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コンポジション https://shimanite.hatenablog.jp/

エッセイ、短編小説、自由律俳句をぽつりぽつりと書いています。

はじめまして。思ったこと、考えたこと、感じたことを書いています。地味なブログですが、嘘や誇張は書かないように気をつけています。

シマニテ
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2016/07/01

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  • 一行詩 #001

    paint:Gerhard Richter words:shimanite 自由律俳句と一行詩は見た目がとてもよく似ていて、どこかどう違うのという感じなのですが、自分の中ではけっこう明確な区分がありまして、自由律俳句は、外からやってきて自分に反射していく感じ。一行詩は、自分の中から外に向かって滲み出るような感覚。そして両者に共通しているのが、どちらも「未完成」で、その仕上げは受け手に委ねているというところです。

  • それ、本当の言葉じゃないから

    2008年の冬だったと思う。サービスが始まったばかりの「ニコニコ生放送」(以下、ニコ生と略)が物珍しくて、2週間ほど集中的に観ていた時期がある。当時から「ネトラジ」と呼ばれる音声のみのストリーミングサービスはあったが、一般の人々がライブ映像を気軽に配信できるサイトは限られていて、ニコ生がこの先どんな風に浸透してゆくのか、そこに興味があった。 と、もったいぶった書き方をしたけれど、本当の理由は「2チャネラー」っていったいどんな連中なんだろう、という好奇心だ。もちろん、ニコ生の配信者イコール「2チャネラー」ではない。しかし、僕の認識は同じカテゴリーに属する人、つまり、どちらもオタク系の人たちだった…

  • 六角形の棺

    7月5日、早朝、バングラデシュでテロの犠牲になった7人と遺族を乗せた政府専用機が、羽田空港に到着した。遠くから望遠レンズで切り取られたその光景は、現実感が希薄で、まるでドラマの再放送を観ているようだ。僕は歯ブラシをくわえたまま、ぼんやりとテレビ画面をながめ、昨夜の深酒を反省していた。 飛行機の貨物室から、白い布に包まれた棺が降ろされる。棺を覆う布が風にはためいた。布が貼りつき木箱の輪郭があらわになる。その瞬間、僕は、はっと息を飲んだ。棺の形が違うのだ。それは見慣れた「直方体」ではなく、「六角形」のそれだった。外国仕様である。まぎれもなく彼らは、遠く異国の地で殺されたのだ。六角形の棺桶は、その事…

  • ぼくは「君が代」が歌えない

    「君が代」が好きだ。華やかさや勇壮さに欠けているとしても、荘厳でどこか寂寥感をたたえた旋律は、いかにも日本的で美しいと思う。海外のスタジアムで代表選手が一列に並び「君が代」を歌う。スタンドで揺れる日の丸の小旗。そんな光景は、なんど見ても胸を熱くさせるのに十分だ。 では、僕にとっての「君が代」や日の丸は、日本の象徴なのだろうか。 もう、10年以上前の話になるが、神宮球場でプロ野球の日米対抗を観戦した。試合に先駆けて両国の国歌が流れる。場内アナウンスは「脱帽」と「起立」を促す。僕は席を立たなかった。立つ必要がないと思ったから、そのまま座っていた。突然、後ろから声をかけられた。「おい、そこ、立てよ」…

  • 自由律俳句 #004

    自由律俳句は、五七五の音数や季語や切れ字にとらわれることなく、文字通り自由に詠まれた俳句です。代表的な俳人に、種田山頭火、尾崎放哉、住宅(すみたく)顕信らがいます。詳しくはこちらをどうぞ。自由律俳句(ウィキペディア)

  • Cの物語

    大人の話を襖越しに聞くことが好きだった。その話がミステリアスであればあるほど胸を躍らせた。そして、不思議なことに、そのたぐいの話は今でも鮮明に覚えている。 僕は、北海道の室蘭という地方都市で生まれ育った。町の中心部から高台に向かって急勾配の坂をのぼり、墓地を通り抜け、さらに坂道をのぼる。丘の中腹。そこに張り付くようにして実家があった。玄関を出て坂を下ると漁港に出る。走ると2分もかからなかった。 小さな漁港だ。係留している船は、漁が休みの日でも30隻そこそこ。地図を見ると港は、アルファベットの「C」のカタチをしていた。僕らは、Cの中で友だちをつくり、喧嘩をして、初恋をして、少しずつ大人になってい…

  • 螺旋階段の上と下で

    「その犬と豚のどこがどう違うんだ?」 高校1年の秋だったと思う。その日は、朝から冷たい雨が降っていた。シャッターの降りた八百屋の軒下。ダンボールの中で子犬が震えていた。箱にはタオルが敷き詰められていたが、糞尿のせいですっかり汚れていた。子犬は鳴き声を上げることもなく、壊れたモーターのように小刻みに震えている。底が抜けないよう慎重にダンボールを拾い上げ、そのままアパートに連れて帰った。湿ったダンボールは「腰」がなく、思った以上にずしりと重かった。出来の悪い青春ドラマのワンシーンのようだが、すべて実話である。 僕は、家の事情で高校に入るとすぐに六畳一間のアパートを借り、一人暮らしをはじめた。生活費…

  • 掌編小説 コリオリの力

    羊水に浸っていたのは、自分ではなかったのか、と思うことがある。 その日、東の海上から張り出した1014ミリバールの移動性高気圧が日本列島全体を包み込み、朝鮮半島の北西部では低気圧が発達しつつあった。 東高西低。「鯨の尾」と呼ばれる典型的な夏型の気圧配置だ。張り出した高気圧の等圧線は、たしかに鯨の尾びれに見えなくもない。14時、高崎と熊谷でその夏の最高気温が塗り替えられた。フェーン現象。うだるような暑さという慣用句があるが、実際は、フェーン現象が発生すると湿度は下がる。 * * その日の朝、測候所には、パレードの控え室のような緊張感が漂っていた。ここ数日の気圧配置から、今日、この夏の最高気温を更…

  • どこに住もうか

    真球になりたかった。 どこを測定しても寸分たがわぬ精度で、傷ひとつないなめらかさで、銀色の光沢を放つ硬度で、転がり続けたかった。真球を意識しながら生きてきたわけではない。けれども、気づくといつも転がっていたように思う。 目についたものは、なりふりかまわず首を突っ込む。くぼ地にはまって、身動きとれなくなることが怖かった。静止することは停滞ではなく、後退を意味した。いつまでも、どこまでも、とにかく転がっていたかった。片時も休むことなく。 良く言えば、自由奔放。悪く言えば、すべてが中途半端である。 コピーライターに求められる能力、それがいまだによくわからない。文章力であったり、観察眼であったり、常識…

  • どうぞ、まっすぐ、みてください

    小さくて大きな広告の話をします。 媒体は、テレフォンカード。広告主は、体の不自由な人の自立支援を行っているNPO「札幌いちご会」。コピーライターは、糸井重里さん。ビジュアルは、アンティークのサルのぬいぐるみ。よく見ると、サルの片一方の手はとれています。その写真に寄り添うように、キャッチフレーズとボディコピー。キャッチフレーズは、こうです。 どうぞ、まっすぐ、みてください。 ボディコピーは、肝心のテレフォンカードが手元にないので、記憶を頼りに書き起こしました。こちらです。 体の不自由な人と、もしばったり出会ったなら、目をそむけたりしないでください。すぐに駆け寄って手を差しのべることも、すこしだけ…

  • 自由律俳句 #003

    自由律俳句は、五七五の音数や季語や切れ字にとらわれることなく、文字通り自由に詠まれた俳句です。代表的な俳人に、種田山頭火、尾崎放哉、住宅(すみたく)顕信らがいます。詳しくはこちらをどうぞ。自由律俳句(ウィキペディア)

  • 寓話 アライさん

    アライグマを見ていた。かれこれ10分はたったと思う。水あめを薄く溶かしたような小川の、苔むした石に腰掛けて、体のあちこちを一心不乱に洗っている。僕は彼の気を散らさないよう、そっと近づいて声をかけた。 「いったい、そこで、なにを洗っているの?」 アライグマは、首だけを僕にくるっと向けると、面倒くさそうに答えた。 「悪い心だよ」 まさかそんな答えが返ってくるとは、思ってもいなかった。さらにゆっくり近づく。トレッキングシューズの下で小枝が折れた。ポキポキ。その音は、拡散することなく湿った地面に吸い込まれてゆく。 「悪い心?」 「そうだよ。悪い心」

  • 色を聞く

    数週間前から気になっていた文章が、発掘されました。1984年にオンエアされたラジオCMのナレーション原稿。 書いたのは、寺山修二さん。どうしても、もう一度読みたくて探していたのですが、見つからなかった。あきらめかけたいたときに、ひょっこり出てきました。大好きなコピーです。みなさんにご紹介します。 ※以下、全文引用 ラジオCM「ソニーカセットテープ 色と音篇」 (コピーと出演/寺山修司) みなさんこんばんは、寺山修司です。 ぼくたちは、いろんな色を見ることができるわけですが、 目の見えない子供たちは、色をどんなふうに感じてるのか。 きのう、文京盲学校の生徒さんたちと会って話したわけです。 すると…

  • イレイサーヘッド

    これは、僕が小学校の2年か3年生の時のお話です。 生家では、よほどのことがないかぎり、家族全員で食卓を囲む、というのが暗黙のルールでした。しかし、食事中に家族で楽しく会話をした、という記憶がほとんどありません。テレビはいつも消されていたし、必要最小限の会話しか許されない雰囲気が、食卓を支配していました。 食器が触れあう音。やかんがシューシューという音。あわてて席を立つ母。光沢のない床板と、タイルがところどころ抜け落ちた肌寒く薄暗い食堂。これが僕の一家団欒の原風景です。たしかに辛気臭い食卓なのですが、余計なことはしゃべらずに黙々と食べるという習慣は、それほど珍しいことではなく、当時の日本の食卓の…

  • 自由律俳句 #002

    自由律俳句は、五七五の音数や季語や切れ字にとらわれることなく、文字通り自由に詠まれた俳句です。代表的な俳人に、種田山頭火、尾崎放哉、住宅(すみたく)顕信らがいます。 詳しくはこちらをどうぞ。自由律俳句(ウィキペディア)

  • 掌編小説 バンビ

    悟は、鳩が何羽いるのか数えていた。十羽目からは面倒になって、カフェテリアとテラスを隔てている「はめ殺し」の大きなガラス窓をぼんやりと眺めていた。それにしてもこいつらは四六時中なにを啄(つい)ばんでいるのだろう。毛虫? ポテトチップスの食べかす? 落ちているものはとりあえず手当たり次第につつく、きっとそういう習性なのだ。 「見せろよぉ。どっかにウプとかしなきゃ別に平気でしょ?」カナの声だ。 「とりあえず、落ち着け」そしてユウジ。 カナの携帯が、初夏の陽差しを受けてやわらかく光る。携帯の背には、ビーズであしらわれたバンビ。カナが一歩あるくたびに、ビーズのひとつひとつが陽の光を反射し、モルタルの天井…

  • テイスト オブ ハニー

    テレビ局、とくに民放は、人々が観たい番組を制作し放送する。視聴率を度外視して、自分たちの作りたいものだけを作る、というスタンスは成立しない。視聴率ありき。より多くの人に観てもらうことによって、採算を取っているのだから、当たり前の話だ。利益を追求することは、テレビ局も一般の企業も変わりはない。 昨日、歌舞伎俳優の市川海老蔵さんが、会見を開いた。妻の小林麻央さんが、進行性の乳がんを患い、闘病中であること。進行が早く、深刻な状況であることを明らかにした。 彼が、どのような経緯で、どのような理由で、病状を発表したのかはわからない。彼はつとめて軽く、平静に、受け答えをしている印象をうけた。聞くところによ…

  • ワタシはアナタで、アナタはワタシ

    ツイッターのタイムラインをぼんやりながめる。 すき。きらい。本当にその通り。だいたい賛成だけど、そこは違うと思う。不快。もっと知りたい。わかった。わからない。不安になる。怖い。かわいい。本当かな。嘘かも。楽しそう。おいしそう。きれい。なつかしい・・・。 目まぐるしく流れる情報は、まるでジェットコースターからながめる景色のようだ。感情がころころと転がってゆく。そうこうしているうちに、奇妙な感覚にとらわれることがある。 「私とは、いったい、何者なのか」 自分自身を「塑像」にたとえてみる。感情の揺れは、塑像に粘土を塗り重ねること、肉付けすること、削ること、なめらかにすることに、どこか似ている。そして…

  • 自由律俳句 #001

    自由律俳句は、五七五の音数や季語や切れ字にとらわれることなく、文字通り自由に詠まれた俳句です。代表的な俳人に、種田山頭火、尾崎放哉、住宅(すみたく)顕信らがいます。詳しくはこちらをどうぞ。自由律俳句(ウィキペディア)

  • ちょっとまて

    ここ数年で、スマホやパソコンにふれなかった日は、あっただろうか。仕事のある平日はもちろん、歩いて5分のコンビニに行くときでさえ、玄関先でポケットのスマホを確認している。四角く硬い感触がそこにあると、土に触ったような安心感がある。たかだかコンビニと家との往復で、なにが起こるというわけでもないのに。 いまから、自分だけがネットを使えない生活が、はじまるとする。 仕事は完全にお手上げだ。休日は、どうやって乗り切ろう。趣味や読書や散歩で時間を「潰す」。そう、過ごすではなく時間を潰す。ネットから隔離された瞬間、それまでの日常は、色を失い、のっぺりとして、陳腐なものに変貌してしまう。 スマホやウェブの本当…

  • キリンの子

    昨日、いや、正確には一昨日の夜。たまたまテレビのスイッチを入れると、歌人の鳥居さんが写っていた。「鳥居」は、姓でも名前でもなく、彼女全体で鳥居さんだ。「彼女全体」という表現は、なんだかヘンだけど。 番組はドキュメンタリー風ではあるが、広い意味でのバラエティ番組だ。何人かのゲストがスタジオに招かれ、再現VTRとともに、自分のこれまでの人生を振り返る。番組のテーマは「逆転」。苦労のどん底から這い上がり、いかにして自分は今の成功を手にしたか。 正直に言うと、この種の番組は好きじゃない。人の成功談を聞いたところで、それを自分が実践したところで、同じような結果にはならないという確信があるからだ。たとえて…

  • 地球儀の 3.11

    仕事部屋に、古い地球儀があります。直径は約35センチ。ずいぶん前に、古道具屋で購入したものです。朝鮮半島に国境線が引かれていないので、1950年前後に作られたものだと思います。 3.11以来、なにかの拍子にこの地球儀の、三陸の、リアス式海岸を指でなぞることがあります。 あの日、東北を襲った津波の最大波高は、20メートルとも30メートルともいわれています。けれども、いくら息を殺して地球儀をなぞってみたところで、波の高さを指先で感じることはできない。マグニチュード 9.0によって揺さぶられた大地のうねりも、指先に伝わることはない。しんと静まり返った部屋に、くすんだ青い地球儀がぽつんとあるだけだ。つ…

  • バスも飛行機も三輪車も

    バンドの「スーパーカー」が好きで、作家の中上健次が好き。 両者をご存知の方なら、おわかりになると思うのですが、この二組を乗り物にたとえるなら、飛行機と路線バスのような関係で、一見するとどこにも共通点が見当たらない。僕の場合、一事が万事この調子で、ひょっとしたらみなさんもそうなのかな、と思っています。 つまり、ひとは、バスも飛行機も大好きで、そこに三輪車やら寝台列車が割り込むことも十分に起こりうる。 人生の目的は、などと大げさなことを言うつもりはないのですが、そこになにか「意味のようなもの」があるとしたなら、バラバラな好きな乗り物たちの「目的地」、それも「共通の」目的地をさがすことなのかな、と思…

  • 15歳の君へ

    15歳の自分。あの時にタイムリープして、自分が自分に会いにいく。 ドアを薄く開け、僕は中を覗き込んだ。「彼」は自室で、ストーンズを聴きながら、サッカーのスパイクを磨いている。新聞紙の上には、右のスパイクと二足分のシューレース。小刻みに肩を揺らしながら、シューズについた泥をブラシで落としている。夏だ。もうすぐ、新人戦が始まるのだろう。 防災無線から「夕焼け小焼け」が流れてきた。「僕」は、うっすらとオレンジ色に染まった部屋のドアをそっと閉める。彼の、真っ直ぐで、希望だけが支配をしている瞳を見ることに、これ以上は耐えられなくなったから。 もし、生まれ変わることができたとしても、僕はおそらく同じような…

  • ブランコをこぐ少女

    かれこれ15年以上前の話です。雑誌『WIRD 日本語版』にこんなインタビュー記事が掲載されていました。取材に答えていたのは、孫正義氏です。 記者の「なぜあなたは、それほどまでに夢中で仕事をしているのか」という問いかけに、彼はこんな風に答えていました。 「この地球のどこか遠くの国で、見知らぬ女の子が、風に吹かれながらブランコを漕いでいる姿を想像してみてください。僕は、その子のために仕事をしているのです」 古い話の上、雑誌は手元にないので、記憶をたよりに書き起こしました。細かな部分は、違っていると思います。けれども、そのときに感じた「えっ!?」という狐につままれたような感覚は、いまでも、鮮明におぼ…

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