Y.E.H さん プロフィール

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Y.E.Hさん: 陸奥と僕のこと
ハンドル名Y.E.H さん
ブログタイトル陸奥と僕のこと
ブログURLhttp://yehmutuboku.blog.fc2.com/
サイト紹介文艦隊これくしょん(艦これ)の艦娘、特に陸奥(むっちゃん)等の設定その他をお借りした二次小説ブログです
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供196回 / 365日(平均3.8回/週) - 参加 2015/03/21 09:35

Y.E.H さんのブログ記事

  • 第十四章・第八節
  •  斑駒に、中嶋の行先を尋ねたところ、「今、史料館に行かれてると思いますよ! 多分、お一人で♪」と、意味ありげな笑顔で言われてしまった。(別に、そんなことを期待してるわけじゃないのだけれど)と口に出しはしないものの、敢えて胸の中で独り言ちてみるのは、やはり心の片隅に、秘かにそんなことを期待してしまう自分が見え隠れするからだ。(我ながら困ったものね――、よく人間は、こんな厄介なものを抱え込んで、数十年 [続きを読む]
  • 第十四章・第七節
  •  話し終えたときには、あたり一面夕焼けの赤一色に染まっていた。「ゴメンね、長々と喋っちゃって……」「ううん、いいのよ」その何気ない遣り取りをかわしながら、顔を上げてむっちゃんの方を向いた僕は、息が止まりそうになる。彼女の瞳から零れた涙が、まるで大粒のルビーのように夕焼けの色を映して煌いており、その美しさにハッとさせられただけならともかく、それ以上に、その瞳に満ち溢れていた深い労わりと慈しみとが、僕 [続きを読む]
  • 第十四章・第六節
  •  それから後のことは、僕にとって、何もかも他人事の様なものだった。母さんがいない毎日など、何の意味も無い空っぽの器そのものであり、しばらくの間、僕は嬉しいとか悲しいとか感じることすら無くなっていた。笑うことはもちろん、泣いたり怒ったりすることも無くなり、感情の起伏と言うものをあまり感じなくなる。普通にしていても、何かしらどこかが欠けているような感じにずっと付きまとわれ、以前はとても楽しかったことや [続きを読む]
  • 大山鳴動して…
  •  いや、通勤中に大きな地震にあうのはおそらく初めてだったと思います。しかも、よりにもよって地上十数メートルの高さを移動中に、まともに出会ってしまったものですから、危うくとんでもない目に会うところでした。それにしても、中空に立ち往生したまま閉じ込められるのは、精神衛生上たいへんよろしくない経験だと、しみじみ思います。やはり、人間が樹上から地面に降り立ってから、随分な年月が経過しているのだなぁと、くだ [続きを読む]
  • 第十四章・第五節
  •  その後も、父は特に頻繁に帰って来る様になったわけではなかった。もちろん、幼い僕がはっきりと分かっていた訳ではないが、今思い出してみると、概ね半年に一度くらいの間隔で帰国していたのだろう。記憶している限りでは、少なくとも運動会とお遊戯会に一度ずつ父は姿を見せ、クリスマスプレゼントを持って帰って来て、お正月に旅立っていったこともあったが、それらは全て、僕にとってはこの上もなく楽しい思い出だった。母さ [続きを読む]
  • 第十四章・第四節
  •  物心ついた頃の最初の記憶は、母さんのとても優しげな笑顔だった。とは言え、幼い僕にとっては、毎日のほぼ全てが母さん一色だったのだから、それもまた当たり前のことかもしれない。僕が生まれたのはこの家ではないのだが、まだ赤ん坊の時に、この海を見下ろす丘の上の家に越してきたのだそうだ。そして間もなく、ご近所で同い年の子供がいるという縁で、葉月の家族と仲良くなった。実際、葉月の父さんも母さんもとても感じの良 [続きを読む]
  • 第十四章・第三節
  •  その日を境に、僕達二人は、本当に離れていることが辛くなってしまう。お互いの姿が見えないだけで不安に駆られる様になり、どれだけ自分自身に言い聞かせても(もちろん長門さんや葉月に言い聞かされようともだ)止めようがなかった。そして、そんな数日を過ごした後にそれは起こった。訓練隊での昼食が終わって、皆が寛いでお喋りなどしている最中に、突然むっちゃんが口を噤み、胸を押さえて屈みこんだのだ。「どうなさったの [続きを読む]
  • 第十四章・第二節
  •  それから幾日と経たずに、僕らは中嶋さんから呼ばれ、サルベージ業者が作業に着手したことを聞かされた。僕は(何を勘違いしたものか)もっと平静に受け止められる様な気になっていたのだが、いざそれを聞かされると、まるで空中から酸素が消え失せてしまったかのように呼吸困難になってしまう。もしも、むっちゃんが横に居てくれなかったら、本当に窒息して倒れてしまったかも知れない。そんなわけで、毎度の如く、彼女のおかげ [続きを読む]
  • 第十四章・第一節
  •  程なくして梅雨は明け、ゼミも実質的な夏休みに突入する。昨年(厳密に言うなら今春)までの僕であれば、とっくの昔に、みっちりバイトを入れまくっているところだが、今年の夏のスケジュールは徹底的にガラ空きだった。言うまでもない事だが、とにかく時間が許す限り、むっちゃん達と一緒に過ごすと決めているからだ。中嶋さんに許可も貰ったので、用事の無い日は一緒に訓練隊に赴き、斑駒さんの仕事を手伝ったりする生活を始め [続きを読む]
  • 第十三章・第六節
  •  居室の窓から、長門はぼんやりと外を眺めていた。防衛隊の候補生達が短艇教練に精を出しており、その姿が遠い過ぎ去った日々を思い起こさせる。(あの新兵たちは、今どうしているのだろうか?)何気なくそう考えてから、ふと思い至って一人苦笑する。(何のことはない、あれから八十年以上も経っているのか)例え、彼らがあの戦争を生き残っていたとしても、ほとんどの者はもう天寿を全うしている事だろう。(思えば、我等はなん [続きを読む]
  • 第十三章・第五節
  •  団欒という言葉を、しみじみと噛み締める夜だった。陸奥は葉月と共に台所に立ち、仁が初春や子の日と一緒に行ったり来たりしながら、夕食の支度やその他の家事を片付けていくが、お客様である長門が落ち着かな気にするので、結局、初春と子の日も一緒に居間で寛ぐことになる。そうこうするうちに夕食が整い、初めて六人で囲んだ食卓は、何とも言えない朗らかな空気に包まれた。訓練隊の食事に慣れつつある長門は、頻りに料理の味 [続きを読む]
  • 第十三章・第四節
  •  駅を出て海辺の公園目指して歩く仁の手を、追いついてきた子の日が握ったので笑顔で振り返ると、その反対の手を握った陸奥が微笑みかける。夏の気配が色濃く香る風が、軽く彼女の後れ毛をなびかせ、幼い頃に見上げた、遠い夏の日の記憶をくすぐる。(そうだ、僕は確かに見たんだ――、子の日ちゃんが今見ているこの光景を……)にもかかわらず、その追憶――彼が遠い日に亡くしてしまった、魂の一部そのもの――を呼び覚ましてく [続きを読む]
  • 第十三章・第三節
  •  梅雨の晴れ間とでもいうのだろうか、彼女達のために天が微笑んだ様な爽やかな日だった。「ねぇ、これ姉さんに似合うと思わない♪」「うん! すっごく良いねそれ!」「む――、いや、ちょっと待ってくれ二人とも、幾らなんでも、それは少々軽佻浮薄に過ぎるのではないか?」「ほほ♪ 長門殿、既に道行く人々の身形をご覧になりましたでしょうに。唯今の弁に従いますれば、行き交う人々の殆どが軽佻浮薄と言うことに相成りましょ [続きを読む]
  • 第十三章・第二節
  •  正門前で待っていると、陸奥が初春と共に子の日の手を引いて歩いてくるのが見える。だが、仁が一緒にいるのは当然としても、あの塔原という女まで同行しているのはさすがに戸惑う。「陸奥さ〜ん♪」(まぁ、かくいう私の側がこれではな)妹の名を呼びながら一斉に手を振る仲間達を横目に見ながら、心中秘かに嘆息する。もともと、今日は蒼龍・飛龍や長良達が外出するはずだったものを、自分や子の日などが陸奥と共に過ごせる時間 [続きを読む]
  • 第十三章・第一節
  •  しとしとと雨の降り続く憂鬱な天気だったが、僕の心中はそこまでひどく憂鬱という訳ではなかった。むっちゃんは仲間達に事情を話した(厳密に言うと、彼女ではなく中嶋さんが話したらしいが)のだが、皆その事実を受け止めてくれたばかりでなく、少しでもむっちゃんの負担を軽くするために、皆のまとめ役を長門さんにバトンタッチすることまでその場で決めてくれたそうだ。何よりも、それを話してくれた彼女や初春ちゃん子の日ち [続きを読む]
  • 第十二章・第八節
  •  月曜日には、初春と子の日も少し落ち着いてきたので、通常通りに隊に出向くことにした。二人には少しずつ会話が戻ってはきたものの、普段通りというには程遠く、特に子の日は陸奥と片時も離れたがらなかったため、不安に思って仁と相談はしたものの、いつまで休めばいいのか見当もつかないので、仲間と一緒にいる時間が出来るほうが良いと思ったからだ。心配そうな斑駒とともに隊に到着すると、早速長門が出迎えてくれたが、二人 [続きを読む]
  • 第十二章・第七節
  •  その夜、むっちゃんは初春ちゃんと子の日ちゃん(それに葉月にもだ)に、事情を打ち明けた。ただ、どんなに普通に振る舞おうとしても、僕らの口数はあからさまにいつもより少なく、何とか朗らかに会話しようとするほどぎこちなくなる有様だったので、話す前からみんな雰囲気を感じ取ってしまい、子の日ちゃんなどは常よりも殊更にむっちゃんの手をギュッと握りしめて、傍から離れようとしなかったのだ。そのいじらしい様子を見て [続きを読む]
  • 第十二章・第六節
  •  司令部建屋内を無言のまま歩いた三人だったが、外に出たところで、仁の背後から長門が声を掛ける。「渡来殿――」「何でしょう、長門さん?」振り返った彼に、長門はやや逡巡する態を見せたあと、少し視線を外して再び口を開く。「その、なんだ――、仁と呼んでも良いか?」「あ――――、は、はい! もちろんです!」「そうか――、では仁よ、少し話がしたいのだ、付き合ってくれるな?」「はい!」その返答に満足したらしい彼 [続きを読む]
  • 第十二章・第五節
  •  三人が退室してしまうと、室内は静寂に支配される。「見苦しい真似を致しました、申し訳ございません」静寂を破った中嶋の声には、どうやら、いつもの冷静さを多少なりと取り戻したらしい響きがある。「いや、本当に詫びねばならんのは私の方だ」そう応じた西田はゆっくりと踵を返し、窓に近付くと、そっとブラインドを開けて外を眺める。「いえ、改めて申し上げますが、全ては私の未熟から発したことです」そう言い切った中嶋に [続きを読む]
  • 第十二章・第四節
  •  体内に流れる血液やら何やら様々な液体が、一斉に凍結してしまった様だった。恐ろしいほどの寒さが全身を包み込み、どんなに力を入れて押さえ込もうとしても、震え出すのが止められない。(そんなの――、嘘だ! 嘘に決まってる! むっちゃんが、むっちゃんが――)怖ろしかった。ただただ、怖ろしかった。怖ろしくて怖ろしくてどうしようもなかった。「――仁、仁? どうしたの仁⁉」(頼む、誰でもいいんだ! 嘘だと――嘘 [続きを読む]
  • 第十二章・第三節
  •  会議では、先日の遠征についてのおさらいが行われ、それはとても興味深い話だったのだが、残念ながら、僕は全く集中力を欠いていた。更に、昼食をはさんで昼一番からは、僕と斑駒さんが付き添い役になる次の外出予定についての話になり、蒼龍ちゃん飛龍ちゃん達はテンションが上がりまくっていたのに、それにもほとんどついていけなかった。言うまでも無く、昨夜初春ちゃん達が寝てしまってから、葉月がトイレに立った折に、そっ [続きを読む]
  • 第十二章・第二節
  •  長門が日本に上陸して最も違和感を覚えたのは、やはり、米軍の艦艇が当然の様に横須加に停泊していることだった。もちろん、陸奥や仲間達から事前に聞いては居たものの、聞くと見るとでこれ程違う感じ方をすると言うのも初めての体験だったので、自分の中で感情を整理することが出来なかった。もしも、強く唇を噛んだ酒匂が腕にしがみついて来なかったら、立ち上がって大声を上げていたかも知れない。ただそうさせなかったのは、 [続きを読む]
  • 第十二章・第一節
  •  仁の自己嫌悪は、陸奥が戻ってきたことで一層深刻になった。あの日以来、葉月は毎日食事を作りにやって来ただけでなく、週末には朝から押しかけて、彼に朝食を食べさせると外へ連れ出し、あちらこちらと連れ回したが、とにかく一言も陸奥と何があったのかを聞こうとしない。仁は、いつ彼女が強面を剥き出しにして、何があったのか白状しろと詰問するのだろうかと戦々恐々だったのだが、そんな風にビクビクしている内に、何となく [続きを読む]
  • 第十一章・第九節
  • 「二人とも、用意出来たかしら?」「うん!」「よろしゅうござりますぞえ」初春と子の日の返事を確認すると、二人を先に出させて、船室をぐるりと見渡してから陸奥も後に続く。船が複雑な動きをしており、接岸しようとしているのが感じ取れる。(落ち着きなさい、落ち着くのよ陸奥!)全力を振り絞って平静を装ってはいるが、実のところは、期待と不安とで腹の中がひっくり返りそうな気分だった。斑駒(娘)によれば、仁には帰港の [続きを読む]
  • 第十一章・第八節
  •  払暁、『おおやしま』は浦加水道に向かって進んでいた。「久し振りに見る日本はどう、姉さん?」「いや――、正直に言うが懐かしいな――。どの様に否定しようが、やはりここは私の故郷なのだな」「ねぇ、故郷ってどういうもの? 日本は酒匂の故郷?」「酒匂は難しい事を聞くな♪ そうだな――、故郷は自分が生まれたところだから、酒匂にとっても日本は故郷だぞ。どうだ、懐かしいと感じるか?」「良くわかんない、でも――、 [続きを読む]