皐月みつこ さん プロフィール

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皐月みつこさん: 夢現物語
ハンドル名皐月みつこ さん
ブログタイトル夢現物語
ブログURLhttp://satukimituko.blog.fc2.com/
サイト紹介文歴史を研究しつつオリジナル小説やエッセイを連載しています。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供56回 / 133日(平均2.9回/週) - 参加 2017/12/23 23:46

皐月みつこ さんのブログ記事

  • 7,優しき居場所
  •  夢の中にも花明は出てきた。 真っ白な光に包まれた何もない世界の中で、無垢な純白の裸体を晒した花明が佇んでいた。 腰まで伸びた光沢のある艶やかな黒髪は、上昇気流に煽られているかのようにふわふわと靡(なび)いていた。 鋭さと愛らしさを兼ね揃えた神秘的な眼差しで、花明は山沢を真っ直ぐ見つめていた。その眼の奥には、慈悲のような、悲しみのような、何とも見えない優しく淡い感情が宿っている。「花明」  名前を呼 [続きを読む]
  • 9.仲良くできるわけない
  •  遊園地で遊んで以降、私と月喪は毎週土日に真子たちと色々なところへ行った。 近所のゲーセン、映画館、日帰りキャンプなど、様々なことをして私たち四人は交流した。月喪も真子たちと遊ぶ度にだんだんと表情が豊かになり、自分から話すようにもなった。真子たちに心を開いていった証拠だろう。彼の変化を目にする度、私は嬉しさで胸がいっぱいになった。 それから四人のメルアドも交換し合って、月喪は私たちの正真正銘の友達 [続きを読む]
  • 8.如月朔
  •  如月朔は、夢を見ていた。 今から9年前――朔がまだ8歳だった頃に起きた、惨劇の悪夢を。 ガラスの壁越しに、赤い血で濡れた白い部屋があった。その中で、全身血まみれの母が鎖で両手足を縛られ、地に座り込んでいるのが映っていた。 彼女の隣には、同じく身体中血まみれで地に座っている白衣の中年男性がいた。彼は朔の父だ。髪と虚ろに開かれた目は、黒い。父は既に、生き絶えていた。 それに対し、母の髪は自分と同じ橙 [続きを読む]
  • 7.みんなとご飯は食べられない
  •  家の玄関を開けると、白衣姿の父さんが立っていた。顔には、黒いガスマスクを付けている。 今日は夜勤がなかったのか、帰りが早い。「父さん??帰って来てたのか」「おかえり、渚。今日は肝臓と眼球と舌の煮物だぞ」 ガスマスクの中から、父さんのこもった声がした。 居間のほうから、おでんのような煮物の良い匂いが漂ってくる。臓器が血で煮込まれている、美味しそうな匂いだった。 人肉料理を作る際に発せられる臭いは、 [続きを読む]
  • 6.友達になろうよ
  •  次の日の朝、通学路を進んでいると、偶然月喪と遭遇した。「あ、おはよう月喪」 と私が挨拶すると、月喪は立ち止まってこちらを振り返った。そして、無言無表情で軽く会釈した後、踵を返し遠くへ走ってしまっていった。「あれれ??行っちゃった」(でも、無言だけど挨拶してくれた) 少しだけ、彼の心が開いたような気がする。そう思った時、喜びが胸に込み上げた。(これから??もっと仲良くできる、よね?) 私は笑みを浮 [続きを読む]
  • 5.ひとりぼっち
  •  私と真子と月喪の六班は、本日掃除当番のため放課後に教室の清掃をしていた。他の生徒たちは皆部活、或いは帰宅したため、廊下は静まり返っている。 私が机の下の埃をかき集めていると、真子が背後から声をかけてきた。「ねぇ、佳也子。今日の昼休み、屋上で月喪君と何してたの?」 その言葉に驚き、私は肩を弾ませる。真子はクスクス笑いながら、何かあるなと勘繰るように聞いてきた。「あ、やっぱ図星ですかぁ???ねぇねぇ [続きを読む]
  • 4.千鳥先生
  •  翌日、二年B組の教室に入ると、黒木が座っていた。 彼女は、ちゃんと手紙に書いた通り反省しているのだろうか。俺は試しに、黒木のほうへ視線を向けてみた。 暫ししても、彼女はこちらに目を合わせようとしなかった。気づいていないのか。俺はじっと彼女を見つめてみた。しかし、いつまで経っても黒木は視線を合わせようとしない。 なんだか前日と様子が違うのは、気のせいだろうか。(反省??しているのか?) その時、 [続きを読む]
  • 3.ゴメンナサイ
  •  翌日登校すると、教室に月喪がいた。彼は自席に座り、スマホでスプラッター映画を見ていた。 月喪の後ろを通りすぎ、自席の椅子に座る。一瞬月喪のほうへ視線を向けたくなったが、彼の警戒心を煽るとスクープが困難になるかもしれないと思い、堪えた。 だが気持ちを抑えれば抑えるほど、緊張感が高まり、動悸が激しくなる。(佳也子よ、今は一切彼に手を出すな。昼休みになったら??) さっそくスクープ開始だ。と頭の中で自 [続きを読む]
  • 2.人に似てグールに非ず
  •  全身から血の気が引くと同時に、私は手にしていたスマホを地面に落としてしまった。 目前に、唇を血で染め、赤い雫の滴る生肉を食べている月喪がいたから。「あ??」 月喪の口から、小さな声が漏れる。 私はスマホを手に取ってダクトから降り、彼のそばにしゃがみこんだ。非現実的な美しさを持つ顔がこちらを向き、全身にぞわっと鳥肌が立つ。「あ??あ??」 口から、無意識に震えた声が漏れる。 引き吊った表情を浮かべ [続きを読む]
  • 1.人喰い少年
  •  勉強机、テレビ、ゲーム、本棚、ベッド、タンス、クロゼット、小型冷蔵庫などの生活雑貨が置かれている、狭い小部屋。朝だが、誰かに部屋の中を見られたら大変なので、カーテンは閉めている。 薄暗い室内中央に置かれた小さなテーブルに向かい合いながら、俺は朝食を取っていた。 テーブルの上に置かれた皿には、神経が切断された目玉、血で濡れた心臓の皮、管を二つに裂いて平たくした小腸、サイコロのように切り分けられた舌 [続きを読む]
  • 喰鬼【目次】
  •  オカルトマニア少女 黒木佳也子は、口が血生臭い美少年 月喪渚と出会う。 月喪は、人肉しか食べられない特殊体質を持っていた。 カニバリストの月喪をスクープをするため、彼を追いかける佳也子。 人食いであることでずっと独りだった月喪は、自分を怖がらない佳也子に心を開いていく。 だが月喪は、獰猛な喰人本能に目覚めていって……。 これは、血生臭く哀しい恋愛恐怖譚。 ジャンル:ファンタジー 作品傾向【現代/恋 [続きを読む]
  • 14.幸せを振りまいて
  •  気がつけば、恵は元の場所に戻っていた。正面にある燃えていた柊の家は、ただの燃えかすになっている。周囲は、すっかり現実に戻っていた。 だが唯一直っていないのは、村人たちが自分を長年裏切っていたという事実が心に突き刺さり、傷を深くえぐっていることだ。 背後に佇む柊が、恵に言った。「これで、わかったでしょ?」「??」 恵はむせび泣きながら、柊を振り返る。「君には残留思念をただ見るだけでなく、ここにいた [続きを読む]
  • 13.恵の心、揺らいで
  •  美里は、独り小道を歩いていた。平日のせいか、周囲の田んぼや畑では農家の人々がトラクターを運転したり、雑草を手で抜いたりして働いている。忙しいながらも平凡に生きているのであろう彼らを見ていると、急に妬ましい気持ちになった。 平凡な日々から突如として投げ出されてから、美里は初めて平穏な人生に羨望を抱いた。今まで生きていることに何の感謝もせずぐだぐだと過ごしてきたが、それが今ではとても輝くものに感じら [続きを読む]
  • 12.迫害【後編】
  •  恵は、学校から少し離れた所にある桜の木の前に立っていた。木は二階建ての一軒屋ほどの高さがあり、幹は大人の片腕くらいの幅がある。 普通の桜の倍近くあるこの立派な桜の木は、七年前、とても貧弱だった。他の雑草に栄養を取られてか、幹はホウキの柄のように細く、枝に付いた葉と花は指折り数えるほどしかなかった。幹の皮は乾燥し、剥がれて、真っ白な木の表面が丸見えであった。 当時小学生だった恵は、学校へ通う途中に [続きを読む]
  • 11.迫害【前編】
  •  その日の午後十時頃、殺人鬼が逮捕されたという情報が、村役場から全ての村人たちに電話で伝えられた。 村の人々が皆安堵し、深い眠りについた。 だが、それは山波一家に降りかかる惨劇の序曲だった――。「何なのよ!? あんたたち!」 翌朝、外から響いてきた母の罵声で、美里は目を覚ました。(お母さん!?) 美里は素早く掛け布団を剥がし、ベッドから飛び起きると、一目散に部屋を飛び出た。 一階の玄関の向こうから、母 [続きを読む]
  • 10.祟りを呼んだ少女
  • (そんな??馬鹿な??) 白い衣と赤い袴を纏ったその中年巫女は、よろめきながら表情を強張らせた。 月光に照らされる、夜の神社の境内。その中に、黒煙に酷似した靄が一つ、宙に浮いている。靄の中には、人影らしい"何か"が居た。 靄の周囲には、巫女と同じを身に着けた人々の夥しい数の死体が転がっている。人々の身体に外傷はないものの、表情は苦痛に悶えるように恐ろしく歪んでおり、白目を剥いている。 彼らは、黒い靄 [続きを読む]
  • 9.罪と罰【後編】
  •  ゲームセンターから出た後、柊たちは近くのカフェで昼食をとることにした。 既に時刻は午後三時。ゲームセンターに四時間以上いたことになる。 カフェは西洋風の雰囲気で、レンガと木材で構成された店内は田舎者の自分には心地よい感じだった。 相変わらず人はいなかった。だが、通行人に姿を見られたら困るので、柊はまた透明化していた。 残念ながら、美里と一緒に食事をすることはできない。透明化したままでは、端から見 [続きを読む]
  • 8.罪と罰【前編】
  •  翌日、美里は起きるとすぐさま居間にいる母の元へ向かった。 ギシギシ鳴り響く階段を降り、居間へ入る。木の匂いが仄かに漂う居間は、染(し)みが点々と付いた薄汚い木板の壁と床で構成されている。その隅に設けられた古びたキッチン手前の食卓の椅子に座って、母が朝食を食べていた。「お母さん!」 そう声をかけると、母はこちらを振り向いて表情を強張らせ、箸を落とす。「み??美里!? いつの間に戻って来たの!?」「ごめん [続きを読む]
  • 7.再会
  •  鶴の力で再び空を飛び、美里は柊君の元へ戻った。一緒に飛んでいる神木の精霊は全く見えないが、頬に当たる温風でなんとなくそばにいることがわかる。 草原へ降りると、美里たちは柊君のもとへ駆け寄った。柊君の身体は、再び黒い羽に分裂し初めていた。「柊君! 精霊を連れてきたよ!」 その時、柊君の周囲に温かい風の渦が巻き起こった。小さかった葉擦れの音が、ざぁざぁと大きな騒音に変化する。何も見えないが、精霊が柊 [続きを読む]
  • 6.破魂の弓矢
  •  夜鳴き虫たちの声で、美里は目を覚ました。途端、雨の匂いを含んだむせかえるような緑香が、美里の鼻をつく。全身を、草が包み込んでいる感触も感じた。 瞼を開くと、背の高い藪(やぶ)が視界一面を覆っていた。藪の葉と葉の隙間から見える夜空には、銀色に輝く月が浮かんでいる。「ここは???」 美里は上半身を起こした。すると、正面の少し離れたところに、青い光に包まれた柊君が倒れているのが目に入る。「柊君!」 美里 [続きを読む]
  • 6.鬼子の渇望するままに
  •  雲間から降り注ぐ夕光に照らされ、揚子江の水面は黄土色から緋色へ変色していた。しかしその緋色は夕光によるものだけでなく、今日だけで数百人も殺された敗残兵の血の色でもあった。 機関銃隊の残敵掃蕩は、朝から午後五時まで休憩を取らずに続けられた。その間に数え切れないほどの敗残兵が処分され、揚子江へと破棄されたのである。 屍が屍を塞き止め、流れることなくいつまでも滞留し、各々が吐き気を催す強烈な腐敗臭を垂 [続きを読む]