油屋種吉 さん プロフィール

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油屋種吉さん: 油屋種吉の独り言
ハンドル名油屋種吉 さん
ブログタイトル油屋種吉の独り言
ブログURLhttp://blog.goo.ne.jp/knvwxco
サイト紹介文種吉が今と昔のお話をいろいろに語ります。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供75回 / 365日(平均1.4回/週) - 参加 2013/08/16 08:26

油屋種吉 さんのブログ記事

  • メイ  その4
  •  メイが三歳になった頃、不思議なことが起こりました。 いつものように、メリカがベッドに眠っている彼女のもとに行くと、ふとんの中はからっぽです。 メリカの顔は青ざめました。 モンクの家は小さく、同じ部屋で家族みんなで暮らしています。 台所や浴室など彼女が行きそうなところを探しまわりましたが、どうにも彼女の姿がありません。 「ねえ、おまえさん。ねえったら」 ゴーゴ―いびきをたてているモンクに声をかけま [続きを読む]
  • メイ   その3
  •  山のふもとにある家の庭先まで来ますと、へい越しにモンクの妻メリカがしゃがみこんでいるのが見えました。 「おい、そんなところで何してる?まだまだ寒いぞ。風邪をひくからうちのなかにいればいいものを」 彼がやさしく声をかけると、メリカは驚いたのか急に立ち上がり、声のありかをさがそうときょろきょろしました。 「ここだよ、ここ。早く門を開けてくれないか」 夫がかぶっている黒い帽子が見えたのしょう。 彼女は [続きを読む]
  • メイ  その2
  •  「どういうことだ、これは?こんな状態で小さな命をよくながらえたものだ」 このままにしておくと、どのみち死んでしまうと思ったモンクは、必死になって声の主を探しはじめました。 「おおい、どこだい。おじさんが助けにきたよ」 彼の声が聞こえたのか、一瞬、泣き声がとだえました。 (チィッ、こりゃだめだ。もっと慎重にやらなくては) 巨大なホットケーキ型の宇宙船のようです。きっと何らかの故障で地球に不時着した [続きを読む]
  • メイ   その1
  •  太陽系のはるかかなたに、地球によく似た星がありました。 それはたまごのような形で、ぐるぐる回りながら、気が遠くなるほどの時間をかけて地球のそばを通っていきます。 ちょうどその星が地球に近づいていたころ、ひとりの青年がアジア大陸の奥地で、山のぼりのさいちゅうでした。 ふいにあたりが明るくなったので、空を見あげると、何かがきらきら光りながら落ちていきます。 彼は首からつるしたカメラをとりだし、その物 [続きを読む]
  • 我も年老いたり。
  •  他人事のように思っていたからだの老化。 このところ日増しにすすんでいる。 目や歯がうまくない。 特に、歯。 三年のみつづけたザイザル錠のせいかどうか知らないが、抗生物質を処方されると、腹痛や下痢、じんましんがでるようになってしまった。 昨年、大学病院まで行き、とことんわるくなったむし歯を抜いていただいた折のことだ。 若い担当医に、 「自分がわるいんですよ」 と眉間にしわを寄せられた。 だから、歯 [続きを読む]
  • ゆがむ エピローグ
  •  それから一ヶ月。 吹奏楽部の朝練がないにもかかわらず、あゆみはだれよりも早く起きだし、食卓を机がわりにして文庫本を読んでいる。 ゴルフにでかけるのか、父のつよしが大きなあくびをしながら、あいうえおのはっきりしない口調で、彼女に語りかけた。 「あゆみい、はやいなあ。きょうはがっこうかあ」 あゆみは父の相手をしない。 本のページを見つめたまま、身じろぎもしないでいる。 「ああそうだ。足どうした?お父 [続きを読む]
  • ゆがむ その12
  •  たけしの家の玄関。 戸外からドアを開けて入ったところが広い。 子どもが十人くらい押し合いへしあいできるくらいである。 それもそのはずだ。 玄関の扉の上の方に、奥村学習塾の看板がかけられている。 講師名は奥村ちづる。 たけしの母が先生らしい。 奥に向かって右側に、備えつけの大きな靴入れがある。 上がり口が二段になっていて、五六人の子どもが一段目にすわり、落ち着いて靴を脱ぐことができるように造られて [続きを読む]
  • ゆがむ その11
  •  机と壁の間にできた空間が凍てついてしまったように感じ、たけしはピクリとも動けないでいる。 (くそっ、せっかくのチャンスなのにな) 一応そう思ってみるものの、罪悪感がかみなり雲のように勢いよくわきあがってくる。 「彼女との約束をどうするんだ。お前はとんでもないことをしているんだぞ」 もうひとりのたけしの声が耳奥でひびく。 彼の気持ちがなえ、息をするかすかな音さえ、気になってしょうがない。 (どうせ [続きを読む]
  • ゆがむ その10
  •  家にたどりついたものの、あゆみは玄関に入りづらい。 ドアノブに手をかけたまま、かたまってしまった。 「どうすんだよ、きのした?早くお母さんに言わなくっちゃ」 「だってさ。あんまり心配かけたくないんだもの。こんな姿、親に見せられるわけないでしょ?」 「そんなこと言ってる場合かよ。事故だよ、事故。自分のせいじゃないだろ。まず傷の手当てをするのが一番だろが」 「そんなことぐらい、言われなくたってわかっ [続きを読む]
  • ゆがむ その9
  •  奥村たけしと連れだって歩けるのがうれしく、あゆみは祖母のことなど忘れてしまっているかのようだった。 「木下さあ。そんなにいそがなくてだいじょうぶだから。俺さ、きょうは時間があるんだし、もっとゆっくり・・・・・・」 たけしはあゆみの歩調に合わせるだけで精いっぱい。 ついつい、家で飼っている雄犬ぺスを思い出した。 ぺスを散歩に連れていくと、いつだってがむしゃらに走りだそうとするので、彼の勢いをそごう [続きを読む]
  • ゆがむ その8 
  •  「ちょっと散歩にでかけてきます」 玄関の三和土で、あゆみが台所にいるとも子に声をかけた。 「はあい。気をつけるのよ。あまり遠くに行かないで。たけしくん、良かったらゆっくりして行きなさいね」 とも子がドアをあけて、にっこり笑う。 「わっかりました」 あゆみは彼女の忠告が気に入らなかったのか、うつむいて口をゆがめた。 「ねっ、いつまでも子ども扱いでしょ」 自転車のハンドルをにぎっているたけしのほうを [続きを読む]
  • ゆがむ その7
  • 部屋の雰囲気がいつもと違うようにあゆみには感じられる。 とても窮屈で、息をするのさえつらい。 まるで眼に見えない何者かが、彼女の胸にのしかかっているように思われた。「何言ってんのよ、ぶつぶつ。まったくあんたの気性は誰かさんにそっくり」 声がまた聞こえた。 「いったい誰なの。わたしを苦しめるのは」 しばらく待ったが、その問いに返事はない。 (このぶんじゃ割れた鏡に閉じ込められた状態の祖母に何か大変な [続きを読む]
  • ゆがむ その6
  •  奥村たけしもあゆみの誘いを待っていたらしく、ふたりはすぐに意気投合した。 一週間くらい経ったある土曜日のお昼過ぎ、彼は彼女の招きに応じ、木下家を訪れた。 「母さん、ただいま」 あゆみは廊下の奥に向かって声をかけた。 だがとも子は出て来ない。 あゆみはいったん彼を応接間に招き入れると、とも子がいるはずの台所へむかった。 「母さんねえ。奥村たけしくんって覚えてる?彼が来たんだけど・・・・・・」 とも [続きを読む]
  • ゆがむ その5
  •  「おい、木下。今の男の子だれだ。なれなれしくお前と話してたじゃんか。おとなしいと思ってたけどお前、すみにおけないな」 教室にもどってきたクラス一番のつっぱりみゆうにたけしの姿を見られてしまい、あゆみはどぎまぎしてし、どうこたえていいかわからない。 「あっ、あ、あれはただの先輩ですよ。うちの近所に長く住んでるもんですからなつかしくてつい・・・・・・。ごめんなさい」 「へえ、お前もうそがうまくなった [続きを読む]
  • ゆがむ その4
  •  「ちょっとちょっと。だめじゃないのあゆみ。大事なもの忘れちゃ」 とも子が早く学校に出かけようとかけ出して行くあゆみを追いかけきて、玄関さきで大きな声をだした。 右手に白くて長い袋を持ち、ぶらぶら振る。 「これよ、これ」 あせっているせいか、あゆみはとも子のほうを見ない。 肩からさげた鞄をいったん地面におろすとなかに入っているものを調べはじめた。 「変なの?わたしなにも忘れてないわよ」 「うそおっ [続きを読む]
  • ゆがむ その3
  •  「ええっ、ばあちゃ・・・・・・。うそで しょ、そ、そんな・・・・・・」  落ちついていたはずのあゆみだったが、さ すがにそわそわしだした。  彼女の下半身ががくがくしはじめる。 あゆみが生まれたとき、祖母のみよ子はま だ健在だった。  「この子はとても頭が大きいから将来きっ と立派な人になるよ」  産院のベッドで横たわる母さんを見て、ば あちゃんがそう言ったんだよ、と後年父のつ よしがあゆみに教えた。   [続きを読む]
  • ゆがむ その2
  •  その夜あゆみは昼間興奮したせいかなかなか寝つけなかった。 柵を乗りこえる羊を思い浮かべ一匹二匹とかぞえはじめたが、そのうちなんと羊がたけしに変身する始末。 考えもしなかったたけしの告白。 あゆみの驚きは大きかった。 彼の言葉やしぐさがいやでもありありと思いだしてしまう。 これだけ興奮しちゃとても眠れやしないわと彼女は足音をしのばせ階下におりた。 目がさえ、喉はからからだ。 つめたい水でも飲もうと [続きを読む]
  • ゆがむ その1
  •  「ああ、あぶなかった。あのままあそこにいたら、おれ完全にアウトだったよな」 たけしは顔をまっさおにし、ぶつかった衝撃でねじまげられた自転車を青ざめた顔で見つめた。 軽トラックはガードレールにぶつかった状態で停まっている。 運転席の年輩の男はどうしたのかなかなか下りて来ない。 「ちょっとお何やってんのよ。おりたらいいでしょ」 いつもはおとなしいあゆみが大胆にも軽トラックのそばまで歩き寄り抗議しはじ [続きを読む]
  • ゆがむ プロローグ
  •  台所で朝食の用意をしているとも子のそばにあゆみが来て、 「ちょっとねえ、お母さん。洗面所の鏡のことなんだけど」 と、声をひそめた。 「かがみ?鏡がどうかしたの。深刻そうな顔してなによ。びっくりするじゃないの」 「ごめん。でもね」 「何をどう思ってるか知らないけどあの鏡はね。お母さんが嫁に来るとき、わたしのおばあさんがくだすったものなの。なんでも娘時代に骨董品屋で買ったんですって。とっても素敵でし [続きを読む]
  • いやな予感 エピローグ
  •  久しぶりにタケルはぐっすり眠った。 枕もとの目ざまし時計をみると、午前十時。 母親をもとめて、あわてて台所に行ったが、彼女はいない。 タケル用の椅子の上で、彼になついている飼い猫が一匹みゃああと鳴いた。 朝食が用意されているらしく、彼が小学一年生のときに街のデパートで母に買ってもらったドラえもんの絵つきのふきんが大好物のオムレツの上にかぶせられていた。 「タケルおはよう。よく眠れましたか。おかあ [続きを読む]
  • いやな予感 その5
  •  久しぶりにタケルは自室のベッドに横たわっている。 天井の板がどれもすすで黒い。 子どものために、もう少し、部屋をきれいにしてほしいと思うが、小さな土建屋さんに勤めているだけの父にむりはいえない。 猿にひっかかれたところが、時折痛む。 右手を曲げ、手首に巻かれた包帯をじっと見つめていると、くやしさで胸がいっぱいになった。 「一週間だぞ、いいか。一日でも欠けたらだめだ。お前が誰にも見つからないでいら [続きを読む]
  • いやな予感 その4
  •  突然、屋根の上が騒がしくなった。 ドタドタと何かがかけまわっている。 「ちょっとイサム。怖いわ。いったい何がいるんだろね」 ミホが天井を見つめ、不安を口にする。 「体が重そうだから、からずじゃなさそうだしね。まるで人間の子がふざけてるみたいだな。とにかくちょっと様子をみよう。山の中だし・・・・・・。今外に出るとあぶないめにあうかも」 「玄関の扉があけっぱなしだったわ。何かわかんないけど、入って来 [続きを読む]
  • いやな予感 その3
  •  「タケルが家に帰って来ないんだよ」 納屋の軒先にあらわれた紋付はかま姿の老人の寂しげなもの言いが、いつまでもイサムの心をとらえて放さない。 その老人はどことなくおぼろげで、ひょっとしたらこの世の人ではなかったかもしれないと、彼は思う。 たとえ彼が幽霊だったとしてもかまわない。 孫かわいさのあまり、ご先祖があの世からこの世へ、何らかのやり方でわたってくることだってありうる。 イサムはそう思いたかっ [続きを読む]
  • いやな予感 その2
  •  イサムが住む町営住宅の近くを、大川が流れている。 タケルは、その川の土手にある道を、歩いて家まで帰るつもりらしい。 「お前、どうしてこんな道を、わざわざ通って行くんだ?」 「べつに、いいじゃんか」 タケルは、イサムの眼を見ないで言う。 大通りを自転車で来れば良かったのに、と、イサムは言おうとして喉まで出かかった。 だが、タケルの気持ちを考え、言いそびれてしまった。 タケルは上着のポケットに両手を [続きを読む]
  • いやな予感 その1
  •  イサムの住居は、一戸建ての町営住宅。 活性化を図ろうと、町が低い山を切り開き苦労して造り上げた工業団地に、採算ありと都会からいくつかの企業がのりこんで来た。 彼の父はそのうちの一企業の管理職についていることもあり、優先的に住めた。 それは彼が小学五年の時のことで、もう三年が経っている。 タケルはイサムの勉強部屋に入るなり、 「いい家に住んでるね。おれの部屋なんて、昼間でもうす暗いんだ、裏手に竹藪 [続きを読む]