はさみの世界・出張版 さん プロフィール

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はさみの世界・出張版さん: はさみの世界・出張版
ハンドル名はさみの世界・出張版 さん
ブログタイトルはさみの世界・出張版
ブログURLhttp://blog.goo.ne.jp/800137
サイト紹介文三国志中心の、創作小説のHP「はさみの世界」の出張版です。 どうぞ、ごゆっくりお楽しみくださいませ!(
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供177回 / 365日(平均3.4回/週) - 参加 2015/02/03 15:31

はさみの世界・出張版 さんのブログ記事

  • しばらく全活動休止のおしらせ
  • とつぜんで申し訳ありません。指の痛みなど諸事情ございまして、しばらく全活動を休止させていただきます。活動できる状態になったら、またお知らせしますね。楽しみにしてくださっている方、ほんとうにすみません!どうぞお待ちくださいませ… [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 24
  • しかし、それがなんであろう。もともと、報酬には惹かれない。叔父の遺してくれた財産は、兄弟で分けても、おつりがくるほどのものであったし、孔明は稼げるからといって、つまらぬ仕事に手を出して、己の名を安く売り出すつもりはまったくなかった。たとえどんなに世間に笑われようと、心から納得できる主に仕えたい、というのが孔明の夢であったし、卑屈な仕事で満足するより、損をしてでも大きな仕事に取り組むほうが、孔明には [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 23
  • ※なにもかもが違って見える。これまで、おのれの観察眼に自信を持っていた孔明であるが、いま、それが揺らぎつつあった。夜風にからたちの花の、つよい香りが混ざっている。ふと、つられるようにしてにおいの漂ってくるほうに眼をやると、歩みの遅くなった孔明に、四方を囲うようにしている女官たちが、いっせい振り返った。その表情は一様に固く、心のうちをうかがい知ることができない。孔明が口を開こうと唇をうごかすと、途端 [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 22
  • ※「父上」 廊下に膝をつき、扉の開くことを待っていた劉琦であるが、何度か呼びかけても返事がないので、あきらめて立ち上がった。 扉の前には宿衛の兵卒ではなく、武装した宦官が立っている。 そのどれもが年若く、仮面をかぶったように表情がないのだが、それがゆえに風貌を神秘的に見せていた。劉琦は彼らと顔をあわせたくなかったので、うつむき加減に廊下をゆく。 父のそばにはべる宦官は、いつも面子が変わる。年老いた者た [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 21
  • 「まあまあ、そう興奮しなさんな」 緊迫したその場に似合わぬ、揶揄を含んだ声がした。 孔明を待ち受ける蔡瑁たちのほうから、飄々とした歩き振りで、花安英がにやにやと笑いながらやってくる。赤い篝火に浮かび上がるその愛らしい顔立ちが、いまはかえって禍々しい。 「その人に、趙子龍のことを語らせたら駄目ですよ、軍師どの。とたんに正気ではなくなるのだから。さあ、落ち着きなさい。みなが変に思うでしょう」 花安英は、最 [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 20
  • 「薊で、なにがあった」 孔明の強ばった問いに、播天流は肩をそびやかす。 「ただ戦があっただけだ」 「それだけではないはずだぞ。公孫瓚は袁紹に攻められ、最後は一族をみずから斬り、城に火をかけ、自刃して果てた」 おまえはそれを見たのか、とつづけて問おうとした孔明であるが、播天流の、苛立ちまぎれの声に遮られた。 「みなまで言う必要はない。それがしもその場にいたのだ。あろうことか公孫瓚、そうだ、あの見てくれだ [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 19
  • まるで王侯貴族の出迎えのような人出であった。 ただし歓迎をあらわすものはなにもなく、代わりにあるのは沈黙と好奇心、そして敵意だ。 門には、樊城の人という人、すべてが集まってきたような錯覚さえおぼえるほどの人がたかっていた。 ぱちぱちと火の粉を飛ばす篝火が、集まってきた人々の顔を赤く照らし出す。その群れのなかに、知り合いの数がすくないことに、孔明は不安を覚えていた。舅もいなければ、糜竺もいない。やはり [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 18
  • ※「止まれ、赫曄! 止まれ!」咽喉が涸れるのではないかと思うくらいに、なんども同じ言葉を愛馬に命じたが、赫曄は狂ったように、めちゃくちゃに闇のなかをかけ続け、追っ手を巻いてもなお、速度をゆるめずに駆け続けた。気づくと、もうあたりはすっかり夜の帳につつまれていた。さすがの赫曄もへばったのか、途中でぴたりと足を止めてしまった。潰れなかっただけでも幸いだろう。俊足をほこる赫曄に、大きく引き離された老人と [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 17
  • ところが、そうはならなかった。ほかならぬ、劉備と趙雲の信頼関係、孔明と趙雲の信頼関係、劉琦と程子聞の信頼関係、程子聞と孔明の信頼関係、劉備と劉琦の信頼関係……七年間のあいだに、この地ではぐくまれてきた、ありとあらゆる絆が、男の思惑を崩したのだ。孔明の機知により、趙雲は樊城にやってくることになったのだが、『その男』はそのお陰で、かえって趙雲に手が出せなくなってしまった。下手に動けば、樊城の、一部の仲 [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 16
  • しかし、さすがは訓練された兵卒である。うろたえから素早く立ち直ると、おのおの、槍をつがえて立ち向かわんとする。だが、趙雲らの勢いのほうが、はるかに早かった。彼らが槍をつきたて、行く手を阻むよりはやく、趙雲の馬は翼が生えたように地面を蹴りあげ、兵卒の列をおおきく飛び越していった。つづいて、老人と斐仁の馬が、あわてふためく兵卒たちの隙間をつくようにして駆け抜けていく。「弓兵用意! 奴らを逃がすな!」士 [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 15
  • ※のんびりとおしゃべりをしている間に、機を失したな、と孔明は思ったが、さほど苛立ちはしなかった。花安英の動きを見ていれば、『その男』の行動もだいたい読めた。そいつが、趙雲から目を離すわけがないのだ。すでに東の空には、一番星が輝き始めている。兵士たちの姿は、もはや輪郭でしかなく、個々を識別するのがむずかしい。あの中に、蛾が焔にみずから巻かれるように、いずれは自らを滅ぼすと知りながら、嫉妬の炎に身を焦 [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 14
  • 孔明の言葉に、趙雲はすばやく反応し、眉をしかめる。「抽象的な言い方はよしてくれ。嫉妬と憎悪だと? だれの、だれに対する嫉妬と憎悪だというのだ? 糜子仲どののことか? 程子聞か? それとも花安英か?」「どれもちがう。その男は、姿こそわれらの前に現していないが、わたしなどより、あなたがよく知っている人物だ。その姿を示す痕跡は、随所にちりばめられていた。あなたも見ていたはずだよ」そこまで言われても、趙雲 [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 13
  • 忍耐づよく待つ孔明にならい、趙雲も、老人も、しばらく斐仁の言葉を待った。やがて、斐仁は虫の声にまぎれてしまうほどの搾り出すような声で、ようやく言った。「昔なじみを、見ました」「どこで?」「街でございます。あの日の前日、それがしは女を買うために妓楼へむかっておりました。途中の市場で、昔馴染みと会ったのです。その男の名前はわかりませぬ。いくつも偽名を持っており、片腕が利かないのですが、片手でも剣の腕の [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 12
  • 老人の言葉尻をのがさず、趙雲が口をはさむ。「軍師、やはり『壷中』はおまえを狙っているのだ」すると、それまで、ちんまりとウサギの子のように大人しくしていた老将は、きっ、と眼差しをつよくすると、趙雲をきびしく決め付けた。「なんと、軍師にむかって『おまえ』呼ばわりとは何事か、若造!」そこでたじろぐ趙雲ではない。傲然と胸を張り、答える。「呼び方の問題ではなかろう。俺はそれなりに、こいつに敬意を払っているが [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 11
  • 「なんだと?」その言葉が出るまで、ずいぶんと時間がかかった。そのあいだ、孔明は、木陰に座り、うろたえる趙雲を凝視していた。その眼差しは、責めるようなきびしいものではなく、趙雲の様子をさぐっているような、冷静なものであった。趙雲は、その視線を受け止めて、かえって不安をおぼえつつ、孔明のことばをなぞった。「つまり、俺たちの敵は『壷中』ではない、と?」「そうではない。わたしの、諸葛孔明の『敵』ではない、 [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 10
  • 程子聞は、孔明と再会し、その誇り高く、明快で、孤独と誤解をおそれない生き様に圧倒された。もしかしたら、こんなふうになっていたかもしれない自分として、程子聞は孔明に己の欠片を見出そうとする。しかし孔明の放つ光輝は、程子聞の想像をしのぐほどに、大きくまばゆいものであった。やがて嫉妬といった醜い感情は駆逐され、純然たる憧れだけが胸のうちに残されていく。一方で、程子聞という男は、他者に愛情をかけることで、 [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 9
  • 『是がおまえさんの手に渡ったということは、今頃吾の亡骸は、『壷中』の連中によってズタズタにされていることだろう。泣いてはいないと思うが、とりあえず、泣いてくれるなとだけは先に言っておく。吾はおまえさんに、いろいろ嘘をついたので、泣くに値しない男なのだ。まず、吾は樊城で会ったのが、初対面ではない。おまえさんとは十三年前、南昌へ向かう道の途中で、出会っている。川原で会った子ども、といえば思い出すだろう [続きを読む]
  • 孤月的仁 涙の章 8
  • 趙雲はしばし、絶句した。冷たい風が木立をゆらし、その音で、ようやく我に返る。「ばかな。もともと、親を失くした子どもを救うためのものが、親から子を引き離すものに変わった、というのか」「子龍、そこで問題が発生するのだ。いまさら言うまでもないが、荊州の領民たちから子どもを奪ったなら、たびたび騒ぎになったはずだ。人攫いの話は稀にあるが、子供がひとり、いなくなっただけで騒ぎが起こる。しかし、十三年前、大々的 [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 7
  • ※時間は、ここで、すこし巻き戻る。樊城に戻る途中で、休憩を、と言い出したのは孔明のほうであった。うねった道の途中には、かたむきかけた陽光を受けて、きらきらと宝石のように輝く水田があり、趙雲は、そこで作業をする農夫たちから清水のある場所を教えてもらった。農夫のひとりは、立派な風貌の二人連れに驚き、そして趙雲の礼儀正しさによろこんで、スモモの実を分けてくれた。水筒に水を汲み、そしてスモモを持って行くと [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 6
  • 「おや?」男は、まず、自分が投げた石を痛がって、頭をさすっている禿げ頭の男を見、眉をしかめた。「朱季南ではないか、なぜこんなところで暴れているのだ? 探したのだぞ。おまえのために、わたしは家に帰れないのだ」男が言うと、禿げ頭の朱季南も、闇からあらわれた相手が、何者であったか思い出したらしい。気まずそうに顔をしかめる。「貴殿、たしか、陳叔至、とかいう御仁であったな?」「ふむ、わたしの名は覚えていたか [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 5
  • 餅を腹に詰め込みながら、ちらりと男女を見ると、ふたりとも、意地悪を言いそうではない。むしろうれしそうに、斂が餅を口にしているところをながめている。「元気がよいね。男子はそうでなくてはならぬ」男のほうが、はきはきと明るい口調で言う。脇にいた女も、それに賛同してうなずいた。「元気がよくて、頑丈なのが一番だわ。あなたもそう思うでしょう?」元気がよい、ということと、ご飯をたくさん食べられたので力が出る、と [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 4
  • 市場であのテンの毛皮を見たときから、触れてみたいと思っていたのだ。ただ触るだけならば、と手を伸ばしたことがあったが、店の主に見つかって、罵倒とともに殴られた。そのときの痛みを、斂(レン)は忘れなかった。二度と近づくまいと敬遠するどころか、復讐心をたぎらせるのが、斂という子供である。いつか必ず、きっと盗んでやると狙っていた。巡回の兵卒に見つかったのは厄介だったけれど、うまく逃げおおせたわけだし、結果 [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 3
  • ※あまたある星のなかでも、天狼星の輝きは、人の目を奪う。その神秘的なまたたきは、傲然と天空に君臨するあばた面の女神の住まう月よりも、人の目を奪う。まるで気性のはげしい、わがままな美女のようだ。派手な赤い格子や建具、きわどい絵の描かれた壁や衝立にかこまれた妓楼の窓からながめる夜空は、おそろしく澄明で美しかった。しばらく、こんなふうにゆっくりと、夜空を見上げることがなかったと、朱季南は思う。許都から新 [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 2
  • さて、今日は、この寄る辺ない身の上になりつつある二人の兄弟を、我が家に泊めてやるか、布団はあったっけ、などといろいろ考えつつ、陳到は歩いていたが、ふと、市場の、服を売っている店に、目が止まった。店主が、客とにぎやかに値引きの相談をしている。店は、天幕の下に、商品をひろげただけの簡素なもの。ご婦人方の領巾のかけてある衝立に、一緒に、北方のめずらしい毛皮がかけてあるのだが、店主が客に熱中しているあいだ [続きを読む]
  • 孤月的陣 涙の章 1
  • 夕暮れどきの新野の市は、台所を預かる女たちの姿で、にぎわっている。そんな女たちを目当てに、売れ残りを安くする商人もいて、いっそう市場を盛り上げている。影の濃くなった市場は視界も悪い。さまざまな人々の声の交差するなか、日が沈むぎりぎりまで遊ぼうと、一日のしめくくりににぎやかに遊んでいる子供たちが大人たちのあいだを縫って駆けていく。「これくれ」人ごみにまぎれてしまったなら、知り合いでさえ、探すのがむつ [続きを読む]