疲れているようだな」「疲れました、この世はかなしいことばかりです、もう十分です、もうおれはいっぱいいっぱいです、もういいです」「安らぎはないのか?」「あなたの絵です、おれの安らぎはあなたの絵を見ることです、そしてあなたの人生を思いうかべることです」「そうか」「おれは昔からずっと、きれいだなあと見ていました。でも、あなたが描いた“夜空”が青色だとわかってから [続きを読む]
  • 貧しい人の中で最も貧しい人たち
  •                   その一「どうしたの? 元気ないみたいよ」「疲れちゃった、人との付き合いに疲れてしまった」 還暦を過ぎたおばさんと、三十路を過ぎたハルが、小さいテーブルを挟んで向き合ってイスに座っている。「そんな疲れる人のことは考えないの」「でもねえ」「うっちゃってしまうの」「できないのよ、それが」「できるさあ、人の心の中の容量は決まっているんだから、何でもかんでも入れておくこと [続きを読む]
  • 貧しい人の中で最も貧しい人たち(つづき)
  •               その二 社員食堂のフロアで、二人は話をしてゆっくりとひと時を過ごしている。広い空間に二人だけいるのは、いいものであった。「幸せはどこにある? ないと思う? どこにもないとしたら、それはかなしいことよ。そんなかなしいだけの人生じゃないと思う。どこかにある、そう思っていいと思うの」「そうね」「この世はかなしいことが多いのね、それは誰かがわがままをするから、かなしむ人がいるわ [続きを読む]