welfair8 さん プロフィール

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welfair8さん: 誰も読まなかった幻の小説、「片端者」
ハンドル名welfair8 さん
ブログタイトル誰も読まなかった幻の小説、「片端者」
ブログURLhttp://misaki8.sblo.jp/
サイト紹介文片端者の心理を描いたもの
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供126回 / 186日(平均4.7回/週) - 参加 2018/01/14 15:30

welfair8 さんのブログ記事

  • 大阪にて
  • しばらくして彼女は出てきて、「部屋の中に入ってください」と言う。中に入ると部屋の隅に大きなな机があり、背の高い先生が白い服を着て立っていた。「先日、手紙を差し上げ診察してもらうために来たのです」正一郎が顔のケロイドを見せると、「いろんな手術の方法がありますが、ちょつと待ってください」と言うと後ろのカーテンの中に入って行った。>src="//novel.blogmura.com/novel_literary/img/novel_literary88_31.gif" wid [続きを読む]
  • 大阪二転三転
  • 病院はビルの3階にあった。受付でベルを押すと看護婦が出てきた。「何か......」と看護婦が聞いた。「実は、先日お手紙を差し上げ、診察してもらうために来たのです」看護婦はいぶかしげな様子なので、正一郎は左の顔のケロイドを見せると看護婦はああ、と言って部屋の中に慌てて引っ込んだ。>src="//novel.blogmura.com/novel_literary/img/novel_literary88_31.gif" width="88" height="31" bord.. [続きを読む]
  • 大阪にて
  • 正一郎は左の顔を隠すために首を左に傾け、火傷でくちャクチャになった左手をポケツトに突込んで猫背で歩いていく姿勢は何か異様で陰湿で人から好かれるものではなかった。最悪の姿勢なんだが、顔のケロイドを隠すために自然に身についたスタイルであった。顔のケロイドはいびつな姿勢を正一郎に強要したのである。>src="//novel.blogmura.com/novel_literary/img/novel_literary88_31.gif" width="88" height="3.. [続きを読む]
  • 大阪
  • 大阪には午前7時に着いた。会社へ急ぐ人たちと一緒に歩く。群集の中を歩くのが正一郎は一番嫌いである。周囲の者が後ろ指をささないか心配である。自分を見世物小屋の珍動物として見るのではないか。悲鳴を上げる者は出てこないか。正一郎は不安になる。嫌悪の視線を送られるのは敵わない。>src="//novel.blogmura.com/novel_literary/img/novel_literary88_31.gif" width="88" height="31" border=".. [続きを読む]
  • 大阪に
  • 熊本に戻ると大阪の形成外科の病院から手紙が来ていた。「診察に応じます」と言う内容の手紙だった。翌日、熊本から寝台車で大阪に正一郎は向かった。「顔のケロイドがなくなればどんなによかろうか」と正一郎は思うのである。手術が出来れば未来が見えてくるのだが。心は暗く湿りがちなのだが、希望は持たなければと自分を励ますように強く思う。>src="//novel.blogmura.com/novel_literary/img/novel_literary88_31.gif" width.. [続きを読む]
  • 院長先生
  • 「ああ、そうそう。小倉に手術の上手な先生がいたな。紹介状を書いてやろう」紹介状を書いて
    くれるのかと正一郎は思ったが、だた先生は名刺に「私の患者です。よろしくお願いします」と
    書いただけである。ただこの名刺が大変効果があって、小倉の先生に会った時に大変懐かしそう
    にしていたのには驚いたのである。>src="//novel.blogmura.com/novel_literary/img/novel_literary88_31.gif"
    width="88" height="31" border="0" alt=" [続きを読む]
  • 院長先生
  • 院長先生の煮え切らない説明に業が煮えるというか正一郎はいらいらしてきた。やる気があるのかないのか、さっぱりわからない。こんな質問は良くないことだが、先生も怒るかもしれないが、「手術の旨い先生をご存じありませんか?」とつい聞いてしまった。果たして先生は不機嫌な顔をしたが、何か一瞬考えるような仕草をした。>src="//novel.blogmura.com/novel_literary/img/novel_literary88_31.gif" width="88" height="31" bord [続きを読む]
  • 院長先生
  • 院長の話し方には患者を見下したところがあって正一郎は不愉快になった。院長と患者と言う立場の違いはあっても人間としては対等であるはずなのに、何かモルモットでも見るような目づかいがあって聞いてる側としては腹が立つ。おそらくは先生の自信のなさが、逆に高慢な態度となってそんな話し方をさせるのだろう。手術に対する自信、医者としての医術に対するテクニックの高さがあれば、患者にやさしくなれるだろうし片端者を見る [続きを読む]
  • 院長先生
  • 「目立たなくなっているよ。昔、顔に硫酸を浴びた男の手術を手伝ったことがあるが、胸や腕の皮膚を剥いで貼り合わせたことがあるが、まるでまだら人間だよ。それでも本人は喜んでいたがね」院長はぼそぼそと語る。その話し方はこの建物のように陰気臭く覇気がなかった。覇気がないとすると、患者の立場とすると非常に不安になる。院長が医者として優れた技術を持っていたとしてもこの話し方では患者は不安を拭拭できない。>src="// [続きを読む]
  • 院長先生
  • 院長先生に手術を任せてこれ以上おかしくなったらかなわんなと正一郎は思った。先生は本棚か
    ら一冊の写真帳を取り出して正一郎に見せた。その写真には中年の青いあざのある中年の男性が
    載っていた。「胸の皮膚を移植したのだがほとんどわからなくなっているだろう」「でも移植し
    た部分が白くなっていますね」>src="//novel.blogmura.com/novel_literary/img/novel_literary88_31.gif" width
    ="88" height="31" border="0" alt="にほ [続きを読む]
  • 院長先生の躊躇い
  • 紙に書いた耳の絵を使って院長は手術の手順を説明した。耳の後ろの皮膚を剥いで引っ張ってきて縫い合わせるというのが院長の説明であった。「完全に治るでしょうか?」「そりゃ、分らんね。100パーセント保証はできないよ。妙になることもありうるよ」院長の言葉は医者の立場からすれば正直だが、患者の立場からすれば不安の気持ちが強くなるのである。絶対大丈夫だとかうまくいくよとか、そんな言葉を患者は期待し求めるものであ [続きを読む]
  • 院長先生
  • 「左の耳の上がつぶれているのですが」と正一郎が言うと、院長は顔を顰めて正一郎の左の耳を覗き込んだ。「ほう、だいぶ発育がおくれているようだね」「治りませんか?」「うん、耳の皮膚を剥いでひっぱつてきたらいいだろう」正一郎が解らないという風に当惑の表情を見せると、院長は机の引き出しを開けて紙を取り出して耳の絵を書いた。>src="//novel.blogmura.com/novel_literary/img/novel_literary88_31.gif" width="88" heig [続きを読む]
  • 院長先生
  • 先生の動作は鈍く、優秀な医者が持つ切れの良さはなかった。「手術できますか?」と正一郎が
    聞くと、「移植しなきゃならんが、移植しても色が変わるし、手術しても色が変わるし傷も残る
    。美しくなるという保証はないよ」とぼそぼそと言う。その話し方には患者の心を不安にさせ、
    手術をやめようという気持ちを強くさせた。>src="//novel.blogmura.com/novel_literary/img/novel_literary88_
    31.gif" width="88" height="31" border=" [続きを読む]
  • 院長先生
  • 陰気臭い部屋、夫人の瞼の上の大きな傷跡、なんとなく嫌な感じ。やがてここの院長が出てきた。丸いメガネをかけ、文士坂口安吾に似た、しかし明治か大正の時代に活躍した人が登場してきたような古めかしさがあった。そのイメージは活動写真から突然飛び出してきたような驚きを正一郎に与えた。「実は小さい頃に堀り炬燵に転げ落ちいまして顔と手に大やけどを負ったのです。顔と手にケロイドが残り治らないかと思って来たのです」と [続きを読む]
  • 夫人の瞼の傷
  • 「あまり目立たないですね」と正一郎は嘘をついた。嘘をついたというよりはその場の雰囲気が、つまり夫人の発する波動に否定的な言葉を一切受け付けないと言う真剣さと強さがあったからである。目立ちますねと本当のことを言えば夫人は怒り出したであろう。夫人は愛想良く笑って立ち上がると、「主人に聞いてみましょう」と言って隣の部屋に入って行った。>src="//novel.blogmura.com/novel_literary/img/novel_literary88_31.gif" [続きを読む]
  • 形成外科の奥様
  • 「小さい頃、堀炬燵に転げ落ちまして顔と手に大やけどを負いました。顔と手にケロイドが残り困っているのです。治るでしょうか?」正一郎が顔と手のケロイドを見せると、「そんなに気にしなくても……」と慰めるように奥様は言う。「主人に聞いてみないとわかりませんが、私の瞼の上に傷があるでしょう。皺を取った後なのです。あまりわからないでしょう」自分の瞼の上にある傷跡を夫人は手で触った。刃物で切られたような傷跡が瞼 [続きを読む]
  • 福岡へ
  • 早速、正一郎は福岡市へ向かった。目的の病院は、個人経営の医院で、ずいぶん古めかしい建物
    だった。窓は木枠で壁はずり落ちそうであった。陰気臭くなんとなく入るのに躊躇したが、思い
    切って入っていく。院長の奥さんが応対に出た。瞼の上の方に切り傷があってちょつと正一郎は
    驚いた。>src="//novel.blogmura.com/novel_literary/img/novel_literary88_31.gif" width="88" height="3
    1" border="0" alt="にほんブログ村 小説ブロ [続きを読む]
  • 形成外科の先生
  • 先生のどきどきする心臓の鼓動が聞こえてくるようである。先生は怒ったような顔をして、「うちでは手術できません」と言った。憤然として正一郎は病院を出た。けれど落胆はしなかった。どこかに優秀な医者がいるはずである。捜さねばならぬ。家に帰ってからすぐ図書館に行き、全国の電話帳から形成外科の病院を探した。何通か手紙を出すと福岡から一通の手紙が来た。「診察します」と簡単に書いてある。>src="//novel.blogmura.com [続きを読む]
  • 形成外科の先生
  • 病院へ行くとがっちりした先生が出てきた。先生はにっこりしてそれでは診察しましょうと言った。正一郎の左手を取った時、先生がぎゃ−と悲鳴を上げて後ろに倒れかかったのである。先生の顔は真っ赤になっている。先生は正一郎の左手を放り投げたので、正一郎の左手は空中にバネのように飛び上がったのである。これには正一郎は驚いてしまった。>src="//novel.blogmura.com/novel_literary/img/novel_literary88_31.gif" width="88 [続きを読む]
  • 形成外科
  • 日本の形成外科がどの程度であるかは正一郎は知らない。形成手術を受けてもうまくいけばいいが、失敗すれば顔の部分なので大変なことになる。手術を受ければ傷が残るのであまり期待はできないが、どこかに優秀な形成外科医がいるような気がした。熊本市内の形成外科医に正一郎は手紙を出した。何通かのうちの一通に返事がきた。「診察しましょう」と言う内容である。心躍らせてその病院を正一郎は訪問した。>src="//novel.blogmura [続きを読む]
  • 形成手術
  • 他人がどう思うと自分が自分の顔のケロイドを恐れなければ、障害にはならないわけである。自分が自分の顔のケロイドを恐れることによって心の安定を失い、劣等感に沈み、憂鬱になり、他人を愛せなくなるのである。神を温かく心の中に向かい入れるなどと言うことはとても無理な話で、神を憎むことはあっても愛することはできなかったのである。何をやってもうまくいかない、いつも顔のケロイドが邪魔をする。何とかならないものかと [続きを読む]
  • 顔の悩み
  • 運が悪いといつも正一郎は思っていた。神を呪いたくなるような気分で生きてきた。世間的な幸福を望んだ時にいつも顔のケロイドが邪魔をし、ダメにしてしまうのである。他人の視線におびえていたが、本当のおびえは自分が自分の顔のケロイドに恐怖心を持っていたことである。このことが一番恐ろしかったのである。自分が自分の顔におびえているということに正一郎の苦しみがあったのである。他人の視線より自分の自分の顔に対する視 [続きを読む]
  • 世間的な幸福
  • 毛布やタオルケツトは一軒、一軒訪問して売っていくのだが布団は無理であった。布団は説明会場を取って,一般に普及している布団とは違うということをお客にピーア―ルして売るのである。左手がやけでど皺だらけになっているので気になって説明に正一郎は身が入らない。自分の皺だらけの手を見てお客が驚くだろうと思うと気持ちが落ち着かない。うまくいくはずがない。布団は全然売れなかったのである。顔にケロイドがあればお客に [続きを読む]
  • 布団屋
  • 5回の分割で布団を売るのだが、回収が大変だった。払わずに逃げ出すものもいて、代金が回収で
    きず経営が大変だった。大都会と違って田舎だから訪問はしやすいのだが、売り込んでいくのは
    大変で商いの難しさを正一郎は痛感した。>src="//novel.blogmura.com/novel_literary/img/novel_literary88_31.
    gif" width="88" height="31" border="0" alt="にほんブログ村 小説ブログ 純文
    学小説へ" />にほんブログ村http://ping.blogmura.co [続きを読む]
  • 布団屋
  • その布団屋は個人経営ではなく、京都に本部があって、全国に支部があった。年商何百憶の大きな組織であった。大きいから良いというわけではなくかなり滅茶苦茶なところがあった。真夏に毛布を売り、真冬にタオルケツトを売るのである。汗が噴き出る真夏に毛布を背負って売り歩く姿は狂気じみていた。それでも結構売れるのだから世間の常識では考えられない商法であった。>src="//novel.blogmura.com/novel_literary/img/novel_lite [続きを読む]