OS さん プロフィール

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OSさん: THE S&R
ハンドル名OS さん
ブログタイトルTHE S&R
ブログURLhttp://snr23.blog.fc2.com/
サイト紹介文超短編、ショートショート、エッセイ、詩
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供102回 / 127日(平均5.6回/週) - 参加 2017/07/15 22:44

OS さんのブログ記事

  • 『おっさんとの邂逅』
  •  ある夜、俺は帰宅途中に異常に背の高いおっさんを見た(あるいは見たような気がする)。その夜は満月で、月光に照らされたずいぶん長い影を目に捉えた。周囲に目を凝らすと一軒家と同じくらいの高さの物体が軽く手を上げた。そいつは黒っぽい服を着て異常に大きなハット帽を被ったおっさんだった。 俺はあのおっさんが、そのまま家まで追いかけてきて家の玄関ドアを身体を丸めてくぐり抜けてくるような気がして怖くなりアクセルを [続きを読む]
  • 『死の爪痕』
  •  僕の伯母は、よく夜中に急性心不全による「心臓性喘息」の発作に見舞われた。発作が起きると、息が切れ、ひどい不安に襲われて混乱状態に陥った。当初はまだ発作の症状が軽かったので、父と母は充分に対処できたが、症状がひどくなると伯母のベッドの脇にベルを置き、少しでも苦しいようだったらベルを鳴らすようにと伯母に言った。僕はベルの鳴る間隔がだんだん短くなるのを聞いて、伯母はもう長くはないんだとわかるようになっ [続きを読む]
  • 『絶望からの一騒動』
  •  俺は店の向かい側で中古のクーパーを停め、500円のチリ産のワインを飲みながら煙草をふかしている。すでに遅刻して一時間はたっており、運転席には3本のボトルが転がっている。それでもまだ俺は仕事に行こうとは思わない。あの建物の中にいる店長や常連の顔を見るのも嫌になっており、あまりにも嫌なものだから夢にまで彼らが現れるようになって、俺はまったく寝られなくなった。 それに俺は体に悪いことばかりやってまとも生活 [続きを読む]
  • 『ある先生について』
  •  俺がこの店に勤め始めるずっと以前からの常連客で、みんなから先生と呼ばれている女がいる。彼女の身長は180センチを越えていて、上半身はどこかの国のサッカー選手みたいにタトゥーだらけだ。学校の生徒や同僚には絶対に見せないそのタトゥーをこの店にいる客やバーマンには自慢げに見せびらかす。 彼女は俺のことを良いやつだと思ってはいるが、男としての生物的魅力は皆無だと言い、俺をかわいい年下の女の子のように扱う。 [続きを読む]
  • 『幸運な一日』
  •  俺の働いている店の従業員の大半はなんらかの薬物をやっている。俺もなんどとなく勧められたが、一度も手を出していない。ある晩、ウイスキーを飲みすぎていたので理由は覚えていないが、とうとう薬物に手を出してしまった。少量を吸い込んだだけなのにその効き目は絶大で、美女数十人に囲まれたブサイクな男みたいに、息を切らし、歯ぎしりし、体がブルブルと震えだす。 誰か一人が理由もなく笑い出すと、別の誰かがそいつを見 [続きを読む]
  • 『崩壊の進行』
  •  俺の歯は酒と薬のせいでボロボロで、最近は口臭までひどい。口臭のせいで客からは嫌な顔をされるし喋っていると突然、歯茎から出血し始める。常連客からのチップは減ったが悪態は増えた。おまけにマッシュポテトみたいな柔らかい食べ物を食べているときでさえ、むかし治療した銀歯が簡単に外れる。 俺は今、この店のオーナーに呼び出され話しをしているのだが運悪く奥歯の歯が欠けてしまったみたいだ。また歯医者から入れ歯にな [続きを読む]
  • 『恐怖の先にあるもの』
  •  俺がまだ大学生だった頃、安いアパートを探していて不動産屋の店先に貼ってある物件を見ていたら、築5年10畳20000円という物件があった。友人が築10年8畳で40000円払っていたから、かなりの格安だ。早速俺は不動産屋に交渉し部屋を見せてもらった。内装も綺麗だし、日当たりもいい。普通の条件なら60000円くらいはするだろう。何かわけがあるに違いないと思い、不動産屋にどんな理由があるか正直に言ってくれと頼んだ。「なんで [続きを読む]
  • 『哀れなものたちの逃げ場』
  •  店にある金庫を開けるたびに、オレは強盗をしてみたい衝動に駆られる。誰か友人を巻き込んで、オレを数発殴らせればいい。オレはボコボコにされながらも警察に通報し、中身の無くなった金庫と腫れ上がった顔を見せる。この顔を見た店のオーナーからは同情されていくらか見舞金も貰えるかもしれない。 その後、オレと相棒はどこかでおちあい、5つ星ホテルに泊まり豪勢な食事を堪能しながら、奪った札束をベッドの上にばら撒き、 [続きを読む]
  • 『旅の縺れ』
  •  旅の途中にとあるバーに立ち寄った。カウンターのまえのスツールに腰掛けると、バーマンはあきらかに不快な顔を浮かべオレを見た。バーマンと客との駆け引きを熟知しているオレは瞬時に彼に嫌われたことを察した。 ビールを注文し相場以上のチップをはずんだにもかかわらず、バーマンは無愛想なままだ。テレビに映るスポーツを話題に世間話をするもまったくのってこない。二杯目のビールを頼み、さっきよりもいい額のチップを払 [続きを読む]
  • 『深夜の気晴らし』
  •  仕事を終えた僕はまっすぐ家に帰らず、同僚から勧められた深夜の気晴らしをやってみることにした。その場所まではけっこうな距離があるため、水筒に入れたウイスキーを飲みながら気分を高めることにする。深夜の鳥が高らかな声を上げて歌をうたう。僕も彼の鳴き声をマネして高らかに歌い上げる。 空気は暖かく乾燥している。目的の桟橋には人影はなく周囲は真っ暗だ。浜辺まで歩いていき、海水に手を浸すと、想像していたよりも [続きを読む]
  • 『壊さない思い出』
  •  夏の終わりの夕暮れ時を散歩していると、数年前に暮らしていたある田舎街を思い出した。暑く乾ききったあの街で学生だった頃、あるバーで友人たちと集まり、その日の出来事を語りあったり、ビリヤードをしたりして日々を無為にやり過ごしていた。 その店のバーマンは若い女の子で、僕は彼女の褐色に灼けた綺麗な肌を見るのが好きだった。彼女はよくカウンター越しに飲み物といっしょに気分のよくなるものも渡してくれた。ソファ [続きを読む]
  • 『裏切りの代償』
  •  俺は一年中酒を飲んでいるが、最近はウイスキーよりビールを飲むよう心がけている。健康のためである。素面のときでも顔と首が赤らみ始めたので、本来の色を取り戻すためだ。しばらくのあいだは健康になった気がして、体は向上のエネルギーで満たされ、睡眠は深くなり、食欲も増し、一日中ポジティブでいられるのだが、ビールのせいで体重が増えてしまった。鏡で見ると子犬が一匹、腹の中に住んでいるかのようだ。 ある日、常連 [続きを読む]
  • 『相棒の魔力』
  •  毎晩どこかで一杯やらないと気が済まない俺は、飲酒運転で家まで帰るのだが、不思議な事にこれまで一度も警察に捕まったことがない。たぶんこれは愛車のミニクーパーのおかげだ。本当なら毎日逮捕されていなければならないはずなのに、このクーパーの不思議な魔力の力で警官を追い払っている。一度、すぐうしろをパトカーが走っていることがあった。そんなとき人はかならず冷静さを失うもので、直線の道で蛇行したりカーブでタイ [続きを読む]
  • 『崩壊の兆し』
  •  最近よく夢を見る。いつもの店であくせく働く自分を見せられる。俺はグラスを片付け、ボトルの中身を確かめ、常連たちのジョークとも悪口ともつかぬ挨拶に付き合う。こんなクソみたいな映像が何度も何度も繰り返される。酔っ払っているときの記憶と大差がない。もうそれどころか夢と泥酔の区別がつかなくなっている。 挙句の果てに、初めて会った客に向かってジョークのつもりで悪態をついたり、馴染みの客を初対面と思い込み無 [続きを読む]
  • 『端から眺める景色』
  •  俺は自分の持ち場であるバーの隅に立ち、カウンターに座った常連たちを眺める。彼らはカウンターの奥にはめ込まれた鏡を眺め、自分たちの顔をいつまでもチェックしたりしているのだが、この薄暗い照明のなかでどこまで見えているのかは俺にはわからない。 俺は想像する。彼らがこの店の常連となるまえ、どんな人生を送っていたかと。想像していると、思わず笑ってしまうのだが、この店よりもっと高く洒落たバーの常連であったの [続きを読む]
  • 『昨日やってきた夢』
  •  俺たちは早朝に出発しなかった。俺が目を覚ますと、彼女はまだ眠っていた。その寝姿に、俺はじっと見入った。枕の上に広がる艶やかな黒い髪。小麦色に日焼けした愛おしい顔。閉じられた目と唇。すやすやと眠る彼女の寝顔は、起きているときよりもさらに美しかった。顔が日焼けしているせいか、いつもより溌剌と見える。それに、睫毛は長く、唇はふっくらとしている。今は眠っている子供のようにおとなしい。眠っている間に彼女が [続きを読む]
  • 『損失という希望』
  •  俺は寝室のベッドに横になっていた。枕を脚の間に挟み、右頬をシーツに擦りつけるように。枕を脚の間に挟むなんてことをするのは初めてのことだった。だが俺はそうせざるをえなかった。俺がこれまでに書いてきた文章、何度も何度も書き直し自信を持って完成させたすべての文章が失われてしまったからだ。それらをもう一度書き直すのは不可能だった。後で自分の書いたものを読み返すたびに、どうやってそれらを完成させたのか自分 [続きを読む]
  • 『台風の気まぐれ』
  •  台風は三日間にわたってこの町に留まり続け、強風が巨木の幹を真っ二つに引き裂いた。強風にしなう灰色の枝に必死につかまる葉は強風の力に為す術なく何処か彼方に吹き飛ばされる。風力が強まるにつれ軟弱な枝々は根本から折られ吹き飛ばされる。 ようやく台風が過ぎ去った後には、大木が根本から引き抜かれ横倒しにされ、花びらはすべて吹き飛ばされ雨に濡れて地面に貼り付いていた。木々も花々もすべて死んでいた。 翌週、新 [続きを読む]
  • 『父との旅出』
  •  僕と父は汽車に乗り込んだ。甲高い汽笛が早朝の大気を裂き、汽車は動き始めた。僕は窓の外に広がる景色を黙って眺めていた。もうこの場所には二度と帰ってこないような気がしたからだ。線路の両側には小川が流れている。その川の水はとても透き通っていて、灰色の川底が見えていた。 しばらく続いた荒れ地の向こうには霧に包まれた沼地が見えてきた。死んだ大木がいくつも沼の表面から頭を出し哀れみを誘っているように見えた。 [続きを読む]
  • 『深夜の川で』
  •  暗闇の中で、僕は川の中に手を浸した。その冷たさに心地よさを感じ、全身をこの中に浸したいなと思った。そうすれば気分も引き締まるに違いないし、この暑さからも逃れられる。 僕は着ている服をすべて脱ぎ、全裸になった。夜の生暖かい風が肌を撫でる。裸足の裏にはなめらかな岩の感触がくっついて離れない。僕は水中に思い切り飛び込んだ。どこまでも行けるところまで水中を潜っていたかった。水面に顔を出し、仰向けになって [続きを読む]
  • 『老人の願い』
  •  よれよれの帽子をかぶり、埃だらけで灰色になった服を着た老人が路上に座り込んでいた。疲れきった虚ろな目つきで、老人はわたしを見上げ言った。「猫を見なかったかね?」「いや、知らないね。そんなところに座り込んでいないで早く避難したほうがいい。それとも怪我でもしてるのかい?」「ワシは猫を探しているんだ。この前の爆撃の後からあいつを見かけなくなったちまったんだ」 避難民を乗せたトラックが数台、猛烈なスピー [続きを読む]
  • 『夕暮れの景色』
  •  彼は今、車でハイウェイを走っていて、外はそろそろ夕暮れが迫ってきている。うだるような暑さは舞台裏に姿を消し、軽やかな涼風が開けた窓から流れ込んできていた。前方には苺畑が広がり、赤の点々が薄暗くなる景色に彩りを与えていた。助手席では彼女がスースーと鼻息を立てながら眠っている。ラジオで明日の天気を確認したかったが、彼女を起こしたくなかったのでやめておいた。 彼はのんびりと運転を楽しみながら、流れ行く [続きを読む]
  • 『残された時間』
  •  男は大きな木に倒れ込むようにもたれかかっている。男から少し距離をおいたところに数羽の大きな鳥がこちらの様子を窺っている。上空にも数羽舞っていて時折鳴き声を上げる。彼らが滑空する姿が影となって地面に映し出されている。 やつらが地面に降りてきたのは俺が脚を負傷して以来初めてだな、と男は思った。それほど足の容態は悪化しているってことだ。救助のトラックはもう来ないだろうな。男は大きな鳥を見つめながら考え [続きを読む]
  • 『伴侶』
  •  書物と酒は人生の伴侶だと風が僕に囁きかける。赤い葡萄酒が身体中を駆け巡り、僕の感覚は虚ろになり空虚へとひた走る。そしてその空虚の中へ活字を放り込んでやろうと意気込む。僕の身体は貪るように活字を吸収し始め、つま先から徐々に身体全体を預けついには活字の泉へと沈み込んでいく。だがそうなることはめったになく大体に於いては文章を読んでも理解できなほど赤い液体に身体を侵され、ソファにうずくまったまま朝を迎え [続きを読む]
  • 『彷徨える老人』
  •  夜もいい時間になり、カフェにいた客もみな家路についた。ただ一人の客を除いて。彼は外の電灯に照らされたテーブルの席にいた。彼は夜遅くにここに座っているのが好きだった。テーブルの上には飲みかけの赤ワインが置いてあった。白く伸びた顎髭のせいで彼の佇まいは哲学者のように見えなくもない。 先週あの人は自殺を試みたらしい。ウェイターが言った。どうして?ウェイトレスは興味なさそうに訊いた。さあな、詳しいことは [続きを読む]