早朝玄関先に出ると冷たい空気が私の身を包み 私は羽織った厚手のカーディガンの両腕を自分を抱くように握った。 4月の初め。 もう春なのだがここ北海道はまだまだス…
その後ニトリから支払いの催促がないところをみると夫は支払いに行ったらしい。 どうせ行かなくてはならないのだから初めからすんなり行けばいいものを。 その時の私は…
今から18年前長男悠真が生まれたときのこと。 私は予定日より2週間早く破水し初めての出産となった。 お産自体は安産でもなく難産でもなくまずは無事に生まれてくれ…
夫が義父から浅見設計事務所を受け継いで2か月が過ぎたころ。 夫にはどうしても入りたい会があった。 それは市内の優良企業の社長が集まる社長会「〇〇市道光会」だっ…
ようやく夫が電話口に出た。 「麗子です……」 「なんだよ」 その一言を聞いただけで私は息が苦しくなった。 「ファックス見てくれましたよね」 「だから、なんだよ…
夫に支払いを頼んでから3日が過ぎた昼。 携帯が鳴り私はいやな予感がした。 「こちらニトリの〇〇店ですが」 嫌な予感はさらに強くなる。 「…はい。お世話になって…
私には嫌な仕事が残っている。 それは夫に連絡を取りこの度のニトリでの買い物の代金の支払いに行かせること。 進学にかかる費用は出すと調停の場で約束した夫。 夫側…
美織の高校進学の準備はだいたいのところは心得ている。 悠真の時で経験済みだから。 でも我が子の大学進学の準備に関してはほとんどのことがわかっていない。 普通な…
調停のことは心配だ。 あの夫が関わっていてなんでもなく済むはずがないと思うからだ。 正直心配でしょうがない。 しかし現実にはやらなくてはならないことがたくさん…
不倫がばれた夫が突然家を出て行ってから一年半。 私にとっては怒涛の一年半だった。 たくさん傷つきたくさん泣いて迷って落ち込んでそんな一年半だった。 そんな中で…
昨夜の夢はショックだった。 私があんな夢を見るなんて……。 怖がりでビビりで暴力なんかとは程遠い今までの私の人生。 そんな私があんな恐ろしい夢を見るなんて。 …
長男悠真が念願の大学に合格した。 夫不在で心が明るくなるような話題がずっとなかった我が家に訪れた久しぶりの良い知らせだった。 その夜ささやかながらも手作りの夕…
佐伯先輩から電話が来たのは翌日のことだった。 「はい、浅見です」 「麗子、おれ」 「先輩、なにかわかった?」 「実は健太郎にクラウン売ったデイーラーが俺の知り…
美加の新車真っ赤なクラウンがなぜ頻繁に家の前を通るのかそれが知りたくて私は大学の先輩の佐伯に再び電話したのだった。 「麗子、久しぶりだな。忙しくてなかなか連絡…
「あの車最近よく見かけるのよね」 お向かいの奥さんが何の気なしにそう言った言葉が私は妙に気になった。 そして昨晩不倫相手の美加の家に私は一人向かった。 私の勘…
家の前を猛スピードで走って行った真っ赤なクラウン。 家の前の道はこの住宅街の住人かここに用事がある人しか通らないような道。 「最近あの車をよく見かける」お向か…
「大丈夫。麗子は精神的に追い詰めれば勝手に逃げていなくなるから」 不倫相手美加は夫、健太郎にそう言った。 その美加の狙い通りに私は十分に夫に精神的に追い詰めら…
悠真大学合格の夜私の元に届いたものは夫が起こした婚姻費用減額調停の期日の案内状だった。 私は私の意思とは全く関係なく夫によってまた法の場へ引きずり出されること…
なぜ よりによって今夜なのだろう。 今夜は悠真の大学合格の輝かしい夜で 最近では数少ないささやかだが家族で喜びを分かち合う大事な夜だったのに…。 「…
悠真が大学に合格した。 第一志望の大学に合格した。 そんな嬉しい知らせが私の元に届いたのはその日の昼のことだった。 夫が不倫などしなければ 我が家が昔通りの我…
美織の高校受験の翌日。 今日は悠真の大学受験の合格発表の日。 悠真の高校はクラスの雄志で学校に集まりみんなでホームページで合否を確認するのだそうだ。 「ねえ、…
悠真が高校に入ってすぐのこと。 高校を合格して悠真は初めて携帯電話を手にした。 中学同様高校でもサッカー部に入り毎日部活に明け暮れる日々だった。 やはり中学時…
長男、悠真が受験のため夫と2人東京に行ってから2週間。 今日は長女、美織の高校受験だ。 美織の希望する高校は家から自転車で5分。 子供のころから見慣れたその校…
あれは長男を出産する予定日の2週間前のことだった。 その頃私たちは浅見設計事務所のすぐ近くの市営アパートで二人暮らしだった。 初めての妊娠で初めてのつわりで間…
長女、美織の高校受験が近づいている。 そこで気にかかるのは長男の受験の時と同じ願書の保護者の氏名住所欄。 私は美織の中学に相談に行き美織の先生から願書には家族…
翌日私は美織の中学にいた。 職員室に行くと担任の中年男性の先生が進路相談室に案内してくれた。 「浅見さん今日はどのようなご相談でしょうか」 「あの実は…ちょっ…
長男、悠真の大学受験そして高校の卒業式が終わった。 しかし私にはほっとしている暇はない。 我が家にはもう一人の受験生がいるのだから。 それは長女、美織中学3年…
今日は長男悠真の高校の卒業式。 この間入学したと思ったのに… そんな言葉をよく聞くがこの日を迎え私自身もその意味を体感している。 特に夫が家を出て行った悠真高…
夫と悠真東京への二人旅。 それは悠真の大学受験とアパートの契約のための旅。 私がどんなアパートを借りようとしているのか見るためにどうしても俺が行くと言う夫。 …
いよいよ長男悠真が夫と2人東京へと出発した。 大学受験と悠真のアパートの契約のために。 夫はそんな面倒なことはたとえ自分の子供のためであっても絶対にしない人。…
いよいよだ。 いよいよこの日が来てしまった。 長男悠真は明日の大学受験を控えて今日、夫と二人で東京へ向かう。 家を出て美加の家に転がり込んだ直後「俺は子供たち…
夫はなぜこんなにも子供たちに興味がないのか。 不倫して奥さんに冷たくなると同時に子供達にも冷たくなる男性の話は何度も聞いたことがある。 しかし夫の関しては子供…
夫はなぜ受験6日前になって突然アパートの契約は自分が内見しないと認めないなんて言ってきたんだろう。 電話では「そのアパートでいい」と言っていたのに。 私は漠然…
その夜。 夕飯後の悠真を私は寝室に呼んだ。 「お母さん、どうしたの?」 「うん、ねえ。受験の準備は出来た?」 「できたよ。着替えやなんかももうトランクに詰めた…
悠真の大学受験の6日前突然、夫の弁護士から電話が来た。 今さらなに? 弁護士の話では私がどんなアパートを契約するのか自分で見ないと許可できないと言ってきたのだ…
大学の2次試験まであと6日。 受験時のホテルは大学周辺のホテルは取れなくて電車を使わなくてはならず乗り換えもある。 時間にすれば大したことはないのだが。 都会…
二人が知り合った大学時代から夫は友人が少ない人だった。 義父の事務所に就職してからはその少ない友人とも疎遠になり友と呼べる人がいなくなった。 誰かに飲みに誘わ…
翌日になっても夫からの連絡はなかった。 「それでいいよ」 その一言がもらえればそれだけでいいのに。 私がわざと高い物件を借り少しでも夫の負担を増やしてやろうな…
悠真の大学のアパートについて私は夫にメールをした。 「悠真の大学のアパート探しの件ですが安くて良い物件が見つかりました。1DK〇万円です。仮押さえできるので今…
翌日悠真の友達の和也くんのお母さんと話をした。 「うちはね、こんな良い物件押さえていた方がいいって旦那ともそういう話になって。だからね取り敢えず仮押さえしよう…
夫が家を出る前のこと。 その頃はまだ私は夫の不倫を少しも疑ってもいなかった。 夫が所長になりたてで生活も変わり夫も私も初めてづくしになにかと気ぜわしい日々だっ…
最後の調停で夫は悠真の大学進学の費用を支払うと約束した。 こちらから一覧にしたもの全て進学費用として認めると。 それが私がICレコーダーを切り札として出したか…
長い間私を悩ませた長男悠真の進学費用問題。 夫から起こされた離婚調停の場を借りて私はそれを解決することができた。 最善の結果で。 夫の不倫騒動が起きてからこん…
私が今日目標としてきたもの全て夫に了解させることができた。 「それでは休憩を挟んで裁判官同席の元お話がありますので一旦待合室の方でお待ちください」 調停委員が…
「はい…わかりました」 やった。 夫がやっと出すと言った。 この一言を聞くために私はどれだけ気をもみながら長い時間待ったことだろう。 これで悠真を希望通りの大…
「旦那さんお子さんと進学の約束をされたというのは本当なんですか?」調停委員が再度聞く。 調停委員の顔つきから裁判所側ではそこが大事な点らしい。 「旦那さん?」…
調停は夫とは別室で実際に顔を合わせなくてもいいと聞いていた。 しかしいつまでたってもらちが明かない夫の態度に急遽体面で調停が行われることになった。 まさか体面…
つい勢いで「夫と対面でお願いします」と言ってしまった。 考えただけでも息が詰まる。 できればそんな恐ろしいことはしたくない。 不倫してからの夫は暴言、無視、敬…
待合室に戻っても私の怒りは治まらなかった。 いったい実の息子をどう思っているのか。 なぜ実の息子の将来を閉ざすようなことを平気で出来るのか。 無いお金を出せと…
いよいよ3回目の調停の開始時刻。 まずは夫側が調停室に呼ばれた。 私は相手方待合室で呼ばれるのを待つ。 「麗子さん、ところで長男さんのセンター試験はいかがでし…
大学入試センター試験の二日前。 焦る私はたまらず夫に電話をした。 お互いに代理人を立ててからの直接の連絡は基本的にルール違反。 しかしもうそんなことは言ってい…
それは3回目の調停の前日のこと。 夫の不倫相手の美加のことを調べてくれた佐伯先輩から電話があった。 久しぶりの電話だった。 「麗子、長男受験だったよな確か」と…
久しぶりに電話で夫と話した日。私は夫が子供達のことをもうなんとも思っていないということを思い知った。 できれば話すことで私は夫に父親としての気持ちを思い出して…
なんとしても子供だけは私が守る。 私は弁護士から言われていた一つの決めごとを初めて破ることを決めた。 通常代理人として弁護士を立て調停をしている間は直接本…
長男悠真の大学センター試験まで一か月を切ってしまった。 その後対処するといった裁判所からも結城弁護士からも連絡は来ていない。 結城弁護士は夫の弁護士と水面下で…
翌日夕方悠真が丁度学校を出る頃私は高校の職員室にいた。 悠真の担任の先生は40代男性で中堅どころ良い先生だと人気の先生だった。 「浅見さんそれじゃああちらの進…
唯一我が家の現状を知るママ友に願書の件はきちんと担任の先生に聞いた方がいいと勧められた。 そのほうがいいと私も一度は納得したもののまだ迷っていた。 担任の先生…
翌日私はある人に電話をした。 昨年市議会議員の事務所で私が夫と義父と女の家族に吊し上げにあった際その事務所でばったり会ったママ友だった。 『女宅へ(1)』…
今年もまた年越しの時期がやってくる。 昨年の年の瀬夫を我が家に呼んで久しぶりの家族5人での年越しをしようと試みた。 『夫来る』約束の日の夕方夫が9ヶ月ぶりに…
今年の夏のこと私が我が家に夫を呼び子供達と進学について話合いを持たせた。 進学費用のことが心配だったからだ。 『夫来る』約束の日の夕方夫が9ヶ月ぶりに我が家…
私がこの話を聞いたのは昨年夫が家を出て行った年の暮れのことだった。 当時私の頼みを聞いて子供達のために夫はその年の大晦日に久しぶりに我が家に顔を出した。 突然…
12月。3回目の調停まであと2週間。 私のもとに結城弁護士からの電話。 話によると内々に担当裁判官と夫の弁護士と話をしてくれたらしい。 私は知らなかったがそう…
2回目の離婚調停はまさかの夫の仮病欠席で終わった。 そこまでしてお金を出すと言いたくないんだ。 私のためならともかく子供の進学費用なのに。 不倫する前の夫は家…
二回目の離婚調停。 大学進学の費用について待ちに待った夫からの回答が来る約束の日。 窓の外は初冬の木枯らしが吹いていた。 相手方待合室に結城弁護士と私。 定刻…
一回目の離婚調停から丁度一ヶ月。 今日は2回目の離婚調停の日だった。 当然子供達には父と母が離婚調停をしていることなど一言も伝えていない。 そればかりか夫が家…
二回目の離婚調停を間近に控えたある日のことだった。 今日も私はいつものように子供たちの朝食を作り弁当を作り子供たちを学校に送り出す。 夫が家を出て不倫相手の女…
そんなことあるかなきっとそう思われるだろが本当の話だ。 「麗子お前が浅見設計事務所を継いで所長になってくれ」 私は夫が事務所を継ぐ一年前義父からそう打診を受け…
なぜ私は愛していたはずの夫と今こうして戦っているのだろう。 私はただどこにでもいる父とどこにでもいる母とでどこにでもある平凡な家庭を築きそこで普通に子供たちを…
人間見知らぬ人がいる公共の場で人格を否定されることなどまずない。 しかも嘘八百並べ立てられて人としての尊厳を傷付けられることなんてそうはない。 しかし私の離婚…
相手方待合室に戻った私は結城弁護士にお礼を言った。 「先生、ありがとうございました。私、つい悔しくて感情的になってしまいそうになりました。先生がおっしゃってく…
夫が主張しているという私の悪妻ぶりの数々が披露され私は怒りと悔しさでいっぱいだった。 「奥さん旦那さんも誠意を見せるとおっしゃっているわけだし少し冷静に考えて…
「ご主人はこのようにおっしゃっていますよ。旦那さんずいぶんと長いこと我慢して生活していらしたみたいですが」と男の調停委員。 え?信じるんですか?そんな嘘を? …
悪びれることもなく裁判所の離婚調停でありもしない嘘をつく夫に私は驚いた。 保身のための小さな嘘ならともかく事実とは真逆の嘘。 その場には同席していないものの平…
午前9時離婚調停第一回目の開始時間。 私が別室調停を望んだため初めに裁判官から行われる調停に関する説明は夫とは別々に聞くことになった。 申立人である先方が先に…
「麗子さん、大丈夫ですか?具合悪いですか?」と結城弁護士。 「はい…大丈夫です。すみません。夫と同じ建物にいると思うだけで怖くて…情けないですね。もっとしっか…
私は白のワイシャツにグレーのスーツに着替え髪を後ろでぎゅっと結んだ。 カバンにはノートとペンそして裁判所からの書類。 今まで一度も行ったことがない裁判所。 場…
10月某日とても北風が冷たい朝だった。 夫が家を出て不倫相手の家に転がり込んでから間もなく一年。 私はいつも通りに家事をこなし子供達を学校に送り出した。 今日…
私が集めた証拠品を持って弁護士事務所を訪れてから数日後結城弁護士から電話があった。 「先生いつもお世話になってます…」 「麗子さん先日お預かりした証拠品ですが…
私が結城弁護士事務所に持参した証拠品の数々。 その他には夫のクレジットカード利用明細書。夫と私の20年間の給料明細書。夫と私の20年間のタイムカードのコピー。…
「麗子さん先日もお話した通り今回の調停では麗子さんに離婚の意思がない限り離婚にはまずならないので心配しないでください」 「はい」 「あくまでこちらの目的はお子…
その日私は結城美佐子弁護士の事務所にいた。 先日正式に離婚調停での弁護を依頼した私は諸々の書類と印鑑そして数々の証拠品を持って調停の打ち合わせに来たのだ。 た…
それはまだ私たちが普通の夫婦だった頃のこと。 とある取引会社の創業記念のお祝いの席に二人して招待していただいたことがあった。 私たちはいつも裏方でそういった席…
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