箱月 さん プロフィール

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箱月さん: ( hide - and - seek )
ハンドル名箱月 さん
ブログタイトル( hide - and - seek )
ブログURLhttp://bkptef844z.blog.fc2.com/
サイト紹介文オリジナルの「お話」と「詩」を展示しています。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供112回 / 9日(平均87.1回/週) - 参加 2017/09/10 19:50

箱月 さんのブログ記事

  • 8
  • あるとき、ハルは急に言い出した。「出頭しようと思う」「どういう意味?」有紀は聞くと、ハルはため息をついた。「三ヶ月前、この近くで殺人事件があったでしょ。犯人は僕なんだ」「嘘。ハルがそんなことする訳ない」有紀は間髪入れずに否定した。ハルは続けた。「亡くなったのは僕の妹なんだ」「え?」予想もしない話だった。「僕と妹はたったふたりの家族だった。両親は幼い頃に僕らを捨ててね。施設で育ったけれど、バラバラに [続きを読む]
  • 7
  • 有紀は、ハルの肩に頭を乗せて目を閉じた。「ハルとこうしている時間は、わたしは生きていることを忘れられる」はじめての日、あんなに悔やんだ様子を見せたハルだったが、まるで恋人のように有紀と体を重ねるようになった。しかし、ただ甘いだけの時間ではない。この行為に大した意味はない。愛を確かめ合う時間でもない。なら何故こうするのか。それは、破滅願望なのではないかと有紀は思う。ハルもどこかでそんな思いを持ってい [続きを読む]
  • 6
  • 「有紀、たまにはトモダチらしく遊びに行こうよ」夏休みの半ば。そう言われて無理矢理約束させられたのが、ディズニーランドだった。夏みの間ということで、有紀は雛子たちに会わなくて済むと思っていたが、どうやらそうではなかったらしい。園内でかかる費用は全て有紀持ちだ。有紀はいくら用意したら足りるのかと頭を抱えた。それ以前に雛子たちとディズニーランドに行かなければならないなんて拷問でしかない。有紀は行く前から [続きを読む]
  • 5
  • 最近、頭痛が少しらくになった。ハイキングコースを歩きながら、有紀は思っていた。それは、ハルとしてからだ。あれ以来、何故か頭が痛くて悩まされる日が減った。それではまるで、頭痛の原因が、欲求不満だったからみたいではないか。有紀はつまらないジョークにため息をついた。ハッピー、ハルルン、ルンルンルン。魔法の呪文を心の中で唱えると、自然と口角が上がる。「僕は君に酷いことをした」ハルはあの日の帰り道、そう言っ [続きを読む]
  • 4
  • 「ねえ、セックスってどんな感じがするの?」有紀はハルに聞いた。「何を聞きたいのかな?」ハルは困惑したように言った。「わたし、ハルと援交してることになってる。本当にしたらどうなるのかなって」「知ってどうするの?」「分からない」有紀は正直に答えた。「そうだなあ……」ハルは考え込んだ。しばらくして、言った。「死ぬんじゃないかな。セックスは死に似ている」「どういう意味?」有紀は首を傾げる。「した途端に、死 [続きを読む]
  • 3
  • 雛子たちは、データを消す、と約束することは一度もなく、度々有紀にお金を請求するようになった。有紀はハルと連絡を取り、喫茶店などで落ち合った。ハルは雛子たちのことや、有紀が置かれた状況には一切触れず、むしろ忘れさせてくれるような話をしてくれた。他愛のないことだ。今朝、朝食にトーストを焼いていたら、待てど暮らせど焼けなくて、よくよく見たら、ワット数が昨日フライを温め直したときの低いままの設定になってい [続きを読む]
  • 2
  • それから、五日後。依子が登校してきた。有紀が頭痛と憂鬱を連れて教室の席に着くと、前の席には見慣れた姿があった。「おはよう、有紀ちゃん」何事もなかったように、依子ははにかんだ。「頭痛、辛そうだね」まるで自分のことのように、依子は眉間にしわを寄せた。「それより、依子。大変だったね」「何が?」「一週間も休むなんて……」「ああ、ちょっと風邪ひいちゃって。そんな大袈裟なことじゃないよ。あ、でも、あとでノート [続きを読む]
  • 1
  • 朝食のとき、テレビのニュースが伝えていた。殺人事件だ。松本有紀は思った。よくまあ毎日、違う事件が起きるものだ。箸で目玉焼きの頂点を突くと、そこから黄身がぷちっとあふれ出る。有紀は目玉焼きには醤油派だ。黄身に開けた穴から醤油を少量入れる。そこに白身をやり、黄身に絡ませて食べるのが好きだ。「あらやだ。近くじゃない」母が突然言った。「市内よ。隣の駅の近く。ねえ、有紀、聞いてるの?」名前を呼ばれて自分に話 [続きを読む]
  • 3
  • 結婚して一ヶ月。毎日が幸せだ。結婚する前から同棲していたので、そんなに変わったことはないが、籍を入れたことで、大学時代からずるずるダラダラ続いてきた関係に芯が通った。うん、そんな感じ。健吾も仕事を張り切り、そして家事も積極的に手伝ってくれる。今のところ文句の付けどころのないいい旦那さまだ。加奈子は加奈子で、昼間は図書館で司書として働き、家計を助けている。籍は入れたけれど、お金がもったいないから、式 [続きを読む]
  • 2
  • 柚木夕のうさぎ耳のことは、不思議と誰もがすんなり受け入れた。まるで呼吸するかのように、自然だった。加奈子も、最初に感じた違和感が間違いだったかのように、個性のひとつ、いや、個性として改めて認識すらしないくらいに気にならなくなっていた。それよりも、柚木さんの日によって変わる髪のアレンジの幅広さや、街で遊ぶときの服のセンスの良さ、化粧の上手さにばかり目がいくようになった。いつの間にか、夕、と呼ぶように [続きを読む]
  • 1
  • 物憂げな彼女の横顔は、とても美しかった。知らず知らずの内に見入ってしまう程に。透き通るような白い肌。猫を思わす釣り目気味の目と、それを縁取る長いまつ毛。すっと通った鼻筋。艶やかな黒髪。華奢な体。紺地に深緑のラインに同じ深緑色のスカーフのセーラー服が良く似合っている。加奈子と同じ制服。つまりは同じ学校の生徒、ということになる。高校二年になるが、通学の電車で彼女を見たのは初めてだ。学校でも彼女を見かけ [続きを読む]
  • 2
  • 仲達とは、家がはす向かいで同い年だから、赤ちゃんの頃からずっと一緒だった。仲達は、小学校の頃は、背も小さくて、引込み思案で、わたしが守ってあげないとと思って頑張った。でも、中学に入って野球をはじめると、才能が一気に開花した。明るく、社交的にもなって、体つきも、第二次成長と部活で鍛え上げたのが重なって、背はわたしより頭ひとつ高くなって、筋肉もついてがっしりした。三年の夏には、エースで四番のキャプテン [続きを読む]
  • 19(最終話)
  • 心に穴が開いたとはこのことを言うのだろう。母がいなくなってわたしはため息が増えた。しかし、良いニュースもあった。永太とのあいだに赤ちゃんが出来た。お腹の中ですくすくと育ち、今、三ヶ月だ。つわりもなく、快適なマタニティライフ。母は、去り際に自分のことを忘れるように言った。でも、そんなこと出来る訳がない。それでも、もうひとつの言葉。幸せになりなさい、は今後の努力次第かも知れないし、今現在もわたしは幸せ [続きを読む]
  • 18
  • 母が姿を見せたのは、それから一週間後だった。母が無事帰ってきてほっとした。無事と言っても、母はもう死んでいるからそれ以上悪い状態にはなれないかも知れない。母を見たわたしの気持ちの問題だ。「お母さんね、成仏しようかと思うの。もう、心残りもないし」母は悲しげに微笑んだ。「今までお母さんの馬鹿に付き合ってくれてありがとうね」「そんな」何かをあきらめたような母の様子にかける言葉がなかった。でも、これだけは [続きを読む]
  • 17
  • そして、死神はまたわたしの元を訪れた。「ほら、こういうことが起きるんですよ」お茶をすすりながら死神は言った。「でも、姉を助けるにはそれしかなかったんじゃないですか」「だからって、芹沢多美さんを殺していいんですか」「彼女は姉を殺そうとしたんですよ」わたしは死神を睨んだ。「まあ、今回のことは、確かに娘さんを助けるためでしたし、情状酌量の余地はあります。でも、川上美華子さんはやはり危険人物です。噂では心 [続きを読む]
  • 16
  • 母の秘密はやはりわたしに何かを残した。それは、多少のイライラの元で、昨日永太に当たってしまった。母に対する気持ちだと思うので、そのまま母に当たればよかったのだが、母をこれ以上責めるのもわたしには出来なくて、そういう形になってしまった。怒ることもほとんどなく寛容な永太は、何かあったのかと心配してくれた。そこで冷静さを取り戻し永太に謝った。聞こえることはなくても母も永太に謝っていた。わたしは本当はどう [続きを読む]
  • 15
  • 母は東京生まれの東京育ち。母の実家は割と裕福な方で、母は小学校から私立の学校に通っていたらしい。品行方正な育ち方をした母のはじめての恋が、高校のときだそうだ。高校二年生の秋、文化祭の後夜祭で母から告白した。同じ大学に行こうと、二人のデートは静かに勉強出来る空間、専ら学校内の図書館だった。そして、高校三年の夏、はじめて結ばれた。一途に母は結婚するのではと考えていた。しかし、飯田さんはもっとレベルの高 [続きを読む]
  • 14
  • でも、うちに死神まで来てしまった。まず、わたしに死神が見えたことに今更になって驚いている。どうやら母はその死神に成仏を促されるというか急かされているようだ。成仏するということ。それは自然の摂理なのだ。成仏出来るようにわたしも協力してあげた方がいいのだろう。永太に紹介するとか言って浮かれている場合ではないのかも知れない。死神も穏便に済ませたいと言っていたが、わたしも母が消されてしまうという最悪の事態 [続きを読む]
  • 13
  • しかしである。母の幽霊が一緒に暮らしているというだけでも十分なのに、わたしの元には変わったことが起きるものだ。死神、というのが本当にいるとは思っていない。けれど、今、目の前でお茶をすすっている人は、自分を死神と名乗った。玄関でベルを鳴らして、お初にお目にかかります、とやって来た。死神とは意外に礼儀にうるさいのだろうか。死神と申しますと言われて、そんな怪しい人物をそのまま家に上げ、お茶を頂けますか、 [続きを読む]
  • 12
  • 永太との新婚旅行は富士登山に行くことにした。それを姉に伝えると、「新婚旅行なのに何で疲れに行くのよ、リゾート行って、ゆったりまったりラヴラヴしてきなさいよ」と言われた。けれど、いい思い出になるとわたしは思っていた。富士登山を提案したのはわたしだ。永太はわたしの行きたいところに行こうと言ってくれたので、その案が通った。とりあえず、五合目までは車で行き、弾丸ではなく、八合目の山小屋で一泊する。そして、 [続きを読む]
  • 11
  • 七月になると、母はそわそわしてきた。「ねえ、覚えてる?」「何を?」「んもう、冷たいわね。お母さんの誕生日よ。忘れたの?」「あ、ああ」忘れていた訳ではない。唐突だったので、思いつかなかっただけだ。生クリーム増量のケーキに、6と0のチョコレートを添える。仕方ない。注文してこよう。「でも、お母さんがいること知ってる人はわたしだけだから、おめでとうを言ってくれる人もいないよ。パーティーとかするの?」「死ん [続きを読む]
  • 10
  • 「お母さん、わたし、宝くじのこと永太に言おうかと思うの」「どうして?」「なんか、隠してるのが嫌になってきて。結婚するし、永太にだけでもって」母はため息をついた。「ひとりに言ったら、ふたり、三人ってバレていくのよ」「永太は口は堅いと思う。警察官だし」「そうかも知れないけど……」母はもう一度ため息をつく。「喧嘩の種になるわよ」「それでもいいよ。旦那さまに隠し事はしたくないの」「どうなっても知らないんだ [続きを読む]
  • 9
  • 墓場まで持っていかなくてはならない秘密、というのが世の中には存在する。けれど、それでも誰かに話したくなったとき、どうしたらいいのだろう。母がある日、ぽつんと言った。「昔のことなんだけどね、お母さん、風邪をひいちゃってね、三十九度の熱が出たときがあったの。で、それでも家事はしなくちゃならないし、お父さんは気が利かないし、お母さん、キッチンでフラフラしながらみんなのごはん作ってたの。でも、お母さんはそ [続きを読む]
  • 8
  • 寛さんの誕生日は五月。永太の誕生日も五月だと姉に言うと、じゃあ今年は一緒に誕生日プレゼントを買いに行こうとなった。姉の運転する車で行ったショッピングモール。目移りはするだろうけれど、わたしはキャップを買うつもりだ。「寛さんには何あげるの?」「毎年、ネクタイあげてるの。寛さんが、あんまり高いものはいいからって言うんだけど、でも、けっこういいやつあげてるんだ。毎年、誕生日プレゼントのネクタイを、その一 [続きを読む]
  • 7
  • 芹沢多美が姉の家を訪ねてきたのは、それから二週間後だ。菓子折りを持ってやって来たらしい。「何かね、その子見てたら、ああ、わたしまだ疑ってたんだなって気づいた」姉はわたしの作ったミニチョコデニッシュをかじった。「わたしの軽率な行動が、ご迷惑ご心配をおかけし、申し訳ありませんでした。だって。不倫相手の奥さんにそうやって平謝りに来る子もいないと思わない? わたし怒ってやろうと思ってたんだけど、目の前で元 [続きを読む]