はさみの世界・出張版 さん プロフィール

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はさみの世界・出張版さん: はさみの世界・出張版
ハンドル名はさみの世界・出張版 さん
ブログタイトルはさみの世界・出張版
ブログURLhttps://blog.goo.ne.jp/800137
サイト紹介文三国志・蜀漢中心の創作小説のサイト「はさみのなかまのホームページ」より、古い作品を掲載中!
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供286回 / 365日(平均5.5回/週) - 参加 2015/02/03 15:31

はさみの世界・出張版 さんのブログ記事

  • 浪々歳々 9
  • ※夜になると、馬良は花嫁の家でご馳走を食べ(ご馳走といっても馬良のような良家の子息にしてみれば質素極まりないものであったが、こんなひなびた農村では、それがたいそうなものなのだということは知れた)、一番風呂に入り、ぬくぬくとしたところで寝所に向かったのであるが、機屋のほうからはとんとんからり、とんからり、と、しつこく…いや、相変わらず孔明の機を織る音が聞こえてくる。しんとした農村に孔明の機を織る音が [続きを読む]
  • 浪々歳々 8
  • せまい村なのであっという間に噂がひろがり、「なんだかすごい職人がいる」というので、老いも若きも、農作業や家事の片手間に、ちょっと足を伸ばしてきて、こわごわと機屋をのぞきにやってくる。ほかに娯楽のない農村であるがゆえに、盛り上がり方もはんぱではない。その指の、素人離れした動きに感心した村人たちが、「都から落ち延びてきた先祖代々の職人ではないか」「ただの職人にしては立派すぎる。あれは養蚕の女神の遣いだ [続きを読む]
  • 浪々歳々 7
  • ※ひとことも口をはさまず、ふむふむと肯きつつ、すべてを聞き終わった孔明は、目をきらりと輝かせる。そして、打ち明け話をしたことで、また盛り上がり、お互いの肩を抱き合って、おいおいと泣き伏せる村人たちに言った。「死ぬことはあるまい」すぐさま、花嫁の母親が、甲高い声で反駁する。「まさか、死ぬなど早まるな、生きて耐えよ、などとおっしゃるのではないでしょうね?」「耐えることもない。要は、衣が出来上がればよい [続きを読む]
  • みなさま、ご無事ですか?
  • 関西で大きな地震がありました。関西にお住いの皆様にお見舞い申し上げます。だんだん被害が明らかになっているようですね……こういうときに、早くライフラインが復帰することを祈るしかできないのがもどかしい。みなさまがご無事でありますように。そして、被害が最小限でありますように!迷いましたが、今日もブログの更新、いたします。粛々と日常を過ごすのが、他地方に住むわれらのつとめ……みなさんの邪魔にならないよう活 [続きを読む]
  • 浪々歳々 6
  • 「どうやら、またも聞いた相手が悪かったようだぞ」と、趙雲が見かねて口を入れてきた。そして、顎で示す方向を見ると、直前に話を聞いた雑草を刈っていた農民が、作業の手をとめて、じっとこちらの様子を窺っているのであった。「どうやら、おなじ地主にやとわれている小作人のようだな。この一帯の大地主は、軍師のやりように反発をしているのだ。上の心は下に反映する。今回は、たまたまだ。そう気を落とすな」「趙将軍の言うと [続きを読む]
  • 浪々歳々 5
  • ※「どこへ行ってもいいって? 奥向きで、か弱い乙女らを相手にしているうちに、ずいぶん丸くなったではないか、子龍。これは主公に感謝せねばなるまい」と、軽口を叩く孔明に、趙雲は言う。「鎧姿に薙刀を持った乙女のどこが、か弱い?」「あなたと比べれば、みんな、か弱い。さあて、どこへ行こうかな。良くんのことだから、きっちり予定を立てて、地図にくびったけの道中になるかと思っていたけれど、こういうあてのないのもよ [続きを読む]
  • 浪々歳々 4
  • ※かなり長い時間が経過した。そろそろ陽が傾きつつある。仕事もひと段落し、帰り支度をはじめている者もあらわれた。仕事を頼んでくる者もいなくなり、手持ち無沙汰になった馬良は、さて、どうしたものかと思っていると、ようやく孔明の執務室より趙雲があらわれた。見たところ、趙雲は憔悴しているでも、苦りきっているでもない。「将軍、軍師は如何?」「うむ…重症だな」その言葉にぎょっとした。この人は、医術の心得もあるの [続きを読む]
  • 浪々歳々 3
  • ※趙雲は、言葉どおりにまっすぐ、孔明のいる執務室へと向かっていく。桂陽の太守の地位を、趙範に返してやり、いまは奥向きの取締りをしている趙雲であるが、臨烝においては顔見知りが多いらしく、まっすぐ、といっても途中途中で声をかけられ、なかなか前に進めないでいる。何人目かと挨拶が終わったあと、趙雲はめずらしく、宙に向かって怒気を吐いた。「どうして屋敷を出てからここまでの道のりでかかった時間より、役所に入っ [続きを読む]
  • 浪々歳々 2
  • ※翌日、馬良は、簡素な門構えの屋敷の前を、犬のようにぐるぐると回っていた。人通りのすくない、閑静な一角に、その屋敷はある。市場のにぎわいとも遠く離れ、子供たちの遊ぶ声にまじって、どこぞの趣味人がかき鳴らす琴の音、それに合わせて唄うように、ほおじろ鳥の、のんびりした鳴き声が聞こえてくる。よいところに居を構えたな、と馬良は感心した。いや、感心している場合ではないのだ。孔明は、今朝早くに起き出すと…馬良 [続きを読む]
  • 浪々歳々 1
  • 1馬良がみつけたとき、孔明は川岸に立ち、じっ、と睨みつけるように、彼方の夕陽をみつめていた。このひとは、赤壁に行ってから、様子がずいぶん変わった、と思う。以前にはあった、気安さがなくなった。たわいのない話をしているあいだでも、たまに表情が完全に失せる。そうなったときの孔明には、もう言葉はかけられない。こわい、とさえ思う。いまもそうであった。まるで彼方に親の仇でもいるような目をして、夕陽をきびしく見 [続きを読む]
  • 東北南部、梅雨入り。サイトも更新〜!
  • 東北南部、梅雨入りしました。それに合わせて、というわけでもありませんが、恒例の、サイト「はさみのなかまのホームページ」、更新しました。近況報告をアップしてあります。お時間ありましたら、どうぞサイトへ遊びにいってみてくださいませ。最新作のプロローグにあたる「おためし短編小説」の第一弾の更新予定日も、そこで発表しております♪さらに、あらたな企画も進行中!web拍手のお礼や、ブログランキング、ブログ村の投 [続きを読む]
  • 短編・クラッシャー・フェイ 後編
  • ※趙雲は、孔明を誘って酒を飲み交わしたことがない。逆も然り。意外につきあいがいいのだな、とちらりと盗み見ると、目が合った。孔明が、屋敷に入ってから、どうも無愛想なのが気にかかる。無理に誘った、というわけでもないのだが。武人三人を前にした孔明、というのもなにやら新鮮であるが、本人はさきほどから、ほとんど会話に入らず、おとなしく杯をかたむけている。とりあえず相槌を打ったり、冗談には控えめな笑みをみせた [続きを読む]
  • 短編・クラッシャー・フェイ 前編
  • 「おまえらしくない家だな、オイ!」と、早くも出来上がっている大虎・張飛は言う。たしかにそういわれても仕方がない屋敷だ。十日にいっぺん、足をはこべばよいほうで、趙雲はすべての采配を、家令にまかせている。だから身に過ぎた屋敷は、家令一家の趣味に合わせて整えられており、趙雲の意向はなにも反映されていないのだ。居心地がよいことだけはたしかで、いきなり帰っても、家令一家は腰をひくくして、おかえりなさいまし、 [続きを読む]
  • 短編・良き兵士
  • 戦争するしか能のない者たちをつねに抱えておくほど、為政者にとって危険なことはない。理想的な軍備とは、戦いの必要のないときには家に戻り、喜んでそれぞれの職務に励む兵士から成り立った軍備をいう。   マキアヴェッリ語録「国家編」より兵士たちの調練が終わると、趙雲は全身の汗を拭きながら、兵舎の一室にある自分の部屋にもどってきた。ほかの武将たちとちがって、家族を持たぬ身であるから、必要最低限のもの以外はな [続きを読む]
  • 短編・夏の終わり
  • 蝉の声で出来あがった堂を抜けるようだと、趙雲は思った。さすがに正装は暑いので、城を出て、あまりひと目につかない場所にまでやってきた時点で、すぐに冠だの上衣などは取ったり脱いだりしてしまったのであるが、後方をゆったりとついてくる、一年中、外気と無縁といった顔をした孔明は、身だしなみをくずさぬまま、暑さをまったくかんじさせない涼やかな顔をして、なにやら、めずらしそうに周囲を見まわしている。臨烝と公安と [続きを読む]
  • 2018/6/13からのブログ更新について。
  • いつも当ブログに通ってきてくださっているみなさま、どうもありがとうございます!おかげさまで、旧サイト「はさみの世界」の作品群のうち、「風の旗標」までをデータ移行することができました。明日から、どうしようかなあ、と思案していたのですが、結論は、「順当に時代の流れを埋めるかたちで作品を移行しよう」となりました。つまり、明日からデータ移行するのは、書いた小説の制作年月日の古いものから出すのではなく、制作 [続きを読む]
  • 風の旗標 最終回
  • ※民の数が減ったということもあり、劉琦の船と合流するための道中に、苦労はほとんどなかった。途中、関羽が使者をよこし、首尾よく劉琦と合流できたことを伝えてきた。それに遅れるようにして、孔明からの、劉琦の代理として伊籍が船をつれている、という報せが入ったとき、一行の士気は、ぐんと高まった。とくに趙雲は、孔明が江東に逃げる気配もなく、きちんとみなを待っていることが誇らしかった。そうして、一行が川辺から、 [続きを読む]
  • 風の旗標 37
  • ※趙雲はろくに眠ることができず、月光のもと、ひたすら、まるで蓑虫のようになって地べたに横になっている民のすがたを見つめていた。民のなかにも眠ることができないものがいるようだ。闇の中で、もぞもぞと、何度も寝返りを打っている。ふと、目についた女が寝返りを打って、寝具のかわりに身体に巻いていた衣が、肩からずり落ちた。女は幼子を抱えていたらしく、夏の夜風を肌に受けた子供は、くしょん、とちいさく、くしゃみを [続きを読む]
  • 風の旗標 36
  • 船団に迎え入れられた孔明は、船団長となっていたのが、ほかならぬ伊籍であることにおどろいた。と、同時に、随行していたのが、かつて孔明の叔父の部下であった、黄漢升であったことにもおどろいた。伊籍は、なんとしても劉予州をお助けするのだ、と息巻いており、孔明の話を聞くと、すぐさま全団に号令をかけ、劉備との合流地点へと船を動かした。途中、船は、甘夫人と魯粛らの一行を見つけ、これともまた合流したのであるが、伊 [続きを読む]
  • 風の旗標 35
  • 孔明はここで、偉度を中心とする『壷中』の規則に気づいた。壷中は実力主義なのである。背後にひかえる子供たちのなかには、偉度よりも年上の若者がいるようであるが、偉度が口を開かないかぎりは、絶対に何も言わない。おそらく、実力があるものが頭となり、ほかのものは、徹底してそれを立てるようにと躾けられてきたのだろう。そうすることで、命令を忠実に実行させられるようになるからだ。もちろん、自由がないため、臨機応変 [続きを読む]
  • 風の旗標 34
  • 「偉度」顔をあげて孔明がつぶやくと、胡偉度は、鼻で笑って、おもしろそうに孔明を見た。「合格です」「なにがだ」「あなたがわたしの名を忘れていたなら、このまま斬ってしまう予定でおりましたので」と、偉度は、おのれの後れ毛を、長細いひとさし指で、くるくると巻いた。孔明は衣のほこりをぬぐいつつ、眉をひそめて立ち上がる。「忘れるはずがなかろう。自分でつけた字だぞ」「それはよかった。字をつけるということは、わた [続きを読む]
  • 風の旗標 33
  • ※夜の闇に押されるようにして、孔明はひたすら馬を東へと向けた。案内された木々は夏のあいだに生い茂り、たまにその伸びた枝でもって、せまい道を全速力で疾駆する孔明の身を打ったが、もはや孔明はかまっておられなかった。案内役の兵卒のほうが怖じて、道も暗いので危険だから休もうと進言してきたのだが、孔明は、天恵のごとく月が出ていることを理由に、ひたすら東へ走りつづけていた。長坂の仲間たちは無事だったろうか。怪 [続きを読む]
  • 風の旗標 32
  • 夜闇がこれほどにありがたく思えたことはない。部下たちにささえられながら橋をわたり、趙雲は、闇に溶けていく空をながめて、安堵した。背後から、ひづめの音が追いかけてくる気配もない。張飛は、みごとに殿の役目をはたして、うまく足止めをしているようであった。橋を渡りきると、ゆるゆると歩をすすめながら、民がそれぞれ糜竺と糜芳の兄弟に先導され、いくつかの列にわかれているのが見えた。そのほとんどが、橋を渡りきった [続きを読む]
  • 風の旗標 31
  • 味方の将兵をまとめながら、趙雲はゆっくりと撤退をはじめた。公孫瓚のもとにいたころは、敵の大半は蛮族で、しかも勝ち戦が多かった。だから、こうした大人数での撤退は、あまり経験がない。劉備の家臣に加えられてからは、すぐに荊州に入ったので、そのあとの経験もほとんど積むことがなく、ここまできてしまった。日ごろの調練が、みごとに物をいっていると、趙雲は身に沁みて思った。曹操の南下にそなえて、付け焼刃であつめた [続きを読む]
  • 風の旗標 30
  • 「気むずかしいやつだからな、気をつけろよ」と、劉備に念を押されたとき、孔明は、気むずかしいのは江東の人間を指すのだろうかと考えた。江東の孫氏は、かの高名な兵法家孫子の子孫を自称する一族である。現在の当主は孫仲謀という、孔明よりも年若い青年であるが、その父親と劉備は、董卓の討伐のさいに顔をあわせたことがあるということを、以前に孔明は聞いたことがあった。だから、なんとなく現当主の気性も知っているのかも [続きを読む]