安堂 さん プロフィール

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安堂さん: 九六フィートの高さから
ハンドル名安堂 さん
ブログタイトル九六フィートの高さから
ブログURLhttp://kakkoii-kakko.hatenablog.jp/
サイト紹介文京都在住の大学生がつれづれなるままに日々のあれこれや、本のこと、音楽のこと、映画のことを書きます。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供9回 / 365日(平均0.2回/週) - 参加 2017/05/30 23:31

安堂 さんのブログ記事

  • 夏の濃度
  •  正直、夏は苦手だ。なぜなら、夏は濃すぎるからだ。 生きていくだけで精根を削り取られるような思いにさせる、あの空気。むせ返るほど匂いと気配に満ちた空気。温度の高い空気は密度が小さく軽くなるはずなのに、僕の科学的知識は夏の息の前に倒れ伏すしかない。これはつまり、夏に圧倒されているということだろうか? 半死半生のヒトの傍らで、生き物の気配は濃い。目に見えるものも、目に見えないものも。なにも霊魂のこと [続きを読む]
  • 小説「空白を走る」
  •  電車に乗っている。 いつ乗ったのか確かではないけれど、もうずいぶん長い間乗っているような気がする。 どこかで見たことがあるような、だけど全然知らない電車は、どこかで見たことがあるような、だけど全然知らない街の中に、きれいな曲線を描いていく。 僕は窓際の席に進向方向を向いて座り、窓ガラスに重く頭を預けている。時折何かにつまずいたような振動がこめかみを刺激する以外は、妙に静かで、どこか白々しくさえ [続きを読む]
  • 郷愁と臆病
  •  もうすぐ21になる。 ハタチになる年にこのブログを書き始めて、ハタチになるときにも記事を書いたりした。 ハタチになるのは人生においても一つの大きな区切りだし、何より「ハタチ」という言葉の持つ響きは幻想的で、幾分ファンタジーの世界に足を踏み入れるような気分でいた。 そしてまた一年は過ぎ、一つ年を取る。 ハタチが幻想なら、21はもう現実だ。 目の前に迫った現実に対する不安に負けてしまいそうな自分が時折 [続きを読む]
  • 誰にも会わない日
  •   一人暮らしを始めて一年が経とうとしている。 僕より少し遅れて入居してきた隣の部屋の住民とは、いまだに面識がない。とはいえ、同じ大学の学生で、おそらく同じ学年、なんならあいつかなくらいの見当はついている。なぜそう思っているかは忘れてしまった。もうひとつ知っていることがある。歌が下手だということだ。毎日まいにち彼は夜中になると歌い出す。それが深夜一時とかなのだ。壁が薄いことはお互い知っているだろう [続きを読む]
  • 知らない
  •  電車に乗って窓の外を見る。近くのものは速く、遠くのものはゆっくりと、後ろへ後ろへ流れていく。僕の瞳孔は必死に追いつこうと運動を繰り返す。けれどもやっぱり追いつきやしない。遠近に騙され裏切られ、休まることはない。 それでも僕は、流れる景色をどうしようもなく眺めてしまう。どうしてなのか、なんだか切ない気持ちになる。知らない、でも見慣れた町を、知らないそのままで流していく。 知らないというのは寂しいこ [続きを読む]
  • 円城塔『道化師の蝶』を読む――「わたし」のメタは滅多打ち
  • 円城塔『道化師の蝶』を読んだ。読んでしまった、と書いたほうがより正しいのかもしれない。表題作「道化師の蝶」、そして「松ノ枝の記」の二本の短編が収録されており、「道化師の蝶」は第146回芥川賞を受賞している。円城塔という名前は知っていたが読んだことがなかったから、古本屋で見つけたときに買ってみたのだ。というのも、表紙がハッとするほど美しいから。表紙の装丁、もはや背表紙の印象でその本を読むかどうか決め [続きを読む]
  • 『大きい犬』と秋の床
  •  秋が来た。突然やって来た。 夜すげー涼しい。昼間も真夏の密度がどこかへ行ってしまった。 僕は夏が苦手なので秋の到来をとても喜んでいるけれども、あまりにも急に夏が去ってしまって、それはなんだか寂しい。あんなにしつこく体にまとわりついてきたじゃないか! あんなに理不尽に体力を奪ってきたじゃないか! しょっちゅうちょっかい出してくるからちょっと邪険にしてた友達が挨拶もなしに引っ越して行ってしまって、め [続きを読む]
  • マイ・スウィート・乳歯
  •  僕の永久歯は4、5本足りない。抜けたとかではなく、そもそもない。これは完全に遺伝だ。例えば上の前歯のすぐ隣が両側ないから、前歯の隣に犬歯がきている。乳歯が抜けた隙間に寄ってきたのだ。おかげで歯を見せて笑うと吸血鬼のような鋭い印象を与えることになる。吸血鬼は言い過ぎたかも。もうちょい間抜けな感じ。 永久歯の不足と顎の小ささが原因で、噛み合わせもなかなか悪い。多少矯正してもらったおかげで正面から見た [続きを読む]
  • どの椅子に座ろうか
  •  「君は何がしたいの?」 これまでにも何度もなんども問われてきた言葉だ。他人からも、自分からも。そしてずっとうまく答えられずにいる。今も。 6月に京都のカルチャーを発信するウェブメディアであるアンテナのライターになった。文章を書くのが好きだったのもそうだが、ライター募集のページを見つけた時に「ああ、応募してみるしかないな」と直感的に感じたからだった。面接を兼ねて編集長と副編集長とお茶したときは [続きを読む]
  • 呪いの看板のおもひで 〔新潟〕
  • この看板を見て欲しい。 犬や猫とは思えない、全てを誘ったかのような光を宿した目と、なんとも言えない口もと。角度。3色の配色と「ほんとにこのお店いまもやってる?」と思わせる色褪せ方。字体。 母の地元である新潟県のある地域でよく見かける看板なのだが、小さい頃から帰省のたびに何気なく目にしていて、なぜかよく覚えていて、なんとなく好きだった。 それを今回の帰省中、ドライブしているときにぼんやりと呟く [続きを読む]
  • 夏は夜、ベランダの洗濯機の上
  •  どうやら梅雨が明けたようだ。明けましておめでとう。 家を出て、あれ?これ夏じゃない?と思ったらやっぱりそうで、梅雨明けの日の朝だった。 僕は梅雨が嫌いだから毎年頭を抱えながら早く前線が通り過ぎていくのを待っている。天然パーマの僕にとって、湿度は敵である。ジメジメは身体にも良くないしね。 でも今年の梅雨は案外さらっと駆け抜けていったように思う。それはどうやら間違っていないようで、ニュースでも水不足 [続きを読む]
  • 時限爆弾は作動したか?
  • 先日、友人と鎌倉へ行ってきた。元来出不精である私にとっては実に久しぶりの旅行で、紫陽花を見に行くというのが口実だった。それに際して、私はインスタントカメラを持って行った。この国民総スマホカメラマン時代になぜインスタントカメラ?と思う方もおられるかもしれないが、実はいま、インスタントカメラはけっこうな流行りを見せている。平成生まれの私は、当然インスタントカメラがリアルタイムな世代ではない。私 [続きを読む]
  • シンギュラリティのその先は―サマンサとエヴァとポナンザに会って
  •  僕は高校二年生まで、自分が理系であることを疑わずにいた。それは、父親がそうだからだったし、数学はそんなに得意ではないけれど、理科は苦手ではなかったし、少なくとも嫌いではなかったからだった。だから進路を選ぶときも、工学部や理学部なんかを調べたり見に行ったりしていた。だけどちっとも惹かれなかった。何にも興味を持てないし、当然進路に迷った。 そして気付く。自分は理系ではなかった。 受験勉強としての理 [続きを読む]
  • アルコールがそっと押してくれるスイッチ
  • 今週のお題「家飲み」前回の宣言を無視してごめんなさい。けっこういいお題だったから、つい。この前ハタチになったばかりではありますが、家飲みが好きです。少人数で、好きな音楽を小さく流しながら、ちびちびお酒を飲んで、しゃべる。最高です。カオスな酒場で知らんおっさんと思いもしない話をしたりするのも面白いけど、家飲みが落ち着く。なぜなら。僕はお酒が弱いので、すぐ酔って、すぐに寝転びたくなるからです。さす [続きを読む]
  • すり込みBGM
  • 昔からうちはずっとテレビがついている家だった。誰が見てるわけでもなく、ただBGMとして、テレビから音と光が垂れ流れていた。どうでもいいバラエティ番組とか、びっくりするほど長い健康食品の広告だったりもしたけれど、うちには大好きなものを繰り返しつける、ちょっとオタクな気質があった。感覚としては好きなCDを何度もかけるのと同じで、もう何もかも覚えているくらいなんだけど、聞いていて、見ていて、とっても心地好い [続きを読む]
  • 完ぺきにダメな日
  • 今日は完ぺきなまでにダメな日だった。11時まで寝て、お風呂入って、朝ごはん食べて、洗濯して、昼ごはん食べて、そのあとは時間を溶かしていた。学校にも行く気になれず、みんなサボってしまった。別に嫌な授業でもないし、行きたいのは行きたいけど、体を動かせない。あー、今日はダメな日だ。めちゃくちゃ言い訳のような言葉だけど、ぜったいにダメな日ってありますよね。何をどうしても何もできない、何もしたくない。体調が [続きを読む]
  • バースデイ
  • おとといは誕生日だった。前回の投稿で書いたように、今年の誕生日は映画館で、『イット・フォローズ』というホラー映画を見ながら迎えた。『イット・フォローズ』、めちゃくちゃ怖くて、誕生日だというのに寿命が8年縮んだような気持ちになった。もう音とかすごくてやめてくれと思った。あまりにも救いようのない設定でなかなか辛かったな…そのあとは、グザヴィエ・ドランの『わたしはロランス』と、『オンリー・ラヴァーズ・レ [続きを読む]
  • 10代に振り返って手を振る
  • 日付が変わって本日は5月27日。もうどうやら2017年らしい。2016年に比べて2017年って未来感が強い字面をしているな。17が放つ素数感(実際2017は素数らしい)がファクターなのかしら。奇数の持つ冷たく金属っぽい匂いかもしれない。私だけでしょうか。普段は全く忘れているけれど、私たちは21世紀に生きるニンゲンなんだなーって。21世紀という言葉はわりとSF感あるよね。一応ギリギリ20世紀生まれなの、なんか嬉しい。私だけでし [続きを読む]
  • 小さくて弱い透明な羽虫の夜
  • 最近夜眠れない。そのうえ朝起きるのも苦痛。どうにかならんもんかと思うけれど、どうにもならないらしい。電気を消した暗い天井や壁を見たり見なかったりしながら、どうにもならないことをぐるぐる考えたり考えてるふりをしたりする。暑いのが悪い。足の裏が火照ってたまらない。部屋の空気がこもるので、寝るまでの間は窓を開けている。もちろん網戸は閉めてあるのだけれど、それでも法の目をかいくぐって小さな虫たちが侵入して [続きを読む]
  • ラン!フォレスト!ラン!
  • 久しぶりに『フォレスト・ガンプ』を見た。やっぱり大好きな映画で、大好きで良すぎる映画を見るともうその日のエネルギーというか心とか感情のキャパシティが閉店するというか、とにかくヘトヘトになって部屋の床に溶けるしかなくなってしまう。でもその疲労は消耗でも磨耗でもないことはなんとなくだけど確実にわかっていて、なんか投げて帰って来る種類の何かしらだと思う。ひとり暮らしが寂しくて1日1映画みたいな時があるけ [続きを読む]
  • 反則と罰則と変速
  • 僕は京都の大学に通っている。今日は授業と授業との間の空いた時間に、自転車で三条の駅前にあるブックオフに行った。最近なんだか物語に飢えていた僕は、古本をおもうさま買い漁ってあらゆる膿を蹴散らしてやろうと考えたのだった。自転車を止めて、半時間ほど物色し、思った以上の収穫に満足して店を出ると、自転車がない。そこに止めてあるはずの水色のチャリンコがないのだ。あるはずのものがなくなっている時の、急に知らない [続きを読む]
  • 一回性と二回生
  • 新学期が始まった。僕は大学二回生になった。去年はなんだかなんにもしないまま時間が過ぎていく感覚だけが痛いほど鮮明で、自分はこんなんで大丈夫なのか?と落ち込んでいた時も多かった。kakkoii-kakko.hatenablog.jp自分がどんどん時間を無駄にして捨てていってるという思いがぐるぐると頭の中を支配していた時期だった。でもいま考えれば、その時期にぐるぐると考えていたことはいまのスタンスになっているし、高校生まで [続きを読む]
  • 淵に立ってる
  • 映画を見た。『淵に立つ』という作品。浅野忠信が主演になるのかな?エンドロールの最初の名前は浅野忠信だった。ある家族のもとへ1人の男がやってきて、あらゆる物事が歪んで崩れていくお話。全然ハッピーなお話ではなく、全てがスッキリする展開もない。見るものを打ちのめすタイプの映画だった。タイトルの”淵に立つ”という言葉は自分にとってすごくしっくりとくる言い回しで、それはこの作品の物語にとって、というよりも [続きを読む]
  • 涙袋がほぼないせいで人相が悪い
  • 僕は音楽が好きで、映画も小説も大好き。そして今まで数多くの作品に心を動かされてきた。だけど僕はその感情の高ぶりが、すべて涙という形になって表出しない質というか、心と涙腺の回線の通信速度が遅い仕様になっているみたいで、涙が出るかどうかは作品や媒体、状況に左右される。でもやっぱりどうしようもなく涙が溢れてしまうこともあって、その違いはどこにあるのかとても気になってよく考える。そしてひとつ、これはあるか [続きを読む]
  • 実の距離
  • 二日前、一人暮らしをするアパートに引っ越した。荷物の運び入れ自体はすぐに終わって、部屋は割と短時間である程度形になった。でもそこから足りないものを買い出しに行って整理したらもう夜も遅い時間になった。でも頑張った甲斐あって、いい部屋、というか自分らしい、自分が落ち着ける部屋になった。そのおかげであまり場違いな感覚にはならなかった。でも自分の中でまだ場違いな言葉がある。それは”実家”という言葉。つい [続きを読む]