ramel さん プロフィール

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ramelさん: puppy love
ハンドル名ramel さん
ブログタイトルpuppy love
ブログURLhttp://heirs-ramel.blog.jp/
サイト紹介文二次小説「相続者たち」
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供25回 / 164日(平均1.1回/週) - 参加 2017/12/03 10:45

ramel さんのブログ記事

  • 過去の記事 …
  • ⅩⅩⅤ
  • 男子は夏服のシャツのから少し丈の長いTシャツの裾を出すのが決まりらしい。タンもそうやってネオングリーンのシャツをほんの少し見せていた。時々振り返って手を振るタンが角を曲がって消えるといつものようにキュンっと胸が痛くなった。でも、今日に限ってはそれと同時に少しほっとして安心した肩が落ちた。帰り路ずっと、タンの視線がウンサンを見ながら何か言いたげに逡巡していることはすぐにわかった。― 朝の話の続きがし [続きを読む]
  • ⅩⅩⅣ
  • タンが乱暴にリュックを投げると本棚に当たって無造作に積み上げていたテキストが崩れて床に散らばった。Go beyond your dreams足元に投げ出されたのは二年生のコミュニケーション英語のテキストだ。皮肉なその題名に溜息をついたタンは拾い上げると机の上に置いて制服のままベッドに倒れ込むようにして寝転んだ。夢を実現する方法すら見つけられずにいるタンにはその夢を越えた先にどうやったら進めるのか想像もつかなかった。補 [続きを読む]
  • ⅩⅩⅢ
  • ウンサンは後ろを追って来るタンの足音を聞きながら校舎の間を一瞬だけあのカリフォルニアの爽やかな風が吹き抜けたように感じた。その風は、夏前の湿気の多い澱んだ空気を搔き乱した。タンはやっぱり曇りのないあの眩しい太陽がよく似合う。二人であの太陽の下で過ごせたらどんな風だろう。芝生に寝転んでレポートの相談をしたり、ふざけたタンがコーヒーを溢して汚れたテキストの染みを二人して大慌てで拭いたり、その時近づきす [続きを読む]
  • ⅩⅫ
  • ― タンは本当に簡単に言う。「わかってて言ってるの?それともはっきりと言わないとダメなの?」タンは時々、夢みたいなことを考える。夢見る事はとても大事な事だ。夢を見てそれを描いてみなければ何も始まらない。どんなに願ったとしても願うだけでは叶わないからだ。でも、私達の場合それは大抵、大変な騒動になってしまう。この前も随分と周囲の人を傷つけてしまった。勿論、タンも十分すぎるほど傷ついていたのだけれど。「 [続きを読む]
  • ⅩⅩⅠ
  • 夏はいつもキム・タンと一緒にやって来る。…気がした。「なんだ夏服の俺に見とれてた?」夏服姿のキム・タンが“特に”かっこよく見えるのはきっと出会った日を思い出すからなんだとウンサンは思った。「何言ってんの。」タンに向かって投げたリンゴジュースは表面の結露をキラキラとまき散らしながらタンの手に着地した。「ホントに?正直に言えよ。」キラキラした雫にタンが目を細めると少しだけこの場所にカリフォルニアのあの [続きを読む]
  • ⅩⅩ
  • 暫くの間、チョ秘書が置いて行ったキム社長の写真と「帝国建設秘書室渉外担当課長」の肩書のある彼の名刺を見比べて― 渉外担当課長などと言う役職名は   秘書室長だった頃も今も   聞いたことがなかった考え込んでいたユン・ジェホはタブレットを取り出して社用のスケジュールを開いた。三カ月前のその写真の日付の前後に起こった出来事と当時のキム社長の様子について記憶を呼び起こそうとしたのだ。その当時も今と変わら [続きを読む]
  • ⅩⅨ
  • 「なんで…そんなこと聞くんだ。」急に弟の声色が変化したことに気付いたウォンは自分を心配そうに見つめる弟の顔を見て「何考えてるんだ、お前。」さも可笑しそうに笑った。「そんな顔するな。お前が今考えているようなことじゃない。」そして、タンの額を人差し指で軽く弾くと「もう誰もお前達を無理に別れさせようなんて思ってないから。」今度は安心させるように笑った。「まだ詳しく話せないがないがこれはまあ…何というか、 [続きを読む]
  • ⅩⅧ
  • 兄さんもこんな風にここに立っていたのだろうか?小ぢんまりとしたそのアパートの玄関には同じような郵便受けがいくつも並んでいた。タンは、低い位置に備え付けられたチョン・ヒョンジュの部屋のインターフォンに話しかける為に少しだけ背を屈めるようにしてボタンを押した。あの日、久しぶりに乗った兄の車の助手席が随分と狭く感じた理由はここにあったのだと今更ながら気付いた。― きっと、チョンセンが   自分の居心地の [続きを読む]
  • ⅩⅦ
  • コーヒーショップの店内にはまだ冷房が効いていたが最近、少し涼しくなったテラス席にもちらほら客が座るようになった。飲み残しのドリンクの容器を片付けながらウンサンはまだ涙の名残で重い瞼を瞬かせた。プラスティックカップを持ち上げると汗をかいた容器がテーブルに小さな水たまりを作っていた。暑くなり始めたあの衣替えの日も紙パックのジュースがこんな風に汗をかいていた。トイレを出たウンサンは少し開け過ぎの自分の胸 [続きを読む]
  • ⅩⅥ
  • 職員用駐車場で見送る“コマセン”が何か言いたそうにしていたのはよくわかっていたが何も言うことは出来なかった。辞める理由も、これからの事も、何一つ。ヒョンジュの命より大切なこの秘密を打ち明けるには“コマセン”はあまりに弱く頼りなかった。打ち明ければきっと”コマセン“は力になると言ってくれるだろう。しかし、帝国グループの一員である彼女の父やあの人…そう、ウォンの死後何故か沙汰止みになった離婚訴訟と同じ [続きを読む]
  • ⅩⅤ
  • 珍しくウォンのいる朝食の食卓は普通の家族のようで慣れない空気に家の中が少し居心地が悪かった。「今日はいいのか?」しかも、昨日まではベッドで食事していた会長までが今朝からは同じ食卓に着いていたためハン・ギエは朝から妙に胃のあたりが重くて今朝は会長と一緒に白粥を啜っていた。「ええ、先方から断りの連絡があって。」いつもならタンと二人でもっと気楽に食事している筈だった。しかも、この親子はビジネスの話しかし [続きを読む]
  • ⅩⅣ
  • 「全くボナったら。」ボナはチャニョンからメールが来るとウンサンの事など忘れたように出て行ってしまった。ボナに置いて行かれたウンサンはトイレを出る前にもう一度鏡を見た。そこにいたウンサンは胸元が大きく開いた新しい制服がさっきよりも少しだけ馴染んで見える。「悪くない…かも。」それに…二人の出会った夏がまたやって来る。ウンサンがドリンクショップの中に消えるとタンはミョンスの部屋には向かわず兄の書斎で見つ [続きを読む]
  • ⅩⅢ
  • タンの嗚咽がおさまった丁度その時を知ったかのように抱き合った二人の間でウンサンの携帯が振動し始めた。「電話が…。」ウンサンの心の一部を持ったまま体を離したタンの声は泣きすぎて擦れてしまっている。「うん。」ポケットから取り出した携帯のリマインダーがあと10分でシフトに入らねばならない事をウンサンに告げていた。「タン…。」「バイトなんだな。行けよ。」そう言いながら手を伸ばしたタンは「うんでも…。」ウン [続きを読む]
  • 「若奥様、今日は会長のリハビリの日ですが…。」リビングに入って来たチン運転手は最近ずっとこの家に漂う重い空気に抗えず小声で遠慮がちに告げた。「オッパ、今日はリハビリよ。早く着替えなきゃ。」キム会長はついさっき友人として心配の余り電話をかけてきた主治医の言葉を無視するかのようにタンの母に片手を振った。「ごめんなさい、チン運転手。」タンの母は溜息交じりに「今日はもういいわ。」運転手を下がらせた。長男の [続きを読む]
  • 「キム・タン…?」タンは驚いたように目を丸くするウンサンに向けて― やっぱりかわいいな、ウンサン精いっぱい口の端を引き上げて見せた。しかし、タンのそんな努力は全くの無駄に終わってしまったようだ。当初の目論見に反してタンの顔に浮かんだ“笑顔”のようなものに対しては、ウンサンの微笑みが返されることは無くただその顔を心配そうに歪ませてしまっただけだった。「どうしたの?ここにいても…いいの?」「父さんが、 [続きを読む]
  • ― ボナの言う通りだった。でも、そんなこと少しでも言い出そうものなら「それ見た事か」とばかりに「ウリ、チャニョン〜」が始まることは間違いない。結局その午後の間ずっとウンサンの携帯は黙ったままでSNSにも新しい書き込みはなかった。久しぶりにゆっくりと過ごせる筈の補習のない午後も― せっかくなのに…タンのいないままだらだらと過ぎていく。最近のタンは以前よりもずっと財閥の御曹司らしい。といって御曹司のスタ [続きを読む]
  • 「これは会長の指示で?」チョン秘書の悪びれない顔はユン・ジェホに以前聞きそびれた事を思い出させた。― 後で、自分の写真の有無について   聞いてみようか「婚約されてからは定期的な報告だけでいいとの指示があったので以前のような形ではなくて…。その為、今頃になってこの写真が。」だからここに持ってきたのだな。確かにこれは今の会長に持って行くのは憚られる。近頃では、会長が会社に来ることは殆ど無くなった。今 [続きを読む]
  • 帝国ビルメンテナンスの警備員詰所の奥にある手狭な自分のオフィスでチョン秘書は手元の封筒を誰に渡すべきかともう二時間も迷っていた。キム・ウォン社長の婚約発表からひと月後会長からは社長の行動観察について「ウォンはもう落ち着いたようだから…。」と以前よりは緩やかな監視に変わっていた。― 結局、それが仇になったのか…会長の下で仕事を始めてもう20年ほどになるがこれほどのグループの危機は初めてだ。そして…―  [続きを読む]
  • 「キム・タン…その…大丈夫?」 「うん。」悲鳴を上げたくなるほどの寂しさの中でそう答える今日のタンは嘘つきだ。「兄さんに別れを言いに来てくれたんだな。」「うん。」不謹慎な私もあたかも葬儀がただの言い訳ではないかのように嘘をついた。タンから溢れる痛みが出口を探していた。きっと今日まで誰にも託すことのできなかったその痛みはタンを今までよりも更に孤独にさせているに違いない。私は手を伸ばしてタンに触れた… [続きを読む]
  • 父親が死んだ時ウンサンは知った。“悲しみ”とは人が一人で抱えていかねばならないものなのだと。最初ウンサンは母や姉と寄り添うようにして悲しめばそれで父を失った“悲しみ”の全てが癒されるのだと思ったが直ぐにそれが間違いだと気付いた。結局、ウンサンが持つ“悲しみ“の全てを誰かと共有することは出来なかった。何故なら、家族であっても誰一人として自分と完全に同じ”悲しみ“を持つ者はいないからだ。それは同じ時を [続きを読む]
  • その葬儀場でも一番大きなホールだけでは収まりきらず隣のホールも貸し切って行われた葬儀は一般的な二十代の青年の葬儀とは違っていた。死者と同年代の会葬者の姿はほとんど見当たらない。大体において若くして亡くなるとまだ連絡を絶やさない学生時代の友人も多くいる為会葬者も同世代の友人達が多くなる。しかし、キャリアを積み、結婚をするとやがて学生時代の友人達とは連絡が途絶えがちになり会葬者は仕事の関係者が多数を占 [続きを読む]
  • 「携帯を睨んだってタンは痛くもかゆくもないわよ。」「別に睨んでなんか…。」ボナは、チャニョンに同意を求めるように視線を向けたが「睨んでたわよ、ねぇ。」チャニョンは、二人の間に巻き込まれたくないとばかりに英語の問題集に没頭しているふりをした。「だいたい男ってのはこっちがどんなに気にしてるかなんか全っ然、知ったこっちゃないのよ。ねぇ、チャニョン。」ボナは不満げに今度は名前を呼んで「えっっ!おれ?タンの [続きを読む]
  • 「タン、用意できたか?」「ええ、おじさん。」少しでも落ち着いて見えるようにと母の用意したスーツはかえって自分の幼さを際立たせる気がした。ネクタイを直そうと鏡を見ると少し歪んだ虚像がタンを見返した。その虚像はどうやら不似合なスーツが窮屈そうな“気の毒な御曹司”を演じているようだった。父の親戚や離婚係争中の義母他にも帝国グループの分裂とそこから生じる幾ばくかの利益を虎視眈々と狙う人々。兄の婚約者の一族 [続きを読む]
  • タンは、死というものがこんなにもシステマティックに管理されているものだとはこの時まで全く知らなかった。 暴風雨の深夜に起きた事故は、嵐の収まった朝になって人の知ることになった。 だがウォンが何故、その場所にいたのかはもう告げる事のできない本人以外誰も知らなかった。そして、車から放り出され崖下に横たわっていたウォンの上をその年最初の嵐が通り過ぎた為 身元が知られるようになるまでには事故の後、三日が必要 [続きを読む]
  • 「ねぇ、タン。キム・タン、電話鳴ってる。」 タンはミョンスの母が借りたマンションの一室でウンサンの髪を弄びながら関数と格闘するウンサンの邪魔をすることに余念がなかった。 我が子の成績が少しでも上がるようにというミョンスの母の願いは今年も虚しくも打ち砕かれ続けている。高3になってもミョンスのクラブ通いが減ることは無く当然のように、ミョンスの成績も落第すれすれの低空飛行から浮上する予定はなさそうだった。 [続きを読む]
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