ウイルソン 金井の小説 さん プロフィール

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ウイルソン 金井の小説さん: ウイルソン 金井の小説
ハンドル名ウイルソン 金井の小説 さん
ブログタイトルウイルソン 金井の小説
ブログURLhttps://wilson-t-kanai.muragon.com/
サイト紹介文創作小説を紹介
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供157回 / 143日(平均7.7回/週) - 参加 2017/07/04 16:28

ウイルソン 金井の小説 さんのブログ記事

  •   嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅤ 
  • 「ん? 何が横に・・」  振り向くと、腰が抜けるほど驚く。なんとワシらより数倍大きい仲間がいた。黒ピカは、恐ろしさに固まって動けない。相手は、ワシらをジッと探る様子で見ている。  長い触角で、黒ピカに触れようか迷っている。ワシは、どうも女の子らしいと気付く。慣れないスペイン語で話し掛けてみた。 「オラー、セニョリータ!(こんにちは、お嬢さん)コモ エスタ?(いかがですか?)ヴィエロン エル ハポン [続きを読む]
  •   嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅣ
  •  シャワー室から顔を見せたのは、黒ピカと友達になったハワイのゴキジョージであった。 「アローハ、ジャパニーズ・リーダー!」 「やあ、アローハ! ゴキジョージ、大丈夫でしたか?」 「はい、ハワイのメンバーはノウ プロブレム(問題ない)あなたのお陰です。マハロ(ありがとう)」 「いや、とんでもない。ところで、黒ピカを見ませんでしたか?」 「クロピーカ? ああ、キッチンにいましたよ」 《なにぃ、キッチン [続きを読む]
  •   嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅢ
  • 「それは、ハワイの仲間だ。アローハ(こんにちは)と挨拶して、英語で話せばいいのだ。まさか、英語がダメなのか?」 「話せませんよ。日本語だけです。オイラには、勉強する暇もなければできる頭も無い。リーダーは話せるのですか?」 「ああ、ワシの棲み処は中央公民館だった。英語教室や国際交流の集いがあり、知らぬ間に耳で覚えてしまった。ゴキ江や子供たちは、ペラペラだ。でもな、黒ピカよ。話せなくとも、友達になれば [続きを読む]
  •   嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅡ 
  •  揺れは、日毎に激しくなる。船が傾く方へヨロヨロと歩き、まるで酔っ払いのようだ。ワシはできる限り棲み処で静かにしていた。若い黒ピカは、片時も休まない。ところが、フラフラとヤツが戻ってきた。 「どうした、具合が悪いのか?」 「あ〜、気持ちが悪くて、もう歩けない」  ワシの前でバッタリと倒れ、動かなくなった。 「それは、船酔いだ」 「お酒なんか、飲んでいませんよ。まだ、未成年ですから・・」 「当たり前 [続きを読む]
  •   嫌われしもの 遥かな旅 ⅩⅠ
  • 「長い道のりだ。安全で快適な、仮の棲み処を探さなければ・・」 「リーダー。それよりも、先に何か、食べませんか?」 「そうだな、前の方からいい匂いがする。行ってみよう」  貨物船のためか、人間どもの姿が少ない。安心して行動ができる。キッチンは意外と広く、清潔であった。直ぐに残飯の在りかを探し当てた。ワシらは用心を怠り、食事に没頭する。 『バッシ、バッシ・・』  不意に叩かれた。 「黒ピカ、早く逃げろ [続きを読む]
  •   嫌われしもの 遥かな旅 Ⅹ
  •  のらりくらりと言葉を交わすマダムの対応に、言い知れぬ怒りが湧く。もう、我慢ができないとワシは思った。 「とにかく・・、ですな!」  その瞬間、黒ピカがサッとワシの前に出る。豊満なマダムの体を軽くタッチした。 「お美しいマダム・イヤーネ、南米から帰国したら横浜に来ます。死ぬまでお仕え致しますから、是非、貨物船の場所を教えてください」 《えっ、なんだあ? お前の、この対応は? またまた鳥肌が立ってし [続きを読む]
  •   嫌われしもの 遥かな旅 Ⅸ
  •  ワシの真剣な表情から、失敗は許されないと理解した黒ピカは、翅をバタバタと動かし気を引き締める。ヨットがうねりの頂点に達した一瞬、岸壁を目がけて飛んだ。  ワシは体操選手のように触角を広げ、華麗なフォームでピッタと着地をする。黒ピカは風に煽られ、コロコロと転んでしまった。 「うっ、痛たた〜。もう、痛いなあ〜」 「おい、平気か?」 「ああ〜ぁ、リーダーと同じに、格好良く決めたかった。残念だ」 「ケガ [続きを読む]
  •   嫌われしもの 遥かな旅 Ⅷ
  •  ジェット音が、徐々に大きく響いてきた。 「リーダー、あのとんでもない唸り声は?」 「あれは唸り声ではなく、飛行機の音だ。自動車より数十倍も大きい、空飛ぶ機械だ。 本当なら、あれに乗ってブラジルへ行くはずだった」 「ふぅ〜ん、ゴジラが吠えていると思った。半年前に誤って映画館に入ったら、急にゴジラが吠えた。オイラは咄嗟に外へ飛び出し、大急ぎで逃げましたよ。あんな気味の悪い生き物がいるなんて・・」   [続きを読む]
  •   嫌われしもの 遥かな旅 Ⅶ
  • 「はい、十分に気を付けます。カラスは大嫌いだ。いつもオイラを『バカカァー、バカカァー』と、鳴いて騒ぐ。オイラは、とっくの昔から承知の介だい!」 「アッハハ・・。あ〜、腹が痛い。なんとも変わったヤツだな。ハハ・・」  東京湾に近づき、釣り船や観覧船が目まぐるしく行き交う。小さなヨットは船のさざ波に煽られ、落とされまいと黒ピカが必死に耐えていた。しばらくして、周辺の景色を眺める黒ピカが、妙な動作をする [続きを読む]
  •   嫌われしもの 遥かな旅 Ⅵ
  •  冷や冷やしながら見ていたワシは、何故か神様に祈ってしまった。祈りが通じたのか、黒ピカはようやく着地ができた。 「さあ、出発だ。茎にしっかりと抱きつけ! この茎なら、葉の養分を吸える。少しは腹の足しになるからな」 「は〜い、リーダー。だけど疲れたなぁ〜」  夜明けと共に、長い未知の旅が始まった。果たして、無難に目的地へ辿り着くことができるのか、ワシは心配する。神様でも保証をしないであろう。  ヨッ [続きを読む]
  •   嫌われしもの 遥かな旅 Ⅴ
  •  夏の虫たちの『リ~ン、リ~ン』と軽やかな音色だけが聞こえる。静かな夜に戻った。 「黒ピカよ! ワシは決めたぞ」  ふと心に浮かんだ案を、出し抜けに告げる。黒ピカは驚き、ピョッコと飛び跳ねた。 「えっ、えっ、何を決めたのですか?」 「渡航方法だ! 近くの烏川から利根川を経て、途中の江戸川を抜け東京湾に出る。それから、潮風を利用して横浜港へ向かう。横浜港から南米行きの貨物船に乗る計画だ」  黒ピカに [続きを読む]
  •   嫌われしもの 遥かな旅 Ⅳ
  • 「リーダーの方が、もっと慌てていますよ」 《当たり前だろう。お前に露見したと思った。気付いていないらしいな。それにしても、そんなに似ているのかなあ? 黒く光って母親似と思うが・・》 「うっ、ゴッホン・・、ゴ、ゴキ江、それで支部からの内容は?」 「ええ、それが渡航のことなの。飛行機は空港の検疫検査が厳しいから、比較的に安全な貨物船を利用しなさいと言ってきたわ」 「えっ、貨物船? それでは大会に間に合 [続きを読む]
  •   嫌われしもの 遥かな旅 Ⅲ
  • 「今日はこれで散会する。近頃、野良猫に食べられる事件が絶えない。くれぐれも用心して帰ってくれ」  集まったものたちは、別れを惜しみながらソロソロとその場から立ち去った。 「黒ピカよ!」 「はい、リーダー・・」 「出発まで、この公園で過ごす。棲み処に戻っても、命の保証はないからな。この場所にこっそり隠れているほうが安心だ。昼はカラスに注意し、夜はカマキリや蜘蛛に警戒すればいい」 「リーダー、カエルや [続きを読む]
  •   嫌われしもの 遥かな旅 Ⅱ
  • 「さ〜てな。ワシらの仲間は寒さに弱いからなぁ〜。世界中と言っても、温暖な国や熱帯雨林からの参加が多いはずだ。この地球上には、およそ四千種、一兆四千八百億匹が生息している。参加数は全く想像がつかん。だから、ワクワクしているよ。講演は仲間の夢について、話す予定だ」 「じゃ〜ぁ、日本の仲間は〜、どれほど・・、いるのかしら〜?」  ブリ子が艶めかしくウットリとした声で聞く。ワシは、その声に目を細めた。 「 [続きを読む]
  •   嫌われしもの 遥かな旅 Ⅰ
  • 《これから始まる物語は、あんたら人間どもが、とても理解できないであろうワシらの世界だ。  この地球上に、ワシらよりもずっと後に現れた人間どもよ!  猿人(アウストラロピテクス)から旧人類(ネアンデルタール)、新人類(クロマニョン)に進化してきたと言われているが、ワシらだけが真実を知っている。でも、先祖さまの遺言で教えられない。  何故なら、美しく豊かな地球を我が物顔に振る舞う人間どもが、許せんから [続きを読む]
  •   漂泊の慕情  Ⅹ
  •  その夜、私の荷物はそのままにして、彼の部屋で過ごす。ベッドの中で愛を確かめ、少しでも彼の不安を慰めた。  翌日は、彼の運転で州立公園やマウナ・ケア山などを観光する。彼は歩くとき、常に私の手を携え不安から逃れようとした。私はできる限り甘え、彼の恐怖を和らげようと努める。  夕日が沈むハワイの海を眺めながら、彼に話し掛けた。 「一緒に住もう? 私が傍にいれば、いつでもあなたを慰められるわ。私が、あな [続きを読む]
  •   漂泊の慕情  Ⅸ
  •  翌日の午前に、ヒロ方面をドライブ。左ハンドルに慣れていないので、神経が張り詰め緊張する。コナ・コーヒー農園に行き、美味しいコーヒーを飲む。行く当てもないドライブは、やはり楽しく過ごせない。況して、常に彼の顔が浮かぶからだ。私はドライブを切り上げ、早めにホテルへ戻った。  ホテルの前に近づくと、日本人の青年が玄関口の階段を上がるところであった。その姿がきわやかに見え、私の心臓が大いに飛び跳ねる。 [続きを読む]
  •   漂泊の慕情  Ⅷ
  •  私は会社に事情を説明して、一週間の有給休暇を取得。直ぐに旅行の手続きを行なう。 三日後に、私は羽田発のハワイアン航空に乗る。およそ七時間のフライトでコナ国際空港に降り立った。開放的な空港に目の前に広がる溶岩帯は、やはりホノルルとは異なるハワイの気分を味わう。  前回は、気の合う友人たちと訪れリッチなホテルに宿泊したが、今回は旅行気分ではない。ノースコナ、ホルマロアのコナ・ホテルに宿泊。  このホ [続きを読む]
  •   漂泊の慕情  Ⅶ
  •  ホテルをチェックアウト後、乙女の像の前で落ち合う約束をしていた。半信半疑で私が行くと、間違いなく彼は先に来て待っていた。彼の姿を見た瞬間、私の胸がキュンと締め付けられる。 「おはよう、昨晩は良く眠れましたか?」 「えっ、はい、良く寝ることができました。起きたら、とても爽快な気分でしたわ」  寝不足の顔を知られないよう、今朝は念入りなメイクをしたつもり。もしや、露見したと思い込みドッキとする。どう [続きを読む]
  •   漂泊の慕情  Ⅵ
  •  私は彼と交際してからの期間を、思い返す。三年前の夏に、十和田湖の奥入瀬渓流をひとり訪ねたとき、湖畔の乙女の像を眺めていた私に、横から声を掛けたのが彼だった。 「私は、この作者の道程という詩が好きなんです・・」  彼の声は、囁くように静かな語り口であった。 「えっ? 高村光太郎の詩ですか・・。我が前に道は無し・・」  突然に声を掛けられ、戸惑うも直ぐに言葉を返してしまった。 「あっ、いや、独り言で [続きを読む]
  •   漂泊の慕情  Ⅴ
  • 「初めまして、突然にごめんなさいね」 「いいえ、こちらこそ・・」  彼の姉は、背がすらりとして穏やかに話す人であった。想像したとおり、顔の輪郭や性格が彼に良く似ている。その所為か、初めて会うにしては緊張することも無く、意気投合することができた。  友人から届いた手紙を、姉に見せる。彼女は手紙の内容に大きく息を吸い、驚きの表情を面に出した。 「こ、これは・・。私も知りませんでした。あ〜、なんてことで [続きを読む]
  •   漂泊の慕情  Ⅳ
  •  仕事から家に帰るたび、あの手紙が気になってしまう。封を途中まで開けたが、決心がつかず止めた。破棄して捨てることもできない。机の引き出しの奥へ、目の前から隠すように仕舞い込んだ。  最初の手紙が届いてから十日過ぎに、新たな手紙が届く。今回の差出人は、女性の名前であった。それも、彼と同じ名字が書かれてある。 「彼と同じ名前の女性って、誰かしら?」  私は半信半疑ながら、恐る恐る封を開ける。 【拝啓  [続きを読む]
  •   漂泊の慕情  Ⅲ
  • 「そうだわ・・、明日、仕事の合間に電話をしてみようかしら・・」  翌日、昼時間に彼の携帯へ電話を掛けてみるが、一向に繋がらない。仕事を終え、再度掛けてみるが通話不能であった。  その翌日も、また翌日も掛けるが、やはり通話不能である。私は胸騒ぎを感じた。  交際初めて直ぐに、職場への電話はしないと互いに約束しあった。 「どうせ、会わないと振られたんだから、問題ないはずよ。よし、掛けちゃおう」  私は [続きを読む]
  •   漂泊の慕情  Ⅱ
  •  私は、彼が置いて行った二千円を掴み、レジに支払う。急ぎ店を出た。  外は予想以上に寒く感じ、オータム・コートの襟を立てる。その後、当てもなく歩き、高崎城址公園に来てしまった。  色あせたベンチに座り、疲れた足を労る。人影が少ない。喫茶店のことを思いだした。寂しさはあるが、不思議にも悲しみの涙はない。彼の裏切りと私の失望が、憤懣の念と憐憫の情を相殺させたのであろう。  いや、もしかして、あの最後の [続きを読む]
  •   漂泊の慕情  Ⅰ
  •  暮秋の午後、高崎城址公園の古く色あせたベンチ。日溜まりの温もりを求め、心虚しく座る。目の前に噴水を止められた池。水面に視線を向け茫然と時を過ごす。  足元の枯れ葉が風に煽られ、カサカサと忙しく転がる。使い慣れた薄茶色のバックからヘア・バンドを取り出し、長い髪をひとつに纏めた。  思わぬ破局に心は戸惑い嘆くが、誰の慰めもいらない。サマリア人の一滴の涙さえ必要としない。強いて新たな恋を求めるべきか、 [続きを読む]