丸次郎 さん プロフィール

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丸次郎さん: 丸次郎「ショート・ストーリー」
ハンドル名丸次郎 さん
ブログタイトル丸次郎「ショート・ストーリー」
ブログURLhttps://ameblo.jp/23234123/
サイト紹介文様々なジャンルのショート・ストーリーを書いています。時々、ポエムも書いています。ぜひご覧ください。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供44回 / 365日(平均0.8回/週) - 参加 2013/09/07 17:31

丸次郎 さんのブログ記事

  • ショートストーリー941
  • 「夏までだって?!...そんなに長いのか?」思いも寄らぬ泰子の言葉に、和雄は驚き、真顔でそう返した。「だって、先方の予定に合わせて滞在するんですもの。当然でしょ?...1週間、2週間って訳にはいかないわ。」泰子は鏡の前に座り、長い髪を梳かしながら、平然とそう答えた。この春から、イタリアのベネチアへ渡り、現地にいる職人のもとで宝飾品のデザインについて本格的に学ぶことを決めた泰子。その滞在期間が、予想 [続きを読む]
  • ショートストーリー940
  • 「俺、見送りになんて、行かないからな。...」勇二は、素っ気ない口調でそう言うと、皺の寄った長い煙草を咥え、細い紫煙を天井へと吐き出した。まだ、春の温もりとは程遠い、1月下旬の朝。薬缶の口から、沸騰した湯の湯気が勢いよく噴きあがり、ピーッという耳障りな音を鳴らし始めると、二人の会話は暫し途絶えた。「いつ帰国するか分からない女を、気長に待ってなんかいられない。。。そうなんでしょ?」優子は、ガスコンロ [続きを読む]
  • ショートストーリー939
  • 「ええ、分かってますよ。...それでも、あなたのことを愛しているんです。」アキラは、いつになく真面目な顔で香織を見つめ、言った。冬の海とは思えない程、穏やかに煌めいている太平洋。その沿岸に建つ、オープンしたての広大なカフェで、香織はアキラからの突然の告白に戸惑い、うつむいた。「今日は、そういう話をする為に、ここへ来たわけじゃないでしょ?...公私混同しないで。」香織は、アキラが通う外国語教室の担当 [続きを読む]
  • ショートストーリー938
  • 靖之が郁美を見たのは、約5年ぶりのことであった。ベージュのダウンコートに毛皮のマフラー、そして黒いブーツ。靖之と交際していた頃と違い、その雰囲気は、どこかセレブのようにも感じられた。肘から提げているブランド物のバッグには、カラフルなリボンが付けられ、そこだけは当時の郁美を感じさせた。歩道を歩く郁美に、靖之は声をかけることもなく、その脇を車で通りすぎていった。交際していた頃より美しく見えた現在の郁美 [続きを読む]
  • ショートストーリー937
  • 山間を流れる小川に架かっている古い木造の橋を渡り終えると、タカシはバッグから地図を取り出し、眺め始めた。「おかしいなぁ。。この辺りに、あいつは住んでいたはずなのだが。。」“あいつ”とは、タカシの高校時代からの親友、雄一のことである。雄一は高校を卒業すると、この辺鄙な農村を離れ、東京へ出てサラリーマンになった。一方、タカシは暫らく、この村に留まり、実家の農業を手伝っていたが、やがて大阪へと出ていった [続きを読む]
  • ショートストーリー936
  • 「また、会えるよな?...」海岸道路に停めた赤いコルベットの中で、浩二はルーフの小窓から見える青空を見つめ、そう呟いた。12月だというのに、出会ったあの夏の日を思い起こさせるような暑い陽射しが、浩二の頬を照らしていた。海風に運ばれ、ゆっくりと流れゆくちぎれ雲が、亜樹子の面影を浩二の脳裏にまばゆく甦らせ、胸を熱くさせた。サイドブレーキを下ろし、ギアを入れると、浩二は煌めく渚に別れを告げ、アクセルを踏 [続きを読む]
  • ショートストーリー935
  • 「社長...お車のご用意が出来ました。」秘書の田中にそう言われ、和美は、おもむろにソファーから立ち上がると、姿見で全身のコーディネイトをチェックしながら言った。「田中...私、今夜のパーティー、欠席になってるわよね?」「はい。..パーティー出席者の顔ぶれを見ましても、社長が出席なさるほどの価値は無いようですし、何よりも肝心の市長が欠席する模様ですから。」田中が即座にそう言うと、和美は何も答えず、社 [続きを読む]
  • ショートストーリー934
  • 先週、恋人と別れて以来、まだ失恋の痛みが癒えていない菜穂子は、一人電車に乗り、懐かしい街へと降り立った。「もう、無責任な愛はいらない。。あなたが、どんなに言い訳しても、もう、あの頃には戻れないの。」枯葉が気ままに舞う、夕焼けの並木道を歩きながら、菜穂子は心でそう呟いていた。ワイン色のダッフルコートが菜穂子の体を優しく包んでいても、その心までは温めてくれなかった。時折、すれ違ってゆく恋人達の顔には、 [続きを読む]
  • ショートストーリー933
  • 「まぁ、いいじゃないか。。夜も遅いことだし。...今夜は、ここに泊まっていきなさい。」帝特ホテルのラウンジで、密友物産の次期社長と目されている豪川と仕事の打ち合わせをしていたサユリは、帰り際にそう言われ、立ち止まった。豪川は密友物産のグループ企業175社を統括する立場にあり、密友物産会長、社長に次ぐナンバー3の座にいた。豪川は学生時代、ラガーマンとして鳴らし、日本代表候補にも名を連ねたほどであった [続きを読む]
  • ショートストーリー932
  • 「もう、それ以上、何も言わないでください。」シゲルは先程までの笑みから一転、厳しい眼差しに変わると、香奈枝にそう言った。「あなたには、守るべきものがあるはずだ。。それを大切にしてほしい。」シゲルは、そう言い残すと、愛車の白いクーペに乗りこんだ。「ちょっと待って!...まだ行かないで。。」今にも走り去ろうとしているシゲルに向かい、香奈枝はそう叫ぶと、駆け寄っていった。そんな香奈枝の姿に気づいたシゲル [続きを読む]
  • ショートストーリー931
  • 18年の時を経て、ユミコが久しぶりに東京を訪れたその日、前日から続いている冷たい雨は、まだ止んでいなかった。スクランブル交差点を渡る人々の群れに目眩を覚えながら、ユミコは待ち合わせのホテルへ向け、履き慣れないハイヒールの足で歩き続けた。やがて見覚えのある小さな路地が前方に現れ、ユミコは迷わずそこを左に曲がった。「この空間、あの頃と、な〜んにも変わってない。まるで時が止まっているみたい。。」レンガ造 [続きを読む]
  • ショートストーリー930
  • 人も疎らな、夜の駅。。。終電がプラットホームから走り去った後、こげ茶色のトレンチコートを羽織った1人の男が、革製の使い古されたアタッシュケースを片手に、改札を通り過ぎていった。男の名は、片霧。駅前の小さなロータリーには、乗車待ちのタクシーが2台。球の切れかけた外灯は不規則に点灯し、雨に濡れたベンチの隅に座っている老人を照らしていた。駅前に立ち、そんな光景を暫らく見ていた片霧は、コートの襟を立てると [続きを読む]
  • ショートストーリー929
  • 「こんな遅い時間に、こんな寂しい場所で、いったい何をしているんだろう?」夜10時を過ぎた頃、秀夫は帰宅途中、気になる光景を目にし、車を路肩に停めた。台風が近づいている海に、せり立つ岸壁。その頂上で、手にした懐中電灯の明かりを頼りに、誰かが歩いていた。見て見ぬふりをし、そのままアクセルを踏んで走り去ることも出来たが、秀夫は、どうしてもそんな気にはなれず、車を降りたのであった。懐中電灯の明かりは、少しず [続きを読む]
  • ショートストーリー928
  • 「明日、名古屋着13時07分の新幹線で行くから、よろしく頼むよ。。」昨夜、突然アキラから電話でそう言われ、文菜は、たじろいだ。「ずいぶん急ね。。私にだって都合があるのよ。。そんな、一方的に決められても困るわ。」文菜が何を言おうとも、アキラは自分の意志を曲げることはなく、結局、文菜が折れることになった。「分かった。。駅ビルの、いつもの喫茶店で待ってる。。」浮かない声でそう答えた文菜は、電話を切ると、うな [続きを読む]
  • ショートストーリー927
  • 長い冬が終わり、川沿いの土手にようやく土筆が顔を覗かせ始めた頃、イズミは遠く離れた東京から、この村へと引っ越してきた。父親の転勤の為、高校3年生になる春、都内の私立校から東北の過疎の村にある県立高校へと転校してきたイズミは、環境の変化になかなか慣れることが出来ずにいた。特にイズミを困らせたのが、この地方独特の方言であった。標準語を話すイズミにクラスメイトたちは、「上品でお高い人」というレッテルを貼 [続きを読む]
  • ショートストーリー926
  • いつもの珈琲が、やけにほろ苦く感じられた夜のことだった。。。勇二は使い捨てのライターで煙草に火を点けると、ジャケットの内ポケットから、おもむろに携帯を取り出し、登録した電話帳から、ある女の名前を選ぶとボタンを押した。煙を吐き出しながら、目を細める勇二。その女に電話をしようかと暫らく迷った挙句、結局、勇二は携帯を畳むと再び内ポケットに仕舞った。なかなか寝付けない、深夜2時...勇二はベッドから起き上 [続きを読む]
  • ショートストーリー925
  • 「まもなく2番線ホームに、のぞみ14号博多行きが参ります。...」構内アナウンスの声が流れると、幸絵は重そうなボストンバッグを両手で持ち上げ、細い右肩にかけた。そして地下からホームへと上がってくるエスカレーターと階段を寂し気な眼差しで見つめたあと残念そうな表情をし、うつむいた。やがて、新幹線がホームに入ってくると、幸絵は再びエスカレーターのほうへ目をやり、溜め息をつくと2枚の乗車券を取り出し、乗降口 [続きを読む]
  • ショートストーリー924
  • 「ここで降ろして。...もうこれ以上、一緒にいたくないの。」暫らくの間、沈黙していた純子は、突然重い口を開くと、ハンドルを握る泰彦の目を鋭く見つめ言った。秋の気配に包まれた海岸線の緩く大きなカーブを抜けると、泰彦はギアを徐々に下げながら車を減速させ、静かに路肩へと停車した。サングラスと頬の隙間から覗く泰彦の目が、純子には、やけに冷たく感じられた。泰彦はハンドルを握り、前方を見つめたまま、独り言のよ [続きを読む]
  • ショートストーリー923
  • ポプラ並木の葉が、秋の陽射しに輝いて見える午後...。文庫本を右手に持って読みながら、時折、顔をあげ歩くひとりの女がいた。背中まで伸びたストレートの黒髪は艶やかな光沢を湛え、たまにすれ違う男達を振り向かせていた。北風に吹かれ、転がる空き缶が、まるで意思を持っているかのように彼女の足元まで転がり止まった。彼女は文庫本から目を離し、足元の空き缶に目をやると、迷うことなく空いている左手で拾い上げ、辺りを [続きを読む]
  • ショートストーリー922
  • 「あのぅ...もう一度..会って頂けますか?」英会話講習の最終日、帰り際にそう言われたカズキは、どう答えたら良いのか分からず、暫し沈黙した。それもそのはず。。。27才も年下の短大生ユリナに真顔で言われたのだから。。。カズキは駅前にある英会話教室でユリナと同じグループになり、毎回、ごくありきたりな会話をする程度の仲であった。カズキは、すでに結構な中年になっていたが、いまだ所帯をもっていなかった。そん [続きを読む]
  • ショートストーリー921
  • 太平洋からの潮風が、奈津子の長い髪を揺らし、9月の陽射しが襟元から少しだけ見えているペンダントを輝かせていた。「そろそろ行きましょうか?...開演の3時間前までには着かないと。。」腕時計を見ながら、マネージャーの安川が奈津子に淡々と、そう声をかけた。奈津子の住むマンション近くにある、海の見えるこのカフェで、奈津子は今後の進退について安川と話し合いをしていた。引退を思い留まるよう説得する安川と、それ [続きを読む]
  • ショートストーリー920
  • 「もう悩まなくていい。。。君は、君のままでいいんだ。」ユカリが投げつけた白いシャツを拾い上げると、アキラは、それをソファーに置き、言った。「それじゃ、またな。。いろいろ、ありがとう。」そう言い残し、ドアを開け出ていったアキラを、ユカリは床に座ったまま無言で見つめていた。アキラの車が路上から走り去る音を聞き、ユカリは「これで、何人目かしら?。。。結局、みんな私のもとから去っていくのね。。」と、誰かに [続きを読む]
  • ショートストーリー919
  • 「結局、こうされたかったんだろ?」男は無表情のまま、冷たくそう言うと、絵里奈の体を強く抱きしめようとした。「やめて!!バカにするのもいい加減にしてよ!誰が、あんたなんかと!」絵里奈は凄まじい形相で男を睨みながら、そう叫び、両手で男の腕を掃った。大通りからビルを背にして2本目の小さな路地裏ゆえに、街の喧噪と相まって、人々は誰も二人に気づかなかった。「じゃあなんで、俺の誘いに乗って、のこのこと現れたん [続きを読む]
  • ショートストーリー918
  • 「もう、私のことは忘れて。。。それ以外に、お互いが楽になる術などないのだから。。」突如、そう言った彩子に和真は驚き顔を向けると、潤んだ目を見つめた。台風が過ぎ去った、7月の海...。穏やかで優しい風が、コテージにいる二人の間を通り抜けていった。。。「いきなり、何言ってるんだ?。。俺たち、まだ出会ったばかりじゃないか?」確かに、まだ別れるには、あまりにも早すぎるタイミングであった。「お互いを知り尽く [続きを読む]
  • ショートストーリー917
  • 幹線道路の大きな交差点の近くにある、7階建てのビル。その5階にあるカフェの窓から、行き交う車を漠然と見つめ、ユリエは物思いに耽っていた。「時の流れが速すぎる。。。何もかもが、意味もなく急ぎ過ぎてる。。。」そんなことを思い、ひとくちだけ熱い紅茶を飲むと、ユリエは、どこか見知らぬ場所へと旅立ちたくなった。行き先は、どこでもよかった。ただ、今の現実や日常から解放され、何ものにも束縛されず、気楽に自分らし [続きを読む]