タカピン さん プロフィール

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タカピンさん: 文芸誌の旅
ハンドル名タカピン さん
ブログタイトル文芸誌の旅
ブログURLhttp://blog.livedoor.jp/tokyo_ueno/
サイト紹介文5つの文芸誌を中心に、創作や評論のレビューをしていきたいと思っています。
自由文文芸誌の楽しみは、突然の出会いがあること。
読んだことのない作家の作品、
新しい人の作品
自分の中に既存の知識に邪魔にされずに読める至福の媒体。
あとは購入したり、借りたりした書籍のレビュー書きたい。
よくばって映画や雑誌の記事、展覧会・美術展の紹介などもの書きたい!
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供23回 / 365日(平均0.4回/週) - 参加 2016/02/08 11:37

タカピン さんのブログ記事

  • 水原涼『干潮』「すばる」2018年5月号
  • いつまでも覚えている記憶というものに感情の色彩を帯びていないものが、はたしてあるのだろうか?確かなものと曖昧なものが混在する記憶には、過去の事実との関係においては、いろいろ微妙な距離感があると思うが、逆にある時点での感情の痕跡が記憶であって、そこに事実がまとわりついてくる。それが記憶とよばれるものではなかろうか?この作品を読んで、そんなことを感じた。感情の痕跡と、絡みつく事実。それが記憶なのだと。 [続きを読む]
  • 本谷有希子『奥さん、犬は大丈夫だよね』「群像」2018年3月号
  • 主人公の嫌な性格、その主人公の思考が地の文を支配する。自分の中にマイナスの感情生じても、それ自体を悪としない。逆にそう感じさせる、まわりを悪とする。無口な旦那は、話し合いは口論となり、不毛な時間が続くことを知っているのか、主人公の「心の病」を癒そうとすることを直接に示すことはなくそれとなく今回のキャンピングカーの度に誘う。詳細は告げずに。主人公の言い分には、絶対的な説得力がある。たとえば主人公の依 [続きを読む]
  • 望月なな『透明な切取線』「mon」Vol.11
  • 五十嵐が茅野の才能に圧倒されて創作意欲がなくなってしまうことと単なる作業といえるようなことに不本意ながら安住していることへの罪悪感そこが基本ベースさて「保守」ということば。この単語が二回出てきた。一回目に出てきたとき、それはなにか気取ったように感じた。この部屋は慣性で保守されている。しかし二回目に出てきたとき、この言葉が重い意味として改めてこの小説の位置での立ち位置に気づき、一回目に出てきた時を読 [続きを読む]
  • 本谷有希子『本当の旅』「群像」2018年3月号
  • 確かにカジュアルであることと、未熟であることとを見極められないことは確実に精神的にあるいは物理的に人を悲惨な状況を迎えてしまうことだろう。この作品はそのことを寓話的かつ悲劇的にわかりやすく描いたことで痛快なところもある。その一方で作者は彼らに容赦ない。バカで弱い人たちは救いようがないということか。はかなくもハネケンが克服したいとこう告白した「疑う自分弱い自分未熟な自分」づっちんにはそれすら無く、救 [続きを読む]
  • 岩城けい『Matt』「すばる」2018年2月号
  • 歴史的な知識が肉親の受け売りで、それが子どもたちの意見となり、歴史観となる過程で、それがアイディンティティの一部となってしまい、もはや単なる情報のレベルではなくなってしまい、自らの出自との不可分の要素となってしまう。マット・Wがそうした性格を与えられた人物として描かれているなら、主人公マット・Aはそうした事実をマット・Wや他の人間から直接関節に影響を受けながら、それらを全て不当なものとはねのけること [続きを読む]
  • 小山田浩子『家グモ』「文學界」2018年1月号
  • 主人公には子供ができる兆候がない。しかし部下は一人が産休、一人が時短、派遣の人は出産のため退職してしまった。なんと妊娠・育児でいなくなった人たちの仕事は子供いない私が負担することに・・・。友達も妊娠をし産休に入った。昔は食生活もズボラだったのに、油量制限、炭水化物制限を行うなんて私よりも妊婦の友達のほうがむしろスリムに思えてくる。一方でマンションの子育てをしているのは専用主婦。たしかに子供は可愛か [続きを読む]
  • 多和田葉子『文通』「文學界」2017年1月号
  • 「やおい」って書いたら失礼になるのかな?山もあるし、落ちも一応あるし、でも意味は?「なにがなんだかわからないうちに穴蔵みたいな店にはいり」「家に変えるとどういわけか本当に手紙を書きたくなって」「どういうわけか接吻にいたった」自分の行動に無関心、とうより病的に記憶がない陽太の同窓会の二次会とちょっと挿入される「全国学生小説作成コンクール 恋愛部門 佳作作品」のあらすじその主要登場人物、遺伝的に繋がって [続きを読む]
  • 沼田真祐『夭折の女子の顔』「すばる」2018年1月号
  • この作品の主人公、女子中学生里紗をはじめ、 なんて実在感のない人ばかりなんだ。いやいやそうした人たちが何か痕跡を残して去っていくのも小説だろう。登校拒否になった里紗にたいして盛岡の叔母から気分転換かあるいはリハビリか、とにかくしばらく暮らしてみないかと訪ねたら一緒に暮らしている無職の笠井という男がいた。にも関わらず、家事までこなして同居する里紗。叔母は笠井を仕事に向かわせるために里紗を呼び寄せたの [続きを読む]
  • 石田千『母とユニクロ』「群像」2017年11月号
  • 秋田の港町。とくに何もない町。駅前はさびれ、バイパスが賑わうとくに無いもない町。帰省した五十代の娘がコミュニティバスと市営バス乗り継いで七十代の母とユニクロに行く。「こんどのバスも、名所のない知る人ぞ知る地域を進む。古い鎮守の森、水だけを入れた田んぼに雲がうつる。せせらぎ、だれもいない公園、開墾記念の巨大な石碑」そして母の意外と元気な姿に圧倒される娘。でもこの作品の中にちいさなエピソードがある。そ [続きを読む]
  • 兎束まいこ『遊ぶ幽霊』「すばる」2017年11月号
  • 死んでしまえば、幽霊になれば時間の枠が無くなってしまう。その枠が実際になくなってしまうことは逆に生きている限りなくならないけれどまた実際に無くなったとしたらどんなことになるかもわからないけれど。この作品の心地よさは時間枠の無いふわふわしたところにあった。お金も無制限に出てくることになっているけれど、お金よりも時間のほうがきっと生きているものにとってみれば切実な存在だ。この中では本を読むこと、蟹を食 [続きを読む]
  • 山岡ミヤ『光点』「すばる」2017年11月号
  • 主人公、実以子は自分を話し言葉でうまく表現できない。そして最初から母親は娘を憎んでいる。はっきりしない性格の娘に向けられたストレートな感情が憎しみとなってぶつけられている。またカムトという人物が出て来る。実以子になんとなく近づいてくるこの男性もまた謎のなのであるがその謎の度合いは、実以子から見ての謎の男である。実以子の人物像がはっきりしない上にこのカムトも妹に対して異常な執着心あり [続きを読む]
  • 春見朔子『君はコラージュ』「すばる」2017年10月号
  • 主人公芙美の終始不機嫌で、その原因を一切自分に求めない。というのも主人公はキレイではない。性格も悪いことも自覚している。一方八方美人姉はとても容姿もキレイで何人も彼氏を作っている。おまけに妹にも仲良く接してくる。ところがずっと姉のSNSを覗いて姉の行動を軽蔑し続ける主人公。姉の軽い人生観がなんとなく許せないし、それに騙される男にも軽蔑の眼差しをむけ自分の劣等感の穴埋めをする。容姿に自信がないが同じく [続きを読む]
  • 壇蜜『はんぶんのユウジと』「文學界」2017年9月号
  • ステレオタイプに周りに勝手に自分のことが解釈されていく。「次女」「姉との比較」「26歳独身」その他いろいろ。でも決め事は殆どが姉がしてくれて自分から何かを決めることもない。そんなイオリはなんとなく、親の勧めでなんとなく見合いしあっけなく結婚した。しかし旦那のユウジもあっけなく結婚3ヶ月で死んだ。突然死でイオリには何の落ち度もなかった。だからイオリはユウジに何か特別な感情を付加させる間もなかった。葬 [続きを読む]
  • 川上未映子『ウィステリアと三人の女たち』「新潮」2017年8月号
  • 主人公と冷え切った夫の関係もありつつ、さらに自分がいつまでたっても身ごもらないから、不妊治療という、自分とは関係ないと思っていた、この事を意識し始めた。いろいろ調べてみた。そして慎重に言葉を選んで夫に相談してみたが、夫は全く理解してくれない。むしろ夫はたとえ子供ができなかったとしても、それはそれでいいという。このとき自分自身の意思と言うものがどこにあるのかよくわからなくなっているのかもしれなかった [続きを読む]
  • 水原涼『クイーンズ・ロード・フィールド』「群像」2017年8月号
  • 仲の良い友だちと、腹を割って全てを打ち明けれれるはずの間柄の友だちでも、秘密ができる。でも、じつはそれが、友だちと関係を維持していくためについてしまった嘘だから、それがバレてしまうと、友情自体が解消してしまう危機感を覚える。だから嘘をつき続けてしまう。本当は一番嘘を言いたくない友だちなのに。グレイグ、モリー、アシュリー、ロベルトはアシュリとロベルトが喧嘩をして、グレイグとモリーが仲裁に入って、だけ [続きを読む]
  • 保坂和志『花揺れ土呟く』「文學界」2017年8月号
  • このブログの一番の目的は小説との新しい出会いを求めること。特に読んだことのない作家の作品をなるべく前提意識無しで読み、作家の過去に縛られること無くいま目の前にある作品の中に入りたいのである。これは1つの理想論であるが、自分の作品から受けた感情の出所をはっきりとしたいことと経験上から小説を楽しむという点ではそうしておいたほうが純粋に楽しめると思うからだ。心が強人ならば、作家の過去の作品や、作品以外で [続きを読む]
  • 鴻池留衣『ナイス・エイジ』「新潮」2017年7月号
  • 2009年インターネットの掲示板に予言者が現れた。その予言者を検証するスレッドのオフ会のからスタートする物語する。度々現れては消える予言者、2112氏。2112年から来たというこの2112氏の祖母に当たるとされている絵里はスレに参加しながら、2112氏を自宅に住まわせ、その秘密を暴こうとし、スレにあげる。そのことが災いし、予言の虚実に振り回されるのはスレ住民。やがて現実社会へも波紋し、自体の収集を [続きを読む]
  • 小山内恵美子『図書室のオオトカゲ』「すばる」2017年月号
  • 鈴木洋子は8つめの転職先で、市立図書館の職員になった。ところが図書館の中でオオトカゲを見かけるようになりはじめた。しかしこのオオトカゲの姿は、自分だけしか見えないようだった。そのオオトカゲがある日、図書館利用カードを作成に来た若い女性を食べてしまう。この出来事ですら、誰も気づいていない。やがてオオトカゲはどんどん人を食べていく。どれだけ食べられて誰も気づかない。それどころか食べられた人に関する人々 [続きを読む]
  • 乗代雄介『未熟な同感者』「群像」2017年7月
  • 変わった構成に最初は戸惑った。 通常の小説部分と、少しだけ活字が太くしてある部分に書かれた文学評論の二重構成になっているからだ。この文学評論の部分にちて作中では「右のように肥大した文字列の話者は特定されるべきではない」と書いてあるので、最初はは意図がわからず、全体の位置づけを明確にできないでいた。だから戸惑った。 一方、通常の活字で書かれている部分は、阿佐美という大学生が主人公として進む小説で、この [続きを読む]
  • 鈴木善徳『天使の断面』「文學界」2017年6月号
  • 高塔は女装している牧師。高塔が担っている教会に併設する一軒家に引き取った良裕が住んでいる。良裕の母は良裕を働かせそのお金を巻き上げるような人そうした環境から引き剥がすために良裕を預かり書籍の配送センターで働いてもらいその一部を母の口座に振り込んでいた。ある日良裕が母を訪ねると母から隣人の岡田さんが認知症らしいから良裕が息子を演じて金を引き出そうとした。しかし失敗した挙句殺してしまった。警察に捕まっ [続きを読む]
  • 飯田未和『on Monday morning』「mon」vol.10
  • 掲載された同人小説誌「mon」の記念すべき10冊目。同人の皆さんと、ゲストの方も交えて全員で30枚程度の枠で共演したということです。塾でアルバイトしている村瀬くんという男子大学生が同じ塾で働いている一年先輩の中本さんという女子先輩を飲みに誘う。ただし村瀬くんは酒に弱く酔いつぶれて終電を無くし中本さんの家に泊まることになった。しかしこの時、2人のあいだには特に何もなく翌朝を向かえる。村瀬くんと中本さん [続きを読む]
  • 堀江俊幸『2月のつぎに7月が』(第1回)「群像」2017年5月号
  • 文芸誌には連載小説もたくさんありますが、扱いが難しかったから、避けていまました。 でもそれではあまりにももったいない。でも連載が終わってからまとめて扱うのも熱意が続かない。だから今回から発表のたびに書きます。かつては公設の市場内3つもあった食堂は数も減り、今市場の中ではこの「いちば食堂」だけになった。市場で働く人や出入りの業者の人たちが利用する、喫茶店と定食屋の機能が混在する食堂に、毎日決まった時間 [続きを読む]