天竺堂 さん プロフィール

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天竺堂さん: 天竺堂の本棚
ハンドル名天竺堂 さん
ブログタイトル天竺堂の本棚
ブログURLhttp://tenjikudo.com/book/
サイト紹介文読書は娯楽の最高峰。楽しい読書体験をつづります♪
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供57回 / 365日(平均1.1回/週) - 参加 2014/01/30 14:48

天竺堂 さんのブログ記事

  • 「三島屋」という舞台はそのままに 『あやかし草子』
  •  宮部みゆきの人気シリーズ第5巻。 シリーズに大きな変化が到来、これまでの主人公というか狂言回し役が“引退”してしまい、次巻からは別の人物が主役を務める模様。 そこに至る過程が少々唐突にも思えるけど、ここまで付き合ってきた読者であれば納得はできるはず。 サブタイトルが「三島屋変調百物語」だから、さまざまな怪異が語られる小間物屋「三島屋」という舞台はそのままに、これからも主役が何度か交代するのかも知 [続きを読む]
  • ホノボノなりに攻めてる 『バーナード嬢曰く。』(4)
  •  読書好きな男女4人が織りなす、読書好きのための、“読書あるある”なギャグマンガ。 のはずなんだけど、人気を集めて4巻にまで至ると、もはやギャグだけにどどまらない、何とも深い内容に。 「どうして私たちは読書をするのか?」「本に親しんで得られるものは何?」なんて、改めて考えてみたらなかなかに難しそうなことを、4人は語り合い、日常の中で模索し続ける。 加えて本作は、かなりニッチな“読書あるある”を取り [続きを読む]
  • 端正にして不穏な気配が 『十三の物語』
  •  初めて読んだスティーヴン・ミルハウザー。 全13話の短編集。「オープニング漫画」と題する開幕編と、「消滅芸」「ありえない建築」「異端の歴史」の3部各4編で構成されてる。 屋根裏部屋の暗闇にひそむ少女に恋をし、見えないまま逢瀬を重ねる少年の物語とか。どこかの王様に仕える細密細工士が、微細を究めんとするあまり、誰にも視認できないミニチュア作りに没頭してしまう物語とか。映画が誕生した裏で、カンバスから絵 [続きを読む]
  • 毀誉褒貶を味わい尽くした者同士 『一発屋芸人列伝』
  •  お笑いコンビ「髭男爵」のツッコミ役・山田ルイ53世が、世間に“一発屋”として認知されてる芸人たちを取材したルポルタージュ。 著者自身が一発屋だけに、毀誉褒貶を味わい尽くした者同士だからこそ訊けること、書けることが期待されてるはずで、そこを意識してキッチリ押さえてる印象。 とは言え、相手と馴れ合いにならないよう努めてる姿勢がうかがえ、ドライな視点と距離感でもって、一発屋の悲哀ばかりか、個々人の弱さや [続きを読む]
  • 長い長い冬を前に… 『辺境の惑星』
  •  アーシュラ・K・ル=グウィンによる初期の長編SF。 舞台となる竜座第3惑星は、人類文明から忘れ去られた辺境。公転周期が地球時間で80年あり、冬は5000日も続く。 この地では長年、現住民「ヒルフ」と、異星からの植民者「ファーボーン」が共存。ところが、長く厳しい冬の到来を前に、ヒルフの野蛮な部族が、他部族へ侵略を始める。 切迫した状況の中、ヒルフの温和な部族の娘と、ファーボーンを率いる青年が、偶然出会っ [続きを読む]
  • 勤労精神を批判 『怠惰への讃歌』
  •  バートランド・ラッセルの随筆集。 書かれたのは1928〜1932年だけど、今読んでもなかなかに刺激的。特に労働についての記述が興味深い。 著者は「幸福と繁栄に到る道は、組織的に仕事を減らしていくにある」として、一日の労働を4時間にしようと提言。これによって、多くの人びとが余暇を享受でき、失業者はいなくなる…今で言うワークシェアリングかな。科学技術が進歩して社会の生産性が上がってるから、みんなで短時間労働 [続きを読む]
  • 『易経』を読んでみたくなる 『高い城の男』
  •  学校給食にパンと牛乳が出る。宇宙戦艦ヤマトがデスラー総統をやっつける。「UCLA」のトレーナーが流行する。英語はできないのにカタカナ言葉は使いたがる。…かつての敗戦の影響が、日本社会のいろんなところにいろんな形で表れてる。 敗戦から何十年も経った社会に生きる私たちには、どれもが当たり前で、無自覚に受け入れてたりする。 半面、当たり前とは認めたくないことも厳然とあって、それらは私たちの深くて軟らか [続きを読む]
  • これから過酷な消耗戦が? 『工作艦間宮の戦争』
  •  谷甲州によるSF「航空宇宙軍史」の新シリーズ2作目。 第二次外惑星動乱の勃発までを描いた『コロンビア・ゼロ』の続編。 秘密裏に技術革新を進めてた外惑星連合の新造艦が、航空宇宙軍の根拠地への奇襲攻撃を成功させたところまでが前作。 なんだけど、その新造艦は続編に出てこないし、航空宇宙軍が盛り返しかけてるようにも見える。 主力艦の多くを失ったはずの航空宇宙軍と、軍事技術で大きくリードしてたはずの外惑星 [続きを読む]
  • “昭和”な小ネタがふんだんに 『錆びた太陽』
  •  恩田陸の近未来SF。 舞台となる日本は、原発事故によって国土の2割が居住不能になり、ゾンビみたいな連中が徘徊してる。 広大な汚染区域を監視するアンドロイドたちの前に、国税庁から派遣されてきたという元気な女性職員が現れ、謎めいた目的を持って危険地帯へ踏み込んでいく。 サスペンスフルなはずの物語に、「太陽にほえろ!」とか「サンダーバード」とか「トラック野郎」とか、何故か“昭和”な小ネタがふんだんに盛 [続きを読む]
  • 小学校を覆う全体主義 『滝山コミューン 一九七四』
  •  政治思想史の研究者が、トラウマだったという子供時代の記憶と向き合った、異色のノンフィクション。 1970年代。首都圏郊外のマンモス団地に住む、公立小学校の児童だった著者は、赴任してきた若手教師が持ち込んだ教育手法により、奇怪な体験をする。 小・中学校の教師らでつくる全国生活指導研究協議会(全生研)が進めてた「学級集団づくり」。クラスの児童たちを“班”に分け、学級活動を班同士で競争させるというもの。  [続きを読む]
  • 文明や社会を追い続ける 『若い読者のための経済学史』
  •  経済学が積み重ねてきた理論や知見を、平明に説いてある好著。 古代から現代までの世界史に沿って、時系列的・体系的に解説。 40章が「神の経済」「創造的破壊」「野獣化する銀行家」などのタイトルで短くまとめられ、それぞれエッセイみたいに読める。 さまざまな学説が確立されて検証されて葬られて、それでも“決定版”みたいな揺るぎのない発見には程遠い模様。資本主義の“次”を見出だせてもいないし。 人類の営みを扱 [続きを読む]
  • 奇妙で異様で不気味で独特 『不思議の森のアリス』
  •  リチャード・バートン・マシスンの短編集。 “ホラー”とか“ダーク・ファンタジー”に当たるらしい、奇妙で異様で不気味で、何とも独特な16編。 玉石混交っぽいけど、“玉”に相当する方は、“石”を補って余りある面白さ。 印象的な光景とか、突飛な設定とか、ヒネリの利いた幕切れなどなど、どこか後を引く余韻がある。 物語の密度が濃いので、同じネタをスティーブン・キングがネチネチ書いたら長編に仕上げてしまいそう [続きを読む]
  • 天才か? 礎か? 『最後の秘境 東京藝大』
  •  東京藝術大学のルポルタージュ。 著者は作家で、妻が現役の藝大生であることが、執筆の動機になったそうな。 学内のさまざまな学部を見て回りながら、そこで頑張る学生たちにインタビュー。 “奇妙”とも思えるモノゴトに真面目に取り組んでる藝大生たち、そんな相手をできるだけ前向きに理解しようとする著者、ともに好印象で、書名ほどのブッ飛んだ内容ではない。 “美大・音大あるある”と異なる“藝大あるある”の独自性 [続きを読む]
  • 賛美によって正当化される死 『不死身の特攻兵』
  •  劇作家の鴻上尚史によるルポルタージュ。 第二次大戦末期、日本陸軍の特攻兵として爆撃機で9回出撃し、生還したパイロットがいた。 そのことに興味を抱いてた著者が、当人が存命と知って所在を探し当て、インタビューに臨んだ意欲作。 この人物は「体当たりをしないで、戦艦を沈めるにこしたことはない」という気概と技能の持ち主。実際に戦果も挙げたという。 それでも、「やっぱり無駄死にはしたくなかった」との言葉には [続きを読む]
  • 呪われた血族が 『ミレニアム4 蜘蛛の巣を払う女』(上・下)
  •  唐突だけど、往年の刑事ドラマ「Gメン’75」の連作“黒谷町シリーズ”を思い出す。 手斧を振り回す殺人鬼・望月源治(蟹江敬三)と、立花刑事(若林豪)の対決には、ハラハラさせられっぱなしだった。 逮捕しても逃亡するし、どうにかやっつけても、源治の兄やら友達やら双子の弟やら、手斧を持った連中が続々と襲ってくる。一族郎党そろいもそろって執拗で陰湿で残酷で、立花刑事を何度も苦しめた。 本書のヒロインであるリ [続きを読む]
  • 暴力が容認される未来 『宇宙の戦士〔新訳版〕』
  •  ハインラインの名作SF。 裕福なボンボンだった青年が、ひょんなことから地球連邦軍に志願し、機動歩兵として鍛えられていく様子が活き活きと描かれ、さながら“読むブートキャンプ”。 ひさしぶりに読み返した新訳版では、新兵訓練での成長とか、パワードスーツのカッコ良さより、他のところが気になった。 舞台となる未来世界は、大国間の戦争を経て、すべての国がひとつにまとまってる。 この統一国家では、体罰が容認さ [続きを読む]
  • 「こうなんだなぁ」と受け止める 『タイタンの妖女』
  •  未来のことなんて分からない。予想はできるけど、予想しかできない。 かつて自分が「こうなればいいなぁ」と願ってたモロモロは、かなったり、かなわなかったり。どちらかと言うと、かなわなかったことが多い気がする。 自分が今ここにこうしてるのは、決して望んだ結果じゃない。 課題とか責務とかトラブルとか、降りかかる火の粉をひたすら払い続けてたら、たまたまこうなった…みたいなカンジ。 人生をコントロールしてる [続きを読む]
  • 好きなことを仕事に 『ヒトごろし』
  •  よく「好きなことを仕事にしよう」とか言うけど、それを実践し、「新選組」を組織してしまったのが、本書の主人公・土方歳三。 幼少時代に出くわした斬殺の光景に魅せられ、以来「人を斬り殺したい」との欲望を抱き続けてる“人外”の存在。 薬売りという身分では、刀は持てないし、殺人は罪に問われる。そこで「刀で人を斬っても罪に問われないためには?」と考え、行動した結果が、新選組“鬼の副長”につながっていく。 土 [続きを読む]
  • 追随許さない、美や快楽の表現 『シャンブロウ』
  •  キャサリン・ルーシル・ムーアによるSF短編集。往年の名作。 主人公のノースウェスト・スミスは、熱線銃と腕っぷしと度胸でもって、太陽系の裏社会を渡り歩いてる無頼漢。 なのに、火星や金星あたりを冒険するたび、異次元世界に棲む魔女とか、古代遺跡にひそむ妖女などに出くわし、骨抜きにされてしまうというのが毎度の展開。 こう書くとギャグみたいだけど、人間の認識や価値観を超越したところにある美や快楽についての [続きを読む]
  • 奴隷を逃がすトンネル網 『地下鉄道』
  •  沢木耕太郎の『深夜特急』に、旅人を乗せてユーラシア大陸の闇夜を走る特急列車なんか出てこない。 ところが、本書には「地下鉄道」そのものが登場する。 本来は、19世紀アメリカにおいて、黒人奴隷たちを南部諸州から逃亡させてた秘密組織を指す言葉らしい。 けれど、この物語では、蒸気機関車が走る地底トンネル網という、具体的な構造物として描かれてる。いつ誰が造ったのかは不明。ある種の“奇跡”ということかも知れな [続きを読む]