satoichi さん プロフィール

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satoichiさん: 麹町ラプソディー
ハンドル名satoichi さん
ブログタイトル麹町ラプソディー
ブログURLhttp://koujimachirhapsody.blog.fc2.com/
サイト紹介文丸の内サラリーマン(ブラック)が日常を五行で切り取るブログ。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供13回 / 365日(平均0.2回/週) - 参加 2013/04/14 04:06

satoichi さんのブログ記事

  • 孤独な世界。
  • その子は何をやらせても誰よりも上手くそれができたある子はそれを羨み、またある子はそれを妬んだ何事もないかのように軽々とこなす様に教師ですら恐れを抱いたあるとき、軽薄な子が感嘆の声と共に聞いた。「どうしてそんなに何でもできるの?」その子は渇いた目で一瞥し、ただ一言「練習」とだけ答えた [続きを読む]
  • 自分の居場所。
  • とある小国で、幼少期の能力や性格から適職を導くシステムが導入されたこれによって幼なじみだった二人は別々の道を歩むこととなった「お前はいいよな、研究者なんてさ。かっこいいじゃん。俺なんて公務員だよ。仕事を増やすために仕事して、無駄ばかりだ」久しぶりにあった友人は、相変わらず愚痴を言うばかりで何も行動しなかった何て的確なシステムなのだろう、と思った [続きを読む]
  • 時間の磨耗。
  • 幼き頃は自分のために時間を使い  巣立つ頃には人に時間を取られ長じてからは人から時間をもらい老いてからは人のために時間を使う忘れられてからは、時間のために時間を使う [続きを読む]
  • 牧場の朝。
  • 緩やかな稜線が薄く伸びた雲を包む羊たちは無言で草を食み牧羊犬が仕事を忘れて欠伸をする朴訥な主人が太陽を連れて顔を覗かせると思い出したように虫たちが歌い出す [続きを読む]
  • 欺瞞。
  • 匿名で透明な自己愛を身に纏い難解で尊大な感情に踊らされているのだろう嗜虐的な主張は自信のなさの裏返し自虐的な主張は逃げのための方便で周りを傷つけ誰より自分を深く傷つけるベックリン「ヴァイオリンを弾く死神といる自画像」 [続きを読む]
  • 旅路。
  • そこには白と黒があり不確かに明滅していた月明かりが水面に揺れ岩を洗う疲れた旅人が足を休めては来た道を指折り行く道を憂うベックリン 「山間の湖とかもめ」 [続きを読む]
  • 22時。
  • 私が家に帰る頃には、テレビはもうニュースくらいしか流れていない。もうすぐ10歳になる息子と一緒に、ぼんやりと若者の過労死のニュースを見ていた。息子がふと呟いた。「生活するために、生きたくはないよね」私は、なんとも言えない顔で息子を見た。 [続きを読む]
  • 7.「僕はカツ丼が食べたい」
  • 「僕はカツ丼が食べたい」 実際に言葉にしてみると、それはとても重要で重大なことのように思われた。丁寧に折り畳まれ、センスのいい海外の便箋に入れられた、秘密の手紙のような響きだ。 そう、僕はカツ丼が食べたいのだ。何が悲しくて、パスタとサンドウィッチばかり食べて、ビールでナッツを流し込まなきゃならないんだ。何が完璧な絶望だ。冗談じゃない。 今日も朝から雪が静かに降り注いでおり、暖かいはずの昼の光は厚い [続きを読む]
  • 5.「イタリアは孤独を輸出している」
  • 「おばあさん、今日もいい天気ですね」と僕は老婆に挨拶した。 老婆は僕の目を見て、「行動を伴わない想像力は、何の意味も持たない」と言った。「チャーリー・チャップリン」 僕と老婆は互いに微笑み、すれ違った。  僕は引き続きパスタとサンドウィッチを作り続けていた。 どんなパスタやサンドウィッチを作るかは自由だったから、僕の気分でペペロンチーノだったりクリームパスタだったり、BLTサンドだったりを作った。決 [続きを読む]
  • 3.「あなたってタフね」
  • 「ここは『世界の終わり』だ。いくつかある世界の終わりの一つだ。共通する点もあれば、異なる点もある。共通することは、街の中に入るには影を預けなければならず、そして冬が厳しいということだ。何か質問は?」 門番は僕に尋ねた。5メートルほどの高さの門の前で、我々は立ったまま会話をしていた。昼を過ぎたあたりで陽は射していたものの、物悲しい風が吹いているせいで体温が徐々に奪われていくのを感じた。風が泣いている [続きを読む]
  • 2.「君はパスタとサンドウィッチを作って欲しい」
  • 朝起きると、僕は柔らかいベッドに包まれていた。 そうだ、悪い夢だったんだ。そう思って寝直そうとしたが、布団の感触がいつもと違っていた。 ホテルのパリッとしたシーツのように、どこかしっくりこないのだ。 仕方なく上体を起こし目を開けると、まるで見覚えのない部屋だった。 ベッドの右側は大きな窓に面し、淡いグリーンのカーテン越しに柔らかな陽光が揺れている。 上体を起こしたまま正面を見ると、北欧風の木製のタ [続きを読む]
  • 1.「やれやれ、と僕は思った」
  • 大学二年生の七月から、翌年の一月にかけて、僕はほとんどパスタのことだけを考えて生きていた。 その間に二十歳の誕生日を迎えたが、その刻み目はとくに何の意味も持たなかった。 もし仮に今の僕がその時の僕に会ったなら、それを止めるだろうか。いや、おそらく止めないだろう。なぜなら、鍋の中でグツグツと煮立つトマト・ソースだけが、熱湯の中で踊るパスタだけが、その時の唯一の僕の希望であったからだ。若者にとっては、 [続きを読む]
  • 【小説】赤い屋根の家 12.赤い屋根の家
  • 「結局ね、呪いなんてなかったんだよ」 そう思わないかい、と芳樹は助手席の女性に微笑みかけた。女性はただ静かに薄い笑みを浮かべていた。「そうだろう、僕もそう思うんだ」 夜中に行こうと思っていたけれど、ちょうどいいのでこのまま寄って行こうと芳樹は思った。この時間帯なら、それほど車通りがあるわけではない。芳樹は国道の途中で車のライトを消し、赤い家の前に車を止めた。彼女を大事そうに抱えると、地下室に運んだ [続きを読む]
  • 【小説】 赤い屋根の家 11.北条のケース
  • 「先輩、俺がいくら暇だからって、この歳でこんな夜更けに、こんな張り込みみたいな真似しなくてもいいんじゃないですかね?」 西が非難の声を上げてきた。「張り込みみたいな真似、じゃなくて、純然たる張り込みだ。天然パーマの西君は張り込みは嫌いかな?」 北条は運転席で腕を組んだまま言った。筋肉質の巨漢から出る低音の効いた声は、まるで真実を述べているように車内に響く。「天パは余計です。それにしても、本当に昔か [続きを読む]
  • 【小説】 赤い屋根の家 10.佐脇のケース
  •  佐脇勇次(さわきゆうじ)は、鏡の前に座していた。「これが、その鏡か」 四十を過ぎるまで仕事一筋で趣味らしい趣味もなかった佐脇は、上司の失敗の責任を転嫁されて閑職に左遷された結果、暇を持て余していた。真面目一辺倒で生きてきたため、政治的な駆け引きなどできようもなく、妻に罵られようともそれも運命と受け入れるより他なかった。小学生の息子は、友達と遊ぶのに忙しくて自分のことなど見向きもしてくれない。 仕 [続きを読む]
  • 【小説】赤い屋根の家 9.秋豆のケース
  •  秋豆景子(あきずけいこ)は、夏の戸口に立っていた。「うーん、申し訳ないんだけど、心当たりはないですねぇ」 連日の猛暑の中、海山という若い警察官が聞き込みに来ていた。先日の銀行強盗に関連する件である。当初は銀行強盗との報道で、ニュースの地方枠として小さく取り上げられていたが、その潜伏先であった建物近くの池から大量の人形が出てきたことから、昼のワイドショーの格好のネタとなっていた。専業主婦である秋豆 [続きを読む]