アカシア さん プロフィール

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アカシアさん: andante*アンダンテ*
ハンドル名アカシア さん
ブログタイトルandante*アンダンテ*
ブログURLhttp://andantetsukasa294.blog.fc2.com/
サイト紹介文花より男子二次小説です。CPは司×つくしオンリーです。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供280回 / 365日(平均5.4回/週) - 参加 2015/11/08 10:28

アカシア さんのブログ記事

  • もうひとつの橋 27
  • つくしは、降った雨がまだ残る道を、黒い靴のヒールが滑らないように歩いていた。今日は亡くなった雄一の四十九日法要の日だった。2月半ばに亡くなった命日から数えれば、4月に49日目が来るが、四十九日法要が3ヶ月目に行われるのは、「始終苦しみが身に付く」といった言葉から避ける風習があり、2ヶ月以内に行われることが殆どだ。それは四十九を「始終苦」、三月を「身付き」と読ませる語呂から来ている単なる迷信なのだが [続きを読む]
  • もうひとつの橋 26
  • 薄く曇った空の下、司は雄一の葬儀に参列するため金沢を訪れた。車窓から見える景色は立春を過ぎているとはいえ、春の光りを感じるとは言えず、斎場へ向かう道の両側にある街路樹は、昨夜降った雪を薄っすらと積もらせていた。だが雪はやがて水となり大地に染み込み、春の息吹を芽吹かせるための命の水となる。そして陽の光りが当たれば、水蒸気となって消えていく。雄一も、風の音と空の色を感じ、そして空気の匂いと共に白い煙と [続きを読む]
  • 金持ちの御曹司〜誘惑〜
  • 最近日系英国人の作家がノーベル文学賞を受賞したことが話題になったが、今日の司は珍しく時間が取れたこともあり、久し振りに読書でもするかといった気になっていた。普段忙しい彼が、読書をする時間などあるはずもなく、読むといえば、経済新聞かビジネス雑誌といった分野になるのだが、秋の夜長、読書の秋。今回は文芸と呼ばれる本を読もうと思っていた。世田谷の邸には、英国貴族の邸と見紛うばかり立派な図書室といったものが [続きを読む]
  • もうひとつの橋 25
  • 冬の日本海、鰤(ぶり)が取れる頃に発生する雷を“鰤起し”と言うが、金沢の街が冬の稲妻に揺れる季節、雄一は静かに旅立った。それは年が明け、兼六園の雪吊りが朝日に映える2月半ばの寒い日。だが、病室から眺める景色に雪はなく、冷えた空気が窓に触れた掌から伝わるだけだった。余命一年と言われたが、思いのほか早い別れとなった。生前つくしに離婚してくれと言った雄一は、その願いが叶えられると、さっそく弁護士の女性と [続きを読む]
  • もうひとつの橋 24
  • 秋から冬へと季節が移り変わり、窓の外は冷たい風が吹いていた。その風が渦を巻き、落ち葉を舞い上げ、茶色い塊を空の彼方へ押し上げると消えていく。そして、巻き上げられた塊は、フロントガラスに降り注ぎ、やがてどこかへ飛んでいった。車は都内を走っていた。司は、片肘をドアの内側に着き、アスファルトに引かれた白線が後ろへ流れていくのを目で追っていた。天気予報では、寒気は暫く日本列島上空に居座ると言っているが、北 [続きを読む]
  • もうひとつの橋 23
  • あの頃、頭のいい少女は、司に出会うまではごく普通の高校生だった。強情だったが、それは彼女の本質である恥ずかしがり屋の部分を隠すため自制心が働いていたと言ってもいいはずだ。だが照れというのは、時に臆病にとって代わる。当時、牧野つくしは、司から見れば恋に臆病な少女だった。一歩足を踏みだすごとに、石橋を叩くではないが、常に周りを確かめながらといったところがあった。だから、彼女の場合、慎重すぎて石橋を渡た [続きを読む]
  • もうひとつの橋 22
  • 泣いていた。思わず零れた涙が、頬を伝い顎の先からテーブルの上へと続けざまに落ちていた。涙が音を立て落ちる。果たして涙の音を聴くといったことが現実としてあるのだろうか。だが17年前にそれを経験していた。そして、恋をするほど哀しみが深くなるということを知ったのもあの頃だ。それと同時に目の前に突き付けられたのは、悲しいほどの現実だった。好きだった人が暴漢に刺され、意識不明の重体となり、今夜が山ですと言わ [続きを読む]
  • もうひとつの橋 21
  • 全ての動きが止った静かな部屋の外は、今も雨が降り続いているはずだ。だが、部屋の中に雨の気配はない。そこにあるのは、ただ静かな沈黙だけだった。まさか、二人っきりで部屋に残されるとは思わなかった男女の気まずさなのか。それとも緊張なのか。ほんの数メートルしか離れていない二人の間には、何とも言えない空気が漂っていた。そして、その空気は独特の匂いといったものを持ち、エアコンの効いた室内に、忘れかけていた遠い [続きを読む]
  • もうひとつの橋 20
  • 雨の土曜。司は石川県小松空港に向かうジェットの中にいた。ジェトは1時間足らずで目的地に到着すると言われ、眼下には南アルプスと北アルプスを見ることが出来るルートだが、景色は灰色の雲に覆われており、司の視線は窓の外へ向けられることはなく、書類に目を通していた。『家に寄って』彼女の口から出た言葉を信じられない思いで聞いていたが、あの時の言葉は思いつめているとか、切羽つまったといった口調ではなく、ごく普通 [続きを読む]
  • もうひとつの橋 19
  • 「・・あの・・もしもし・・」『・・牧野か?』「・・・・うん」『・・・いや、今は篠田だったな・・』数秒間のコールの後、覚えのある声が耳元で聞こえ、すぐ傍に相手がいないのにも関わらず、緊張した。電話に出た相手は、長い間誰とも口を利かなかったような、低く掠れた声で答えたが、当然だろうと言わんばかりに牧野か、と名前を呼んだ。だが直ぐに言い直した。心当たりのない番号からの着信だったはずだ。だが躊躇のない言葉 [続きを読む]
  • もうひとつの橋 18
  • 「東京どうだった?」「ああ・・。あの街はいつもと変わらないよ」「そうじゃなくて、お友達と久し振りに会えて話が弾んだ?」「ああ勿論。最高の友人達だよ。終生の友だちって言うんだろうな。懐かしかったな」「でも大丈夫?疲れたでしょ?」「ああ。流石にこの身体じゃあ夜遅くまでは付き合いきれなかったよ」人間の身体が負けるというのは、こういう事なのだろう。雄一は、小康状態とはいえ、この一ケ月で急に体力が落ちて来た [続きを読む]
  • もうひとつの橋 17
  • 「男か?それとも女か?」受付けに現れた金沢の篠田と名乗る人物。その名前に頭に浮かんだのは、篠田つくし。だが秘書から返されたのは、男性の篠田様です、の言葉。その男は、司がこの目で見たい、話したい。どういった男なのか、じかに確かめたいと望んだ人物である篠田雄一。その男が金沢ではなく東京に、司の会社のロビーにいる。「すぐに通してくれ」秘書が頭を下げ出て行くと、案内されて来た人物は丁寧な挨拶をした。「篠田 [続きを読む]
  • もうひとつの橋 16 
  • 愛という言葉は人を滑稽にする。それはタキシードにスニーカーを履いているのと同じという具合で、人が他人を愛する行為はまさに喜劇のようだと冷たく笑っていた。だがそれは、彼女を愛することを知らなかった日までのことだ。かつて司の周りにあったのは、口先だけの愛。贅沢な装いに、贅沢な暮らし。周りにいたのは、そんなものを求める人間ばかりで心がなかった。心が見えなかった。だから他人の心を求めたことは無かった。求め [続きを読む]
  • もうひとつの橋 15
  • 人生のアルバムの中で一番楽しいページを開けと言われれば、いったいどのページを開けばいいのか。果たして、司の人生に振り返る為のアルバムがあっただろうか。そう考えたとき、17年もの間、最も大切な女のことを忘れ去っていた男に、振り返って見たいと思うページは無かった。だがもし、アルバムを捲らなければならないのなら、17年前生死の境を彷徨った日のページを見たい。あの日、あの事件の前に写っているはずの二人の笑 [続きを読む]
  • もうひとつの橋 14
  • 残酷な神様の悪戯。そんな言葉で表された道明寺司の一番守りたいと思っていた人を忘れてしまった17年。その女性の結婚に打ちひしがれている男に言ってやる前向きな言葉はないか。総二郎は、そんな思いから桜子の口からゆっくりと漏れ始めた言葉に耳を傾けていた。「そんなに難しく考える必要はありません。ごく単純な理由です」女が結婚を考える単純な理由として一番に思い浮かぶのは妊娠だ。司は、子供はいないといったが、それ [続きを読む]
  • もうひとつの橋 13
  • 「三条。開店前の忙しいところ悪かったな」「いえ。構いません。西門さんこそいいんですか?わたしなんかと一緒で。これからどこかのお嬢様とお食事のお約束があるんじゃないんですか?」「・・・いや。今夜の予定は特にねぇんだわ」銀座の目抜き通りから1本奥に入った通りにある鮨屋に総二郎は桜子といた。暖簾はかかっておらず、昼の営業時間が終り、夜の営業時間までの間。特別に店を開けてもらっていた。ビルの1階に店を構える [続きを読む]
  • もうひとつの橋 12
  • 司はつくしに再会したあと、会館を後にした。総二郎が用意してくれた再会の場所は、西門流金沢茶道会館。この週末の予定は全てキャンセルさせ、金沢の街へ来た。仕組まれた再会は、彼女を驚かせはしたが、いつかこの日が来ることを分かっていた。そして、自分の夫のことも調べられていると分かっていた。司が感じたのは、つくしはそんな司の態度に腹を立てるわけでもなく、逆に潔さといったものが感じられた。それは自分の夫の病が [続きを読む]
  • もうひとつの橋 11
  • 眉の動かし方や、自嘲ぎみに口元に笑みを浮かべる仕草といったものは、つくしが初めて見るもので、彼女が好きだった少年の微笑みはそこに無かった。今あるのは、大人になった男の何気ない仕草だ。そして、その仕草に35歳の男の余裕といったものが感じられた。他にどんな顔を持ち合わせているのだろうか。新聞やテレビで見かける道明寺司に、無数の顔があるとは思えないが、少年だった頃つくしだけに見せていた笑顔は、まだあるの [続きを読む]
  • もうひとつの橋 10 
  • 仕事上で会うどんな人間を前にしても緊張したことがない男が緊張する。そんな彼の姿を見れば誰もが驚くはずだ。しかし、司の表情に緊張の色が浮かぶことはない。それは勿論言葉使いも、態度もだが、長年ビジネスで培われたひと前での態度はそう簡単に崩れるものではない。だが、今の彼の言葉には緊張が感じられた。「話がしたいんだがいいか?」どんな話しでも本人の口から語られる事実ほど重いものはない。それが自分の聞きたい話 [続きを読む]
  • もうひとつの橋 9
  • 司は金沢を訪れたことがなかった。北陸という場所は東京から遠く離れており、今でこそ新幹線が開通し交通の便が良くなったと言えるが、以前なら航空機を使うことが一番に思い浮かぶような場所だ。ましてやずっと海外で暮らしていた男が訪れる機会などあるはずもなく、街の名前は知っていたとしても、気に留めたこともない小さな地方都市のひとつに過ぎなかった。今の司はその街を訪れることに何の迷いもない。その街に彼がどうして [続きを読む]
  • 金持ちの御曹司〜Dancing Hero〜
  • こちらのお話は、時代背景をご存知の方は、お分かりの部分もあると思いますが、お分かりにならない方もいらっしゃると思います。それでもよろしければどうぞ、のお話です。そして大人向けのお話です。未成年者の方、もしくはそういったお話がお嫌いな方はお控え下さい。************************************無名の存在から突然脚光を浴びる男のことをシンデレラボーイと言う。司の場合、生ま [続きを読む]
  • もうひとつの橋 8
  • 茶道西門流次期家元である西門総二郎の講演会は、西門流金沢茶道会館であると言われ、同僚の坂本からの誘いを断わり切れなかったつくしは、バスに乗り目的地へと向かっていた。待ち合わせ場所は、その会館前。時間は1時半。講演会は2時からだと聞き、自宅で食事を済ませたが、雄一は、「気にしなくていいよ。楽しんでおいで」とつくしを送り出した。土曜は特許事務所も休みだが、「仕事で調べたいことがあるから部屋にいるよ。夜 [続きを読む]
  • もうひとつの橋 7
  • 毎朝15分歩いてバス停まで行き、バスに乗り、大抵は立ったまま、ぼんやりと外を眺めながら、揺られて勤務先に着くが、今日は少し遅れていた。時計の針は8時を少し回ったところで、交通量が多く、バスはなかなか進まなかった。考え事をしていたつくしは、バス停に着く直前、携帯電話を自宅に忘れてきたことに気付き、慌てて取りに戻った。その為いつものバスに乗り損ねていた。送られて来た名刺と、新聞に載った記事がつくしの脳 [続きを読む]
  • もうひとつの橋 6
  • 『記憶の断片が戻った』そう言って連絡を受けたのは西門総二郎だ。昔からプレイボーイだと言われ、仲間内で一番の伊達男と誉が高い男は、司からの電話に口を開くと言った。『放蕩息子のお帰りか』そんな言葉を吐いた男は、約1時間後の午後11時には、広大な敷地面積を擁する世田谷の道明寺邸に現れた。そしてそんな男の髪は湿り気を帯びており、シャワーを浴びて来たのが感じられ、女と過ごしていたと分かる雰囲気があった。男は [続きを読む]
  • もうひとつの橋 5
  • 「おかえり。大丈夫だよ。そんなに遅い時間じゃないだろ?」ソファに座った人物の視線が新聞から離れたのは、つくしの声が聞えたからだ。「病院、どうだった?」「ああ。相変らずだよ」「そう・・・。でも調子はいいんでしょ?」「うん。まあまあ・・ってところかな?」つくしは、話をしながら、サラダを作るため、冷蔵庫からレタスやハムを取り出していた。それからゆで卵を作ろうと湯を沸かし始めた。そして作り置きしていたカレ [続きを読む]