桜部さく さん プロフィール

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桜部さくさん: 時々、だんだん
ハンドル名桜部さく さん
ブログタイトル時々、だんだん
ブログURLhttp://sakusakurabe.blog.fc2.com/
サイト紹介文オリジナルBL小説を載せています。時々R18表現あり。長編がメインです。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供93回 / 365日(平均1.8回/週) - 参加 2016/11/24 09:14

桜部さく さんのブログ記事

  • 近衛の華32
  •  その大切な物を円卓に置いて、イヴァンはクラウスに抱きついた。 喜びと感謝の気持ちを込めて唇を重ねると、かじりつくようなくちづけが返ってきた。細い背を情熱的な手つきで撫でながら、なんどか角度を変えて唇を味わい、クラウスはやっとくちづけを解いた。「俺の近衛兵になってくれるか?」 懇願するように額を重ねて訊ねられ、イヴァンの目元が熱くなった。こんなにも求めてくれるひとは他にいない。世界中の誰よりも愛し [続きを読む]
  • 近衛の華31
  •  それから数週間は、慌ただしい日々だった。といっても、忙しく動き回っているのはクラウスで、イヴァンは中継ぎ役として任されていたとおり、ハルバレクの行政官に同行して、農民たちのところへ行き、収穫量を調べるくらいだ。 クラウスが新たな領主になれば、領民が苦しむことはないはず。そう、戦時中にも思ったけれど、イヴァンの予想どおり、クラウスは領民の今までを尊重して、税率や行事などはバートラン家が領主だった頃 [続きを読む]
  • 近衛の華30
  •  領主として治めていた地がハルバレク領土となって、二か月ほどが経った。 温暖な地域だから雪は降らないけれど、冬がやってきたのは、手袋をせずに馬に乗れないほど冷たい空気が教えてくれる。 ロエベル帝国軍近衛副隊長だったイヴァンは、領民の審判により生かされたものの、領主としての地位は奪われてしまった。今は、ハルバレクの準市民として、ハルバレクから派遣された占領指揮官の下で、もとは帝国であった新たなハルバ [続きを読む]
  • 近衛の華29
  • 「うまくできるかわかりませんが」 そう断わりつつも、ゆっくり腰を下ろしていく。途端に、孔が広がる淫猥な感覚に脚の力を奪われ、自重によって一気にクラウスを銜えてしまった。「ああっ! ――あっ……」 さきほど奥深くまで愛された中は難なく昂ぶりを飲み込んだけれど、平気でなかったのはイヴァンだった。鮮烈な刺激によって、小さく爆ぜてしまった。「うぅ……」 強すぎた快感と羞恥によって涙目になったイヴァンの唇を [続きを読む]
  • 近衛の華28
  • 「せっかく誰にも触られたことのない綺麗な色をしているのだから、そのままとっておいてくれないか」 興奮によって先端がむき出しになった中心は色白で、先にいくほど桃色が濃くなる。淡い色をそこまで気に入られたことに驚いてから、あることを思い出した。 中に埋める指が増やされて、淫靡な圧迫感に眉を寄せながら、一つの記憶に羞恥を覚えて唇を噛んだ。すると、頭の中を覗いたかのように、クラウスに訊かれた。「誰にも触ら [続きを読む]
  • 近衛の華27
  •  日が沈みきってから、城主の部屋に一人ぶんの夕食が運ばれてきた。クラウスは戻ってこず、落ち着かなくて夕食はひどく味気なかった。「最後の晩餐かもしれないのに……」 独り言が零れ、自嘲しながら一杯だけ与えられた白の葡萄酒を口にしたとき、クラウスが部屋に入ってきた。「入浴のための湯を用意させたぞ。機嫌を直してくれ」 仕方なさそうに笑いながら言われ、イヴァンは呆然とした。感傷に浸ってはいたが、機嫌を悪くし [続きを読む]
  • 近衛の華26
  • 「俺たち陸軍の手で王都侵略を遂げたかったのは、故郷と同胞のこともあるが、イヴァンを手に入れたいと思っていたからだ。まさかその本人に苦戦を強いられるとは思ってもみなかったが……」「私を?」「ああ、そうだ。帝国王都を制圧できれば、この領地を報酬として手に入れるつもりだった。それができれば、お前の処遇も俺が決められた」「私はこうして連れ戻されました。それでは、私はあなたの支配下にあることにはならないので [続きを読む]
  • 近衛の華25
  • 「なにをしている」 扉の方から声が聞こえた。兵士は一瞬緊張したが、声をかけてきた者を見て小さく笑った。「こいつの後ろ姿が女みたいでな。暇つぶしをするところだった。お前もどうだ」 声をかけてきた男がこちらに近づいてきた。しばらく黙っていた男だが、イヴァンの金髪を乱暴に掴んで引き上げた。「痛いっ!」「後ろ姿どころか、この長い金髪と顔も女みたいだ。元領主が美青年だとはきいていたが、これは確かに暇つぶしを [続きを読む]
  • 近衛の華24
  •  協定が結ばれ、戦争は終わった。その翌日には、奪われた領土の領主たちは、ハルバレクに渡ることになっている。 イヴァンを含め、領地を占領された領主たちは王宮に部屋を与えられていた。皆王都内にも屋敷を持っていたが、屋敷とそこにある調度品も金品も、資産は全て帝国に残し、ハルバレクに渡る。これもイヴァンの提案によるものだった。ロエベル帝国で所有していた富は帝国に残す。ハルバレクに渡すのは領土と領主の身だけ [続きを読む]
  • 近衛の華23
  •  同日中にハルバレクへ停戦交渉の文が渡り、三日後に協議が行われることになった。そのあいだ、ジャン十五世とイヴァンたちは十とおりの譲歩案を揃えた。 昔に国土としていた北の地を要求される可能性が最も高いと踏んではいる。が、イヴァンの領地も含め、西の実り多い農地を要求された場合の策、その他あらゆる要求に対応できるよう、交渉中に策を練り直すための休憩の挟み方まで、準備を整えた。 交渉の場は、北方にある王家 [続きを読む]
  • 近衛の華22
  •  停戦交渉の旨が三通の文に記された。一通はハルバレク国王宛てに、あと二通は戦線の代表者に宛てたものだ。「西の戦線には、私が文を届けに行きます」 イヴァンが立ち上がると、ジャン十五世は不安げな表情で止めようとする。「戦場には行かないほうがいい。相手が攻撃を止めるとは限っていないだろう」 ジャン十五世の言うとおり、文を渡すために敵陣へ向かうのは危険だ。けれど、イヴァンはどうしても西の戦線に行きたい。  [続きを読む]
  • 近衛の華21
  •  ロエベル帝国の王都と周辺地域を護る砦であるクレランの防壁は三階構造の砦で、各階に大砲と鉄砲隊を配備し、敵の進軍を防ぐ強固な防壁だ。クラウス率いる、西から攻めてきた軍勢に応戦する、最後の砦ともいえる場所だった。 火薬を使っての爆撃を得意とする、軍事において上手のハルバレク軍に、平和に慣れた帝国軍がどこまで奮闘できるかは定かでない。 だがそこに、大雨をもたらす深い雲が現れた。恵の雨としか表しようのな [続きを読む]
  • 近衛の華20
  • 「戦況は」 ジャン十五世の問いかけに、陸軍中将が答える。状況はイヴァンの想像よりも悪く、このままでは全土をハルバレクに侵略されかねない。 地図の上には、両国の軍勢を表す駒が置かれていた。見ると、王都の周辺地域を囲むように帝国軍が配置されていた。「ハルバレク軍がどこから攻めてくるかわからないといった状況なのですか」 駐屯地のある領地がいくつも占領され、兵力の減った状態で、兵力が拡散している理由はそれ [続きを読む]
  • 近衛の華19
  •  もし国王以外の誰かがいたとしても、話の通じる相手でいてくれ。そう心の中で強く念じながら一歩踏みだすと、視界にジャン十五世の姿が飛び込んできた。「ジャン」 思わずその名を呼ぶと、ジャン十五世は驚いてイヴァンのほうを振り返った。そして、白い布を頭に被ったイヴァンを凝視してから、その正体に気づいて目を瞠った。「イヴァン!」 心の許せる相手が現れた。そう両腕を広げ歓喜しかけたジャン十五世は、なにかを思い [続きを読む]
  • 近衛の華18
  •  一人部屋に残されたイヴァンは、息が詰まるほど必死に考えを巡らせた。 このまま小城にいて、終戦の日を待つしかできないのか。自分の無力さは充分思い知らされたけれど、このままなにもせず、ただ終わりを待つだけで、本当によいのだろうか。 クラウスは、護るべきもののために戦い続ける。イヴァンの母国を、仲間を奪うために、命をかける。 それが生まれて初めて恋を覚えた相手の正義なのだ。そして [続きを読む]
  • 近衛の華17
  •  手首を引っ掛かれ、イヴァンは目を覚ました。閉めきられたままの雨戸の隙間からは、早朝の光が見える。淡い痛みを感じた手首を見ると、クラウスがそこに爪を立てていた。重なった身体は強張って、歯ぎしりと小さな呻き声がした。 顔だけで振り返ると、見ているのも苦しいほどクラウスはうなされていた。冷や汗までかいていて、不憫に思ったイヴァンはクラウスを起こそうとした。「アイド将軍、起きてください。アイド将軍」 な [続きを読む]
  • 近衛の華16
  •  自分で身を清める体力も残らないほど快楽に踊って眠りに就き、迎えた翌朝は、クラウスが寝台を抜けたときに一瞬目を開けたものの、また寝てしまった。それからしばらく経ち、喉の渇きに起こされたイヴァンは、寝室の暗さに驚いた。 まさか丸一日寝たのだろうか。それなら起き抜けから空腹に襲われそうなものなのに、欲しいのは水だけだ。わけがわからず窓の方を見ると、雨戸がすべて閉まっていた。イヴァンを休ませるためにクラ [続きを読む]
  • 近衛の華15
  •  この夜は、久しぶりに入浴することができた。湯を張り、香油を焚いて、まるで開戦前の平穏な日々が戻ってきたような心地だった。ただ一つ違うのは、クラウスが一緒に湯に浸かったことだ。イヴァンは一人で落ち着くつもりだったのに、ロエベル帝国式の入浴に興味が湧いたと、強引に入ってきたのだ。 もしかして、今夜の夕食と入浴は、ひととして敵ではないと表すための気遣いだったのだろうか。そう思ってみたが、夕食はそうであ [続きを読む]
  • 近衛の華14
  • 「あの兵が同郷の?」「ああ、そうだ」「随分若い兵ですね」 戦線に駆り出されるには少々未熟に見えたのでそう言うと、クラウスの表情が曇った。 おかしなことを言ってしまっただろうか。考えなしの言葉だったが、悪いことを言ったとは思えない。 気まずい空気を作ってしまったと心配したのに気づいたのか、クラウスは表情を正して言った。「若い兵だって戦線に立つ。だが、あの兵はあまり身体が大きくないから、よほどのことが [続きを読む]
  • 近衛の華13
  •  それから数日間、ハルバレク軍は進行しなかった。手に入れた領地を確実なものにすべく、要所に軍を配置したにとどまった。 そのあいだ、領民たちとの衝突もなかったようだ。農地を荒らさず、強奪といった悪質な真似もしない。食料は要求したようだが、領民が飢えるほどの量ではない。 まるで最初からハルバレク領土だったような空気さえ感じる気がした。イヴァンの情報源はクラウスと窓から見える景色だけだが、大きな建物に逐 [続きを読む]
  • 近衛の華12
  • 「ジャン十五世が熱を上げていると噂のお前が想像以上に美人で、顔に出てしまうのを堪えるのは大変だった。うまく隠せていたか」 そんなことを訊きながら、クラウスの大きな手がイヴァンの腰を抱き寄せる。「熱のせいでたくさん汗をかきましたから、そう近寄っては不快でしょう」 問いに答えないままそう返したイヴァンに、クラウスは口角を上げて見せる。「まだ俺の匂いが残っている気がするぞ」 昨夜は下肢を清めるだけで精一 [続きを読む]
  • 近衛の華11
  •  翌朝、目が覚めたと同時に激しい頭痛を覚えたイヴァンは、なんど試みても起き上がれなかった。身体の節々が痛んで、全身が熱くてだるい。 はっきりしない頭を働かせ、やっと熱を出していることに気づき、苦しさと情けなさにうちひしがれた。 寝返りもままならず、意識は泥に埋まったように不鮮明。なのに、熱を出した理由だけはわかった。 ハルバレクの宣戦布告から数日の緊張と、あざをつくった戦い、そして昨夜閨事で無理を [続きを読む]
  • 近衛の華10
  •  沐浴を終えて、クラウスがこちらに身体を向けた。直視できずに顔を逸らすと、早く服を脱げと急かされた。「手本は見せたぞ。お前もさっさと済ませろ」 教わらなくとも、沐浴ぐらいできる。そんな反論が口をついて出そうになったが、すんでのところでとどまった。 豪快に身体を拭きながら、クラウスは浴室を出ていった。室内は肌寒いのに、裸のままで平気な顔だった。 対して、イヴァンの白い肌は寒さに粟立って、湯が熱いうち [続きを読む]
  • 近衛の華9
  • 「そういった貴族もいるかもしれませんが、私は違います」 性的に爛れた感覚を持った貴族も少なからずいる。これも、贅沢に慣れすぎた故の過ちだ。 イヴァンにとって、誰かと契ることは大きな意味がある。心から尊び慕う相手と、真剣な恋をする先にあるべき行為だと信じている。「そうか。俺の見当違いだったようだ」 そのとおりだから、この話題はもうよしてほしい。そう視線で訴えるが、クラウスは止まってくれない。「見当違 [続きを読む]
  • 近衛の華8
  • 「その衣装は、もう着られないな」 近くの椅子の背に掛けた上着は、よく見ると所々破れていた。そのせいで、もう着られないと言われたのだと思ったが、クラウスの意図は他にあった。「ロエベル帝国の軍服は、お前にはもう着せてやれない」 そう言われ、イヴァンははっとしてクラウスを見た。 ハルバレク軍の支配下に入ったからには、もうロエベル帝国軍の正装は着られない。開戦か否か、不安に駆られた数日から今夜の決闘まで、 [続きを読む]