千月志保 さん プロフィール

  •  
千月志保さん: 魔珠
ハンドル名千月志保 さん
ブログタイトル魔珠
ブログURLhttp://virigiantext.blog.shinobi.jp/
サイト紹介文魔力の元となるエネルギーを放出する魔珠を巡るオリジナルファンタジー小説を連載しています。
自由文前作「ヴィリジアン」も公開中です。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供62回 / 365日(平均1.2回/週) - 参加 2015/04/27 08:11

千月志保 さんのブログ記事

  • 第1章 魔珠担当官(3) 噂〈2〉
  • メノウはいつものケースを取り出すと、ロックを解除して開いた。ケースも特殊な合金でできているようだが、研究所などに分析をさせても不明の成分が出てくる。やはり魔珠の里でしか採れない金属が使われているのだろう。 中には美しく輝く透き通った球がつめられている。一粒の大きさはビー玉程度だ。この小さな球体に膨大なエネルギーが眠っているのである。スイは慣れた要領で魔珠を数えた。「確かに」「次の注文票も用意してあ [続きを読む]
  • 第1章 魔珠担当官(2) 噂〈1〉
  • 「ありがとう」 書斎に寄って荷物を置き、すぐに応接室に向かう。「待たせたな、メノウ」 ドアを開けると、ソファに座っていたメノウが振り向いた。小柄だが、どこか凛としたところがある青年だ。「いらない荷物は先に部屋に置いてきちゃった。泊めてくれるんでしょ」「ああ。取りあえず先に話を済ませようか」「うん。そうだね」 スイはメノウをいつもの部屋に案内した。スイが手をかざすと、ドアが開いた。魔珠の取引のためだ [続きを読む]
  • 第1章 魔珠担当官(1) メノウが来る日
  • 「今日はメノウが来る日らしいじゃないか」 キリトがにやにやしながら近づいてくる。「ああ」 スイはそっけなく答えた。「何だよ。本当はめちゃくちゃ嬉しいくせに。かわいくねえヤツ」 メノウは魔珠の売人だ。火を焚くにも明かりをつけるのにも魔法を使っていたこの時代、魔力の源となる魔珠は人々の生活に不可欠なものであった。大がかりな魔法が使える者はもうすでに専門の術士だけになってしまったが、普段の生活に必要なち [続きを読む]
  • 最終章 ゲート(7) 新しい時代へ
  • ヴァンパイア化した町や村の浄化は順調に進んでいた。 グレンはいつものように派遣されていた村から戻り、エストルの執務室に向かった。 ドア口に立つと、名前を呼ぶよりも先にドアが開いた。「グレン、今帰ったのか?」 さすがに人がいるとは思っていなかったようで、エストルも驚いた顔を見せる。だが、すぐに元のきりっと引き締まった表情に戻ってドアを閉めると、口元をほころばせて言った。「ちょうどいい。ついてきてくれ [続きを読む]
  • 最終章 ゲート(7) 新しい時代へ
  • ヴァンパイア化した町や村の浄化は順調に進んでいた。 グレンはいつものように派遣されていた村から戻り、エストルの執務室に向かった。 ドア口に立つと、名前を呼ぶよりも先にドアが開いた。「グレン、今帰ったのか?」 さすがに人がいるとは思っていなかったようで、エストルも驚いた顔を見せる。だが、すぐに元のきりっと引き締まった表情に戻ってドアを閉めると、口元をほころばせて言った。「ちょうどいい。ついてきてくれ [続きを読む]
  • 最終章 ゲート(6) 感謝と祈り
  • 「ここで兵士たちの指導でもしないか?」 透かさずエストルが提案する。「そうですね。考えておきます」 クレサックは取りあえず保留にすることにした。「クレサック」 ウィンターに手を握られてクレサックは振り返った。「あなたが私を信じてくれなければ、みんなとも巡り会えなかった。本当に感謝している」「私もヴァンパイアの殲滅の役に立てて嬉しかった。礼を言うよ。シャロンを頼む」 二人はぎゅっと握った手に力を込め [続きを読む]
  • 最終章 ゲート(6) 感謝と祈り
  • 「ここで兵士たちの指導でもしないか?」 透かさずエストルが提案する。「そうですね。考えておきます」 クレサックは取りあえず保留にすることにした。「クレサック」 ウィンターに手を握られてクレサックは振り返った。「あなたが私を信じてくれなければ、みんなとも巡り会えなかった。本当に感謝している」「私もヴァンパイアの殲滅の役に立てて嬉しかった。礼を言うよ。シャロンを頼む」 二人はぎゅっと握った手に力を込め [続きを読む]
  • 最終章 ゲート(5) 出発の日
  • エストルはグレンの緑色の瞳を真っ直ぐ捕らえた。「お前はお前だけがなし得る方法で力を手に入れた。他の誰かがお前と同じように力を得るためにヴァンパイアに噛まれてもまずは意識を保つことさえかなわない。お前の培ってきた強靱な精神力や魔力があってこそなし得たことだ。それに」 エストルは皮肉っぽい笑いを浮かべて言った。「力自体には善も悪もない。人間の力であろうとヴァンパイアの力であろうと使い方次第で善にもなれ [続きを読む]
  • 最終章 ゲート(5) 出発の日
  • エストルはグレンの緑色の瞳を真っ直ぐ捕らえた。「お前はお前だけがなし得る方法で力を手に入れた。他の誰かがお前と同じように力を得るためにヴァンパイアに噛まれてもまずは意識を保つことさえかなわない。お前の培ってきた強靱な精神力や魔力があってこそなし得たことだ。それに」 エストルは皮肉っぽい笑いを浮かべて言った。「力自体には善も悪もない。人間の力であろうとヴァンパイアの力であろうと使い方次第で善にもなれ [続きを読む]
  • 最終章 ゲート(4) 与えられた力
  • 「喜んで」 ウィンターは微笑んでグラスに残っていた酒を飲み干した。「そうと決まったら、あまり夜更かしはできないな。今日はありがとう」「こちらこそ」 席を立ったウィンターをグレンは見送った。ドアを閉めると、エストルと二人きりになった。「グレン」 エストルに声をかけられてグレンは振り返る。エストルがいつも以上に真剣な目をしているのを見て何となく次に何を言われるのか察し、グレンは席に戻った。「ありがとう [続きを読む]
  • 最終章 ゲート(4) 与えられた力
  • 「喜んで」 ウィンターは微笑んでグラスに残っていた酒を飲み干した。「そうと決まったら、あまり夜更かしはできないな。今日はありがとう」「こちらこそ」 席を立ったウィンターをグレンは見送った。ドアを閉めると、エストルと二人きりになった。「グレン」 エストルに声をかけられてグレンは振り返る。エストルがいつも以上に真剣な目をしているのを見て何となく次に何を言われるのか察し、グレンは席に戻った。「ありがとう [続きを読む]
  • 最終章 ゲート(3) 予習
  • 「この時間まで仕事か? 忙しかったのだな」 ウィンターが言うと、エストルは特に表情を変えずに答えた。「明日、会議があるからな。ところで、ウィンター」 ついでもらった酒を一口飲んで、エストルは続けた。「今後どうするつもりだ?」「明日の会議の予習か?」「まあそんなところだ」 エストルはいつでもできる準備は全て済ませて本番に臨んできた。セレストが戻ってきた明日の会議でもそれは変わらない。ウィンターはどう [続きを読む]
  • 最終章 ゲート(3) 予習
  • 「この時間まで仕事か? 忙しかったのだな」 ウィンターが言うと、エストルは特に表情を変えずに答えた。「明日、会議があるからな。ところで、ウィンター」 ついでもらった酒を一口飲んで、エストルは続けた。「今後どうするつもりだ?」「明日の会議の予習か?」「まあそんなところだ」 エストルはいつでもできる準備は全て済ませて本番に臨んできた。セレストが戻ってきた明日の会議でもそれは変わらない。ウィンターはどう [続きを読む]
  • 最終章 ゲート(2) 三人で
  • 「ご一緒させてもらっても構わないかな?」「いいよね?」 グレンは振り返ってソフィアに聞く。「もちろんよ」「では、失礼させてもらうよ」 グレンはウィンターに空いていた椅子を勧めた。その足でグラスを一つ取ってきてウィンターの前に置くと、そこにも酒を注いだ。「ありがとう」 ウィンターに微笑んで、グレンは自分の席に着こうとした。「ソフィア?」 涙ぐんでいる。グレンは一瞬驚いたが、すぐにその理由に思い至った [続きを読む]
  • 最終章 ゲート(2) 三人で
  • 「ご一緒させてもらっても構わないかな?」「いいよね?」 グレンは振り返ってソフィアに聞く。「もちろんよ」「では、失礼させてもらうよ」 グレンはウィンターに空いていた椅子を勧めた。その足でグラスを一つ取ってきてウィンターの前に置くと、そこにも酒を注いだ。「ありがとう」 ウィンターに微笑んで、グレンは自分の席に着こうとした。「ソフィア?」 涙ぐんでいる。グレンは一瞬驚いたが、すぐにその理由に思い至った [続きを読む]
  • 最終章 ゲート(1) 封印
  • 幸い小型の鳥型の魔獣が数匹襲ってきただけで、道中あまり危険なこともなかった。 霧は消え、雲の隙間から光が差していた。 橋のど真ん中に石版が鎮座していた。刻まれているのは古代文字だろうか。その向こうは円形の舞台のようになっていた。青い光を放っている。そこが先端で、周りにはもう海しか見えない。「これが……ゲート」 初めてゲートを見たグレンがつぶやく。これが唯一ムーンホルンとテルウィングとを [続きを読む]
  • 最終章 ゲート(1) 封印
  • 幸い小型の鳥型の魔獣が数匹襲ってきただけで、道中あまり危険なこともなかった。 霧は消え、雲の隙間から光が差していた。 橋のど真ん中に石版が鎮座していた。刻まれているのは古代文字だろうか。その向こうは円形の舞台のようになっていた。青い光を放っている。そこが先端で、周りにはもう海しか見えない。「これが……ゲート」 初めてゲートを見たグレンがつぶやく。これが唯一ムーンホルンとテルウィングとを [続きを読む]
  • 第16章 海に浮かぶ橋(13) こぼれる思い
  • グレンはソードの胸から剣を抜いた。これまでソードの口から紡ぎ出された数々の言葉たちが一気に記憶にあふれ出し、グレンは涙した。「ソード……僕は、君に何度も助けられたのに、君の悲しみを、どうすることもできなくて……」 恐ろしい。他者の者を我が物にしたいという支配欲が戦争を引き起こし、その戦争に勝利するためヴァンパイアが生み出された。そのヴァンパイアによって人は狩られていった。そ [続きを読む]
  • 第16章 海に浮かぶ橋(13) こぼれる思い
  • グレンはソードの胸から剣を抜いた。これまでソードの口から紡ぎ出された数々の言葉たちが一気に記憶にあふれ出し、グレンは涙した。「ソード……僕は、君に何度も助けられたのに、君の悲しみを、どうすることもできなくて……」 恐ろしい。他者の者を我が物にしたいという支配欲が戦争を引き起こし、その戦争に勝利するためヴァンパイアが生み出された。そのヴァンパイアによって人は狩られていった。そ [続きを読む]
  • 第16章 海に浮かぶ橋(12) 守るべき存在
  • 残っている力はわずか。もう一か八かでたたみかけるしかない。 ソードは残っている魔力を全て手のひらに集中させた。「来るよ、ヴィリジアン」 グレンも静かに目を閉じ、意識を集中した。カッと目を見開くと、ヴィリジアンの瞳が輝いた。それに呼応するように剣の刃がくっきりとした緑色の光をまとう。 ソードは残っていた魔力を一気に解放した。緑色の光が吹き飛ばされ、勢いをつけたソードの攻撃はそのまま一直線にグレン目が [続きを読む]
  • 第16章 海に浮かぶ橋(12) 守るべき存在
  • 残っている力はわずか。もう一か八かでたたみかけるしかない。 ソードは残っている魔力を全て手のひらに集中させた。「来るよ、ヴィリジアン」 グレンも静かに目を閉じ、意識を集中した。カッと目を見開くと、ヴィリジアンの瞳が輝いた。それに呼応するように剣の刃がくっきりとした緑色の光をまとう。 ソードは残っていた魔力を一気に解放した。緑色の光が吹き飛ばされ、勢いをつけたソードの攻撃はそのまま一直線にグレン目が [続きを読む]
  • 第16章 海に浮かぶ橋(11) 伸ばした手に
  • 「やめろ、ソード」 声を振り絞ってウィンターが制する。だが、ソードは構わず先を続けた。「引き分けとしても、双方が息絶えるまで続ける。引き分けと呼べるものがあるとしたら、それは相討ちの場合のみだ」「ソード……」 何を目指しているのか。なぜここまでして強さを証明しなければならないのか。ソードにしか分からない。ソードの歪んでしまった心にしか分からないソードだけの信念。「それに」 ソードの手が [続きを読む]
  • 第16章 海に浮かぶ橋(11) 伸ばした手に
  • 「やめろ、ソード」 声を振り絞ってウィンターが制する。だが、ソードは構わず先を続けた。「引き分けとしても、双方が息絶えるまで続ける。引き分けと呼べるものがあるとしたら、それは相討ちの場合のみだ」「ソード……」 何を目指しているのか。なぜここまでして強さを証明しなければならないのか。ソードにしか分からない。ソードの歪んでしまった心にしか分からないソードだけの信念。「それに」 ソードの [続きを読む]
  • 第16章 海に浮かぶ橋(10) 力尽きて
  • 青白い光が現れ、グレンの体を包み込むように膨張し始めた。「それがお前の全力か?」 ソードは拳に瞬間的に力を入れ、全ての魔力を集中させた。感覚がおかしくなるくらい強烈で鋭い痛みが全身に走ってグレンは絶叫した。青白い光が弾け、体が後方に吹っ飛んだ。全ての痛みや魔力から解放されたが、意識がもうろうとしている。「なるほど。強い。マスターヴァンパイアの力を取り込んだだけのことはある。だが、そこまでではないの [続きを読む]
  • 第16章 海に浮かぶ橋(9) 全力
  • 「お前を倒さなければ力を証明できない。ウィンターにはその程度の力で充分だ」「何……だと」 悔しい気持ちしか湧かなかった。ソードの目の前で証明してみせたかった。人間が、どれほど強くなれるのかを。だが、グレンは首を横に振った。「違うよ」 そして、グレンは目を見開いて挑むように言った。「今までずっと、僕にも本当の力を見せてくれたことがないでしょ」 グレンは拳を握りしめて力を込める。「上級ヴァ [続きを読む]