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Riche Amateur https://nina313.hatenablog.com/

海外文学(とくにフランス文学)を中心とした読書ブログです。英文書や仏文書の記事も掲載しています。

nina313
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アラブ首長国連邦
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清瀬市
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2014/12/12

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  • 東京日記

    いまから五年くらい前のこと。ぞっこん惚れこんでいるのに、なにひとつ感想めいたことを書けない、という奇妙な作家と出会った。リチャード・ブローティガンである。『アメリカの鱒釣り』、『芝生の復讐』、『愛のゆくえ』などを読んで、もうとんでもなく好きになってしまったのだが、一冊、いや、一篇あたりの、「気に入る文章含有率」が高すぎて、もうなにも書く気にはなれなかったのだ。このままじゃあいかん、と思っていたとき、こんな詩集があったことを思い出した。薄い詩集なら、相対的に引用したい文章も減るにちがいない。これなら書けるかも、と、初めて思えた。 東京日記―リチャード・ブローティガン詩集 作者: リチャードブロー…

  • もしも、詩があったら

    先月は信じられない頻度で更新をしていたので、ちょっと控える(さぼる)ことにしていた。何度でも眺めて楽しむことのできる宝石のような詩、それがたくさん集められた、まさしく宝石箱たる詩集に、次から次へと手を伸ばすというのは、あんまりいい趣味とはいえないから。きっと詩集というのは、読み返してこそ、ほんとうの意味で楽しさを味わえるものなのだ。読み返したいと思える詩集に、これまでに何度出会うことができたのか。その数こそが、ひとの豊かさを決定づけるような気さえしている。そして、そんな詩集にまたしても出会った。 もしも、詩があったら (光文社新書) 作者: アーサー・ビナード 出版社/メーカー: 光文社 発売…

  • こころ

    谷川俊太郎がいなかったら、現代詩、いや、もっと広義に詩そのものが、われわれにとってこれほど身近なものでなかったことは疑いない。そんなことを考えたのは、たまたま手に入ったこの本が、谷川俊太郎にとっていったい何冊目の詩集なのかを調べようとして、とてもじゃないが調べきれない、ということに気づいたからである。このひと、いったい何冊の詩集を出しているんだろう。思えば、ここで最後に谷川俊太郎の本を紹介したのは、もう6年も前だが、あのときの『詩の本』は、過去の作品をまとめた選集の趣が強く、新作詩集というのではなかった。そういう選集をも含めたら、ほんとうにもう、何冊あるのかなんて数えきれない。詩との距離感を考…

  • このごろ、「この詩人がいい、あの詩人もいい」、と、立てつづけに詩集の紹介ばかりしてきたが、いま、そのことをちょっとだけ後悔している。詩というのは、書かれていることの即効性が重視される散文とは大きく異なり、あとになってから響いてくるものも、とても多いからだ。第一印象ならぬ、「第二印象」とでも呼ぼうか。だから、性急に印象を書き留めるのは、あまり薦められたことではない。音楽をイメージしてもらったら、きっとわかりやすいだろう。最初に聴いたときにはあまりピンとこなかったものが、繰り返し聴いているうちにどんどん好きになっていって、やがては自分の一部にさえなってしまう。このマンデリシュタームの詩集を読んでい…

  • わたしを束ねないで

    先日まとめ買いした童話屋詩文庫は三冊、山之口貘の『桃の花が咲いていた』、岸田衿子の『いそがなくてもいいんだよ』、それからこの本、新川和江の『わたしを束ねないで』だった。前者二人は思潮社の現代詩文庫などには入っていないので、ちょっと「発掘」のような気分で読み進めることができたのだが、この新川和江に対しては、事情がちがっていた。まとまった詩集を読んでみたいと、かねてから考えていた詩人だったこともあり、ページを開くまえから身構えてしまっていたのだ。好きになれなかったらどうしようと、すこしばかり不安でもあった。でも、十秒もかからなかった。本を開いて、そんな不安が杞憂でしかなかったのが証明されるまでには…

  • イタリアの詩人たち

    このごろの更新傾向を見ていただくとすぐにわかるとおり、いま、詩を読むのがとても楽しい。いや、詩はもともと好きなのだが、日本語でよく「現代詩」と呼称される、一見ルールもなにもないように見える言葉たちの自由さに、最近ひたすら驚かされているのだ。詩、というと、ペソアやプレヴェールのような幸福な例外も存在するとはいえ、海外ではどうしても韻律や形式美が追求され、それらを追求しないものは軽く見られがちである。だが、日本語においては、短歌と俳句という超短詩が形式美の部分を引き受けてくれているからか、その短さには合致しないような詩情の迸りに対しても、懐が深い。これは海外の詩が翻訳されているときにも同様に感じら…

  • いそがなくてもいいんだよ

    しばらくぶりの更新。といってもたかだか四日ぶりで、ふだんのわたしの更新頻度を知るひとは、こいつ気でも狂ったか、と思っていることだろう。ちょっと事情を説明すると、断食月中は、あらゆる会社の勤務時間を短くするように、と、当地の労働法で定められているため、平時よりも早く仕事を切りあげることができるのだ。しかし、同僚たちはみんなやたらと仕事熱心な連中なので、まずわたしが立ちあがって「帰ろうぜ」と言わなくてはならない。だから多少仕事が残ってしまっていても職場を去るようにしているのだが、それでも外出先では日中、コーヒーを飲んだり煙草を吸ったりができないため、自然、それらを求めて自宅に直帰することになる。ニ…

  • 私人

    国内にいるあいだに入手した、ブロツキーによるノーベル文学賞受賞講演。荻窪にある馴染みの古本屋さん、ささま書店で購入し、帰りのバスのなか、酔うかもしれないという不安を抱えながら読みはじめ、最後のほうはバスではなく、ブロツキーに酔っていた。こんなに薄い単行本、なかなか目にすることもなさそうなもの(ぜんぶで60ページくらいしかない。しかもその半分は「訳注」と「解説」)。だが、その内容は浅薄とは徹底的に無縁、独立した一冊としてこれを刊行したのは、まちがいなく出版社の英断だった。 私人―ノーベル賞受賞講演 作者: ヨシフブロツキイ,沼野充義 出版社/メーカー: 群像社 発売日: 1996/11 メディア…

  • 桃の花が咲いていた

    もう詩以外のどんなものも読みたくない、というときには、目に入るすべての文字が詩に見えてくる。「ぼくが欲しいのは毒だけだ、詩を飲むに飲むこと」(マヤコフスキー『背骨のフルート』より)。今日は仕事をさっさと切りあげ、日没まで家で煙草を吸ってから、断食明けの喧騒のさなか、詩集を求めて書店へと向かった。それはかつて自分が働いていた書店で、その日本語書籍の棚には、わたしが注文したまま買い手を見つけられずにいる本が、まだたくさん残っている。いや、返品できるものなら、後任のひとがすでにあらかた返品してしまっている。わたしがつくった詩の棚に残っているのは、もはや返品不可能な出版社の本ばかり。詩集よりも売りやす…

  • すみれの花の砂糖づけ

    中東に住んでいるひとならだれでも知っているとおり、イスラム教国では先日より断食月(ラマダン)に入っている。お日さまが出ているあいだは飲食禁止、という、あれである。日中はレストランなども閉まってしまうので、わたしのような非イスラム教徒にとっても、まったく無関係というわけにはいかない。わたしはもともと食が細い人間なので(一日一食で足りる)、日中に飲み食いできないというのは、べつに大した問題ではないのだが、ここに、「日中は公共の場で煙草を吸ってはいけない」という条項が付け加えられるために、事情が変わってくる。なにせ、煙草が吸えないと、息をしている気がしないのだ。というわけで、断食月中は、いつも以上に…

  • コルカタ

    小池昌代という詩人の存在が、わたしのなかで大きくなりつづけている。友人に教えてもらった『通勤電車でよむ詩集』および『恋愛詩集』があまりにすばらしかったので、日本を出るほんとうに直前、そのとき立ち寄ることのできた書店の詩の棚から、彼女の著作をすべて購入したのだ。といっても、在庫していたのは二冊だけで、詩集はこの一冊のみ、もう一冊は評論である。評論のほうはスーツケースに入りきらなかったので、滞在中に購入したたくさんの本とともに、これから航空便で送ってもらう予定だ。インドを訪ねた詩人の印象を綴った詩集、『コルカタ』。 コルカタ 作者: 小池昌代 出版社/メーカー: 思潮社 発売日: 2010/04 …

  • 恋愛詩集

    わたしが書店で働くようになったのは18歳のときのこと、その後いろいろと店や担当分野を遍歴し、ついに書店を去ったのは昨年、つまり29歳のときだったが、十年以上もブックカバーをかける側の人間でありつづけたこともあってか、わたしはもう自分の本にはカバーをかけなくなってしまっている。国内の書店で「カバーをおかけしますか?」と尋ねられると、反射的に「いえ、結構です」と答える癖がついてしまっているのだ。そもそも、ここ数年はずっと海外暮らしなので、公共の場で開いていたって、わたしがなんの本を読んでいるかを判別できるひとなど、周りにはいやしない。だから先日の帰国の折、友人に薦められてこの本を購入したときにも、…

  • 通勤電車でよむ詩集

    先日国内にいたとき、仕事の予定が思ったよりも早く済んだおかげで、次の予定まで、ふいに二時間ほどの空き時間ができた。ふだんのわたしだったら喫茶店に直行、鞄のなかの本を貪るように読むところなのだが、この日鞄に入っていた本たちはどれも内容が重たすぎて、二時間しか読めないのでは読み耽る気になれない。折しもそのときにいた場所は新宿だった。それなら、と書店に入っていき、信頼の置ける友人に、「二時間で読めるおすすめ本ちょうだい」と言ってみたら、紆余曲折の末に渡されたのはこの本だった。 通勤電車でよむ詩集 (生活人新書) 作者: 小池昌代 出版社/メーカー: 日本放送出版協会 発売日: 2009/09 メディ…

  • きみを嫌いな奴はクズだよ

    刊行されていることは知りつつも、手に取ろうか迷っていた一冊。信頼する友人の「このひと、うまくなってるよ」という一言に後押しされて、結局購入した。書店を出てすぐの喫茶店にて二時間ほどで読み終え、その後、日本から中東に戻る飛行機のなかでもう一回、そしていまパラパラと三度目を読み終えた。 きみを嫌いな奴はクズだよ (現代歌人シリーズ12) 作者: 木下龍也 出版社/メーカー: 書肆侃侃房 発売日: 2016/04/29 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログを見る 木下龍也『きみを嫌いな奴はクズだよ』書肆侃侃房、2016年。

  • 村に火をつけ、白痴になれ

    じつは先日より、久しぶりに日本にいる。出張での帰国というか、いつもどおり仕事の予定が多いので、会いたいひとたちにもろくに連絡をしていない滞在なのだが(みんなごめん)、仕事には都内の実家から電車に乗ってあらゆる場所へ行くため、移動時間が長くなり、結果的に読書がはかどって喜んでいる。それでも、電車内で本を読んでいるひとは、フランスから帰ってきて日本に拠点を置いていた五、六年前に比べても、ずいぶん減った印象だ。もったいないなあ、と思う。たしかに大多数の出版社はつまらない本を量産しつづけてはいるが、少数ではあれ、おもしろい本だって確実に刊行されているのだ。海外に住んでいると、本の購入も注文ばかりになり…

  • 詩という仕事について

    ボルヘスというひとをもっとよく知りたいとき、ぜったいに読んでおくべきだと思う本が個人的に二冊あって、一冊は先日紹介した『The Last Interview』に収められたリチャード・バーギンとの対談(邦訳なら柳瀬尚紀訳の『ボルヘスとの対話』)、そしてもう一冊が、この『詩という仕事について』である。これまで記事にしてこなかったというだけで、じつはこの本を読んだのは今回がたぶん三度目のことだ。全六回にわたって実施された、ハーヴァード大学での詩学講義録。 詩という仕事について (岩波文庫) 作者: J.L.ボルヘス,鼓直 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2011/06/17 メディア: 文庫…

  • 春原さんのリコーダー

    今日はボルヘスではなく、短歌。読み終えているのに記事にしていないボルヘス関連書はまだたくさんあるのだが、今日はどうしても短歌が読みたい気分だったのだ。休日であるのをいいことに、この本を片手に喫茶店に入ったら、あまりの楽しさに瞬く間に時間が過ぎて、気づけば読み終えてしまっていた。以前友人に薦められ、邑書林の「セレクション歌人」の一冊、『東直子集』として触れたこともある、でもそのときには記事にしなかった、東直子の第一歌集。 春原さんのリコーダー―歌集 作者: 東直子 出版社/メーカー: 本阿弥書店 発売日: 1996/12 メディア: 単行本 クリック: 1回 この商品を含むブログ (3件) を見…

  • 汚辱の世界史

    またしてもボルヘス。『伝奇集』と『不死の人』に続いて手にとったのは、1935年刊行の、ボルヘス最初の短篇集だった。かつて『悪党列伝』という邦題で刊行されていた本の文庫版で、旧題のほうが内容を正確に言い表していると思いながらも、この新題が持つ詩情には、ちょっと抗いがたい。その名も、『汚辱の世界史』。 汚辱の世界史 (岩波文庫) 作者: J.L.ボルヘス,中村健二 出版社/メーカー: 岩波書店 発売日: 2012/04/18 メディア: 文庫 クリック: 3回 この商品を含むブログ (9件) を見る ホルヘ・ルイス・ボルヘス(中村健二訳)『汚辱の世界史』岩波文庫、2012年。

  • 不死の人

    わたしはいま、空前のボルヘスブームの最中にいる。火付け役が英書の『Jorge Luis Borges: The Last Interview』であったことは先日書いたとおりだが、これまで『伝奇集』や『創造者』くらいしか読んだことのなかったわたしにとって、この本は未知のボルヘスとの出会い、その第一歩であった。『エル・アレフ』という原題どおりの翻訳もある、『伝奇集』の五年後に刊行された短篇集。 不死の人 (白水Uブックス―海外小説の誘惑) 作者: ホルヘ・ルイスボルヘス 出版社/メーカー: 白水社 発売日: 1996/08 メディア: 新書 購入: 4人 クリック: 46回 この商品を含むブログ …

  • Jorge Luis Borges: The Last Interview

    先日『伝奇集』について書いた折、「記事にできるまで数週間かかるかも……」なんて言っていたボルヘスの対談集。まさか本当にこれほど時間がかかるとは思っていなかったのだが、いまわたしに起こっている空前のボルヘスブームは、じつはこの本が火付け役だったのだ。メルヴィル・ハウスの「Last Interview」シリーズ、ボルヘス編。 Jorge Luis Borges: The Last Interview: and Other Conversations (The Last Interview Series) 作者: Jorge Luis Borges,Kit Maude 出版社/メーカー: Melvi…

  • 伝奇集(再読)

    今月やけに静かなのには理由があって、じつは二、三週間前に読み終えた本の感想をいまだに書き終えられずにいるのだ。それは英語で刊行されたボルヘスの対談集で、読み終えてからというもの、まさしく取り憑かれたようにボルヘスばかり読んでいる。つまり、もちろんその対談集についての記事を先に書くべきなのだが、いつもどおり拙い訳文を付ける作業に苦戦していて、とてもじゃないがすぐには掲載できそうにないのである。ものの二、三日で読み終えた本だというのに、引用したい文章が多すぎて、翻訳(と呼べるほどのものではないが)作業がいつまでも終わらないのだ。だが、そのあいだにも異なる何冊ものボルヘスの著作を読み終えてしまった。…

  • The Machine Stops

    またしてもすこし時間が空いてしまった。英語で本を読むとき、読むのにかかる時間は日本語の本よりもほんの少し長いくらいなのだけれど、それを記事にしようとすると、なんだか拙い訳文を付けずにはいられなくなって、結果的に読むのの倍以上の時間がかかってしまう。無理に訳そうとするのをやめればいい、というだけの話なのだけれど、でも、英語で読んだ印象を日本語に置き換えようとするのは、ちょっと楽しい作業なのである。 The Machine Stops (Penguin Mini Modern Classics) 作者: E M Forster 出版社/メーカー: Penguin Classics 発売日: 201…

  • Decline of the English Murder

    気づけば早くも三冊目のオーウェル評論集。いつからそんなにオーウェルが好きになったんだよ、と、自分でもちょっと笑ってしまうが、この作家の読みやすさは圧倒的で、英語で本を読んでみたい、というようなひとは、もうみんなオーウェルの評論からはじめればいい、と、ちょっと本気で思うようになっている。『Books v. Cigarettes』、『Some Thoughts on the Common Toad』に続いて、「Penguin Great Ideas」シリーズもこれで三冊目、今回は『Decline of the English Murder』。 Great Ideas Decline of the …

  • チェスの話

    最近また、チェスを指すのが楽しい。新しく入社してきたプログラマー男子がチェス好きと判明してからというもの、仕事をほったらかしにして、毎日のように相手をしてもらっているのだ。チェスは対人戦にかぎる。といっても、わたしは言うほど強くないので、三回に一回くらいしか勝てないのだけれど、このくらいのレベルの対局では、先にミスしたほうが負けることになる。だから、相手と対面しているとはいえ、これははっきり自分との闘いなのだが、コンピューター相手では、相手が弱く設定されているとミスばかりするし、強いとなると今度はまったくミスをしなくなるので、なかなかこういう楽しい対局にはならない。とまあ、最近はそんなことばか…

  • Some Thoughts on the Common Toad

    一冊の本の記事を書くのに、これほど時間をかけたのは久しぶりだ。なにもそんなにマジにならなくても、とは自分でも思ったのだが、せっかく英語の本をわざわざ紹介するのだから、気に入った箇所くらいはぜんぶ自分で訳してみなくては、と思ってしまったのだ。もちろん、こんなに時間がかかるとは思わなかった。ものの二、三日で読み終えた本だというのに、訳す作業だけで二週間もかかってしまった。そうこうしているうちに、ほかの本を何冊も読み終えてしまったのだが、これについて書かないことには、それらの本も記事にはできないような気がしてしまった。そんな紆余曲折を経てようやく紹介できるようになった、先日の『Books v. Ci…

  • Books v. Cigarettes

    突然だが、どうもわたしはヘビースモーカーらしい。らしい、なんて言うのは、わたしのように煙草を吸うことに後ろめたさなどぜんぜん感じない喫煙者は、一日に何本吸ったかなど、わざわざ数えることはしないと思うのだ。かばんには常に最低でも二箱は携帯していて、これは毎日補充しないと足りなくなるので、確実に一日一箱以上は吸っている計算だが、それ以上の数字はちょっと見当がつかない。それから、このブログを見てのとおり、わたしは本が好きで、たぶん平均的な人よりは多く読む。どれくらい多いかというのはやっぱり見当がつかず、数えてみる気などもうぜんぜん起こらない。日本に住んでいたころのほうがたくさん読んでいた気もするが、…

  • ヴァレリー・セレクション 上巻

    朝起きてすぐ、顔を洗ってコーヒーを湧かしたら、出勤前の時間をヴァレリーとともに過ごす、という生活を送っていた。過ごせる時間はもちろん早起きの度合いによりけりで、一時間のときもあれば三十分に満たない日もあった。そんなふうだから読書は遅々として進まなかったものの、生活のなかにヴァレリーが組み込まれるというのは大変気分のいいものだ。一時間読めた日など、もうそれだけで一日中楽しい。それに、この詩人は起き抜けの頭にはあまりに明晰すぎて、寝ぼけ眼を一瞬にして見開かせてくれるのだ。だが、ヴァレリーの書くものはただ無闇に難しいわけではない。それは読者を混乱に陥れることを目的として書かれているわけでは毛頭なく、…

  • 天の穴

    先日穂村弘の『ぼくの短歌ノート』を読んだ際に、ぜひとも読みたいと思った歌人、沖ななもの第六歌集。じつは永田和宏の『現代秀歌』を読んだときからとても気になっていたので、すこし前に日本からまとめて本を送ってもらった際に含めてもらっていたのだ。短歌新聞社の「現代女流短歌全集」という、ちょっと身構えずにはいられない名前のシリーズの第四巻として刊行された一冊。ところで、「女流」というのはとても不思議な言葉で、ただ「女性」と言うよりはよっぽど衒学趣味、言外の意味が多すぎ、少なくともぜんぜん詩的ではないように響くのだが、短歌専門の出版社がいったいどうしてこんな詩とは真逆の方向を向いた名称を付けてしまえたのだ…

  • 雑記:マングェルの理想の読者

    わたしが好んで引用する言葉に、アルベルト・マングェルの理想の読者像がある。「理想の読者は、すべての文学作品を匿名作家のものとして読む」、というのがそれで、じつはこれはインターネットをうろちょろしていたときに、英語でもスペイン語でもなく、フランス語で見かけたものだった。フランスではBabel(バベル、いい名前だ)という出版社がマングェルの翻訳にとても積極的で、もとが英語の作品もスペイン語の作品も訳出されているのだが、このボルヘスの友人の知名度は、日本ではちょっと不遇の感が拭えない。とはいえ、かつてここで紹介したことのある『図書館』以外にも、『読書礼讃』や『奇想の美術館』といった書物が、近年やはり…

  • ぼくの短歌ノート

    穂村弘が昨年刊行した短歌評論集。ページを開いたが最後、読み終えるまであっという間だった。じつを言うと、そうなることがこれまでの読書体験から簡単に予想できたからこそ、なんというか、もったいなくって読みはじめられずにいたのだ。現在も『群像』誌上に連載中の「現代短歌ノート」四年分の記事をまとめたもので、じつに穂村弘らしい一風変わったテーマごとに、現代歌人にかぎらず古今の作品が集められたもの。すこし前に紹介した『はじめての短歌』とも、いくつか内容の重複がある。 ぼくの短歌ノート 作者: 穂村弘 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2015/06/16 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (5件…

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