佐藤清春 さん プロフィール

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佐藤清春さん: 佐藤です、小説書いてます。
ハンドル名佐藤清春 さん
ブログタイトル佐藤です、小説書いてます。
ブログURLhttps://ameblo.jp/kiyoharu-satou/
サイト紹介文小説を書くこと、読むこと??について。 あと、思いついたことなどを、 まあ、そこはかとなく。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供390回 / 365日(平均7.5回/週) - 参加 2016/05/23 00:24

佐藤清春 さんのブログ記事

  • 『見える人』 39
  • 「マジで、マジにほんとか?」  僕は大声で叫び出したい気分になった。いっそのこと諸肌脱いで謎の痣を見せてやろうか――そう思いもしたけれど面倒になった。「お前が知りたがってる『深いわけ』ってのはこれのことだよ」とか言ったところでこいつに理解できるわけもない。僕にだって説明できることはないのだ。「ああ。マジで、マジにほんとうだ。俺は篠崎カミラとヤッちゃいないし、『深いわけ』なんてのは存在しない。あの女 [続きを読む]
  • 『見える人』 38
  • 「な? そうだよな? 俺たちは大親友だろ? それだってのに、お前って奴はよ。――っていうか、どうでもいいけどお前たち歩くのむちゃくちゃ速くねえか? こりゃ、競歩の練習とかじゃないよな?」「いいから名乗れよ」と僕は言った。「は?」「お前はまだ名前を言ってない」「ああ、そうだったっけ?」 突然歩みをとめて小林は内ポケットから名刺入れを取り出した。篠崎カミラも慌ててバッグを開けた。手帳を出し、そこに挟んであ [続きを読む]
  • 『見える人』 37
  •  翌日も篠崎カミラは駅前にいた。僕たちは「おはよう」、「おっ、おはよう、ごっ、ございます」と挨拶を交わし、足早に会社へ向かった。新調した服は彼女によく似合っていた。背が高く、スタイルも悪くないので着映えがするのだろう。「み、見ましたか? ひ、ひ、左肩」 しばらく歩いてから篠崎カミラはそう訊いてきた。「もちろん。見ないわけにはいかないだろ。なんてったって自分の肩なんでね」 そうこたえながら僕はちらち [続きを読む]
  • 僕たちが引き受けるべき命の有り様について
  • 生きるということについていまだよく知らない僕がとくとくと死を語るなんて許されないことなのでしょうが、すこしばかり前に妻の母が亡くなったのを機に死や生のことをそれまでよりも強い圧力で感じるようになったような気がしているんですね。妻の母はだいぶ前から肺の病に罹っていました。それが認知され手術が必要とされたとき彼女の家族にはある決定が求められ、またある覚悟が促されました。術後の彼女はだいたいにおいて常に [続きを読む]
  • 『高慢と偏見』をじっくり読みなおす ―18―の③
  • ウィカム不在の舞踏会ではありますが彼の話題はなされています。ダーシーとの不快なダンスを終えたエリザベスのもとにビングリー嬢がやってきてこのように言ったり――『――わたしお友だちとしておすすめしますけど、あの方のおっしゃることを頭から信じておしまいにならない方がいいと思いますのよ。だって、ダーシー氏があの方にむごくあたっているなんて、まるきり嘘なんですもの。あべこべにジョージ・ウィカムさんこそダーシ [続きを読む]
  • 『高慢と偏見』をじっくり読みなおす ―18―の②
  • で、ダーシーと踊ることになったエリザベスですが、ほとんど無言で踊りつづけます。このシーンってかなり練られたものですよね。エリザベスはダーシーが嫌いな上にウィカムの話も聴いたものだから嫌悪感がさらに増してるわけです。一方、ダーシーは密かな恋心を持ち接触したいと願ってるんですね。ただし、いまだ傲岸不遜さを持ってもいるのです。さて、踊りながらすこしだけ話すようになった二人ですが、そのうちに話題はウィカム [続きを読む]
  • 『高慢と偏見』をじっくり読みなおす ―18―の①
  • ふたたび『高慢と偏見』について事細かに感想を述べる時間になりました。今回は第18章ですね。 またもやかなり久しぶりですがそれまでのおさらいをしてるような余裕はございません。なにしろこの18章はかなり長いし、話題に事欠かないのですから。さて、前章で話の出てきたネザーフィールドでの舞踏会がこの章の舞台となっているんですね。もちろんエリザベスはウィカムと踊れるのを楽しみにしています。『彼女はいつもよりは念入 [続きを読む]
  • 精神的な離島 〜小説を載せているあいだにあったこと
  • ここのところ毎日小説をアップしつづけている僕ですが、世界はその間も常に動きまわってるようでまったく溜息が出てきてしまうくらい実に様々なことが起きましたね。烈し過ぎる地震や大型の台風があり(被災された方々に衷心よりお見舞い申し上げます)、また、個人的にも身内に不幸があったりとこの秋口は気持ちの安らぐときが少なく感じられました。 (義母の通夜前日。このブラックアイドスーザンは もしかしたら義母の植えた [続きを読む]
  • 『見える人』 36
  •  会計を済ませ(レアなクレジットカードの登場というわけだ)、僕たちはエレベーターで地上まで降りた。雨はまだ降っていた。篠崎カミラはタクシーで帰ると言った。まあ、荷物の多さを考えればそうせざるをえないだろう。 「あっ、あの、と、途中まで、い、い、一緒に、の、乗って、い、いきませんか?」 篠崎カミラはそう言ってきた。僕は「それにはおよばない」とこたえた。一緒に帰るのが嫌というわけではなかった。ただ、一 [続きを読む]
  • 『見える人』 35
  • 「それで、そのきっかけが他者を通じてもたらされる場合、その他者ってのは特定の人物じゃなきゃならないのか? これは、誰でもよかったりはしないのかって意味で訊いてるんだけど」 「そ、それは、わ、私にも、よ、よくわからないんです。ただ、は、母がそうだと、い、い、言ってるだけで。で、でも、は、母もそうだったと、い、言ってます。も、も、もともと、そ、祖母が、そ、そういう力を、も、持っていたんです。ア、ア、アゼ [続きを読む]
  • 『見える人』 34
  •  僕は辺りを見まわした。篠崎カミラは完璧にうつむいてしまった。「ええと、つまり、それは、」 思いっきり顔を近づけさせ、なおかつ囁くように僕は言った。「ヤルってこと? いや、違うな。いまのは忘れてくれ」 篠崎カミラはすこし顔をあげた。ぽかんとした表情をしていた。「ヤル?」「いや、違うんだ。そうじゃない。つまり、君が言ったのは寝るってことか? そうすると君の力は完全になる?」 ということは、こいつは処女 [続きを読む]
  • 『見える人』 33
  • 「どんなことをするの?」「は、母が、み、み、見たことと、わ、私に見えたことを、す、す、すり合わせたりです。む、む、難しい、じょ、状態の方は、そ、それだけ、た、た、たくさんのものが、つ、つ、憑いてますから、ひ、一人で全部、み、見るのは大変なんです。つ、つ、憑いているもの同士の、ち、力関係を、み、見極めなくては、な、ならないので、は、母は、お、主に、い、一番強い霊を、わ、私は、そ、それ以外のを、み、見 [続きを読む]
  • 『見える人』 32
  •  料理を口に運びながら僕は彼女の唇をじっと見ていた。気づいたらそうしていたのだ。オイルに濡れた唇と、舌の先が平たく出てきてはそこをゆっくり舐める様をだ。篠崎カミラはつぎの料理も取り分けてくれた。うつむきかげんになり、フォークを丁寧に扱っていた。僕は非常に柔らかそうな彼女の胸を見つめた。それから、首を激しく振った。「ど、ど、どうか、さ、されましたか?」「いや、なんでもない。――僕はもう一杯飲むことに [続きを読む]
  • 『見える人』 31
  • 「ふ、普通です。わ、私は、ふ、普通の、に、人間です」「そんなわけがない。普通の人間であれば、なんで肩ばかり見る。僕はこれまで誰からもそんなふうにされたことないんだぜ。そんなことをするのは君だけだ。それに、自分でも言ってたじゃないか。他の人には見えないものが見えるって。だろ? だから、普通じゃないんだよ」 そう言ってるあいだも彼女は僕をじっと見つめていた。僕も同じようにした。とくにその目を見ていた。 [続きを読む]
  • 『見える人』 30
  •  エスカレーターに乗ると篠崎カミラは満足そうな表情になった。「うむ、よくついてきたな」とばかりにうなずいてもいた。あまり気にしてなかったけど(それ以外に気になることがたくさんあったからだ)、篠崎カミラにはけっこう強引なところがある。突然消える街灯や、肩の上にいる「すごいの」やらを考えるのに手一杯で思い至らなかっただけだ。この状況だってそうだもんな――などと思いながら僕は満足げな彼女の顔を見ていた。 [続きを読む]
  • 『見える人』 29
  • 「そうそう、それに良く合うネックレスがあるんです。こちらもお仕事につけていかれて大丈夫なものですよ」「じゃ、じゃあ、そっ、それも、お、お、お願いします」 細い金のチェーンが首にかかるとさらに良くなったようにみえた。ただ、試着室から出てぺったんこな靴を履いた姿は残念さを感じさせた。「あとは靴だな。ちょっとはヒールがあった方がいいよ。ここって靴も置いてあります?」「ええ、ええ! ありますとも!」 ごく [続きを読む]
  • 『見える人』 28
  •  西武線の改札に近づくとすぐに居所はわかった。まわりの人間より頭ひとつ分くらい抜けているからだ。向こうもすぐに僕がわかったようだった。目印になりやすい背の高さをしているとこういうふうになるものだ。「き、き、来て、く、くださったんですね」「まあね」 篠崎カミラは緊張した面持ちで僕を見つめた。僕も首を引いて彼女を見た。地味ではあるけれどクォーターだけあって顔のパーツにはそれぞれ主張がある。スタイルだっ [続きを読む]
  • 『見える人』 27
  •  えらく食い下がってくるな――そう思いながら僕は篠崎カミラをちらっと見た。まったく、ほんと自信なさそうな顔してるよ。「そ、そ、それに、さ、さっき、さ、佐々木さんは、な、な、なんでも、し、してくれるって、」 立ちどまって僕は天を仰いだ。ほら、やっぱり言い過ぎたんだ。なんでこう軽く言っちゃうんだろう? 鷺沢萌子と暮らすことになったのだって、あまり考えずに口走った言葉が原因のひとつだったのだ(まあ、それ [続きを読む]
  • 『見える人』 26
  • 「あとは服だな」と僕は言った。「地味すぎるよ。個性がない。まるでリクルートスーツだ」「は、はあ。そ、そ、そうでしたか」 篠崎カミラは足早に歩きつつ自分の服を見た。それから周囲にいる女性を検分するかのように見つめた。「じゃ、じゃあ、きょ、きょ、今日、し、仕事帰りに、か、か、買いに行きます」 素直なことで――と僕は思った。少々不安になるくらいの素直さだ。騙された僕が考えることじゃないけど、こんなんじゃ [続きを読む]
  • 『見える人』 25
  • 「あっ、あっ、あの、」「なんだよ」 僕はすこしぶっきらぼうな声を出していた。混乱させられた苛立ちを向けやすい相手で発散させたのだ。「い、いえ、す、すこしは、お、お役に、た、たちましたか? わ、私だけでは、ちょっ、ちょっと、ふ、不安だったので、せ、先生に、お、起きてきて、も、もらったんです。か、か、かえって、び、びっくりさせて、し、しまったのでは、な、ないでしょうか?」 どもりつつしゃべる声を聴いて [続きを読む]
  • 『見える人』 24
  •  スマホを耳に押しつけたまま、おおよそ十分くらい僕は待った。もういいから部屋に戻って寝ちゃおうかな。ビールを飲みながら、そう思っていた。恐怖はその程度まで薄まっていたのだ。というか、自分のしてることが馬鹿らしくなっていた。なんでもないことを騒ぎ立ててるだけに思えたのだ。しかし、燻りつづけている怖れはあった。なにしろ篠崎カミラは「危険な気がする」と言ったのだ。「もしもし?」 野太い声が聞こえてきた。 [続きを読む]
  • 『見える人』 23
  •  コンビニでビールを買い、僕はふたたびマンションの前に座りこんだ。時計を見るともう一時近くになっていた。スマホの画面をじっと見つめ、僕はひとしきり悩んだ。女の子に電話をかけるにあたってこんなに思い悩むなんて中学んとき以来だな――と考えてみた。いや、そうじゃない。なにも好きな子に電話するってわけじゃないのだ。必要に迫られただけのことだ。 ごくごくとビールを飲んでから僕は電話をかけた。コール音が鳴って [続きを読む]
  • 『見える人』 22
  •  駅に着いたのは十二時近くだった。長いエスカレーターから降りると僕は深い溜息を洩らした。疲れ果てていたのだ。二日酔い一歩手前まできていたところに強い酒を重ね、なおかつ葉巻まで喫ったものだからくらくらした。それでいて意識はいやにはっきりしていた。脳の芯部が覚醒してるのがわかった。僕はまっすぐマンションに向かった。そのあいだ何度も左肩を見た。もちろんそこになにかいるとも思えなかった。見えないし、触れら [続きを読む]
  • 『見える人』 21
  •  僕はしばらく小林の様子を窺っていた。小林は背中をまるめ、ちびちびと酒を舐めていた。出している声には自分でそうと言ったように悲しみが感じられた。ただ、そんなフェイクが通用するわけもない。「いい加減にしろよ。もし、ほんとうに俺たちが親友だっていうなら、これ以上はなぶるな」 小林はくいっと顔を向けてきた。悲しみなんて微塵も浮かべていなかった。むしろ楽しくて仕方ないといった顔つきだった。「だって、篠崎カ [続きを読む]
  • 『見える人』 20
  •  僕はバーテンダーを呼び、目についたボトルを適当に指さした。「あちら? あれをショットで? かしこまりました」とバリトンボイス。「すごい反響だろ? 注目の的だ」 小林はまた三度ほど背中を叩いてきた。「感想は? それをみんなに送ってやるぜ」「絵文字の意味がわからない」と僕はこたえた。見せられたメールにはふんだんに絵文字が使われていたのだ。「どうしてウサギの絵文字なんだ? それになんの意味がある? 文面とち [続きを読む]