服部武雄 さん プロフィール

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服部武雄さん: 幕末血戦録
ハンドル名服部武雄 さん
ブログタイトル幕末血戦録
ブログURLhttp://thshinsengumi.seesaa.net/
サイト紹介文若者達が異なる信念の元に命を賭した時代、幕末。新撰組と御陵衛士を中心に、人々の生き様を書き記します。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供26回 / 365日(平均0.5回/週) - 参加 2013/12/07 01:17

服部武雄 さんのブログ記事

  • 鬼の章(15)
  • 「毛内さんとしては、もう結論が出ているのではないですか?」服部の言葉に、毛内は暫しの沈黙の後にゆっくり頷いた。「嘗て、伊東さんと共に建白書を書き上げた時にも感じた事ですが、あの方の理想は純粋で、尊く、命を懸けるに値するものだと思っています。しかし、同時に理想を追いすぎる所がある。同志を1つにする為の指標としては適していますが、個々の戦術としては実現性を考えるべきとも思っています」難解な話になってき [続きを読む]
  • 鬼の章(14)
  • 「さて、どうしましょうかねえ」暗い表情に反して、声の調子は何処となく軽かった。こんな時の毛内は、自身の中では既に答えを出している。服部にもそれが理解出来る位には、二人の付き合いも深くなっていた。毛内との出会いは、上洛して新撰組に加入してからだから、他の同士よりも重ねた日々は短い。剣術だけではなく槍術、弓術、馬術と、一通りの武術をそつなくこなす事は、逆に言えば人より頭ひとつ抜ける特技に欠けるという意 [続きを読む]
  • 鬼の章(13)
  • 「現実問題として、彼らの具体的な活動内容が明らかにならない限り、動きようがないという事だな」「その通りですが、それが明らかになったとして、岩倉卿が関わっているともなれば禁裏を後ろ楯になさるでしょう。この先、彼らが余程の無茶をするなら別ですが、相応の大義なり根拠がなければ敵対する事は出来ませんね」篠原泰之進と毛内のやりとりに、一同が頷く。「そもそも」ゆっくりと、呟くように口を開いた伊東甲子太郎に、一 [続きを読む]
  • 鬼の章(12)
  • 御陵衛士屯所である月真院の一室には、重苦しい空気が流れていた。三日前の新撰組屯所前での出来事を受けて、加納鷲尾を中心に市中や諸藩の動向を調査した。時間と人員の問題で得られた情報は断片的ではあったが、それでも十分に驚くべく事態が進行している事が把握された。状況が状況だけに、加納は新撰組の山崎丞とも極秘裏に会っている。そこで交わされた情報は、残念ながら互いが得た信じ難い事態が現実である事を認識させるも [続きを読む]
  • 鬼の章(11)
  • それが事実である事は、守護職本陣に出掛けた際に近藤自身が確認して来ている。守護職から近藤ら新撰組に下った命令は、芹沢の活動を妨げるな、という驚くべきものだった。そこまでの下準備をして、その上で芹沢が起こそうとしている活動内容については未だ全容は明らかではない。しかし、それが京に留まるものではない事も予想は出来た。「さて、これからどうする」「どうしようもない。正直、芹沢さんがこの後どう動くのか、それ [続きを読む]
  • 鬼の章(10)
  • 禁門の変。それは嘗て、長州藩の過激集団が御所に銃弾を撃ち込むに至った、歴史的な事件である。この事件を通して、長州は賊軍として京を追われる事となる。この事件の渦中、味方にさえまともに認識されていない状態だった新撰組を率いて、見事にその存在感を見せ付けたのが、他でもない芹沢鴨だった。やり方には問題があったが、あっという間に豪商から金を集めて、隊服や隊旗を揃えたのも芹沢の功績と言える。一方、気に入らない [続きを読む]
  • 鬼の章(9)
  • 「もういい、頭を上げろ」新撰組屯所内の局長室で、土方歳三が冷たく言い放った。しかし、土方にそう言われても、山崎丞は畳に押し付けた額をすぐに上げようとはしなかった。暫くして顔を上げても、目線は畳に落としたまま、食いしばった口元もゆるまない。実際、土方には山崎を責める気持ちはなかった。山崎は本当に良くやってくれている。それは土方の期待以上と言って良い。山崎の監察としての目と耳は、市中の一般市民は勿論、 [続きを読む]
  • 鬼の章(8)
  • 服部を見る芹沢や新見ら一党の視線を見て、土方は彼らの狙いを見抜いていた。狙いは、御陵衛士、そして服部だったのだ。新撰組屯所の門前で騒ぎを起こせば、御陵衛士の彼らが駆けつけてくる可能性は高い。新撰組の現状を図る事が出来れば一石二鳥という所だろう。御陵衛士の屯所を直接訪れたとしても、警戒はされつつも客人としてもてなされて終わってしまっただろう。一触即発の危機的な状況だったからこそ、見えるものがある。つ [続きを読む]
  • 鬼の章(8)
  • 服部を見る芹沢や新見ら一党の視線を見て、土方は彼らの狙いを見抜いていた。狙いは、御陵衛士、そして服部だったのだ。新撰組屯所の門前で騒ぎを起こせば、御陵衛士の彼らが駆けつけてくる可能性は高い。新撰組の現状を図る事が出来れば一石二鳥という所だろう。御陵衛士の屯所を直接訪れたとしても、警戒はされつつも客人としてもてなされて終わってしまっただろう。一触即発の危機的な状況だったからこそ、見えるものがある。つ [続きを読む]
  • 鬼の章(7)
  • 「近藤、済まなかったな。この様な騒ぎを起こすつもりはなかったのだが、つい懐かしくなってしまった。許せよ」芹沢の声には、嫌みも威圧も感じなかった。嘗て、共に将軍警護という崇高な目的の為に、明日をも知れぬ状態でありながら京に残った、志だけの男達。その壬生の浪士組の同志。一人の志士として尊敬の対象でさえあった、芹沢鴨の姿がそこにはあった。「何をおっしゃいます。久しぶりに会えたというのに、何のおもてなしも [続きを読む]
  • 鬼の章(6)
  • 同じ水戸の出身である事や思想の共通点を考えれば、無理もない話だったかも知れない。しかし、芹沢が危険な人物である事は間違いなかった。これからの新撰組との関係性、京における活動の如何次第ではあるが、絶対に気を抜くことが出来ない人物である。一つ間違えれば、御陵衛士の存在そのものに疑義が生じる可能性さえある。だが、果たして今の伊東が、そこを冷静に判断する事が出来るだろうか。どうするべきか。篠原と毛内が目配 [続きを読む]
  • 鬼の章(5)
  • 今にも切れそうな張り詰めた糸は、新たにその場に駆け付けた者達によって打ち消された。屯所の南側から駆け付けた伊東甲子太郎、篠原泰之進、毛内監物、新井忠雄、加納鷲男である。芹沢も御陵衛士達に目を向けたが、視線を止めたのは伊東だけだった。伊東は、芹沢と同じ水戸の出身だ。尊王攘夷思想については、伊東なりの独特の考え方もあると聞く。嘗ては、天狗党への参加も検討していたらしいとくれば、興味を持たない筈はない。 [続きを読む]
  • 鬼の章(4)
  • 口元の笑みこそ消えていないが、張り詰めた空気には明らかな殺気が含まれていた。「芹沢さん、大変御無沙汰致しておりました」土方は短く言葉を切った。内心を伺わせない能面のような表情であったが、内心は焦りと、様々な思考が駆け巡っていた。芹沢が何の為に今頃屯所に現れたのか。その狙いが読めなかった。僅かな言葉が、表情や仕草が、芹沢にとっては挑発になりかねない。その一つ一つを慎重に選ぶ必要があり、神経をすり減ら [続きを読む]
  • 鬼の章(3)
  • 文久三年(1863)、幕府は将軍の上洛に先んじて京の警備にあたる事を目的として浪士組を徴募した。しかし、浪士組はその発案者の一人でもあった清河八郎の意図によって、上洛後間もなく江戸に戻る事になってしまう。それに反発して京に残った者達がいた。当初は壬生浪士組などと呼ばれた組織。それが後の新撰組となる訳だが、設立時には三人の局長が存在した。当初の新撰組には、大きく分けて、水戸派と試衛館派の二つの勢力が存在 [続きを読む]
  • 鬼の章(2)
  • 「藤堂君、訳を話してくれ」服部は、先を走る藤堂の背中に問いかけた。常の服部にはなく、やや語気が荒くなっている。それも当然で、詩織との大切な話を打ち切った上に、訳も分からず市中を駆けているのだ。いい加減、何処に行くのか、何が起こっているのか話して貰わなければ気が済まない。最も、走りながら行先には予想がつき始めていた。方向的に、不動堂村の新撰組屯所に向かっている可能性が高いと思われた。なればこそ、只事 [続きを読む]
  • 鬼の章(1)
  • 「ほう。ここが今の屯所か」野太い声に応えたのは幾つかの笑いが混じった声だった。男の巨躯は、武士というよりも力士のそれに近かった。無造作に屯所の門をくぐろうとした大男を見咎めて、若い隊士は両手を広げて大男の行く手を阻んだ。それは門番としてごく当たり前の対応だったが、同時に大男の癇に触れるには十分過ぎる行為だった。「無礼者が」大男は懐から抜き放った鉄扇で、若い隊士を殴り飛ばした。隊士とて、決して小柄だ [続きを読む]
  • 雪の章・其の壱(4)
  • 「服部さん、大変です」茶岡に駆け込んで来たのは藤堂平助だった。息を切らせて、文字通り血相を変えている。何事か、只事ではない何かが起こったであろう事は明らかだった。「一緒に、私と一緒に来てください」「藤堂君、落ち着け。一体、何があったというのだ」「伊東さんも、篠原さんも、皆もう向かっています。私は、毛内さんから服部さんを迎えに行けと言われて」「いや、だから何が起こった?」「走りながら話しますから、早 [続きを読む]
  • 雪の章・其の壱(3)
  • 「服部様」服部が満たされた盃を空けるのを見計らい、口を開いた。服部は手にしていた盃を盆に戻した。詩織の口調が改まっている事にはすぐに気付いた。久しぶりに昔の夢を見た日の朝、目覚めた時、頬が涙でぬれていた。まだ自分に涙があったのか。そんな事を考えながら、自分で自分に呆れてしまった。戦おうとする男を、女が止める事など出来ない。それは一種の諦念であり、嘆きだった。嘗て、詩織には未来を誓い合った男がいた。 [続きを読む]
  • 雪の章・其の壱(2)
  • 嘗て、新撰組との戦いの後に生き残る事が出来たなら、刀を捨てて新しい生き方を探してみようと、そんな事を考えた事があった。武士としてではなく、ただの一人の男として、誰かの為に生きてみようと。あの時と同じ心境にある今の自分が不思議でもあり、しかし同時に、ごく自然にそれを受け入れていた。沖田との対峙がそうさせたのか。或いは、彼女を見詰める沖田の視線がそうさせたのかも知れない。あの時の沖田の姿は、まるで母親 [続きを読む]
  • 雪の章・其の壱(1)
  • 「彼女が、沖田さんの…」詩織の酌を受けながら服部は呟くように言った。詩織が伯父と営んでいる小料理屋、茶岡の席で向かい合っている。他には客の姿はなかった。油小路で沖田と立ち合ってから三日が過ぎていた。あの日、詩織も油小路に駆け付けていた。服部もそれには気付いていたが、彼女のその視線に気圧され、立ち去る彼女を見送る事しか出来なかった。何処か気まずい雰囲気のまま数日が過ぎ、今宵は久しぶりに店を訪れたのだ [続きを読む]
  • 『それぞれの誓い』新章を書き始めました
  • 明けましておめでとうございます。昨年は、更新が滞りがちでしたが、今年は定期的な更新を心掛けたいと思います。昨年末から、「それぞれの誓い」の新しい話を書き始めました。当初は全く異なる時間軸、世界観の中で描く新撰組と御陵衛士を想定しておりましたが、いろいろ考えている内に、せっかく作り上げて来たブログの世界があるので、そのまま活かして描いてみようと考えるに至りました。純粋な歴史ファンにはお叱りを受けてし [続きを読む]
  • 油小路始末2017・5-5
  • 伊東甲子太郎、毛内監物、藤堂平助、それに新撰組の土方歳三と同行する隊士数名。彼らが油小路に駆け付けた時、最早戦いの場は余人の介入を許さない状況になっていた。藤堂が声をあげかけて、慌てて止めた。服部武雄、沖田総司。共に相手の姿しか、その眼には入らない。万一、誰かがその場に介入したとすれば、例えば誰かが戦いを止めようと声を掛けたとすれば、それがきっかけとなって2人は動き出す筈だった。現状なら、恐らく勝 [続きを読む]
  • 油小路始末2017・5-4
  • 服部武雄、沖田総司共に刀を抜いた。服部は正眼。沖田は下段に刀を構える。構えたまま、服部は細く長く息を吐いた。独自の集中法だ。吐く息と共に集中力が高まる。一方の沖田は、上体を僅かに前傾させると共に重心を下げる。猫科の動物が獲物に襲い掛かる直前の仕草に似ている。『あの夜』のあの戦いでは、服部は30人以上の新撰組隊士と斬り合い、体力は消耗し、刀もぼろぼろだった。沖田の突きが服部の身体を貫いた時、服部の斬撃 [続きを読む]
  • 油小路始末2017・5-3
  • 「150年目の節目で、改めて決着を…か」沿道の梅の木の、少し膨らみ始めた蕾を指先で弾きながら、沖田総司が言った。「最初は私も冗談半分でしたけど、土方さんは相手にもしてくれなかった。でも、やっぱり貴方は違いましたね、服部さん」呟くような沖田のその言葉が届いていたのかどうか。服部武雄は路地に面した民家の板塀に手を触れていた。彼は彼で、物思いに耽っている様でもある。「ひょっとして、ずっと前から同じ事を考えてい [続きを読む]
  • 油小路始末2017・5-2
  • 「こんにちは。失礼しますよ」穏やかな、ともすれば戯けた風にも感じられる調子で言いながら、伊東甲子太郎は門をくぐった。新撰組屯所の門である。伊東の背後には、毛内と藤堂も続いている。慌てふためく門番の様子は何処吹く風。伊東は涼しげな表情で久々に訪れた屯所内を見渡した。伊東の表情からは笑みが消えていない。しかし、同時にその視線には刺す様な鋭さがあった。「これはこれは、伊東元参謀。突然の来所とはいえ、出迎え [続きを読む]