Aquioux さん プロフィール

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Aquiouxさん: いにしえ実録怪談
ハンドル名Aquioux さん
ブログタイトルいにしえ実録怪談
ブログURLhttp://oldkwaidan.tumblr.com/
サイト紹介文江戸時代など古い怪異譚を現代の実録怪談風に翻案します。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供191回 / 365日(平均3.7回/週) - 参加 2014/11/28 21:31

Aquioux さんのブログ記事

  • 白岳祠の加護
  •  我が平戸城は平戸島の北方の海際に建っている。 城よりもさらに北、島の最北端には山があり、山上には白岳祠という、とても小さな石の祠が祀られている。 この祠にも地ノ神島神社や沖ノ神島神社と同じように神威がある。 商船だろうと、そうでない船だろうと問わないが、平戸に向けてやってくる船が、夜間など海霧に覆われ、まったく周囲が見えなくなったとき、この祠に祈りを捧げると、必ず山の上に火の光が見えるので、それ [続きを読む]
  • 龍王の奉燈
  •  神島神社にまつわる話といえばこんなものもある。こちらは沖ノ神島神社でのことだ。 沖ノ神島では、毎年、大晦日の夜に海中から火が現れ、海岸から少し離れた小高い森の中にある神社にまで登ってくる。 しばらく神社に留まった火は、やがて再び海中に没する。 人々はそれを龍王の奉燈と呼ぶ。 (『甲子夜話』三篇巻之十七 「小値賀神嶋宮」) [続きを読む]
  • 鳥居の上の老人
  •  我が平戸藩の領内に小値賀(おぢか)という場所がある。 地ノ神島と沖ノ神島という、ふたつの島から成っている。 各島には神社がひとつずつあり、向き合う位置に建っていて、併せて神島神社と総称している。 平戸藩領の島の中では大きな方であるが、城下からずいぶんと隔たっているため、私も含め、この地を訪れた藩主はほとんどいない。 何代前かは判らないが、この小値賀を巡視した藩主がおり、彼はそのとき不思議な体験を [続きを読む]
  • 女の頭の魚
  •  人魚については、かつてここに載せたことがある。 その後、また別の話を聞いたので、それを記そう。 今を去ること九年前、すなわち文政十年の春のこと。 平戸藩の鉄砲足軽・森滝蔵という者が海路で江戸へ向かった。 空は快晴、風は順風。帆をいっぱいに張った船は快適に進み、やがて讃岐の四島というあたりに差しかかった。 そのとき、なにげなく海を見ていた滝蔵の前、船から六、七間離れた海面に、黄色い魚が浮かび上がっ [続きを読む]
  • 人体を巡る異物(三)魚骨
  •  さらに似たような話を長崎の人からも聞いている。 数年前のことだという。 彼の地の、ある老人の肩に瘤ができ、それが日増しに大きくなった。 痛いし邪魔だし、非常に難儀をしたので外科医に診てもらった。 瘤を切開して毒を出せば治る、とのこと。 即座に手術をしてもらった。 すると瘤の中から魚の骨が出てきた。それも一種類の魚ではなく、いろいろな種類の魚の骨が驚くほど大量にである。 見たことのない症状に驚いた [続きを読む]
  • 人体を巡る異物(二)小銭
  •  似たような話ではこんなのを聞いた。 私のお抱えの相撲取りの弟子は幼い時分、ふざけて小銭を口に出し入れしていたら、誤って呑み込んでしまったのだそうだ。 それからどれくらい年月が経った頃だったろうか。 ふと、腕に違和感があったので見てみると、皮膚の一部が丸く、やや黒ずんでいる。 皮膚自体が黒変しているのとは少し違う。伸びきった皮膚を透かして何か黒いものが薄っすらと見えているようだ。 弟子には、それが [続きを読む]
  • 人体を巡る異物(一)縫針
  •  この世には理屈を超えた現象というのが存在するようだ。 こんな話を聞いた。 ある婦人が誤って縫針を踏み貫いてしまった。 しかも針は途中で折れ、足裏の肉の中に埋没してしまった。 とても痛かったが抜くに抜けず、そのまま放置するしかなかった。 それ以来、彼女の体のあちこちがチクチクと痛むようになった。 奇妙なのは、あるときは腿が痛むかと思えば、あるときは二の腕、さらには脇腹と、痛みが不定期に移動すること [続きを読む]
  • 浅草馬町の投石
  •  浅草寺の東に馬道という町がある。 町の東区画には真珠庵という僧侶の隠居所があり、その敷地内には貸長屋があった。 昔…… たしか文政七年か八年だったと思う。その六月三日、時刻は暮六つ半ごろ、その貸長屋の屋根を越えて多数の小石が飛んだ。 小石は長屋の向こう、馬道の西側にある鰻屋の看板や提灯にぶつかり、大きな音を立てた。 驚いた店主が外に出ると、看板は割れ、提灯は破れ、それらの破片が地面に散乱している [続きを読む]
  • 蛇の噛傷
  •  天保四年七月に荻野梅塢から聞いた話。 小笠原大膳の屋敷近くにある、あまり身分の高くない旗本の屋敷でのことだという。 その屋敷の厠では、人が入ると必ず小さな白蛇が二匹いて、鎌首をもたげ威嚇してくる、ということが起きた。 人が皆、怖がって厠に行くことができなくなると、一人の非常に勝ち気な老婆が行動に出た。 彼女は真っ赤に焼けた火箸を持って厠に入ると、向かってきた蛇の頭に火箸を押し当てた。 いきなり火 [続きを読む]
  • 聴き耳狐憑き
  •  我が藩の茶頭の屋敷には七十歳ほどの老婆がひとりいる。 彼女は、いつ頃からか、精神的に問題を抱えるようになった。 それは狐に憑かれたためらしい。 よく未来のことを語ったが、それが過去に見てきたことであるかのようにピタリと当たった。 また、日頃から「ここにいると酷い目に遭う!」と公言し、人が見ていない隙にどこかへ逃走するという問題行動があり、それが茶頭の悩みの種だった。 祈祷師に診せたところ、蟇目の [続きを読む]
  • 投げ捨て商人
  •  平戸城の北、山をはさんで一里ほど離れた場所に港町がある。 そこには船乗りなどを客とする遊女屋が立ち並んでいた。 もちろんご法度であるが、役人たちは黙認している。 その港町で最近こんなことがあったという。 ある遊女屋に自称・船持ち商人というのがやってきた。「遊女を揚げて酒宴をしたい」 前金として三両を店の主に渡しながら言った。 店ではさっそく座敷をしつらえ、客を案内した。 宴会がはじまってしばらく [続きを読む]
  • 蛙瘤
  •  生方(うぶかた)亙(わたり)という人から聞いた話。 彼の知り合いに左肩に小さい瘤を持つ人がいた。 ときどき、瘤に痒みを感じることがあったが、我慢できないほどではないし、頻度もそれほど多くはないので放っておいた。 ある日。 瘤が自然に破けたかと思うと、中から青いものがピョンと躍り出た。 見ると、小さな蛙が肩にとまっている。 虚を衝かれた彼が唖然としているうちに、蛙はピョンピョンとどこかへ跳んでいっ [続きを読む]
  • 虱瘤
  •  とある主婦から聞いた話。 彼女の同母兄の家に十四歳ばかりの子どもがいた。 その子の右の臀部に毬ほどの大きさの瘤ができた。 患部の猛烈な痛痒さは、とても我慢できるものではなかったらしい。 子どもが苦しむ様を見ていられなかった両親は、瘤が膨らむにつれて皮膚が薄く伸び、半透明になってきた部分があったので、そこに剃刀を当て切開した。 途端に切り口から、ボロボロボロっと白っぽい粒が大量に吹き出し、畳にこぼ [続きを読む]
  • 御厩河岸の僧侶
  •  つい一、二日前、文政十年八月下旬ことだという。 一人の僧侶が御厩河岸で渡し舟に乗った。 いったんは向こう岸に上がったが、すぐさま再び舟に乗り、こちら岸に戻ってきた。 その顔色がひどく蒼ざめている。 僧侶は渡し場にいた船頭に何か言うと、再び向こう岸に渡っていった。 向こう岸でも同じようなことをして、またこちらに戻ってきた。 さらに顔が蒼ざめている。 それを何度も繰り返していたが、ついにはガックリう [続きを読む]
  • 火事になる雷
  •  私が領主を務めた平戸藩には支藩がある。平戸新田藩という。 その第八代藩主・松浦大和守晧(ひかる)は我が息子である。 彼からこんな話を聞かせてもらった。 参勤交代で江戸へ向かう途上、肥前国神崎で聞いたのだという。 神崎では三、四月ごろ雷狩というのをおこなうという。 ここでいう雷とは、鞠ほどの大きさの丸い白雲のようなもので、それが空中を飛行するのだそうだ。 雷はときに人家に墜落するが、すると忽ちその [続きを読む]
  • 火事場天狗
  •  かつて、ある人がこんなことを言っていた。 大火と呼ばれる大規模火災が起きるのは天狗のせいである。 火事が起きると、その炎の中を天狗が走り回って火勢を強める。 だから規模が大きくなるのだ、と。 最近、その人はこんなことも言っていた。 去年の冬に起きた小石川の火災現場で奇妙なことがあった。 逃げ惑う人々の中に鼻を抓ままれた、あるいは耳を引っ張られた、という人が続出した。 しかし、大混雑する火事場では [続きを読む]
  • 遠鼓
  •  隠居の身となった私は本所の平戸藩下屋敷で暮らしている。 このあたりでは夜になると、ときとして鼓の音が聞こえることがある。 本所七不思議のひとつとして世間でもよく知られているものだ。 鼓の音を頼りに、その場所に到着すると、音はいつの間にか別の場所から聞こえてくる、というものである。 我が屋敷では、概ね辰巳の方角の遠方から音が聞こえてくる。 この音の怪について、この間の七月八日の夜にこんなことがあっ [続きを読む]
  • 牧野家上屋敷の怪女
  •  私のお抱えの白拍子から聞いた話である。 彼女は若い頃から歌舞音曲の芸人一座の囃子方として笛や鼓を担当し、いろいろな大名屋敷を廻っていたそうだ。 その当時、海賊橋近くの丹後田辺藩・牧野家上屋敷に招かれたことがあったという。 演し物が終わったのは夜もずいぶん遅い時間であった。 外は強い風を伴う大雨が降っており、帰るのに難儀である。 困った彼女は、お屋敷に一晩泊めていただけないか、と願い出た。 しかし [続きを読む]
  • 長壁そして八天堂
  •  姫路城には昔から長壁(おさかべ)という妖怪が棲んでいるといわれている。 天守最上層におり、そこに人が来るのを厭うが、年に一度だけ城主のみと対面する。そのときは老婆の姿で現れると伝えられている。 余人はこれを恐れて天守には登らないのだ、ともいわれている。 ずいぶん昔、私は姫路藩第二代藩主・酒井雅楽頭忠以(ただざね)殿にこの噂について尋ねたことがある。「まぁ世間ではそんな話もありますがねぇ。別に天守 [続きを読む]
  • 駕籠の中には
  •  鳥羽藩主・稲垣対馬守昭央(てるなか)殿の屋敷は麹町八丁目にある。 私の伯母の嫁ぎ先であり、私も若いころは伯母に会いに、しばしばこの邸に足を運んだものである。 稲垣邸の裏には紀尾井坂が通っており、坂を隔てた区画は彦根藩主・井伊殿の中屋敷、そして坂の上に大きな建物が見えたのを覚えている。 建物はその大きさゆえに「千畳敷」と人々から呼ばれていた。 井伊家の中屋敷は、もとは加藤清正の屋敷であり、千畳敷の [続きを読む]
  • 蜂に毒
  •  蜂に刺されたとき、皮を剥いた里芋をすりおろして患部に塗布すると痛みがやわらぐが、里芋は蜂毒に効果があるのだろうか。 大野宇右衛門が庭で育てている作物の様子を見ていると、目の前に薄白い色の大きな蜘蛛が凄い速さでやってきた。 間もなく、ぶーんという羽音も聞こえてきた。見れば、三匹の赤い蜂がこちらに向かってくる。 蜘蛛は蜂に追われて逃げてきたようだ。 庭には里芋が植えてあった。その葉は、まだ出たばかり [続きを読む]
  • 上げ底の中
  • 『市井雑談集』にこんな話があった。 車長持というものがある。 その名の通り、底に車輪をつけて動かしやすくした長持である。 便利なので数年前、江戸で大流行した。 ところが明暦の大火を機に、幕府によって江戸、大坂、京都の三都は車長持の製造販売が禁止された。 火事から逃げようとした民衆がそろって車長持を牽いて外に出たために道が塞がり、人々の避難が妨げられ、結果、多数の死者が出たからだ。 以下は、その車長 [続きを読む]
  • 毬と畳
  •  なにも化けるのは狐や狸ばかりではない。 諏訪若狭守の屋敷での話がそれを示している。 あるときから白い毬のようなものが現れ、屋敷の中を転がり回るようになった。 屋敷の者も最初こそ訝しんだが、そのうち慣れてしまい、誰も見向きもしなくなった。 次に起きたのは、ひとりでに畳が浮き上がるという現象である。 浮く、といっても天井近くまで跳び上がるというような派手なものではなく、せいぜい、畳の厚さ程度に持ち上 [続きを読む]
  • 山霊
  •  我が平戸藩の役人が、他人と二人で相模の大山に行ったときの話。 役人が山麓の旅宿で体を休めていると男女の二人連れが来た。 彼らは言う。「山に登ろうとしたが、二度も三度も道を間違えて、なかなか先に進めず、こんな時間になっても、まだ麓に留まっている」 時刻はすでに夕七つを過ぎていた。「今日はもうこれ以上先に進むのはおよしなさい。日が暮れた後も山中に留まっていると必ず恐ろしい目に遭うんですから」 宿の主 [続きを読む]
  • 弁慶堀の河太郎
  •  留守居役を務める室賀山城守の屋敷は小川町にある。 以下は、彼に仕える中間が体験した話である。 とある小雨がぱらつく深夜のこと。 帰り道を急いでいた中間が、九段の弁慶堀の端に差しかかると、どこからか彼の名を呼ぶ声がしてきた。 周囲は真っ暗で何も見えない。立ち止まって耳を澄ます。 どうも堀の中から声がしているようだ。 目を凝らすと水の中に子どもがいた。中間を見て手招きしている。 さては誤って子どもが [続きを読む]