そらのかがみ さん プロフィール

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そらのかがみさん: そらのかがみ
ハンドル名そらのかがみ さん
ブログタイトルそらのかがみ
ブログURLhttps://soranokagami.com/
サイト紹介文書き散らかした物語や創作メモの掲載サイト
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供35回 / 148日(平均1.7回/週) - 参加 2017/11/27 00:05

そらのかがみ さんのブログ記事

  • 五 カシャラの濯ぎ手 (五)
  •  五  穏やかな河の流れが二人を隔てていた。川幅は広かったが、底の浅い下流であった。妖魔の里を流れる第一の大河、翡翠の河は森と草原の境であって、カシャラは白燿に輝く丘から下りてきた。男は湿った土を裸足で踏みしめ、木々の脇... [続きを読む]
  • 五 カシャラの濯ぎ手 (三)
  •  三  テーブルの上で視線を交わす、うふふと笑う姫たちをよそ、カシャラはひとりうつむいたままだった。 「あら、どうでしょう?」  また別の姫が声をあげると、カシャラは思わず渋面を作った。  いま口を開いた姫は、カシャラよ... [続きを読む]
  • 五 カシャラの濯ぎ手 (一)
  •  一  いつ見上げても、紫紺の空に陽が昇ることはなかった。  月はあった。満ち欠けもあるようで、半月を見た。山の向こうから昇り、反対側へ下りていくのを見届けた。  星々が流転する空であったが、昼と夜の区別は、ただ空に浮か... [続きを読む]
  • 四 おしゃべりな猫 (四)
  •  四  闇の太子は自嘲したふうに笑みを浮かべ、さらに続けた。 「日々がその繰り返しとあっては、いかに幾百の年が過ぎても里の在り処は分からなかった。ようやく見つけた妖魔の里の名残りの者も、この愚かしい小鬼とあっては、里へ帰... [続きを読む]
  • 四 おしゃべりな猫 (三)
  •  三  チトランシェは食われないことが分かると、ホッとしたように全身を弛緩させ、自分のしっぽにくっついたソースをペロリとなめた。すると、上機嫌なその味に目を丸くして、夢中になって皿の上をなめ始めた。  それを眺めながら溜... [続きを読む]
  • 四 おしゃべりな猫 (二)
  •  二 「僕たちは、妖魔の王の城を探して、旅をしている」  シバが言った。  一向は宿屋の一室に食事を持ち込み、卓を囲んで座っていた。広い部屋に仕切りはなく、壁の所々に燭台が掛けられていた。部屋の片側には四台のベッドが並べ... [続きを読む]
  • 四 おしゃべりな猫 (一)
  •  一「僕たちは」とシバが言った。 細く白い月の光が時計塔を照らしていた。広場は淡い夜の明りに照らし出され、起き上がろうとする少年が、青年の手にあるフレイルに腕を伸ばした。 苦しそうに、だが揺るぎない眼力を眉目に込めた少年を、遠巻きに多くの人たちが見守っていた。否、息を飲んで見つめるその眼差しは、恐れているといってよかった。 吐血し、口の端から赤い液を垂らしながら少年シバは言葉を続けた。「僕たちは、 [続きを読む]
  • 三 不死人の里 (五・終)
  •  五 言い切った。「俺が妖魔の里を見つけだす」 不死の力も弱いくせに。 そう思ったが、今度は口には出さなかった。 だが飲み込んだその言葉は、シバの頭を巡り続けた。不死の力も弱いくせに。「不死の力も弱いくせに」とラクーが言った。びくりと心臓が跳ねるのをシバは感じた。だが彼は笑いながら続けて言った。「翁組のブナ老がよく俺に告げてくる。不死の力も弱いくせにと。だから、なんだ。シバ、お前までそんな言葉を俺 [続きを読む]
  • 三 不死人の里 (四)
  •  四 日々のつらい修練も、ラクーがいたから耐えられた。 どんなに意味の取れない魔術の本も、これ以上は振れないと両腕が悲鳴をあげる剣の素振りも、倣うべき友がいたから頑張れた。挫けそうになる気持ちと意気を、ラクーの背を見て持ちこたえた。ラクーはつらそうな顔をして、それでもシバの方をちらりと見やる。見返せば、苦しそうに笑みを作って歯を食いしばるラクーがいた。その笑みにシバは心を打たれて、ついていった。ラ [続きを読む]
  • 三 不死人の里 (三)
  •  三「お前は不死の力が強い、里の宝だ。まだ、なんの功績も挙げてないのに英雄だ!」「そ、そんなこと――」 言うな、そう言いたかった。だが、まくし立てるラクーは言わせる隙を与えなかった。「里の誰もがお前を讚える。妖魔の城を探り当てるに違いないと、期待をかける。言葉をかける。力を与える。帰郷者たちが伝え遺した魔術の技も、絶境の地を歩く知識も、その知恵も。剣の技も体術も、お前のために教授する」「それは違う [続きを読む]
  • 三 不死人の里 (二)
  •  二「なんてことを」 呟いて、シバはちらりちらりと視線を流しつ、細い声を絞りだした。「里の決め事を破ってはいけない。もし破れば、死を決意してしまうほどの罰によって戒められる。分かってるはずだろう? 翁組の決め事は絶対じゃないか」「ああ、もちろん。そんなことは分かってる」 ふてくされたふうに反駁してくるラクーを睨めつけ、しかしシバはすぐさま首を横に振った。 翁組に正直に打ち明けて、許しを請うようラク [続きを読む]
  • 三 不死人の里 (一)
  •  一 万年、雪をかぶる山脈の背が幾峰も交差しては離れていく、入り組んだ山岳地帯の谷間に、隠れ里は息づいていた。連峰の勾配は険しくて、その中腹には繁茂する雑木林の帯が走り、夏には湿気からくる暑さに満ちて、冬には背の高い木々すらも覆い隠す積雪に見舞われた。短い春と秋を過ぎれば、けして過ごしやすいとは言えない風土に、里はあった。 二十人あまりの不死の一族一党が暮らしを営むその里に、シバは生まれた。 里は [続きを読む]
  • 二 バザールの決闘 (四・終)
  •  四 スッと息を吸い込んで、カディアスはシバの足に押さえつけられいたフレイルを引き、少年の軛から放てば一閃、勢いづけて振り打ちつけた。「シバ!」 チトランシェが は声を上げた。広場の灯火とは別の、弧を描く煌めく残光に声をあげた。 シバは頭上へと襲いくるフレイルの柄の先の、鎖で繋がる刺つきの棒状殻物をとっさに避けたが、そこに絡まる縄鞭がしなって迫った。「ぐっ!」 シバは己の得物で横面を激しく打たれて [続きを読む]
  • 二 バザールの決闘 (三)
  •  三「邪魔を」 シバは呼吸を乱しながらも言い放った。「邪魔をするつもりなんてない。ただ、そこの小鬼に訊きたいことがあるだけだ」「訊きたい、と?」闇の太子は目をつむって首を振り、鼻を鳴らして薄く笑った。「ドゥルニは私の下僕であるぞ。お前の自由にさせてやる道理などない。たとえ、それがただ一言であったとしても、お前の問いに答えさせてやることなど、ありえないのだ」「いま」と、少年は反駁した。「いま、この時 [続きを読む]
  • 二 バザールの決闘 (二)
  •  二 小鬼にひとつ遅れたが、シバは助走をつけて軒を支える柱を掴んで、屋根の上へと登り上がった。勢い、平行を保とうと上半身を踊らせたが、そのまま屋根の端に屈み、片ひざをつき、前を臨んだ。「あの小鬼」 顔をしかめ、シバが鼻の奥で呻いたのは、小鬼の背中が遠ざかるのを見たからだった。小鬼は石造りの家屋の屋根を飛ぶように走り、差を広げていた。「すばしっこい奴め」そう言い捨てながら、すぐさまシバは駆けだした。 [続きを読む]
  • 二 バザールの決闘 (一)
  •  一  森を拓いて耕した畑が続く、丘陵地帯。  風になびく麦穂の畑、青々と葉を伸ばす野菜畑。畑の間を縫うように、石畳が敷き詰められた街道が伸びている。王都へ導く街道は、荷を積んだ馬車が連なり、賑わっている。  街道沿いに... [続きを読む]
  • 一 リョクの涙 (五・終)
  •  五 「なんと不思議なことが起こりうる。この眼はいまだに涙を流す。そしてこの涙の滴、これは余に不可思議な力を与える。太陽を忌み嫌い、忌み嫌われた妖魔の属に――その王たる余にさえ――昼陽のもとでの活動を約束すると」  妖魔... [続きを読む]
  • 一 リョクの涙 (三)
  •  三  陽射しが頬を照らしてくれた。  閉じている瞼が赤く見えた。  血脈は熱く、鼓動が激しく全身をめぐり打った。  しかしリョクは瞳を開けようか、どうしようか迷っていた。 「私は、ひと昼しか太陽を見ることができないと言... [続きを読む]