舞茸 さん プロフィール

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舞茸さん: 或る成人発達障害者の愛とかなしみ
ハンドル名舞茸 さん
ブログタイトル或る成人発達障害者の愛とかなしみ
ブログURLhttp://sanpowosiyou.blog.fc2.com/
サイト紹介文ただの日記です
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供64回 / 365日(平均1.2回/週) - 参加 2015/06/05 20:57

舞茸 さんのブログ記事

  • 毒殺回転寿司
  • 回転寿司にひとりで来ている(毎月来る客)ファミリーのなかでひとり(とびきり恵まれた)財布には野口英世の束(神にも愛されている)二十皿以上食べる三十路の独身男で平日は事務員好きな音楽はバンプオブチキン彼女のいない歴イコール年齢の額の後退しかけた自称詩人休日は近所をぶらぶらするだけの惚れっぽいぶ男そんな彼の寿司を食って笑っているその笑顔が気に入らない知能の低いゴールデンレトリバー子どもの頃から変わらな [続きを読む]
  • 黙って消えていく権利
  • 子どもの頃 住んでいた辺りに雑草が生えていた車に轢かれるのは怖い(通り過ぎていく車の音)今日は誰とも話したくない気持ちだ最近は 音楽を聴かなくなった性格の悪い若者は多い中年男性の首はネクタイですこしずつ締められていく老年になり 国から年金を貰えた者たちは白杖を持って歩行者天国へと遊びに行くだろう忘れっぽくなって唇の端が切れたそのまま証明写真を撮り片方のソックスを失うはっきり言って誰とも話したくない [続きを読む]
  • レモン水
  • 自動販売機でレモン水を買った(れもんみず)飲むと健康になれる気がしたレモン型のペットボトル(百三十円)レモンって高級品だからさ毎日飲んでいるうちに果物のレモンの味は忘れた唐揚げに添えられている薄切りのレモンは?(それ以上でもそれ以下でもない)毎日レモン水を飲んでいるうちに詩人だった祖父の存在をもう完全に思い出せないおしっこからレモンの匂いのするさわやかさ満員電車のなかでもレモンが香る庭にまいたら虫 [続きを読む]
  • 下北沢のライブ
  •  三年ほど前に通っていた作業所の室長さんに電話をかけた。生活についてアドバイスを受けたかったのだ。 生活。それはなんとも言い難いことだ。ひとり暮らしをはじめて、二年半。部屋がすこしずつ汚くなってきている。ひとりでは生活を維持できない。誰かの助けが必要だった。 電話をかけて、室長さんが、年を取っていたので驚いた。年を取っているだけなら、とくに驚かないけれど、ぐっと老け込んでいて、ボケてきているのがわ [続きを読む]
  • 旅のはじまり
  •  この前の台風の日曜日はおとなしく寝ていた。「意識がある」と「意識がない」の中間くらいだった。雨の音が聞こえていた。だらだら降っているかんじだった。その、だらだらだらだらした雨音を聴いているうちに、「ここは窮屈だ」という気がしてきた。日々の暮らしが窮屈だ。旅に出たい。 夜になって、台風は通り過ぎたのか、雨音は静かになってきて、元気が出てきた。借りていた映画を見ようとおもった。北野武監督の「あの夏、 [続きを読む]
  • プロポーズの失敗
  • 彼女は猫を愛しているでも僕は猫が嫌いだ彼女の愛する猫たちも僕を嫌いだでも僕は彼女を愛しているでも彼女は猫を愛している僕は友人の犬のところへ行き彼女の心を手に入れる方法を教えてもらった僕は彼女に飛びかかり顔じゅうを舐めまわし体じゅうで喜びを表現するそれから僕は自分に尻尾がある気がしてくる人間のオスはプロポーズするときには指輪を使うそうだでも僕は犬なので指輪を買えない毎日彼女に散歩に連れて行ってもらう [続きを読む]
  • 体重計に乗って、痩せてきていることを確認する朝。
  •  ぼくは、生命力を低下させようとおもった。生命力を低下させるには、口数を少なくして、体から力を抜いて、あんまり食べなければいい。生命力を低下させるには、意志の力が必要だ。どうして、そんなことをしようとおもったのか、わからないが、昨日の夕方くらいから、生命力は低下していた。 昨日の夕方、会社が終わって、いつも乗り換える駅が混んでいた。電車が遅れていた。ホームにたくさんいる会社帰りの人と、同じ電車に乗 [続きを読む]
  • 「彼ら」
  •  日曜日の午後にぬるま湯に浸かりながら「彼らは彼らでしあわせになればいいし、ぼくはぼくでしあわせになればいいんじゃないか」とおもった。風呂場の電気は消してあって、一つある窓のすりガラス越しにぼんやりとした曇りの日の空の光が入ってきていた。森の香りをイメージしたバスクリンを入れていたので、お湯はみどり色だった。ぼくは近眼で、風呂では眼鏡をはずしている。白い壁が汗をかいていて、水滴が流れていた。 彼ら [続きを読む]
  • 「余生」と一週間
  • 九月二十五日(月) 実家の団地の近くにある公園のベンチに座っていた。あまいかなしみを感じながら。懐かしいような感じだ。ここまでは自転車で来た。それで、母との約束の時間、十時になるのを待っていた。 天気は秋晴れで、こんな気持ちになることは滅多になかった。ほんとうはいつも、こんなふうに、すこし懐かしいような、あまいような、かなしみのなかに浸っていたいって気がする。頭上を、飛行機が横切っていって、ぼくは [続きを読む]
  • 空気入れのあった頃の話
  •  「家で入れればいいのにね」。すれ違うときに発せられたそのひとことはぼくをかなしい気持ちにした。ぼくは自転車屋の前にいて、自転車に空気を入れてもらっていた。その日はいちにち、いろんなことがあって、でも、なにもないようなものだった。 自転車屋の男は、ちょっと足りないみたいに見えた。おどおどしていて、自転車のこと以外はなにもできないみたいに見えた。ぼくは、自分と同じ発達障害の人なのではないかとおもいな [続きを読む]
  • ミサイルの朝
  • 「朝の来るのが怖い」とおじさんは言った朝になると会社に行かなくてはいけない「朝の来るのが怖い」と恋人は言った朝になったらわたしたち離ればなれ「朝になるのが怖い」と詩人は言った朝の光は残酷だから次の日の朝勃起して目を覚ます枕元では目覚まし時計が鳴っていて外ではヘリコプターが飛んでいた次の日の朝が来なかった人がいた次の日の朝が来てしまった人もいた [続きを読む]
  • 千円カット
  • 会社であんまり知らないおばさんに「髪を思いっきりいったね」と話しかけられたおばさんは身振りで髪を刈りあげるような動作をした「はい長くなったり短くなったりで」「いい感じ」「はいいい感じです」見かけのことだろうか?「楽でしょ」「楽です」違ったみたいだ楽になったいろんなことを思いっきり切ったので友達実家元恋人秋のはじめの三連休に台風の来た日曜日ぼくはひとりで映画を見て二日分つくったカレーの二日目を食べ酒 [続きを読む]
  • 恋人のいない自画像
  • 朝になっても彼を起こしてくれる人はいない彼の体内時計は狂っているが彼じしんは狂っていないなので彼は遅刻を気に病む彼をよく見たら狂っているところもあった彼は毎朝オナニーした寝る前もしたたまに会社のトイレでもした彼は狂っているのかもしれない彼の部屋には全身の映る鏡がなく彼は自分を美男だとおもっているでもほんとうの彼は鱗の青い魚だったのかもしれないし頭のてっぺんの跳ねた鳥だったのかもしれないでもやはり彼 [続きを読む]
  • 貧富の差
  • よろよろ歩いているあれはゾンビなのかな?スーパーの棚と棚のあいだにしゃがみこんでいるあれは自転車を漕ぐスピードが遅すぎて徒歩の人に抜かされているあれはゾンビなのかな?昨夜「犬神家の一族」という映画を見たおもしろくなかった本当は猟奇的ミステリーの気分ではなかったのかもしれない惨殺されたオムライスのようにおれはいちどきりの人生を私たちはデートの途中で迷子になってそのまま行方不明になってしまった小学生の [続きを読む]
  • 靴べらのような愚物
  • ワシはむかしパスタを茹でながら七分計っていたワシはむかしエネルギーを現金に変化させていたワシはむかし光の速度で「そこにいるのはアリジゴクのようなお姉さん大きな顎をしたお姉さん黒目がちのお姉さん」絶望的にステキな秋の風が(扇風機はエンゼルの羽赤ん坊の尻は白桃)鏡を左右に置いて食事をしていると崩壊していく二等辺三角形の底辺自己愛を持った生き物毒を持った生き物皮肉を言う生き物神に祈る生き物皮肉の通じない [続きを読む]
  • 真実写真
  • 夕方くらいのこと?季節的には夏と秋の境目くらいのこと?心理戦が静かに幕を下ろして蝉の死骸を見て汚いとおもうあのデブの男色家がこちらを見てくるその視線は頬に焼き付く私の持っている空色のくりあふぁいるよちいさな胸をした娘たちが自分たちの権利を主張している空中に陽射しが浮かんでいるそして団地はしゃがんでいて一行しかない詩を通行人が見ていた(コーヒーの匂いを嗅ぎ私はパンを焼いたその朝は頭頂部が禿げていた人 [続きを読む]
  • 怖い悩み
  •   わたしは会社の人の来ない階の休憩スペースにいた。自動販売機でブラックコーヒーを買う。わたしはコーヒーを燃料にして仕事をしている感じがする。栄養ドリンクの効果は感じないけれど、コーヒーを飲むと元気が出る。わたしは鞄からテーブルのうえに文庫本とスマートフォンを出して置いた。 サラリーマンには自由になる時間は少ない。朝の通勤電車のなかと、昼休み、それと会社が終わってからの時間。会社が終わった後は、疲 [続きを読む]
  • 夜の台所
  • こうして毎日ひとりで生きていってぼくはある日突然死ぬのかどこかに目に見えない崖があってそこを通り過ぎるときにはぼくも目に見えなくなるのか事故死悲惨な死にかただろうか潰れたトマトのように 死ぬのか自殺孤独に耐えることができず自分で自分の首に縄をかけて 死ぬのか病死こうしているあいだにも体のどこかに 死はひそんでいるのか毎日ひとりで 生きていってお父さんとお母さんは老いて亡くなり(それはどんな死にかた [続きを読む]
  • 2017年7月29日の日記
  •  ぼくは病院の待合室にいた。外は雨が降っていた。ぼくは支援者のTさんを待っていた。七月も最後の土曜日だった。時刻は午後二時前。自立支援と精神障害者福祉保健手帳の更新のためにこの用紙の質問に答えてください、と受付で紙を渡されたので、それを書きながらTさんを待った。 約束の二時になってもTさんが来ないので、いったん病院から出て電話してみると、バーミヤンにいるということだった。「約束は二時半からじゃなかっ [続きを読む]
  • 不審者の窓
  • 真夜中に外を歩いていると不審者の気持ちになる草木がなまあたたかい夜風に吹かれてゆれてわたしもゆれる夜行性の動物のひっそりとした影を連れて歩くこんな夜にはなにかを捜してまだ起きている家々のあかるい窓を覗くそこには幸せと不幸があるシチューが湯気を立てていて茶色い小型犬が敷物のうえを歩いているトイレの個室で男がうなだれているテレビに巨大なヒキガエルが映っているその横で男女が性交している老人たちは円になり [続きを読む]
  • 誰か
  • 休み時間の教室にいて「誰か」とおもっている誰かがぼくの机に来て話しかけてくれないだろうか?実はぼく夏休みのあいだにこの世界の真理を悟ってしまったんだ「本当のところ神は存在しない」そのことを誰かに話したいから誰か来ないかなできれば川本さんがいいんだけど・・・というようなことを考えている中学生のぼくは川本さんにとっても他の誰にとっても「誰か」ではなく知らない少年だったのだ実際のところ神さまはいるこの前 [続きを読む]
  • 夜の水
  • なにも書かれていない本のページをめくりながらなにかが書いてある箇所をさがす二十分くらいその作業を続けるとぼくの耳は紙のこすれる音でいっぱいになるそれはながい箒のようにぼくのあたまのなかからあらゆる言葉と音楽を掃き出してしまった ぼくの眼は本のなかにある白い地平線を見ているそこには不思議な蛇口があっていくらでも水が出てくるかすかに薬品の匂いのする水は透明でちいさな虫一匹浮かんでいない水は無限に出てき [続きを読む]
  • きみの顔がすぐそこにあってきみの胸はぼくの胸にくっついているぼくたちは腕と脚をからみあわせてなにも身につけずに布団のなかにいるこういうふうにきみと二人でいるとほんとうにすごくて全身が熱くなってくるそれは他のどんなことにもたとえることができないすぐ耳元で心臓が鳴っている音が聞こえるがこれはだれの心臓だろう細胞の一つ一つがポップコーンかなにかのように弾け飛んでしまいそうで吹き飛ばされないようにしっかり [続きを読む]
  • 或る成人発達障害者の愛とかなしみ(5)
  •  ひさしぶりに作業所に寄った。会社の帰りだった。この前寄ったのがいつだったか思い出せない。 作業所は障害者が就職して社会に出る準備をする場所だ。そういう場所に会社帰りのスーツ姿で寄るのは、「ようこそ先輩」みたいな感じだ。でも、作業所は十七時で閉まるので、ぼくが顔を出したときには明かりも消えて薄暗く、室長のMさんだけしかいなかった。 ぼくは、この室長のMさんの笑い声が「ホホホホホ」というので、以前は「 [続きを読む]