ぱこぺら さん プロフィール

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ぱこぺらさん: ぱこぺら 映画批評
ハンドル名ぱこぺら さん
ブログタイトルぱこぺら 映画批評
ブログURLhttp://pakopera.blog.fc2.com/
サイト紹介文映画の批評・評論・考察など。できるだけこれまであまり言及されてこなかった美点を持つ映画を取り上げます
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供60回 / 273日(平均1.5回/週) - 参加 2017/07/07 00:20

ぱこぺら さんのブログ記事

  • 『あの夏、いちばん静かな海。』 生命の素地が持つ美しさ
  • 監督 北野武 1991年 平凡でありふれた人物と出来事、それをそのまま曝け出す描写、聾唖に設定した主人公、常在する海、全てにおいて着想が非凡だ。 この映画は特別な人物をその特別さゆえに価値あるものとして描くものではない。ありふれた人々のありふれた出来事を描いている。登場する人物も起こる出来事も現実そのもののように平凡でありきたりだ。卑小と言ってもいいだろう。この内容であれば、描写は小さな出来事をクロー [続きを読む]
  • 『パンズラビリンス』
  • 監督・脚本 ギレルモ・デル・トロ 2006年 メキシコ・スペイン・アメリカ合作映画 ファンタジー映画。表現は分かり易く、万人向けのスタイルになっている。ただ、夢や希望を肯定する明るいファンタジーではない。スタイルは子供向きだが、内容は暗く苦い。ファンタジーでありながら、ファンタズムが却って悲惨な現実を浮き彫りにし、人の普遍的な想像力や宗教的心情について考えさせる。 冒頭で地下世界の王女のおとぎ話が語ら [続きを読む]
  • 『ドリームチャイルド』 愛情に溢れたオマージュ
  • 監督 ギャヴィン・ミラー 1985年 イギリス映画 『ドリームチャイルド』は良質の娯楽映画だ。よくできた堅実な作りで『不思議の国のアリス』のファンタジーとしての魅力、郷愁に満ちた『黄金の午後』を具現化していて、特に原作の読者には素晴らしい贈り物となっている。原作の一部を映像化した部分はこれまでに映画化されたどの『不思議の国のアリス』よりも魅力的だ。 また、意図したものではないだろうが、過去と現在、幻想 [続きを読む]
  • 『ときめきに死す』 森田芳光の才能が発揮された一本
  • 監督 森田芳光 1984年 醒めた描写と虚無的な物語に新鮮な面白さがある。心理を排した客観的な描写の冷たさ、登場人物たちの営みから意義が失われていく物語の虚無感、それらが一般的な娯楽映画の感情を刺激しようとする描写と物語の肯定的な嘘に慣らされた我々観客の目にはとても新鮮だ。 描写は観客に感情移入を促すことなく、物語も終盤までほとんど何も起こらず淡々と進む。が、その奥底には劇的な意味作用が密かに流れてい [続きを読む]
  • 『ブルーベルベット』 優れた技巧と隠された世界
  • 監督・脚本 デヴィッド・リンチ 1986年 アメリカ映画 個性的な映画だ。一見ありきたりな犯罪スリラーのような物語が展開していくが、その定型的な物語を語るストーリーテリングの巧さ、キャラクター、描写など全てが類型から絶妙にズレたオリジナリティを見せ、物語においても人と社会の後ろ暗い裏面を前景化していく。 また、全編技巧が冴えわたっていて、その技術の確かさは「この部分が巧い」というようなものでなくて、何 [続きを読む]
  • 『赤い影』 意図と表現の乖離
  • 監督 ニコラス・ローグ 1973年 イギリス・イタリア映画 『赤い影』はオカルト映画であり、また一組の男女の心理を描いた映画でもある。恐怖の演出は煽情的でなく、意味ありげな描写と展開でじわじわと怖がらせようというスタイルだ。主人公の男女の心理はその志向の違いを含めて丁寧に描かれている。その確かなキャラクター描写と被写体としての冬のベネチア、赤い色などが印象的な映画だ。ただ、残念なことにそれら以外の部分 [続きを読む]
  • 『ツィゴイネルワイゼン』 関係性の映画
  • 監督:鈴木清順 脚本:田中陽造 1980年 この映画は現実と幻想、事実と虚構の境界が不分明で、それが特徴であり魅力でもある。一般的な映画では判明な出来事の連鎖としての物語があり、その起承転結に面白さがあるものだが、『ツィゴイネルワイゼン』はそういう映画ではない。曖昧模糊とした描写と物語が観客に解釈を求めて蠢く。それが意味作用のままに留まったり、様々な解釈に結びついたりするところに魅力がある。  開かれ [続きを読む]
  • 『HOUSE ハウス』 大林宣彦の遊び心に溢れたデビュー作
  • 監督 大林宣彦 1977年 『HOUSE ハウス』は映画の楽しさを堪能させてくれる映画だ。題材的にはホラー映画であり、実際怖い場面もあるにはあるのだが、その怖さは遊園地のお化け屋敷のように楽しい。娯楽作品とは言ってもこれだけ無意味に徹して観客を楽しませてくれる映画はそうそうないだろう。勿論それだけ作品の出来が素晴らしいということなのだが、批評家には評価されづらそうだ。自然主義的リアリズムから懸け離れたところ [続きを読む]
  • 『鉄男』 塚本晋也の特異な個性
  • 監督 塚本晋也 1989年 この映画の内容はエログロナンセンスと形容できるものだが、それだけでは言い足りない。狂気と金属と走ることで埋め尽くされた描写、極端に短く目まぐるしいカット割り、金属音のような特殊な音響効果と背景音楽、異様で個性的な表現が横溢して観客を圧倒する。異常なほど迫力のある映画だ。何を物語り、何を描いているのかも理解できないのに観客は見ることをやめられない。いや、上品で良識ある紳士淑女 [続きを読む]
  • 『皆殺しの天使』 不条理と円環的時間
  • 監督 ルイス・ブニュエル 1962年 メキシコ映画 絵に描いたような不条理劇で、同じ描写の反復、不可解な物語や登場人物の心理など、その不条理さは形式から内容にまで及んでいる。作品世界の原理がいつまで待っても開示されない展開には苦痛を感じる人もいるかもしれない。しかしそこに面白さはない。幼児が原理を理解できないままに世界を体験するように、分からないことを分からないまま楽しむ映画だ。  繰り返される時間。 [続きを読む]
  • 『蜘蛛巣城』 完成された世界と物象化された人間
  • 監督 黒澤明 1957年 『蜘蛛巣城』は美しく、完成された映画だ。そしてその作品の美的な完全さがそのまま自由の無さの表現となっているのが特徴的だ。完全であるということは即ち美であり、自由の存在する余地がないということである…少なくとも映画を見ている間は観客にそう信じさせずにはおかない。 構成要素は厳格にその役割を規定され、すべての映像、すべての時間が統制されている。現在で過去を挟み込む構成と、予言が有 [続きを読む]
  • 『メアリー女王の処刑』 映画の始まり
  • 監督 アルフレッド・クラーク 1895年 アメリカ映画 キネトスコープで公開された作品。複数の人間が暗闇の中で同時に一つのスクリーンを見る現在の映画とは異なり、個々の人間が箱の中を覗き見る形式だ。媒体の違いによって現在の映画視聴とは体験の質が異なっていただろう。より私秘的で、他者との感動の共有が乏しいものであったことからシネマトグラフに道を譲ることになったのだろう。 後発のシネマトグラフによる『ラ・シ [続きを読む]
  • 『ヴァンパイア』(カール・ドライヤー) 映像の面白さと古びた物語
  • 監督 カール・テオドア・ドライヤー 1932年 フランス・ドイツ映画 (別題:『吸血鬼』) 動き回っていた影が本来の位置に戻り 実体に添って立ち上がる。 最初期の吸血鬼映画の一つ。 自律的に動き回る影の表現、死者の目から見た風景、二重露光で分裂する人物など視覚的な面白さの優った映画だ。カール・ドライヤーは前作『裁かるるジャンヌ』の芸術的な成功にも関わらず、ここでは全く異なるアプローチ、技法を用いている [続きを読む]
  • 『狼の血族』 性的暗喩と不条理に満ちたおとぎ話
  • 監督 ニール・ジョーダン 1984年 イギリス映画 イメージ、世界観、物語、いずれもが独創的だ。本編の内容を夢として描き出し、その中に奇妙で美しいイメージ、現実とは異なる因果律に支配された不思議な世界とそこで展開する不条理な物語を見せてくれる。  夢の世界におけるロザリーン 冒頭、部屋に閉じこもり眠っている少女。同一カット内で照明が急速に昼を夜に変え、不自然に風が舞う。カメラは部屋に飾られた水兵や熊の [続きを読む]
  • 『ピクニックatハンギング・ロック』 ピーター・ウィアー豪州時代の傑作
  • 監督 ピーター・ウィアー 1975年 オーストラリア映画花を観察するミランダ。ソフトフォーカス、逆光、ピントがずれることで淡く映る草花、被写体としての日傘、白い服を着た少女、虫眼鏡で花を見るシチュエーション、あらゆる要素が美を志向している。甘美で謎めいた雰囲気が魅力的な映画。 靴下を脱ぐ少女の足、呼びかけを無視して裸足で歩き去っていく少女たちの後姿、ミランダの幻影、蟻の接写など美しく印象的な場面には事 [続きを読む]
  • 『わが青春に悔なし』 編集が生み出す時間の流れが美しい
  • 監督:黒澤明 出演:原節子 藤田進 1946年コラージュ的な編集が魅力的な映画だ。 家に訪ねてきた野毛が退出する際、彼が気になって仕方ない幸枝が見送るかどうかドアの前で逡巡する。その様子が10秒にも満たない間に4度もオーバーラップを重ねて描写される。彼女の葛藤を端的に示して優れた心理描写となっているが、それ以上に単純に表現として魅力的だ。その後に彼女が無表情に野毛を見送る場面がくるモンタージュもいい。 幸 [続きを読む]
  • 『狂った一頁』 衣笠貞之助の傑作前衛映画
  • 監督:衣笠貞之助 脚本:川端康成 1926年 独創的な映画だ。無声映画であり、かつ、字幕がない。美術、撮影、照明、編集などにおいて様々な実験的な表現がなされており、通常の劇映画、商業映画にない魅力を持っている。説明的なところが全くない映画だが、決して難解ではない。普通に見ていると主人公は病院の使用人で、彼が常に執着している女が彼の妻で、結婚する女は彼らの娘だろうと事後的に解釈出来てくる。 「日本で生ま [続きを読む]
  • 『雄呂血』 視点と描写の乖離が美点となった映画
  • 監督:二川 文太郎 脚本:寿々喜多呂九平 出演:阪東妻三郎 1925年 数々の批評で言及されているように阪東妻三郎プロダクションの第一作目、殺陣の当時における斬新さ、時流に合致しての大ヒット、それらによって時代劇を刷新したこと等が日本映画史上の意義だ。日本映画の発展に寄与したことは間違いないだろう。しかし、『雄呂血』には歴史的な価値に留まらない普遍的魅力がある。現代における批評はそのことを語らなければ [続きを読む]
  • 『君と別れて』 成瀬巳喜男サイレント期の代表作
  • 監督 成瀬巳喜男 1933年 生活のため芸者をしている菊江、その息子の義雄、同じく芸者で彼らの幼馴染の照菊、3人の関係を描いた映画。照菊の物語としては悲劇、義雄の物語としては切ない青春の1ページといったところだろうか。 ストーリーは平凡だが、成瀬作品ではそれが欠点にならない。語り口が軽快で、細分化されたカットが同じ場面を多様な角度から次々と映し出して見せてくれるので、視覚的に飽きない。その目まぐるしいカ [続きを読む]
  • トータル・リコール
  • 監督 ポール・バーホーベン 1990年 アメリカ映画 大がかりなSF映画。ちょっと悪趣味なところがあるが、そこさえ気にならなければよくできた面白い娯楽作品だ。原作者は『ブレードランナー』や『マイノリティ・リポート』と同じフィリップ・K・ディックで、この3本の中では現実と虚構を等価にしてしまうような彼の持ち味が一番ストレートに再現されている。原作にあった詩情やユーモアは消えて、かなり直接的、どぎついと言って [続きを読む]
  • 『河内山宗俊』 現代においても新しい映画であり続けている
  • 監督 山中貞雄 1936年 この映画は日本映画の歴史にとって価値があるというだけでなく、おそらく現代の一般的な観客にとっても面白く、色々な意味で驚かせてくれる映画だろう。新人女優の原節子も新鮮だし、斬新な編集、素晴らしいアクションシーンもある。何よりキャラクターが魅力的だ。 山中貞雄の現存作品としては他2本より知名度が低いのはなぜだろう? 明解な悲劇や喜劇にカテゴライズできないせいだろうか? 脚本も描写 [続きを読む]