エミール・ガボリオ ライブラリ さん プロフィール

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エミール・ガボリオ ライブラリさん: エミール・ガボリオ ライブラリ
ハンドル名エミール・ガボリオ ライブラリ さん
ブログタイトルエミール・ガボリオ ライブラリ
ブログURLhttps://blog.goo.ne.jp/puereternus2
サイト紹介文19世紀フランスの探偵小説作家ガボリオの未邦訳作品を翻訳しています。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供325回 / 365日(平均6.2回/週) - 参加 2016/02/12 18:34

エミール・ガボリオ ライブラリ さんのブログ記事

  • 第二十四章 1
  • サントゥスタッシュ教会の鐘が鳴ったばかり、中央市場近くの青物市の鐘(市場の業務の開始及び終了を告げる鐘。この鐘を合図に売れ残りの品を回収する者たちが現れた。Clochardが「浮浪者」の意味なのはこれに由来する)の音がまだ聞こえている時間に、プランタ親爺はモンマルトル通りに到着し、教えられた番地の家のある薄暗い小道に入っていった。「ルコックさんは?」彼は一人の老女に尋ねた。彼女はお粥のような朝食を三匹の巨 [続きを読む]
  • 第二十三章 15
  • 「わしの考えでは」とプランタ親爺が割り込んだ。「トレモレルは、それしきのことにさほど頭を悩ませなかったのではないかな。ゲスパンとファンシーに金をやって用を頼み、何の説明もしなかったとも考えられる」ルコックはしばらく考え込んだ。「あなたの仰るとおりかもしれません」ついに彼は答えた。「それでも、ゲスパンがアリバイを作れないように彼を引き留めておけ、という具体的な指示をファンシーには与えていたに違いあり [続きを読む]
  • 第二十三章 14
  • ゲスパンは頭を振ってノンの意を表した。「監獄の独房に戻るんだ。そこがお前の気に入りの場所のようだからな」とルコックが締めくくった。それから目で予審判事の同意を得てから命令した。「憲兵諸君、被疑者を連れて行きなさい」ドミニ氏の疑念は、日光を浴びた霧のように綺麗さっぱり消えてなくなった。端的に言えば、彼は自分がルコックを不当に扱ってしまったという悔いをいくらか感じていた。それで少なくとも、これまでの生 [続きを読む]
  • 第二十三章 13
  • 「いや、違う。だが俺ははっきり分かった。もう、あんたのその手は喰わない。こうなったら、もう一言だって喋るものか。それくらいなら死んだ方がましだ」ルコックは彼を宥めようとしたが、彼は愚か者の強情さで言い募った。「それに、俺はあんたと同じぐらい頭が良いのさ。いいか、あんたに言ったことはみんな嘘っぱちだ」ゲスパンのこの態度の豹変に誰も驚かなかった。容疑者の中には、一旦この方法で身を護ろうと決めたら最後、 [続きを読む]
  • 第二十三章 12
  • 容疑者ゲスパンは完全に呆気に取られてルコックを眺めていた。「い、いや」彼は不明瞭に呟いた。「そ、それは五百フラン札だった」大家と言われる芸術家は皆、クライマックスの場面ではそうなるのだが、ルコックもまた鳥肌が立っていた。彼の素晴らしい捜査能力が彼の頭に大胆な策を閃かせたのだ。もしうまく行けば、勝利に繋がる策だ。「さぁ今度は」彼は尋ねた。「その女の名前を言って貰おうか」「し、知らないんです」「お前は [続きを読む]
  • 第二十三章 11
  • 「最後に会ったのはいつのことでしたか?」「ああ、そう言えば思い出しました!」ジャンドロン医師が答えた。「ムランに診察に行ったときのことです。ほんの三週間ほど前のことで、ホテルの窓にトレモレル伯爵とその蓮っ葉女の姿が見えましたよ。ただ、私に見られたと思った瞬間、彼は素早く身を隠しましたがね」「ということであれば」ルコックは呟いた。「もはや間違いはないな……」彼は黙った。ゲスパンが二人の警官の間に挟ま [続きを読む]
  • 第二十三章 10
  • 「どうなんです?」とドミニ氏が執拗に催促した。「ああ、そうですねぇ」ルコックは叫んだ。「あのゲスパンに私自身から質問を三つさせて貰えましたら!」ドミニ氏は眉に皺を寄せた。これは厚かましい要求に聞こえた。規定によると、予審判事の取り調べを受けている容疑者は、非公開の場で予審判事のみが書記の立会いのもとに尋問を行えることになっていた。しかし他方では、一度取り調べを受けた後は、容疑者と証人が対面すること [続きを読む]
  • 第二十三章 9
  • 「しかし閣下も私も、司法がどのように働くか、よく知っています。私がマリニャン通りの哀れな召使いランスコットを逮捕したとき、彼の最初の言葉は『ああ、もう逃げられない』でした。タバレ親爺と私がルルージュ未亡人殺害の廉でコマラン子爵を朝起き掛けに逮捕したとき、彼は『もう終わりだ』と叫びました。ところが二人とも犯人ではありませんでした。しかし二人とも、お上の裁きに間違いもあり得ることを考えて気が動転し、一 [続きを読む]
  • 第二十三章 8
  • ドミニ氏はこの言葉の意味を取り違えた。その上、そこには密かに揶揄が込められている、と感じた。「しかし彼には一晩考える時間があったのですよ」と彼は応じた。「十二時間もあれば、自己を弁護する作戦を立てるに十分ではありませんか?」ルコックは疑わしげに首を振った。「仰るとおり時間は十分すぎるほどございました」彼は言った。「しかしあの被疑者は自己弁護の方法など考えてはいないことは断言できます」「彼が黙ってい [続きを読む]
  • 第二十三章 7
  • 「その無実を証明する証拠とやらが、どのようなものか、仰っていただけますか?」彼は尋ねた。「単純で明白なものでございます」自分の推理により可能性の幅が絞られてゆくのに比例して、益々間抜けな風を強調するのを楽しみながら、ルコックが答えた。「バルフイユでの私どもの捜査の際、寝室の振り子時計の針が三時二十分で止まっていたのを覚えておいでと存じます。なにか奸計が巡らされているのではないかと疑いを持った私は、 [続きを読む]
  • 第二十三章 6
  • 「それは一つの仮説にすぎないでしょう」とドミニ氏はだんだん露わになってくる不機嫌さと共に答えた。「確かに。しかし確信へと変わるものでもあり得ます。こちらの方に---彼は濃い口髭の男を指した---尋ねたいことがもう一つあるのですが、ゲスパンは購入した品々をどのように持ち帰ったのか、ということです。ただ単にポケットに滑り込ませたのですか。それとも一つの包みにして貰ったのですか。もし包みにして貰ったなら、どの [続きを読む]
  • 第二十三章 5
  • ジャンドロン医師は、突然突きつけられたこの証拠にいささかたじろぐ態だったが、プランタ親爺の口元にはうっすらと微笑が漂っていた。ルコックの方は、多くの異議申し立てを鶴の一言で黙らせる力を持つ男が、有意義に使えた筈の時間が空費されるのを見ていなければならないときの奇妙な表情をしていた。「私が思いますに」彼は頗るへりくだった口調で答えた。「バルフイユを荒らした犯人は槌も鏨もヤスリも、外部から持ち込んで使 [続きを読む]
  • 第二十三章 4
  • ドミニ氏は好意的な、殆ど親しげと言っても良いぐらいの身振りとともに彼を押し留めた。「さぁさぁ、グーラール---この男はグーラールといいましてね---順序立てて話してくれないかね。出来れば、きちんと最初から。君は私の命令どおり、フォルジュ・ド・ブルカンの店に聞き込みに行ってきたのだね?」「はい、汽車から降りたその足で駆けつけました」「大変よろしい。そこで被告は目撃されていたかね?」「はい、七月八日の夜に」 [続きを読む]
  • 第二十三章 3
  • 「まぁ落ち着いて」ドミニ氏が遮った。「ちょっと落ち着いてください。あなたの言っていることが全くの間違いだと言っているわけではありませんよ。大違いです。ただ、私には異論があると言っているのです。トレモレル氏が妻を殺害したとしましょう、私もその点は同意します。彼は生きていて、逃亡中である、と。それではゲスパンは無実で、この殺人とは無関係である、ということになりますか?」この点は、確かにルコックの推理の [続きを読む]
  • 第二十三章 2
  • ドミニ氏が殆ど見えないくらい小さく肩をすくめたのをルコックは見逃さなかった。のみならず、ここは更に主張すべきときだと彼は考えた。「更に申し上げますが、現在死んだと考えられているトレモレル伯爵に対する逮捕令状を、私がこの部屋を立ち去るときには必ずや発行してくださると確信しております」「とにかく」ドミニ氏は答えた。「話してください」そこでルコックは口早に証拠調べの最初から彼及びプランタ治安判事によって [続きを読む]
  • 第二十三章 1
  • 予審判事が苛立っているだろう、とプランタ親爺は言ったが、その表現は現実を遥かに下回るものだった。ドミニ氏は怒り心頭に達していた。昨日から共に仕事をしている者たち、すなわち治安判事、医師、そして治安警察の刑事の三人がこんなにも長く姿を現さないことがどうしても理解できなかった。彼は早朝から裁判所内の自分の執務室に詰め、法衣に身を固め今や遅しと待ち構えていた。というのも、一晩じっくり考えた結果、彼の確信 [続きを読む]
  • 第二十二章 4
  • ルコックは金色の頬髯の下で危うく赤面しそうになった。「いえ、その……」彼はへどもどした。「おそらくあんたは」プランタ親爺が遮った。「わしの情報源がどこかを知れば満足なさることじゃろう。しかし昨夜わしが始めに、これからする話はあんた方だけに聞かせるためのものだと釘を刺しておいたことを、よもやお忘れではあるまい。あんた方にそれを伝えるに当たっては、目的はただ一つ、我々の捜査を迅速に進めるためということ [続きを読む]
  • 第二十二章 3
  • 全員が急いでそれに応じようとした。ルコックはプランタ親爺のところに戻ってきた。「間違いなく」彼はまるで脇台詞のように囁いた。「この灰は最近動かされています。そしてもし動かされたとすれば……」彼はもう屈みこんでいた。そして灰を掻き除けると、火床の底にある石が露わになった。細い木片を取り、その先を石の窪み部分に容易に差し込むことが出来た。「ごらんなさい」彼は言った。「セメントは全く使われていない。この [続きを読む]
  • 第二十二章 2
  • オルシバルの骨接ぎ屋が住んでいたのは丘陵のうんと下の方で、鉄橋の右側であった。彼は三室の小さな家に一人で住み、一部屋は仕事部屋として使われ、苗、干した薬草、穀物、その他薬草販売のための諸々の品々が一杯に並べられていた。寝室は奥の部屋で、田舎家の普通の寝室よりは上等な調度品が置かれていた。担架を運んできた者たちは陰鬱な積荷をベッドの上に置いた。一同の中に、もし太鼓叩きの公布触れ回り役人がいなかっとし [続きを読む]
  • 第二十二章 1
  • このような暗い納戸で、隣接する書斎にいる人々に気づかれぬよう物音も立てず自殺するには、異様な沈着さと類まれな勇気が骨接ぎ屋ロブローには必要だったことであろう。暗闇の中手さぐりで、積んである古新聞や本の間から見つけ出した一本の紐が彼の自殺の道具だった。その紐を自分の首にしっかりと巻きつけ、止血棹を巻き上げ機代わりに用いて彼は窒息死したのだった。しかし、彼は縊死した人間に見られると一般に考えられている [続きを読む]
  • 第二十一章 7
  • 「ご安心ください」冷静な口調で彼は言った。「我々は彼を見つけ出します。それが出来なくば、私はルコックではない。それに正直な話、それはさほど困難な仕事とは思えぬ、と申し上げておきます」ドアを二三回そっと叩く音がしたのでルコックは言葉を止めた。時が経過し、もう大分前から家の者たちが起きだし、動き回っていた。プティ夫人は心配と好奇心で頭が一杯になり、殆ど半泣きで少なくとも十回はドアの鍵穴に耳を押し当てに [続きを読む]
  • 第二十一章 6
  • 「昨夜、村長宅で私たちは同時に同じ疑いを持ちました。私はロランス嬢の手紙を何度も読み返し、あれは彼女のものではないと断言いたします。トレモレル伯爵が下書きを与え、彼女はその通り書き写したのです。惑わされてはなりません。あの手紙はじっくり時間を掛けて練り上げられたものです。恥辱から逃れるため自殺しようとしている二十歳の乙女が使う表現ではあり得ません」「あなたの仰るとおりかもしれません」ドクターは見る [続きを読む]
  • 第二十一章 5
  • 「よし!」彼は叫んだ。「これで我々の証拠調べは完了しました。治安判事さんからお聞かせいただいた過去の経緯が、ソブルシー死後に起きた一連の事件の謎を解く鍵となりました。表面的には仲睦まじく見えたこの夫妻が抱いていた憎悪が理解できました。エクトール伯爵が、百万フランの持参金付きの魅力的な若い娘さんを何故妻ではなく愛人にしたのか、の説明もつきました。トレモレル氏が自分の地位と名前を捨て一市民として生きる [続きを読む]
  • 第二十一章 4
  • ルコックは再び部屋を歩き回り始めた。「後は毒薬の問題だけです」彼は言った。「これは簡単に答えの出る問題だ。彼女にその毒薬を売った男を納戸の中に閉じ込めてあるわけだから」「それに」とジャンドロン医師が応じた。「毒薬のことなら、それは私の専門分野です。あの悪党のロブローが盗み出したのは私の実験室からで、プランタさんの詳細な症状の説明を聞くまでもなく、それがどんな毒薬なのか私にはよく分かっています。ソブ [続きを読む]
  • 第二十一章 3
  • 「なんということだ!」ジャンドロン医師が口を挟んだ。「そのトレモレルという人はよっぽど小心翼々とした人物ですね。ソブルシーの手控え帳を処分してしまえば、何を恐れることがあるというんですか?」「その手控え帳が処分されたとどうして言えますか?」プランタ親爺が遮って言った。この言葉に部屋の中を歩き回っていたルコックは立ち止り、プランタ親爺の向かいに来て座った。「その証拠品が処分されたか、されていないか。 [続きを読む]