油屋種吉 さん プロフィール

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油屋種吉さん: 油屋種吉の独り言
ハンドル名油屋種吉 さん
ブログタイトル油屋種吉の独り言
ブログURLhttps://blog.goo.ne.jp/knvwxco
サイト紹介文種吉が今と昔のお話をいろいろに語ります。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供53回 / 365日(平均1.0回/週) - 参加 2013/08/16 08:26

油屋種吉 さんのブログ記事

  • MAY  その4
  •  メイが元気になったのも、ほんのわずかの間だけだった。 宇宙船の内部は、何もかもめちゃめちゃ。 それにくわえて、非常事態を知らせるビービー音が船内に響きわたると、彼女のいらいらはピークに達した。 頭をかきむしり、床を思いきり踏みつけたくなる。 「ほんともう、どうしたらいいの。墜落しちゃったじゃないのさ。母さんのうそつき。気安めばっかり言ってさ」 バチバチいう音がするたびに、どこからかひとりふたりと [続きを読む]
  • MAY  その3
  •  吸い込んだガスの量は、人の意識を完全に奪ってしまうにじゅうぶんだった。 しかしメイにとっては、食べ過ぎて、腹がくちくなり、眠くなるくらいのもの。 その力は持って生まれたものだが、年月を経て、より充実してくるものといえた。 それにしても、彼女は自分が置かれた状況を把握するだけで精一杯で、どうやってこのピンチを切り抜けたらいいか、わからない。 敵に悟られないよう、彼女はうまく演技する必要があった。  [続きを読む]
  • MAY  その2
  •  黒いフードがまず、メイの目に入った。 形には覚えがある。 中学校の運動場の土手で見たことがあった。 どうやら宇宙服の一部らしい。 「あなたはどうやらわたしたちにとってじゃま者のようですね」 言葉づかいはていねいだが、彼女のかぶっているフードの上から、まわりを威圧するようなオ―ラがでていた。 (お母さんに似ているから、この人って女性みたいだわ) メイがそう思ったとたん、彼女の表情がふいにけわしくな [続きを読む]
  • MAY  その1
  •  三歳くらいの男の子がひとり、一辺が三メートルくらいの正方形の暗い部屋のまん中でうずくまっている。 上半身は、ランニングシャツ。 黒っぽい半ズボンからのびた両足の間に、小さな顔をおしあてているせいで、目鼻立ちがはっきりしない。 「ねえ、顔をあげて。おねがい」 メイは心のなかで言った。 もう少しで闇になりそうな暗さ。 闇になるのをさまたげているのは、ほんのわずかの光だけれど、それがどこから差しこんで [続きを読む]
  • ショートカット  エピローグ
  •  ルイに向けていた視線。 そうたはそれを彼からはずし、おそるおそる女の足にあてようとした。 だが、見あたらない。 彼はあわてた。 彼女を失くしたら、よしだあんなとの約束も反故になってしまうかもしれない。 そう思うと、怖かった。 あきらかに、彼は動揺していた。 視線があちこちにさまよいだすのを必死になってこらえ、姿勢を低くし、廊下の行き止まりまで見とおしてみた。 彼女の眼力が恐ろしかった。 ふうっ。 [続きを読む]
  • ショートカット  その5
  •  自分の部屋だし、入るのにだれにも遠慮はいらないはずである、 にもかかわらず、そうたはためらった。 すると、女は舞うのをやめ、 「ああそうなんだ。あなた、わたしが信じられないのね。ひょっとして魔法使いかなにかと思っているんでしょ」 まん丸いひとみをさらに大きくし、彼の青い運動靴の片方を見つめた。 とたんに、その靴に包まれた、彼の足の指がじわっと熱っぽくなる。 すごい眼力だ。 まともに眼を見つめられ [続きを読む]
  • ショートカット  その4
  •  そうたは目をほそめた。 すらりとした二十歳くらいの女性。 さっき露地で見かけた女に違いない。 まるで彼を待っているかのようだ。 手すりに両手をおき、濡れた板を包んだとたんの上を、細くて長い指で、とんとんたたいたり、なでたりしている。 雨をぞんぶんに降らしてしまい、軽くなった雲が、風によってどこかに運ばれ、日の光がようやくさしこみはじめる。 おどろくほど大きくてまん丸い夕陽が雲間にあらわれ、彼女の [続きを読む]
  • ショートカット  その3
  •  女の動きがぴたりととまった。 思わずそうたはチィッと舌打ちし、顔を引っこめる。 (気づかれたか。それにしてもめずらしく勘のいい人だ) 彼は動かない。 いや動けないといった方が、この場の状況にふさわしい。 この間、互いの心の内をさぐりあう。 ちょっとした神経戦である。 今までにもこんなことはなんどもあったが、これほど緊張を強いられるのは初めてだ。 世の中の裏街道を生きざるをえない男の人に殺気をかん [続きを読む]
  • ショートカット  その2
  •  そうたが露地をのぞきこんだとき、髪の毛がうすく、やけに肩はばの広い男が、荷台に赤いプラスチック製の赤い容器をひとつくくりつけ、自転車を押して通りかかった。 身につけているものといえば、まるで下着。 ボタン付きの白いシャツに、ステテコ。 おっちゃん、いまどきはやんねえよと、ひと声かけたくなる。 両腕でハンドルをしっかりつかんでいるが、ときどきよたよたする。 容器に、灯油かなにかがよほどいっぱいつま [続きを読む]
  • 「露地  その2」について(作者から一言)
  •  「露地 その2−油屋種吉の独り言ーシロクマーmuch81633ーはてなブログ」 上記のブログは存在しません。 決してアクセスしないでください。 有料アダルトサイトに導かれてしまいます。 読者のみなさまにご迷惑をおかけする恐れがあるので、作者の責任でお知らせすることにしました。 「露地 その1」 「露地 その2」 これらの作品はいったん消去し、「ショートカット」として書きなおすことにしました。 お知らせが [続きを読む]
  • ショートカット  その1
  •  「ああ、あ、俺って、ほんとばかばかりやって。こんなんでいったいどうすんのよ。人生。ゆめもきぼうもないじゃんか」 そうたは軽い調子でいうと、畳の上にごろんと横たわった。 とたんにザアッと音がして、窓から大量の雨が入りこんできた。 (ちっ、これでちっとは水道の出が良くなるかしんないけど、たたみがずぶぬれじゃんかよう) あわてて窓を閉めた。 だが五分もすると、ぴたりとやんだ。 これで少しは涼しくなるか [続きを読む]
  • ショートカット  プロローグ
  •  窓を開けたが、まん前に空がない。 見えるのは、高層マンションの灰色の壁。 しかたがないから、大木そうたは上を向き、大きく首を曲げた。 横長の長方形になった空が見える。 どんよりし、今にもぽつりぽつりと降りだしそうだ。 とたんに、彼の左目にぴしゃりと来た。 「あっいてて、めぐすりをさすんでも、こんなにうまくいかねえのによう。くそっいまいましい」 と、思わず声をあげた。 都会の雨は、汚れている。 左 [続きを読む]
  • 露地  その2
  •  この時刻。 いつもなら階段をのぼってくる人の足音でうるさいくらいなのに、それがない。 (いったいぜんたい、どうしたんだろう) やむをえない事情で、みんなアパートから避難してしまい、自分ひとり取り残されてしまった気分になった。 ふいに七年前、ボランチィアで行った浜通りの人の顔がうかんできて、ものがなしい気持ちになった。 ちらっと部屋のドアを見た。 さっきの子が出て来る気配がない。 携帯をポケットか [続きを読む]
  • 露地 その1
  •  窓を開けたが、まん前に空が見えない。 見えるのは、高層マンションの壁。 しかたがないから、大木そうたは首を大きく曲げた。 はるか上のほうに、横長の長方形に切り取られた空がある。 どんよりしている。 彼の顔面を狙いすましたように落ちてきた雨粒がひとつ、ふたつ。 ふたつめが、目ぐすりをさすように、彼の目玉にぴしゃりと当たった。 思わず彼は目をつむり、 「ちぇっ、せっかくよう、身もちのかたいしっかりも [続きを読む]
  • 沢姫さま  その19
  •  自分のことはすらすら話してくれた千代だったが、いざ赤ちゃんのことになると、うつむいて口をつぐんでしまった。 「おれだって身に覚えがないんだぞ」 栄二が語気強く言うと、千代は、 「あたしだって、自分の子じゃないのに」 今にも泣きだしそうになる。 「あんたがとても人間味があると思ったから、好いてしまったんだよ」 思わず、栄二が本音をさらけだすと、 「うん、たぶんそうだったんじゃないかと思っとったん。 [続きを読む]
  • 沢姫さま  その18
  •  美代が栄二のズボンの裾を引っぱり、ここじゃまずいぞな、栄二。奥の部屋でしゃべるがいいぞ、と言い、玄関に目を向けた。  ここは狭い町。 若者はほとんど都会に出てしまい、残るは年寄りばかり。 どこぞの誰がどうしたこうした、そんなうわさ話がのさばってしまう。 それがいいものなら問題がないのだが、人の不幸はみつの味とばかりに、ねたみやそねみがまじる。 美代は隣町から嫁にきて、三十年あまり。 そんなうわさ [続きを読む]
  • 沢姫さま  その17
  •  「まあ、ちょっくら見てみろや」 と、美代は栄二の上着のそでをつかみ、母屋のものかげに連れて行った。 「どうだや。あの子とどこかで会ったことがないかい。ちょっと話を聞かせてもらったけんど、どうやら、お前のことよく知ってなさるようだし」 「へえ、そりゃびっくりだな。おらのこと知ってるっとは。こっちはまったく覚えがねえっていうのによ。不思議な話だ」 栄二とその女をへだてる距離は、だいたい十メートル。  [続きを読む]
  • 沢姫さま  その16
  •  「待って。待つのよ。待てと言ってるのが聞こえないのか、このやろう」 かん高かった声がしだいに野太くなり、おしまいには男の声になった。 栄二の背筋につめたいものが走る。 (ひょっとしてあの女の正体は、やまん) そこまで心の中で言って、彼は考えるのをやめた。 すべて言葉に出すのが恐ろしかったからである。 しかし栄二の決意とはうらはらに、次から次へと山を住みかとするという妖怪変化の影が脳裡にちらついてく [続きを読む]
  • 沢姫さま  その15
  •  「行方知れずでいるうちは、大変なお世話をかけました」 栄二が、親方にていねいな謝意を述べたてている間も、母の美代は泣きはらした目を栄二に向けているだけで、ひとこともしゃべらなかった。 美代のだんまりは、帰宅してからも変わらない。 「母ちゃん、いったいどうしたん?なあんもしゃべってくんないじゃねえけ」 思いあまって栄二がたずねると、彼女はいったんぐっとものをのみこむまねをしてから、わっと泣き出した [続きを読む]
  • 沢姫さま  その14
  •  泥だらけになりながらも、栄二はふたたび日の光を見ることができた。 風が草の匂いを運んできて、思わず涙ぐんでしまう。(いったいここはどこだろう) 半分くらい穴から出たところで辺りをきょろきょろ見まわしたが、まったく見当がつかない。 風景になじみがないのだ。 杉やひのきがほとんど見受けられず、雑木や野イチゴの茂みばかりが目につく。 ここがいつも通っている山かと思うほどだ。 最後のひとかきで、体ぜんた [続きを読む]
  • 沢姫さま  その13
  •  「さあおいそぎください。あなたさまはもう、このお屋敷のお客さまではないのですからね」 年増の召使いの態度が冷たくなった。 彼女は体をゆっくり反転させると、栄二に和服の背中をみせた。 (はやく仕度をしろということなのだろうがこのさき俺はどうやって家に) 不安ばかりがつのってくる。 屋敷の廊下がまるでもぐら穴のようにくねくねと地中深くまでつづいている。 (俺は魔法の国のアリスじゃないんだぞ。ええいあ [続きを読む]
  • 沢姫さま  その12
  •  この部屋に姫さまがいる。 千代はそのことを、栄二に伝えたかった。 それを感じとり、栄二のこころはじわりと熱くなった。 こんな化け物やしきにいて、どうして人間味を保っていられるのだろう。 驚きとともに、彼女に対する特別なおもいがこみあげてきた。 愛しさと呼ぶほどには成熟してはいなかったけれども。 間違いなく好意以上のものだった。 千代はしゃがんだまま、彼に近づくと、 「あれをよくごらんなさい。姫さ [続きを読む]
  • 沢姫さま  その11
  •  「やれやれ、やっと小骨がとれましたよ」 栄二はそう言って、部屋にもどった。 「あれっ、大丈夫ですか。唇から赤いものがのぞいていますわ」 年輩の召使いが立ち上がり、そう言って栄二に近づこうとした。 「いい、いいんです。ほんとに大した傷じゃなかったんです」 「でも、ひどいことになりでもしたら」 「大丈夫ですったら」 「ご遠慮なさらないで、くださいましね」 なにを思ったか、彼女は小袖で自分の顔をかくし [続きを読む]
  • 沢姫さま  その10
  •  食事をとったのは、栄二にとってはなじみの部屋だった。 着物を身につけた女がふたり、つぎつぎに膳にのせた料理を運んできては、栄二の前においた。 姫と呼ばれる女がきている衣とは比べようもないほど粗末だ。 木綿で織られているようで、こざっぱりしていて汚れがない。 ひとりは二十歳くらいで、もうひとりは四十がらみ。 山の奥にもかかわらず、料理はけっこう海のさちでいろどられていた。 「わあ、これはすごい」  [続きを読む]
  • 沢姫さま  その9
  •  「寝てるとき、お、おれ、何にもしなかったですよね」 ずっと気になっていたことを、この時になって初めてきいた。 とにかく夢も見ずにぐっすり眠っていたのである。 そんなことで女のからだに触れられるはずがなかった。 「ふふっ、さあどうだったでしょう。何にもなかったんなら、こうやっていっしょに湯船につかることってできるかしら」 女はそう言って、ひと足、栄二に近づく。 ザバッと音たて、栄二は湯からあがろう [続きを読む]