スズマル さん プロフィール

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スズマルさん: Dulce Noche -珠洲丸の甘い夜-
ハンドル名スズマル さん
ブログタイトルDulce Noche -珠洲丸の甘い夜-
ブログURLhttp://moonsuzumaru.blog.fc2.com/
サイト紹介文小説サイト『アルファポリス』にて珠洲丸名義で色々書いています。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供828回 / 365日(平均15.9回/週) - 参加 2016/09/03 12:33

スズマル さんのブログ記事

  • 決着
  • 「挨拶に来ていたんだよ。お世話になる病院だし」 嘉納を見ると、困ったような笑みを浮かべている。 その表情はとても嘘をついているようには見えなかった。 上条病院の敷地内には、テラス席があるカフェテリアが併設されている。その奥には職員専用の食堂があって、外部の人間は立ち入ることを許されていない。そこで亜紀は嘉納とテーブルを挟んで向かい合っていた。 ミラーガラスになっている窓の向こうには、病院の正面玄関 [続きを読む]
  • 05
  •  リビングの中央にある黄色いソファの後ろに、歩は縄の塊をそのまま置いた。 その後ろを追いかけるようにして、男が器用に二つ同時に運んでいる。 白い手ぬぐいを頭に巻いている男を見ていると、それに気が付いたのか怪訝そうな顔して男が顔を上げた。「なんだ?」「ねえ、なんであんたがここにいて、縄の塊を部屋に置いているのよ。意味が分からないわ」 歩が厳しい口ぶりで一つ一つ言葉を区切りながら問いただす。 だが男は [続きを読む]
  • 04
  • 「来栖先生」 それまで全ての感覚が空気に溶けてしまい、真っ白になっていた世界に急に色が入り込む。弾力のあるヨガマットの感触が背中や尻に伝ってきた。空気の緩やかな揺れを肌に感じる。 歩は息を深く吸い込みながら瞼をゆっくり開くと、目に入ったものすべてが輪郭をはっきり描いている。それにわずかではあるが先ほどよりくっきり見えた。 それまであお向けにさせていた体を、歩はゆっくり起こした。大きめの黒いタンクト [続きを読む]
  • 忍び寄る不安
  •  嘉納と再会したその数日後、まるで示し合わせたかのように異動の知らせが回ってきた。それには彼の言葉を裏付けるような異動内容が書かれており、亜紀はそれを眺めながら沈んだ表情でため息をつく。 どんなことが待ち受けていようとも、和明を思う気持ちは揺るがない。はずなのに、どうしてか不安になる。「年明けから同僚になる。よろしく、亜紀」 嘉納からそう告げられたとき、頭の中が真っ白になっていた。予期せぬ言葉が可 [続きを読む]
  • 03
  •  緩やかに意識が浮きあがり、それに伴い感覚もゆっくりと戻ってきた。 シーツの感触が肌にしっくり馴染んでいないことに気が付き、歩はその触感を確かめる。 もぞもぞと手のひらと足を動かしてみるが、明らかにふだんのものとは異なっていた。 肩に触れている毛布の肌触りも、いつも使っているものではない。マットレスの硬さも違っている。 それに匂いだってそうだった。いつも使っている柔軟剤の匂いに似てはいるけれど、や [続きを読む]
  • 再会
  •  同窓会が行われる場所は、上条病院から少し離れた場所にある。その日亜紀は仕事を早めに切り上げ、その場所へ向かうことにした。といっても腕時計を見ると、既に始まっている時間になっている。亜紀は帰り支度を済ませると、足早に詰め所を立ち去ることにした。 病院から歩道に出ると、すっかり暗くなっていた。同じ時間でも盛夏の頃は昼の熱気が残っていたのに、今は肌寒く感じる。ツイードのワンピースに柔らかな素材のトレン [続きを読む]
  • 更新おしらせとかいろいろ
  • いつも拙作をお読みいただきありがとうございます。本日、イヴのめざめと鈴のアンクレット、眠れぬ夜を更新しました。これから引き続き鈴のアンクレットの立花視点を書く予定です。この作品、何度も改稿してしまい、ご迷惑をおかけしております><鈴のアンクレットは、ムーンの2017年の姫はじめ企画で投稿した作品です。「TLは女性の夢と希望が詰まった作品のジャンル」というイメージが強いですし、実際そういうものだと私は認識 [続きを読む]
  • 第三話
  •  掠れた女の息遣い。鼻にかかったような甘い声。そして腰を柔らかく挟まれている。 体の下には温かい「何か」があって、それはしっとりと濡れていた。 続いて感じたのは、気配だ。それに気づいたあと急に視界が開けてきて、目の前に白くぼんやりとしたものが見えた。目を凝らしているうちに徐々にその輪郭が浮き上がってきたけれど、女であることしか分からない。 そして汗と女の匂い。男の本能を揺さぶるような匂いだ。 それ [続きを読む]
  • 第二話
  • 「すまない」 その言葉を恋人に告げたとき、彼女は涙を流しうな垂れた。その姿を見ていられなかったけれど、これが二人の間に存在する現実だ。それから目を背けることなどできなかった。 泣きじゃくる彼女を、抱きしめてやりたいけれどそれができなかった。彼女が望むものを与えてやれない罪悪感が、見えない鎖となって体を縛り付けている。一歩も近づくことができなくて、ただ見ているだけしかできずにいた。 それまで泣いてい [続きを読む]
  • 第一話
  • 「よいお年を、ね。今日はお疲れ様でした」 別れの言葉を告げると、彼女はゆっくりと頭を下げた。彼女の表情を隠すように、長い髪が華奢な肩からこぼれ落ちる。それを小さな耳に掛けながら、顔を上げた彼女の表情はとても暗かった。伏し目がちに涙をこらえている姿を見たとき、胸に痛みが走った。 そして目の前から立ち去っていく彼女を、追いかけたくて仕方がなかった。だがそれはできなかった。それをしてしまえば、きっと俺も [続きを読む]
  • 第五話
  •  ホテルをあとにして向かった先は、俗に言うタワーマンションだった。 最新式のセキュリティシステムが設置されたタワーマンションは、天にも届きそうなほど高くそそり立っている。柔らかな色調のエントランスを抜けてエレベーターに乗り込むと、扉が閉じる間もなく壁に押し付けられた。 すぐに彼の顔が迫ってきて、キスを期待して目を閉じた。 だがいつまで経っても、彼は唇に触れてこなかった。 それに気づいてそうっと瞼を [続きを読む]
  • 第四話
  •  意見交換が終わったのは、16時になろうとしていたときだった。 田沢さんが話題を投げて、それに彼が相づちを打ちながら答えたあと私が話すことになっていたのだが、何を話していたのかほとんど記憶にない。 だけれど隣に座っている立花先生から目が離せずにいて、それに気がついた彼に見つめ返されて、恥ずかしさから顔を俯かせていたことだけはしっかり覚えている。 話をしていた最中は何も感じなかったが、終わった瞬間どっ [続きを読む]
  • 第三話
  •  田沢さんは話のほとんどを、立花先生のことに費やしていた。 その話を聞くたびに、なぜだか職場にいる課長たちの顔が頭に浮かんできてしまい、先生本人に会う前から知り合いのような気さえし始めていた。さすがに課長たちとセックスについて話をしたことはないけれど、忘年会や暑気払いのたびにそんな話を耳にしてしまうこともある。 そういった話を聞くたび嫌な気分になってくる。知り合いのそういった事情は、なるべくなら知 [続きを読む]
  • 第二話
  •  クリスマスイブが間近に迫る街並みは、華やかなイルミネーションで飾り立てられている。 それを眺めながら歩道を歩いていると冷たく乾いた風が吹き、思わずコートの襟を立てた。 約束の時間は13時、念のためスマホに転送したメールを見てみるが間違いない。 住んでいるアパートから待ち合わせ場所でもあるそのホテルまで歩けば大変な距離だが、JRと地下鉄を乗り継げば約30分と言ったところか。その時間を頭に入れて身支度を始 [続きを読む]
  • 第一話
  • 『書籍化打診につきまして』 一通のメールが届いた日から、それまでの静かな毎日は一変した。 届いたメールに書かれていた内容を見ると、そこには信じられないことが書かれている。それを目にしたとき何も考えられなくなって、どうしたらいいのか分からなくなった。 市役所で働くようになってから、同じことの繰り返しのような日々を送っているけれど、刺激的な日々を心のどこかで待ち望んでいた。 そんなある日届いたメールは [続きを読む]
  • 02
  •  歩が落ち着きを取り戻したのは、もう夜も更けようかという頃だった。 空気に溶けてしまいそうなほど優しい歌声が、姉妹だけしかいない店内に流れている。 歩はそれを聞きながら、妹が作ったイチジクのワイン煮を食べていた。 実家にいた頃は碌に家事もしなかった妹が、仕事とはいえ手の込んだ料理を作っている事実を姉は舌でもって知ることになった。煮詰めたワインのジュレに包まれたイチジクが、ゴマのプリンとともにガラス [続きを読む]
  • 新たな道筋
  •  澄んだ青を水で滲ませたような空に薄い雲が広がっている。 近頃では肌寒さを感じることも増えてきて、秋の訪れを感じさせた。 亜紀は病院の中庭にあるベンチに腰掛けながら、ぼんやりと秋空を眺めている。風に吹かれ流れる薄い雲を見ていると、それが我が身のように感じた。幼い頃から祖父母によって育てられ、最初に教えられたのは感情を表に出してはいけないということだった。考えていることを表に出してしまったら、すぐさ [続きを読む]
  • 01
  • 「手作り餃子で、浮気が分かってしまうとはね……」  歩は自嘲気味な笑みを浮かべた。可愛いというよりきれいが似合う女の顔は、すっかり|愁《うれ》いを帯びている。肉感的な唇から漏れるため息は随分と湿っぽい。猫のような瞳に涙を滲ませ、長いまつ毛がわずかに濡れていた。 彼女の視線の先にはライトの光を浴びたスマホが置かれていて、その横にあるロックグラスの中には酒が残ったままになっている。 歩は椅子の背もたれに [続きを読む]
  • 00
  •  神がつくりたもうたエデンの園には、アダムとイヴが住んでいたと言われている。 だがイヴの前に妻がいたことを知っているものは、案外と少ない。 最初の妻リリスは、夫であるアダムに「対等な関係」を求めたと言われている。『私は下に横たわりたくない』とリリスは言った。だがアダムはそれを許さなかった。 同じ土から生まれたはずなのに、なぜ対等じゃないのか。 それに疑念を抱いたリリスは、自らアダムのもとを去ったと [続きを読む]
  • イヴのめざめ -Innocent Lust-
  • 同棲していた恋人から送られたメールで彼の浮気が発覚し、別れた挙句に住んでいたマンションから出ることになってしまった歩。浮気されたことに怒りを感じつつも、それをぶつけられず妹の恋人が経営するバーで酒を煽っていた。すると、そこに一人の男が現れて……。普段は関わり合うことが無い世界に住むその男から渡されたのは、淫靡で官能的な世界への招待状だった。 [続きを読む]
  • イヴのめざめ -Innocent Lust-
  • 同棲していた恋人から送られたメールで彼の浮気が発覚し、別れた挙句に住んでいたマンションから出ることになってしまった歩。浮気されたことに怒りを感じつつも、それをぶつけられず妹の恋人が経営するバーで酒を煽っていた。すると、そこに一人の男が現れて……。普段は関わり合うことが無い世界に住むその男から渡されたのは、淫靡で官能的な世界への招待状だった。【らぶドロップス恋愛小説コンテスト】エントリ作品《序 章》 [続きを読む]
  • 更新おしらせとかいろいろ
  • いつも拙作をお読みいただきありがとうございます。お礼の時効と新作を上げさせていただきました。【イヴのめざめ -Innocent Lust-】同棲していた恋人から送られたメールで彼の浮気が発覚し、別れた挙句に住んでいたマンションから出ることになってしまった歩。浮気されたことに怒りを感じつつも、それをぶつけられず妹の恋人が経営するバーで酒を煽っていた。すると、そこに一人の男が現れて……。普段は関わり合うことが無い世界 [続きを読む]
  • 何もないわけがないでしょう?
  • 「春季、ねえ、春季ってば!」 親友の声に春季は現実に引き戻された。隣から強い口調で話しかける祥子の顔を見れば、人目を引く顔立ちを心配そうにこわばらせている。視線を感じテーブルを挟んだ向かいにいる友人の顔を見ると、こちらはあきれ果てたような顔をしていた。大学時代からの友人二人にじっと見つめられ、ぼんやりとしていたことに気付き苦笑いしか出てこない。春季は小さなため息をこぼし、わずかに顔を俯かせた。 オ [続きを読む]
  • 魔女の血族
  • 【書籍情報】題名The Book of Life(原題)作者:デボラ・ハークネス刊行:2014年(米国)/2015年(日本)《あらすじ》(ヴィレッジブックスHPより引用)[上巻]全米ベストセラー初登場1位!16世紀エリザベス朝ロンドンへのタイムウォークを経て、幻の写本の恐るべき秘密に触れたダイアナとマシュー。現代へ戻り愛する者の非業の死を知らされた二人は、迫り来る戦いのため写本に隠されたクリーチャーの種の起源を読み解くべく、イェール大学 [続きを読む]
  • 魔女の契り
  • 【書籍情報】題名:Shadow of Night(原題)作者:デボラ・ハークネス刊行:2012年(米国)/2013年(日本)《あらすじ》(ヴィレッジブックスHPより引用)[上巻]『魔女の目覚め』に続く、全世界待望のシリーズ第二弾!魔女の家系に生まれながら、魔法を否定して生きてきた歴史学者ダイアナ。だが一冊の謎に包まれた写本と天才科学者のヴァンパイア、マシューとの出会いが彼女の運命を一変させる。ふたりを結びつける強い絆、さらにダイアナ [続きを読む]