佐藤清春 さん プロフィール

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佐藤清春さん: 佐藤です、小説書いてます。
ハンドル名佐藤清春 さん
ブログタイトル佐藤です、小説書いてます。
ブログURLhttps://ameblo.jp/kiyoharu-satou/
サイト紹介文小説を書くこと、読むこと??について。 あと、思いついたことなどを、 まあ、そこはかとなく。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供392回 / 365日(平均7.5回/週) - 参加 2016/05/23 00:24

佐藤清春 さんのブログ記事

  • 『見える人』 12
  • 「五人来る。そのうちのひとりは、ほれ、この前んときと同じ子だ。俺が昔つきあってたネイリストの友達だよ。そいつにオーダーしといた。若くて、ちっこい、派手目な子がいいってな」「ちょっと待て」 小林がしゃべってるのを遮って、僕は手をあげた。「この前のときと同じ子が来るってのか?」「え? ああ、そうだけど?」 手をあげたまま僕はしばらく考えた。これを話してたのは同期で集まって飲んでいたときで、僕たちは安い [続きを読む]
  • 『見える人』 11
  •  レジスターのある方を見て、僕は気づかれぬように溜息をついた。そこには黒い幅広の帽子をかぶった少し太めの女が立っていた。着ている服も上下ともに黒で、黒い長財布まで手にしていた。全身黒ずくめというだけでもたんまり存在感があるのに、その女は長い(へそ辺りまで伸びるほどの)ネックレスをじゃらじゃらと何本もかけていた。まったくいかにもな人物だ。宗教的な、あるいはスピリチュアルな臭いがぷんぷんとしてくる。僕 [続きを読む]
  • 『見える人』 10
  •  喫茶店は混んでいた。僕はカウンターの空いていた席に座り、深煎りのコーヒーを頼んだ。それから、持ってきた本を開いた――『ワインズバーグ・オハイオ』だった。学生の頃に一度読んだだけの古ぼけた文庫本で、まだ持ってるとも思ってなかったものだ。適当にページを捲り、僕はコーヒーを飲みつつ、それを読んだ。ただ、思考はあらぬ方へと進んでいった。突然消える街灯、なぜか見つめてくる犬、篠崎カミラが伝えたかったこと。 [続きを読む]
  • 『見える人』 9
  •  僕は考えこんでしまった。これはどういう話なんだ? とだ。そう考えているとなんとなくの違和感を持ってることに気づいた。全体的になにかがおかしいのだ。突然消える街灯、なぜか見つめてくる犬、それに左肩を見つめる女まで出てきた。しかも、その女は「重要なこと」を伝えたいと言ってきた。僕になにが起こったか、そしてなにが起こるのか知ってると。――まったく、なにがなんだかわからない。 小林は皿にのったのを全部た [続きを読む]
  • 『見える人』 8
  •  翌日は朝から営業先に直行だった。考えていたのより早く身体があいたので僕は小林と待ちあわせて昼食を一緒にとることにした。訊きたいこと――というか、話したいことがあったのだ。僕たちは新宿三丁目ら辺の飲食店が建ち並ぶ細い路地にいた。一時半を過ぎていたけれど、そこには似たような身なりの者がたくさん出ていた。営業の人間は十二時きっかりに食事をするという習慣がない。そうしたくてもできないのだ。一時半なんての [続きを読む]
  • 『見える人』 7
  • 「あっ、あっ、あの、さ、さ、佐々木さんで、よっ、よ、よろしいんですよね?」 さらに頭を下へ向けながら彼女は言った。僕は彼女のつむじ辺りを見ながら(どうしてもそうなってしまうのだ)、顔をしかめさせた。なぜ名前を知ってるんだ? と思っていたのだ。「ええ、佐々木ですけど?」「あっ、あの、」 彼女は勢いよく頭をあげた。頬にかかった髪が後ろへと流れ、顔全体がやっとのことであらわれた。だけど、一瞬だった。すぐ [続きを読む]
  • 『見える人』 6
  • 「なんか、あの子(ポメラニアンのことだ)ずっとあなたを見てるわね」 それは雨の降る夜中にビールを買いに行ったときのことだった。飼い主を待っていたのだろう、そのポメラニアンは明るい店内の方を見ていた。しかし、僕たちが近づいていくと顔をあげた。彼女の言ったように僕だけを見ているようだった。「なんで? 私の方はまったく見ようとしない。見えないのかな?」 鷺沢萌子は腰をかがめ、ポメラニアンに近寄っていった [続きを読む]
  • 『見える人』 5
  • 「な?」 小林がジャケットの裾を引っ張った。最大限にひそめた声で耳打ちをしてもきた。「あの子だってお前を見つめてるぜ。モテる男のつらいとこだな。熱い視線ってヤツだ」 僕は睨みつけることで小林を黙らせた。それからもう一度不自然にならないよう気をつけながら隅にいる子を見た。黒くて長めのスカートに白いブラウス、これまた黒いカーディガン、靴も踵のない黒いもの。銀縁の眼鏡をかけていて、その奥にある瞳は僕の方 [続きを読む]
  • 『見える人』 4
  •  今度の合コンは小林によると「佐々木メイン」で行われるとのことだった。つまり、僕が中心ということだ。「この前のあれ、駄目になっちまったんだろ?」 小林はそう切りだしてきた。僕たちは社食を出るところだった。昼休みは終わり、エレベーターで十二階まで上がることになる。「浮かれてた佐々木が落ちこんだ佐々木になったって聴いたぜ。いまは仕事に打ちこみすぎてて鬼気迫るものがあるってな」「いや、別に、そんなことは [続きを読む]
  • 『見える人』 3
  •  雨は強くなっていた。ボツボツボツと音をたてて傘にあたった。街灯は消えたままだった。ちょっとした手違いなどではなく、ほんとうに電球が切れてしまったのだろう。僕はもう一度舌打ちをし、コンビニでビールとカップラーメンを買い、マンションへと歩いていった。 ただ、その途中で立ちどまり、また別の街灯を見あげた。そういえば鷺沢萌子とはじめて会った幾日か前にも街灯が消えたっけな――と思い出したのだ。日付までは憶 [続きを読む]
  • 『見える人』 2
  •  ガチャッと音をたててドアはひらく。「お帰りなさい」と言ってくるのは非常に愛らしい顔をした女の子だった。鷺沢萌子という名で、正確な年齢はわからないものの、たぶん二十五、六くらいだったと思う。「はい」と彼女は両手を伸ばし、鞄を受け取ってくれた。それから目を閉じ、唇をすこしだけ尖らせた。いつもそうやってキスをせがんでくるのだ。「今日も一日ご苦労様でした。晩ご飯はハンバーグよ」 彼女は上目づかいに僕を見 [続きを読む]
  • 『見える人』 1
  •  それまで何度も同じようなことはあったのだけど、そのときも僕の頭上で街灯は突然消えた。傘を傾け、僕はじっとその街灯を見つめた。それから周囲にある街灯も見た。それらは当然のことに点灯したままだった。舌打ちをして、僕はふたたび明かりを消した街灯を見あげた。 こういうのを僕は何度も経験してる。なんの前触れもなく、いかにも消えそうな徴候もなく、突然街灯が消えるというのに何度もぶちあたってきた。回数は憶 [続きを読む]
  • 『見える人』について② 〜ちょっとした内容紹介
  • で、そのアホっぽい話であるところの『見える人』ですが、昨日は物語の紹介でなくなってしまったので今日こそそいつを書きますね。このお話の主人公は33歳のサラリーマンで、そこそこ収入もある高身長の人物です。結婚願望が高まってもいるのですが、なかなかうまくいきません。友人からはこのように言われてます。『「モテないはずないんだけどな。お前のことだよ。タッパもあるし、金だってそこそこは持ってるだろ? ギャンブル [続きを読む]
  • 『見える人』について① 〜テーマの深刻性
  • さて、昨日書いたようにこれから新しい小説を掲載するのですが、それについてちょっとした紹介をしておきますね。 この『見える人』は、ほんの若干だけホラーであとのほぼすべてはアホっぽい話です。ちょっと前まで掲載していた『Pavane pour une infante défunte』はかなり真剣に書いたつもりだし、ひとつひとつの文章に気を入れて可能な限りピンと張りつめたような雰囲気を出したつもりなんです(いえ、そういうつもりってこと [続きを読む]
  • ブログに小説を載せることについて その2
  • 以前僕はブログに小説を載せることについてずっと抵抗があったと書いたのですが、実際にそれをやってみて「うん、なるほど」と思うことがありました。いえ、やはり小説って縦書きであるべきだし、ルビや傍点もそなえてあった方がいいとは思ってますよ。そう思いながらもブログに載せたのはたとえ一人でもいいから読んでもらいたいと考えたからです。まあ、これも前に書いた通りのことですね。で、僕が「うん、なるほど」と思ったの [続きを読む]
  • 『高慢と偏見』をじっくり読みなおす ―17―の③
  • ウィカムにもたらされた運命は誰のせいで起こったのかという出だしから、突如として明るい舞踏会の話題に差し替わった17章ですが、エリザベスにとっては不穏な流れが描かれてもいます。ウィカムとダンスができることや、ダーシーの表情や挙動からあの話の確証を得たいといった期待に胸を高鳴らせていた彼女は不用意にもコリンズ氏に話しかけてしまいます(半ば無視していたんですね。普段は)。で、コリンズ氏はこのようにこたえま [続きを読む]
  • 『高慢と偏見』をじっくり読みなおす ―17―の②
  • ウィカムから聴いたことをエリザベスは姉のジェーンに話します。この二人はほんとに仲がいいんですよね。ただ、性格は水と油ほど違います。周囲の者すべてを善人と思いこもうとするジェーンはこのように考えます。『彼女は、ダーシー氏がビングリー氏の尊敬に値しない人であることを信ずべきすべを知らなかった。かと言って、ウィカムのように愛想よく見える青年の言うことの真実を疑うことは、彼女の性質としてできなかった。ある [続きを読む]
  • 『高慢と偏見』をじっくり読みなおす ―17―の①
  • ふたたび『高慢と偏見』について事細かに感想を述べる時間になりました。今回は第17章ですね。 ただ、前回からひと月も経ってしまい、書いている僕にもどこまで話が進んだのかわからなくなってしまいました。ということで、さらっと軽くおさらいをしましょうね。美人の誉れ高い(1名だけ異なりますが)ベネット家の4姉妹、彼女たちの住むロングボーン近くにお金持ちの青年ビングリーが引っ越してまいりました。娘たちを嫁がせるこ [続きを読む]
  • 敬意について
  • かなり前の休日、日課である小説書きを終えてスーパーマーケットへ行く道すがら、僕は雨の中で「ん?」と思い立ちどまってしまいました。だって、こんなのを見かけてしまったんですもの。なんだか凄まじい絵に思えませんか?二宮尊徳さんがまるで危険人物であるかのようです。写真がぼやけているから判別できないでしょうが、カラーコーン等にぶら下がった紙には『立入禁止 倒れるおそれがあります』と書いてあるようです。まあ、 [続きを読む]
  • 呆れちゃう悲劇③〜『Pavane pour une infante défunte』について
  • さて、今日はちょっとだけ細かくこの『Pavane pour une infante défunte』がどう呆れちゃうのかを述べたいと思います。まず、主人公たち3人はいずれもきちんとした人間ではありませんね。強士はこの話の語り手でもあるわけですが、それを隠してる時点で不真面目です。それに、彼は端々に美以子を死に追いやったのは周だとにおわせてもいます。しかし、最後の最後で美以子を見捨てたのは紛うことなき事実ですからね。弁護の余地は [続きを読む]
  • 呆れちゃう悲劇②〜『Pavane pour une infante défunte』について
  • ということで、『Pavane pour une infante défunte』を少々呆れてしまうような悲劇に仕上げようと思った僕は『王女』の『死』をよくわからないものにすべきと考えました。その場合、僕にとって最も適当と思えるのが自死なんですね。ちょっと脱線しますが、『FishBowl』においても主人公の父親が自死を疑われています。そして、主人公がそのことを考えるシーンで僕はこのように語らせています。『身も蓋もないようなことを言わせて [続きを読む]
  • 【宣伝】『Pavane pour une infante défunte』を発行しました。
  • このたび、《BCCKS》にて、『Pavane pour une infante défunte』を発行いたしました。(↑画像 で読みにいけます)このブログでかなり長いこと連載していたものです。通して読んで下さった方も一部だけ読んだという方もまったく見もしなかった方もどうか読んでやって下さい。ちなみに、ブログに掲げたのとはけっこうな相違がございます。 いえ、ストーリーは変えてませんが、文章のリズムや表現の仕方に異なった部分がある [続きを読む]
  • 呆れちゃう悲劇①〜『Pavane pour une infante défunte』について
  • すべてが終わりました。これでいいのかはわかっておりませんが、とにかく現時点での僕が表現できることはだいたいしおおせたつもりです。ま、完璧に満足できてはいませんけどね。僕がこの物語を書きはじめた動機は以前も述べたように『亡き王女のためのパヴァーヌ』という非常に素敵なピアノ曲をベースにしてなにか書けないかと思ったからです。タイトルにも曲調にもすでに物語が含まれているように感じたんですよね。ただ、タイト [続きを読む]
  • 『Pavane pour une infante défunte』第五幕 25
  • これで終わりです。最後まで読んでいただきありがとうございました。 ↓押していただけると、非常に、嬉しいです。にほんブログ村 エッセイ・随筆 現代小説ランキング エッセイ・随筆ランキング 人気ブログランキングへ 〈BCCKS〉にて、小説を公開しております。 《恋に不器用な?橋慎二(42歳)の物語です。 どうぞ(いえ、どうか)お読みください》 [続きを読む]
  • 『Pavane pour une infante défunte』第五幕 24
  •  新しいノートは罫線がひかれているだけでまっさらだった。強士はペンを持ったまま白い紙を見つめていた。店の中は混みあっていて、そこここで話し声がしていた。もう一時間も彼は同じ姿勢のまま動かなかった。書くことは決まっているのに、どう書いたらいいかわからなかった。たまに顔をあげ、窓に滲む自分の顔を見つめた。美以子に言われたことを思い出しもした。「でも、あなたはきっと書くわ。私たちのお話を書くことになる [続きを読む]