…時計を眺めると12時37分、珍しくとても理想的な時間に就寝できそうだなぁ…と居間のあれこれを片付けていたところ、ハタハタハタ…と中空を羽ばたくものがいる。おやまぁ…と音の在処を探すと、アゲハチョウが1頭、天井近くに積んである乱れ箱に止まった。今日は日中、4頭ばかり越冬蛹が羽化して、昼過ぎには目出度く旅立っていったはずだが……そう言えば、本棚の裏のサッシの内側に、サナギが一つ在ったのを思い出した。明日の朝、太陽の下に翔び立って頂こう…と宿主は眠た顔だが、お嬢さんは益々元気にパタパタと電灯の周りを飛び、天井を渡り歩いている。仕方ないなぁ……偶々傍らに、蔵書整理中につき、長き眠りから顔を出していた文庫本が一冊。おやすみなさい。深夜の胡蝶