エミール・ガボリオ ライブラリ さん プロフィール

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エミール・ガボリオ ライブラリさん: エミール・ガボリオ ライブラリ
ハンドル名エミール・ガボリオ ライブラリ さん
ブログタイトルエミール・ガボリオ ライブラリ
ブログURLhttps://blog.goo.ne.jp/puereternus2
サイト紹介文19世紀フランスの探偵小説作家ガボリオの未邦訳作品を翻訳しています。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供334回 / 365日(平均6.4回/週) - 参加 2016/02/12 18:34

エミール・ガボリオ ライブラリ さんのブログ記事

  • 第十四章 4
  • 既に、あなたもご存じですね、僕は年は若いですが、学会を揺り動かすような結果を出しています。成功すれば世界の様相を一変させるような、そんな大問題を解くカギを垣間見たような気がしていたのです。この破産は僕の希望の消滅であり、僕の研究成果のすべてを瓦解させるものだったのです……。というのも、僕の実験にはお金が掛かりました。必要な資材を買うのに、また僕の考案した装置を作らせるにはお金が要りました。しかも大 [続きを読む]
  • Tenant for Life 31
  •  そう言いながら、彼は駈け出して行った。下宿屋のおかみさんの銀製スプーンを放ったらかしにし、私一人を残して。彼が医者という立場から推測したことより、ずっと多くのことを私は知ることが出来たので、再び彼を訪れる必要はなかった。尤もそのときは、次に来るときは自分の正体を明かして彼を驚かせ、彼を証人として召喚する運びになるのではないかと考えていた。私が既に知っていたことに加えて、今回分かったことは何か? [続きを読む]
  • 第十四章 3
  • それで父は、先祖伝来のド・トレガールの家屋敷を除く全て、カンペールからオーディエルヌまでの領地を売ってしまい、投機の世界に身を投じたのです。最初は随分うまく行ったようです。しかし父のやり方はあまりに正直で合法的だったため、幸運は長く続きませんでした。1869年の始めに父の手がけた取引が上手く行かなくなりました。仲間の出資者たちは金持ちになりましたが、どういうわけか父は破産し、もう少しで裁判にかけら [続きを読む]
  • Tenant for Life 30
  • 「それは一体どう意味だったんでしょう?」「ちょっと伺いますが、あなたはショックを受けやすい人ではないですね?」「はい、大丈夫です」と私は相手の顔を正面から見返しながら答えた。彼がそのとき述べた言葉をここに再現することは出来ないが、シェドリー夫人が赤ちゃんを生きた状態で出産出来なかったことは十分に明らかにされた。そのようなケースはごく稀であるということも。 さて、これこそ私が求めていた情報であった。 [続きを読む]
  • 第十四章 2
  • それでは何故、彼女は母親にそのことを話さなかったのだろうか? ある日、彼女が偶々窓辺に立ったとき、その『付き纏い男』が空を見上げながら家の前を通り過ぎるのを見たことを、母親に一言も打ち明けなかったのは何故であろうか?「私、頭がおかしくなったんじゃないかしら!」と彼女は思い、自分自身に心底苛立った。「もうあんな人のことなんか考えたくないわ」しかし彼女は彼のことを考え続けた。ある日の午後、母親と彼女が [続きを読む]
  • Tenant for Life 29
  • 私は座った。犠牲者の言うことには逆らわないのが、密偵の心得の第一である。第二番目は、もしその相手が何かを振舞おうとしたら、それを受けることである。相手に口を割らせようと思うなら、まず相手の勧めるものを自分の口に入れることが事を容易にする。 「お茶を飲まれますか?」と彼は聞いた。 私は直ちに応じた。 「ああ、そうでした」彼は言い始めた。「あの日のことはよく覚えていますよ---七月十五日でした---召喚状に [続きを読む]
  • 第十四章 1
  • 第十四章そのとおり、ジルベルト嬢には秘密があった。秘密といっても実に素朴で純潔なもので、年配の女たちに言わせると、天使も喜ぶような秘密であった。この年の春は稀に見る穏やかな気候だったので、ファヴォラル夫人と娘は毎日新鮮な空気を吸いにロワイヤル広場に出かけるのを日課としていた。その際、この健康的な気晴らしで週ごとの労働の成果を損なわないように、彼女たちはレース編みなりカンバス刺繍なりの手仕事を持参し [続きを読む]
  • Tenant for Life 28
  • そのときの時刻は九時半だった。彼の家に着き、廊下を歩いているときカップか受け皿にスプーンの触れる音がはっきり聞こえたため、ゲフィンズ氏は朝食中なのであろう、と察しがついた。下宿屋のおかみさんが、女の人が訪ねてみえましたよ、と告げると、スプーンの音が止まった。私の耳は通常の場合よりずっと鋭くなっているので---私は五感というのはいくらでも訓練により鋭敏に出来ると信じている---ゲフィンズ氏がこう言うのが聞 [続きを読む]
  • 第十三章 4
  • しかし父親は彼女に最後まで言わせなかった。「もうたくさんだ」厳しい口調で彼は遮った。「お前は人のことに口出しをするんじゃない、ジルベルト。話があるんだ、お前にも……」「私に、ですって?」「そうだ」彼は自分の苛立ちを鎮めようとするかのように、居間の中を縦横に三度か四度歩き回り、やがて腕組みをしたまま娘の前に立った。「お前は十八歳だ」彼は話し始めた。「ということは、そろそろ身の振り方を考えねばならぬと [続きを読む]
  • Tenant for Life 27
  • その夜、自分のねぐらに帰るため、お邸を辞去してから、私はエルキンズ医師の家の方に歩いて行った。女中頭からその住所は聞いてあった。着いてみるとそこは別の医者が入居していることが分かった。かいつまんで言うと、ドクター・エルキンズが英国を離れる決意をしたとき、その事業をそっくり買い上げた人が後を継いでいたのだ。ドクター・エルキンズに助手がいたかどうか、もしいたのなら、その人はどこに居るか、を尋ねることぐ [続きを読む]
  • 第十三章 3
  • 「お前が思っている以上に私は事情を知っているんだ。もう一ヶ月以上も前に、お前の雇い主はお前の怠けぶりに愛想を尽かしてお前にクビを言い渡した。恥さらしなやり方で……」恥さらしなやり方で、というのは言い過ぎだった。事実は、マクサンスが五日欠勤した後、ある朝職場に行ってみると、そこには彼の代わりの人間がいたのだった。「別の仕事を探します」彼は答えた。ファヴォラル氏は激怒の身振りとともに肩をすくめた。「そ [続きを読む]
  • Tenant for Life 26
  • 「亡くなられたのさ」と彼女は、これも宿命といった口調で答えた。「あんまり身体の丈夫な方じゃなかったからね。それに、マデイラ諸島への遠出なんかなさるべきじゃなかったんだよ。ところがマデイラに行って、そこで亡くなったのさ」これで私が当てにしていた四人の証人の内、また一人が捜査の手の届かないところに行ってしまったことになる。「ひょっとしたら乳母さんが不注意だったのかもしれませんわねぇ」と私は言った。もう [続きを読む]
  • 第十三章 2
  • 「お前が遣っている金だ。お前がどこから調達してくるのか、私には分からんが、それでは足りなくなったらしいな。そこでお前は四方八方駆け回って借金をしまくった。仕立て屋、シャツ製造業者、宝飾店……。簡単なことだ! 稼ぎはゼロだが、流行の服は着たい、チョッキのポケットには金鎖を付けたい。そこで人を騙す……」「僕は人を騙したことは一度もありませんよ、お父さん」「はん! それじゃあ今日私のところへ請求書を突きつ [続きを読む]
  • Tenant for Life 25
  • 「ああ、あれほど不幸な出来事はなかったよ。おや、どうしよう、話に気を取られて、縫い目を間違えちまったんじゃないかしら。ああ、やっぱりそうだ。目の大きさが違ってる!」「でも奥様は、誰にも看取られずに息を引き取られたってことはないんでしょう?」と私は聞いた。「そりゃ違うさ。お一人でってことはないよ」女中頭はそこで今までの語調を変えて、ややかん高い声で言った。「でも、あんた、やけにこの家のことに興味があ [続きを読む]
  • 第十三章 1
  • 「ああ、お前は立派な妹だ、ジルベルト」彼は叫んだ。「僕が今までしてきたことはまさにそういうことだった。お前の言葉はきついけれど、それこそ真実だ。お前の勇気に感謝するよ。おかげで僕にも勇気が戻ってきた。お母さんやお前をいいように利用してきた僕は卑怯者だ……」それから母の手を取って自分の唇に近づけ、こう言った。「どうか誓わせてください」目に涙を一杯溜めて彼は続けた。「過去を悔い改め、これからはお母さん [続きを読む]
  • Tenant for Life 24
  • その子はとても感じの良い子供だった。但し、これといって目立つようなところはなかった。彼女の年齢は、女中頭に聞いたところでは、御者のヤンの話とぴたりと合った。彼女は傍から見る限り、可愛らしいというより端正な顔立ちの子供であったが、彼女がやって来たことで、待っていた機会が私に訪れた。そもそも私は、この小さな女相続人にはすぐに会えるだろうと確信していた。というのは、家に誰か新顔が入り込んで来ると、子供は [続きを読む]
  • 第十二章 3
  • 「これが私だけの問題なら」彼女は続けた。「こんなことは言わないわ。でもお母様を見てごらんなさい。休みない労働のために、お母様の目はやられて充血しているじゃあないの! 私が今まで何も言わないでいたのはね、兄さん、あなたの性根にまだ絶望していなかったからよ。きっといつかは恥の気持ちがあなたに戻ってくると希望していたからなの。でも、そうじゃなかった! ときが経てば経つほど、あなたの心から良心が消えていった [続きを読む]
  • Tenant for Life 23
  • 私は贅沢好みではないので、ある程度の蓄えはあった。この仕事の必要経費は高くつくが、稼ぎの良い年が何年かあったので、その中から少しばかり貯金することが出来たのだ。私は今回の事件の捜査を開始し、継続するために必要なお金を確保しようと決心した。今まで集めたものは事実に過ぎない。今度はそれらを証明する証拠が必要だ。このためには、例の家に入り込むことが必要だった。読者も覚えておられるだろうが、私は既に一度試 [続きを読む]
  • 第十二章 2
  • 「ジルベルト様は音楽の女神そのものでございます」と彼は熱狂のあまり、その外国語訛りをますます際立たせながら、ファヴォラル氏に言ったものだ。ところが相互信用金庫の会計係の方は肩をすくめ、毎日金貨に妙なる音楽を奏でさせている人間にとっては、そんなものは快くもなんともないのだと答えた。しかし、彼の虚栄心がそのために大いにくすぐられなかったとは言えない。土曜日の晩餐会の後、ジルベルト嬢がピアノの前に座り、 [続きを読む]
  • Tenant for Life 22
  • 「サー・ナサニエル・シャーリーですよ」「金持ちではないようです」「それでは、誰が費用を出すのですか?」「誰が費用を出すか」弁護士はまた私の言葉を繰り返した。それから、しばらく間をおいた後、私との言葉遣いの違いを見せつけようとするかのように付け加えた。「諸経費の負担という問題は確かに存在します」「すぐサー・ナサニエルに会って話をします?」「あなたは、お望みならサー・ナサニエルにすぐに話をしたら良いで [続きを読む]
  • 第十二章 1
  • ジルベルト・ファヴォラルは十八歳になっていた。背はかなり高く、すらりとして、一つ一つの身のこなしが素晴らしく均整の取れた身体つきを思わせ、しなやかさと力強さがよく調和して醸し出される優雅さを持っていた。一見したところ格別の印象は与えないが、次第にいわく言い難い魅力が彼女全体から発散するのを感じ、その完璧な胴回り、上品な丸みを帯びた首、軽い足取り、そして天真爛漫な態度を賞賛せずにはいられなくなる。彼 [続きを読む]
  • Tenant for Life 21
  • 「これで私には全貌が分かりましたよ」と弁護士が言った。ここに至るまでの私の働きなどまるで無視した言い方だったと言わねばなるまい。「被告人、ニュートン・シェドリーは相当な遺産を相続する筈の女性と結婚しました。そして夫婦財産契約により、地所の管理は複数の後見人に委ねられました。通常、子供がいる場合は、その財産は子供へと受け継がれます。但し、子供が母親より長生きする場合は、です。さて、ここで面白いことが [続きを読む]
  • 第十一章 4
  • そこでは大勢の惨めな人間が自分の持ち金をすっからかんに使い果たし、それだけならどうということはないが、自分の所有しない金まで失うことになり、その場合は軽罪裁判所へ直行となる。彼は、カフェ・リッシュの前あたりをぶらつく不誠実な遊び人たちとつるみ、すきっ腹を抱え、口には爪楊枝を咥えていた。厚化粧の女たちが通行人に笑顔を振りまく大通りの居酒屋に入り浸ったり、怪しげな長テーブルを備えた店の常連客となった。 [続きを読む]
  • Tenant for Life 20
  • 種々の事柄に通じていなければならない密偵として当然ながら、私にはその紋章が故人に関係していることが分かった。同日、その墓地の番人をもう一度訪ね、当該の紋章の拓本を取りたいと願い出たとき、番人は大いに驚いた。そういった願い出はあまり普通ではないものだったので、例によって怪しまれたり、偏見に満ちた態度が私の前に立ちふさがった。しかし、どれほどの疑惑や偏見が五シリングで氷解するものか、驚くほどである。が [続きを読む]
  • 第十一章 3
  • 彼女たちはこれまで以上にサン・ドニ通りの賃仕事に精を出した。週に二十五フランあるいは三十フラン稼ぐときもあった。しかしマクサンスの辛抱が切れてきた。ある朝、ついに彼はもうこれ以上学校へは行かない、自分は進むべき道を間違えた、と宣言した。それに、どのように強制されようともシャプラン氏のもとに戻る気はない、とも断言した。「なら、お前、どこへ行くつもりだ?」父親は叫んだ。「私が未来永劫お前を養い続けるよ [続きを読む]