有紗 さん プロフィール

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有紗さん: ( hide - and - seek )
ハンドル名有紗 さん
ブログタイトル( hide - and - seek )
ブログURLhttp://bkptef844z.blog.fc2.com/
サイト紹介文オリジナルの「お話」を展示しています。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供107回 / 67日(平均11.2回/週) - 参加 2017/09/10 19:50

有紗 さんのブログ記事

  • 3
  • 街をあとにすることを決め、ニノムはもう1度、レジオの元を訪ねることにした。非礼を詫びようと思ったのだ。コーリィは反対するだろうと思い、寝坊癖のあるコーリィが眠っているうちに出かけた。お屋敷に着くと、ベルを鳴らすだけで扉は開いた。青白い道しるべは、この前とは違う道を照らす。それは、地下へと続いていく。躊躇いがちに、ニノムは階段を降りて行った。だんだんと、肌寒くなっていく。行きついた、その先の、重い扉 [続きを読む]
  • 2
  • 朝食を朝市で済ましたあとは、大通りで旅費稼ぎだ。コーリィはヴァイオリンを手に。ニノムは布を広げて、そこに繊細な花モチーフのアクセサリーを並べる。ニノムは商品の大きな紫色の花の髪留めで、長い前髪を留めた。すみれ色の瞳は光の当たる加減によって、色の感じが変わる。コーリィは息を大きく吸って、オリジナルの曲を奏でる。1曲目は、新緑の季節に相応しい、清々しい曲だ。ヴァイオリンを弾く者だって珍しい。聞きなれな [続きを読む]
  • 1
  • 「ニィ」そう呼ばれた色の白い金髪の少女は、熱心に花を見ていた。白く可憐な小さな花。しゃがみこんで見とれていたら、もう1度呼ばれた。「夜になる前にあの街に行くって決めたろ」先を歩いていた青銀の長髪の青年が、早歩きで戻ってきて、少女の腕を掴んで立たせた。「でもね、コゥ。この花、可愛いの」「またどっかに咲いてるよ。今は歩け」「うん」少女は、後ろ髪惹かれつつという感じで歩きはじめた。目的地の街は、まだ、小 [続きを読む]
  • 3
  • 翌日も、図書館で勉強をした。来福笑美ちゃんに、また会えた。その翌日も、また翌日も。勉強をしに行っているのか、笑美ちゃんに会いに行っているのか、どっちなのか分からなくなって来た。「わたしね、一日だけ、時間を戻せるの」「はあ?」笑美ちゃんは突然言った。「どういうこと?」「やり直したいことがあったら、その日の内なら、一日をもう一度ね、繰り返せるの」「そうしたことはあるの?」「たまに、ね」「いつ?」「わた [続きを読む]
  • 8(最終話)
  • ふたり目も女の子だった。また出産に立ち会った明は、お疲れさま、と由香の額にキスをした。名前は、由香が決めた。「友」自分のように友達に恵まれるように。友を連れて帰ると、まだ二歳の陽には妹にママを取られたと、赤ちゃん返りもした。そんなふたりの子供を抱えても、少し余裕を持っていられたのは、明がどんなに疲れて帰って来ても、話だけは聞いてくれていたからだと思う。それと、陽の遊び相手をしに、綾子と木綿子もよく [続きを読む]
  • 7
  • 明は、陽にきょうだいを作ってあげられたらいい。なんて言うようになった。「きょうだいはいた方がいいしね」「そうだね」由香は照れたように微笑んだ。「ねえ、洋介くんは、どんな風に由香を抱いた?」「どうしてそんなこと聞くの?」「僕のことだけ考えてほしくて、由香に欠片も余裕を与えないようにしてるつもりなのに、由香はいつだって、違う人を見てるんだ」「そんなことないよ。わたし、明のこと好きだよ」「でも、それ以上 [続きを読む]
  • 6
  • 三か月後、由香は、元気な女の子を出産した。想像以上に痛くて、それが何時間も続いたものだから、産まれた瞬間は、ただただ終わった、とほっとしていた。でも、小さくて、触ったら壊れてしまうんじゃないかと思いながら、はじめてその子を抱いたとき、嬉しくて、そして、洋介に見せてあげられない悲しみに、ぼろぼろと涙がこぼれた。出産に立ち会った明も、頑張ったね、と泣いていた。名前は、明が付けた。「陽」もちろん、洋介の [続きを読む]
  • 5
  • 三人で暮らしいてる家に、明を呼んだ。「あんた、本当に由香と結婚するつもりなの?」「冗談でプロポーズしたなら、こんな怖いところにまで来たりしないよ」明はおどけたように言う。「僕は、これでもいい会社ってやつに勤めてるんだ。由香と子供に苦労をさせるつもりもないし、ちゃんと大事にするよ」「でも、ゲイなんでしょ?」「うん。だから、きょうだいを作ってあげるのは無理かもしれないね」「どうして、由香ちゃんと結婚す [続きを読む]
  • 4
  • 葬儀ではじめて顔を合わせた洋介の両親に、妊娠を告げることは出来なかった。言ったら、複雑な顔で喜んだりしただろうか。それとも、苦労はかけられない、と止めただろうか。でも、由香の気持ちは決まっていた。それでも、今まで大切に育ててくれた両親には、未婚の母になることをどうしても言えなかった。実家から、今まで以上に足が遠のいた。三人で、一軒家を借りた。そうやって、新しい暮らしをはじめた。「あ、由香」「え、明 [続きを読む]
  • 3
  • どうして、あの日に限って、朝食を作ろうとなんてしたんだろう。なんで、ベーコンエッグは焦げたんだろう。突き詰めれば、フライパンがちょっと古かったせいと、強過ぎた火加減だろうけれど。でもどうして、ありがとうが言えなかったんだろう。なんで、あんなに怒ってしまったんだろう。綾子は睨むような目つき。木綿子は下を向いている。由香はくちびるを噛んでいた。馬鹿。馬鹿。馬鹿。ばかばかばかばか。どうして、ベーコンエッ [続きを読む]
  • 2
  • それは、午前中も早い内から、気温が三十度に達した暑い日だった。「これ、あげる」洋介は出かけ際に、由香にくしゃくしゃの紙袋を渡した。それはミスタードーナツの袋で、そう言えば洋介は甘いものが好きでよく買ってたな、と思った。「いってくる」洋介はそうくしゃっと笑った。「ちょっと! ちゃんとヘルメットのベルトしなさいよ! いつも言ってるでしょ! 違反取られるわよ!」ヘルメットをただ頭に乗せただけで、スクータ [続きを読む]
  • 1
  • 「明日な、バイトの面接だからな、仕事行く前に起こしてくれな」洋介は首の後ろを掻きながら、何とも情けない声で言った。寝る寸前にそんなことを言われたが、由香はしっかりとそのことを頭に入れた。洋介が前のバイトを辞めて、もう三ヶ月が経つ。おこづかいも尽きて、中古で買ったゲームのやりこみにも飽きて、きっともうすぐ春だから、新しい春物の服が欲しいとか思ったのかも知れない。もしかしたら、洋介は変温動物で、冬の間 [続きを読む]
  • 1
  • はじまりは母がパチンコに行ったことだった。母は昔から生活費がピンチになりかけるとこっそりパチンコに行っていたらしい。そして、そういうときには絶対負けない勝負強さを母は持っていた。手相の神秘十字というのも持っているのが母の昔からの自慢だった。問題はその日がそのお店の十周年だったことと、それに伴ってやっていたくじ。レートは四円に限る。一円二円では稼げないし詰まらない、と母は言う。席に着いてから千五百円 [続きを読む]
  • 8(最終話)
  • 三泊なんてあっという間に過ぎた。時間を取り戻すようにたくさん話をして、知らない夕が怖いと思ったことも忘れるくらいだ。もしかしたら、何でもないようにしていた夕も、実は探りながら、おっかなびっくり加奈子と接していたのかも知れない、とも思った。けれど、もう、そんな必要はない。夕は車でアパートまで送ってくれた。「家族のとこに帰るの?」「ううん。まだ帰らない」「どうするの?」「駅の反対側にレオパレスを借りて [続きを読む]
  • 7
  • 駅で待っていると、加奈子の前で白のバンが停車した。運転手は夕だった。夕が笑顔で言う。「乗って。大丈夫。わたし、ドライブ好きなの」電話で話した予定では電車で行くことになっていたので、加奈子は少々面食らった。ドライブが好きだなんて、夕はそんなにアクティブだっただろうか。「電車だと、座れるかも分からないし、車の方が楽じゃない? レンタカー借りちゃった」「う、うん」レンタカーのお金を半分出そうかと思ったが [続きを読む]
  • 6
  • 「夕?」呼ぶとその女性はあの柔らかな笑顔で振り向いた。やっぱり夕だ。でも、明らかに違う点があった。うさぎの耳がない。「久しぶり。加奈子。会いに来ちゃった」「久しぶりって……勝手に消えて、急に現れて。意味わかんない」加奈子は再会の喜びより、怒りが先に立った。「ごめんね。でも、わたしもいろいろあって」怒りが先に立ったけれど、すぐにそれは収まった。色んな感情が入り乱れて、泣きそうだった。そして、「うさぎ [続きを読む]
  • 5
  • 妊娠三ヶ月。つわりはあるけれど、加奈子は少々過保護になった健吾を鬱陶しくも嬉しくも思いながら、あーだこーだ言いつつ、でも幸せに過ごしていた。数日前、通院している産婦人科に行く市営バスので、女子高生に席を譲られた。はじめはなぜか分からなかったが、市役所でもらって鞄に付けていた、お腹に赤ちゃんがいますマークを付けていたことを思い出し、照れるというか、女子高生の優しさに嬉しくなった。母子手帳ももらったし [続きを読む]
  • 4
  • 懐かしさの理由も、懐かしく思ったことも、すっかり忘れて日常にいた。自転車で市立図書館に通い司書として働き、うちでは健吾と何だかんだ言いつつ仲良く過ごす。変わらない日常。冬が近づき、誕生日プレゼントに送った黒のトレンチコートを着て、健吾は通勤している。我が旦那ながら、格好いい。朝、見送る背中を見つつ、加奈子はほくそ笑む。今日は駅近のカフェで久々に大学時代の友達に会うことになっている。久保田実来、とい [続きを読む]
  • 10(最終話)
  • 有紀は放心状態で、警察に何を聞かれても答えられなかった。それでも家に帰されたのは、未成年だったからだろうか。有紀の世界はあの一瞬からモノクロに変わった。何ひとつ色を持つことが出来ない。手にしたものから色褪せていく。ハルの事件は一応報道されたが、一日で消えた。世間は許せないくらい、ハルに無関心だった。両親もハルについて有紀に問いただすことはなかった。娘が変な事件に巻き込まれた。両親はそんな風に思って [続きを読む]
  • 9
  • ハルの妹さんの事件は結局何も報道されなかった。殺人じゃなくて、自殺だったからだろうか。新しい学校への通学はハイキングコースではない。どこまでも平坦な道を歩く。頭痛は相変わらずだが、マシになった。今通っているのは公立校だ。成績が悪い訳ではないのに、私立から転校ということで、初っ端から良い印象はなかった。ただ、悪いという訳でもない。マイナスからはじまった方が良いと、どこかの誰かが言っていた気がするので [続きを読む]
  • 8
  • あるとき、ハルは急に言い出した。「出頭しようと思う」「どういう意味?」有紀は聞くと、ハルはため息をついた。「三ヶ月前、この近くで殺人事件があったでしょ。犯人は僕なんだ」「嘘。ハルがそんなことする訳ない」有紀は間髪入れずに否定した。ハルは続けた。「亡くなったのは僕の妹なんだ」「え?」予想もしない話だった。「僕と妹はたったふたりの家族だった。両親は幼い頃に僕らを捨ててね。施設で育ったけれど、バラバラに [続きを読む]
  • 7
  • 有紀は、ハルの肩に頭を乗せて目を閉じた。「ハルとこうしている時間は、わたしは生きていることを忘れられる」はじめての日、あんなに悔やんだ様子を見せたハルだったが、まるで恋人のように有紀と体を重ねるようになった。しかし、ただ甘いだけの時間ではない。この行為に大した意味はない。愛を確かめ合う時間でもない。なら何故こうするのか。それは、破滅願望なのではないかと有紀は思う。ハルもどこかでそんな思いを持ってい [続きを読む]
  • 6
  • 「有紀、たまにはトモダチらしく遊びに行こうよ」夏休みの半ば。そう言われて無理矢理約束させられたのが、ディズニーランドだった。夏みの間ということで、有紀は雛子たちに会わなくて済むと思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。園内でかかる費用は全て有紀持ちだ。有紀はいくら用意したら足りるのかと頭を抱えた。それ以前に雛子たちとディズニーランドに行かなければならないなんて拷問でしかない。有紀は行く前から [続きを読む]
  • 5
  • 最近、頭痛が少しらくになった。ハイキングコースを歩きながら、有紀は思っていた。それは、ハルとしてからだ。あれ以来、何故か頭が痛くて悩まされる日が減った。それではまるで、頭痛の原因が、欲求不満だったからみたいではないか。有紀はつまらないジョークにため息をついた。ハッピー、ハルルン、ルンルンルン。魔法の呪文を心の中で唱えると、自然と口角が上がる。「僕は君に酷いことをした」ハルはあの日の帰り道、そう言っ [続きを読む]
  • 4
  • 「ねえ、セックスってどんな感じがするの?」有紀はハルに聞いた。「何を聞きたいのかな?」ハルは困惑したように言った。「わたし、ハルと援交してることになってる。本当にしたらどうなるのかなって」「知ってどうするの?」「分からない」有紀は正直に答えた。「そうだなあ……」ハルは考え込んだ。しばらくして、言った。「死ぬんじゃないかな。セックスは死に似ている」「どういう意味?」有紀は首を傾げる。「した途端に、死 [続きを読む]