rohen さん プロフィール

  •  
rohenさん: 炉辺一冊
ハンドル名rohen さん
ブログタイトル炉辺一冊
ブログURLhttps://rohenone.net/
サイト紹介文読んだ本を紹介しています。小説、ノンフィクション、紀行、演劇関係の本が中心。現在、約900冊。
自由文個人的な備忘録を兼ねて、読んだ本の感想は全て掲載しています。☆の数で評価し、タグでジャンルごとに検索できるようにしています。読書量は月10冊前後。現在2009年以降の約900冊を掲載しています。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供133回 / 365日(平均2.6回/週) - 参加 2017/02/11 01:23

rohen さんのブログ記事

  • 昭和の犬
  • 姫野カオルコ「昭和の犬」2013年下半期の直木賞受賞作。戦後に生まれ、「昭和」とともに育った少女の半生を、私小説風でありながら、どこか突き放した視点で綴る。短編の積み重ねの形を取り、どのエピソードにも犬が登場する。作中で大きな事件は起こらず、居心地の悪い家庭で育った少女時代から、実家を離れて上京し、中年になって親族の介護に追われながら半生を振り返るまでの日々が、最少の筆で綴られる。主人公のイクはひと言 [続きを読む]
  • もうひとつのワンダー
  • R.J.パラシオ「もうひとつのワンダー」「ワンダー Wonder」で描かれなかった三つの物語。後日譚ではなく、前作でいじめっ子として描かれたジュリアンと、幼なじみのクリストファー、優等生のシャーロットの3人の視点で、それぞれの学校生活が綴られる。遺伝子疾患で“特別”な顔に生まれたオーガスト。「ワンダー」では、5年生から学校に通い始めた彼の日常が、本人や友人の視点を通じて描かれる。オーガストと仲良くしつつも他 [続きを読む]
  • 海の見える理髪店
  • 荻原浩「海の見える理髪店」2016年上半期の直木賞受賞作。短編のお手本とでもいうような、良質な6編の物語。表題作は、海辺の理髪店に客として訪れた青年が、店主の語る半生に耳を傾ける。短い語りの中に人生の哀歓が凝縮され、ラストも鮮やか。そのほか、母娘の関係を描く「いつか来た道」、夫婦喧嘩で里帰りした妻が主人公の「遠くから来た手紙」、早逝した娘の代わりに両親が若者の格好で成人式に忍び込む「成人式」など、いず [続きを読む]
  • 行商人に憧れて、ロバとモロッコを1000km歩いた男の冒険
  • 春間豪太郎「行商人に憧れて、ロバとモロッコを1000km歩いた男の冒険」ロバに荷車を引かせてモロッコを南北に縦断。モロッコと言ってもアトラス山脈から地中海にかけての地域で、人跡未踏の地を行く前代未聞の大冒険!という性質の挑戦ではないが、行く先々で起こる事件や出会いの一つ一つが非常に面白く、旅の魅力に富んでいる。どことなく、電波少年の旅のようなノリ。旅の相棒のロバ探しから始まり、いざ歩き始めてからも、ネコ [続きを読む]
  • 4TEEN
  • 石田衣良「4TEEN」2003年上半期の直木賞を受賞した著者の代表作の一つ。都会に住む現代の少年の姿を描きつつ、古典的な友情物語の趣もある爽やかな作品。大人と子供のはざまで戸惑い、焦り、時に諦め、時に自分を奮い立たせながら成長していく4人の14歳が主人公。4人は現代の風俗に染まっていながら、友情に厚く、その根底に非常に無垢な部分がある。実際にはこんな14歳はいないかもしれないが、こんな14歳でありたかった/あって [続きを読む]
  • 異類婚姻譚
  • 本谷有希子「異類婚姻譚」2015年下半期の芥川賞受賞作。「異類婚姻譚」と言えば古くからある説話の一類型だが、ここで描かれるのは現代の夫婦関係。会社員の夫と暮らす専業主婦の視点で、現代の説話は綴られる。家では何も考えたくないと言い、テレビのバラエティーとスマホゲームに没頭する夫。そんな夫の姿に苛立ちつつも、平穏な主婦の生活に安住している自分。やがて夫は会社を休みがちになり、何かに憑かれたように毎晩揚げ物 [続きを読む]
  • 東山彰良「流」2015年上半期の直木賞受賞作。この回は芥川賞の又吉直樹「火花」が話題をほぼ独占してしまったが、直木賞のこの作品も近年にない傑作として異例の高い評価を集めた。舞台は戦後の台湾。抗日戦争から国共内戦の時代を生き延び、大陸から台湾に渡った祖父の死を巡る謎を背景として、語り手の「私」の青春が綴られる。猥雑で熱気あふれる台湾の街の描写は、匂いが漂ってくるよう。骨太のエンタメ小説に仕上がっていると [続きを読む]
  • 日本文学盛衰史
  • 高橋源一郎「日本文学盛衰史」小説はうそをつきやすい。真顔で出鱈目を書き連ね、うそと真実の境界を無効化してしまうことができる。高橋源一郎のこの小説は、新たな日本語文学を生み出そうと苦闘した近代作家たちの姿を描きながら、そこにさも当然のような顔で現代の風俗が紛れ込んでいる奇妙な長編小説。そこでは史実と妄想の境界は曖昧になり、うそと真実が重なり合う。登場人物は、二葉亭四迷、島崎藤村、夏目漱石、森鷗外、石 [続きを読む]
  • エキゾティカ
  • 中島らも「エキゾティカ」上海からバリ、インドまで、アジアのさまざまな国を舞台にした中島らもの短編集。寓話のようなエピソードから、日常を切り取った一篇まで、短くも鮮やか、不思議な読後感がまさに“らも節”。食事の描写が多く、その土地の匂いが漂ってくる。ヤシの実を頭に載せた高僧(「ココナッツ・クラッシュ」)。落ちてくるドリアンをひたすら待つ青年(「ドリアンを待ちながら」)。宝石堀りの青年の栄華と死(「光 [続きを読む]
  • おいしい中東・イスタンブルで朝食を オリエントグルメ旅
  • サラーム海上「おいしい中東 オリエントグルメ旅」トルコ、レバノン、モロッコ、エジプト、イエメン、イスラエル。音楽ライターの著者が中東を旅しつつ、各地の食文化に触れ、現地の料理を習っていく。レシピ付きエッセイ本というより、エッセイ付きレシピ本と言った方がふさわしいくらい各章末のレシピが充実しており、その数52品。いずれも日本で再現可能で、実用性も高い。食はその土地の姿を最も雄弁に浮かび上がらせる。イエ [続きを読む]
  • 入門 東南アジア近現代史
  • 岩崎育夫「入門 東南アジア近現代史」1年半ほど前、バリン会談を再現したマーク・テのパフォーマンスを見て、マレーシア、ひいては東南アジアの現代史を全然知らない自分に気づき愕然とした。その後、手頃な概説書を探したが、戦後史に関して新書や文庫で気軽に読める本がほとんどないことを知り、重ねて驚いた。言うまでも無く、東南アジアは日本との結びつきも強く、在留邦人や旅行者の数も多い。比較的身近な地域であるにも拘 [続きを読む]
  • 完全版 猪飼野少年愚連隊 奴らが哭くまえに
  • 黄民基「完全版 猪飼野少年愚連隊 奴らが哭くまえに」生野区から東成区にまたがる猪飼野地域は、現在も多くの在日コリアンが暮らす町だが、戦後間もない頃は愚連隊とヤクザが跋扈する一帯としても知られた。戦後大阪で一大勢力を築いた明友会は、その猪飼野で生まれた在日朝鮮人の愚連隊で、山口組との抗争に敗れて消滅した。猪飼野で生まれ育った著者は、日夜喧嘩に明け暮れる仲間たちとともに少年期を過ごした。不良少年たちは [続きを読む]
  • ロック母
  • 角田光代「ロック母」1992〜2006年に書かれた作品を集めた短編集。文学的修辞を用いずに、人間関係の微妙な空気を描かせたら著者の右に出る作家はそうそういないと思うが、粗削りな初期の作品にもその片鱗は伺える。表題作は川端賞受賞作。出産を控えて故郷の島に帰った女性が、自分が残していったロックのレコード(ニルヴァーナ!)を大音量でひたすら聴き続ける“壊れた”母の姿を目にする。人生に付きまとう閉塞感と、その中で [続きを読む]
  • 百年泥
  • 石井遊佳「百年泥」新潮新人賞、芥川賞受賞作。主人公はチェンナイで暮らす日本語教師の女性。大洪水の翌日に橋の上で見た光景を通じて、さまざまな物語が浮かび上がる。ひと言でまとめてしまえばマジックリアリズムだが、随所にユーモアがあり、敬意を込めてホラ話と評する方がふさわしい気がする。「インドを舞台とした小説」と言うより、「どこまで本当か分からないインド滞在記」という手触りで楽しく読めた。後半に語り手自身 [続きを読む]
  • ボロ家の春秋
  • 梅崎春生「ボロ家の春秋」梅崎春生には「桜島」など戦争を題材とした作品群と庶民の生活を描いたものがあり、こちらは後者を集めたもの。ひょんなことから始まったボロ家での同居生活を描いた表題作がめっぽう面白い。だまされてボロ家を間借りすることになった主人公のもとに、同じくだまされてボロ家を買わされた男が現れる。お互いに牽制し合う奇妙な同居生活がユーモラスな文体で綴られる。他に「蜆」「庭の眺め」「黄色い日日 [続きを読む]
  • 九年前の祈り
  • 小野正嗣「九年前の祈り」表題作以外の短編も同じ集落を舞台にしており、全体として土地を描いているという点では中上健次などに連なるものを感じさせる。ただ良くも悪くも中上ほどの破綻は無く、神話的な重力はない。芥川賞受賞作でもある表題作は、家を出ていった外国人の夫との間に生まれた幼い息子を連れて里帰りした女性の視点で綴られる。美しい外見の一方、感情や行動が読めない癇癪持ちの息子と、何かにつけて無遠慮な田舎 [続きを読む]
  • 先天性極楽伝
  • 阿佐田哲也「先天性極楽伝」純文学と大衆小説両方の顔を持つ色川武大/阿佐田哲也の作品では、エンタメ側に振り切った読みもの。ピカレスク・コメディとでも言うような、痛快で軽妙な物語。いきあたりばったりで、ご都合主義全開、ツッコミどころ満載な展開に不思議と引き込まれる。小学生同士で「結婚」したハルとカン子。大人になって、それぞれの悪の道を歩きながら、運命の不思議な巡り合わせが二人を再び引き合わせる。資産家 [続きを読む]
  • とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起
  • 伊藤比呂美「とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起」身辺雑記である。私小説と呼ぶべきか、エッセイと呼ぶべきか、あるいは散文詩と呼ぶべきか。両親の介護、年の離れた外国人の夫との喧嘩、子育ての難しさ、外国と日本を行き来する生活の苦労。そうした日々の出来事が、詩人らしい独特の文体で綴られる。語られている内容より、文章そのものこそが本質と言ってもよいかもしれない。ですます調で、ユーモアあふれる文体は親しみやすく、その文 [続きを読む]
  • てんのじ村
  • 難波利三「てんのじ村」大阪・天王寺の南にあった「てんのじ村」を舞台とした芸人たちの物語。かつての大阪の姿が哀歓を込めて描かれている。てんのじ村は、現在の天王寺公園と新世界の南側にあった。いつからから芸人が自然と集まって、長屋で肩を寄せ合って暮らすようになったという主人公のシゲルは、ふとしたことから国鉄職員の身分を捨てて芸人の道を踏み出す。巡業中に終戦を迎え、戦後も漫才師として活動を続けたが、なかな [続きを読む]
  • 愛撫 静物 庄野潤三初期作品集
  • 「愛撫 静物 庄野潤三初期作品集」庄野潤三はなかなか不思議な作家で、平易で親しみやすい文章の中に、どこか捉えどころのない不穏さが漂っている。表題作の一つ「静物」は、子どもたちとの他愛もない断片的な会話を連ねた作品。意味深なようで、実は意味もなくただ日常を綴っただけかもしれない気もする奇妙な手触り。村上春樹は「第三の新人」世代を中心に取り上げた「若い読者のための短編小説案内」の中で、「静物」について [続きを読む]
  • 虫喰仙次
  • 色川武大「虫喰仙次」小説には作家のさまざまなコンプレックスが書かれ、あるいは滲み出ている。人に理解されない劣等感を抱えるということは、非常に孤独なことだ。だからこそ、その複雑な感情を作品の中に見つけられることは読書の大きな効用の一つでもある。表題作は「小説 阿佐田哲也」にも登場した男の話。博奕仲間で、会社での出世競争に敗れた男の半生を通じて、著者らしい社会観が綴られている。「遠景」「復活」などの短 [続きを読む]
  • 密林の語り部
  • バルガス・リョサ「密林の語り部」ペルーの作家、バルガス・リョサの代表作の一つ。都会の生活と出自を捨て、密林の語り部となって新たな人生を生きることになった青年を巡る物語。私小説風、あるいはノンフィクション風の硬質な文体で語られる書き手と青年の思い出話と、語り部による脈絡のない神話、密林の世間話が交互に綴られる。顔に大きな痣があり、マスカリータ(仮面)と呼ばれたサウル。ユダヤ系の出自を持つ彼は、アマゾ [続きを読む]
  • 「新しき村」の百年 〈愚者の園〉の真実
  • 前田速夫『「新しき村」の百年 〈愚者の園〉の真実』恥ずかしながら、「新しき村」が今も残っていることを最近まで知らなかった。武者小路実篤の「新しき村」は、文化的で個人が尊重される理想の共同体を掲げ、1918年に宮崎県の山中に開かれた。共有財産・共同作業で生計を立て、余暇を学問や芸術などに使うことを目指した村は、運営が軌道に乗り始めたタイミングでダムに一部が沈むことになり、39年に埼玉県毛呂山町に移転。戦後 [続きを読む]