welfair8 さん プロフィール

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welfair8さん: 誰も読まなかった幻の小説、「片端者」
ハンドル名welfair8 さん
ブログタイトル誰も読まなかった幻の小説、「片端者」
ブログURLhttp://bbiq8.seesaa.net/
サイト紹介文片端者の心理を描いたもの
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供171回 / 275日(平均4.4回/週) - 参加 2018/01/14 15:30

welfair8 さんのブログ記事

  • ある不安
  • 手術に失敗するととんでもないことになる。失敗は許されないのだ。顔の手術は傷跡が残ったが、まあまあの出来と言える。失敗ではない。手の手術は腿の皮膚を剥ぐと言ったが、腿では剥いだ部分何時も見えてしまうので、気が滅入ると思う。心理的にまずいと思う。剥いだ部分がきれいになるまで何年とかかるので。剥いだ部分がケロイド状になれば目も当てられない。にほんブログ村人気ブログランキングへhttp://ping.blogmura.com/xml [続きを読む]
  • 不信
  • 答えたものの、井芹先生、あまり自信がないようである。手の移植手術はあまり経験がないのではないか。前回の時は説明が具体的で黒板にまで手術の手順を書いたのに、今回はそれもない。何となくボウ―とした感じで患者としては不安の材料になるのである。にほんブログ村人気ブログランキングへhttp://ping.blogmura.com/xmlrpc/5ma91pvhf5rs [続きを読む]
  • 手の移植手術
  • 「難しいですか?」と正一郎が尋ねると「君の場合は皮下脂肪層までやられているので移植しなければならん」と先生は答えた。「どういう手術をするのですか?」「ももの皮膚を剥いで手に持ってくる」「どうやって剥ぐのですか?」「ローラーのような器械で剥いで手に持ってくる」「色は変わりますか?」「多少変わる」「期間はどのくらいかかりますか?」「今度はどのくらいかかりますか?」「今度は大部かかるよ。ギブスをはめるか [続きを読む]
  • 小倉へ
  • 3月になってから手術後の経過を見てもらうために正一郎は小倉に向かった。「顔の傷跡が膨れているような感じがするのですが」と正一郎が言うと、「後で機械で削ったらいいだろう」と先生は答えた。今度は左手の移植手術をやってもらおうと思って、そのことを正一郎は先生に尋ねた。先生はちょつと難しい顔をした。にほんブログ村人気ブログランキングへhttp://ping.blogmura.com/xmlrpc/5ma91pvhf5rs [続きを読む]
  • 自宅に帰る
  • 家に帰ると父親が正一郎に「顔はきれいになったな。手術して良かったな」と言った。喜びも束の間、夜になると耳の後ろのほうがきりきりと痛んで夜はなかなか寝付かれなかった。片頭痛でその夜はまんじりとも出来ず痛みで心臓がとまるのではないかと思ったほどである。にほんブログ村人気ブログランキングへhttp://ping.blogmura.com/xmlrpc/5ma91pvhf5rs [続きを読む]
  • 富田君の事
  • 退院する。病院の一階で富田君に出会った。来週の火曜日に顔の手術をすると言う。火輪で火傷し、顔に火傷の傷跡が残った。右の顔から顎、首の根元まで赤くなっている。若い富田君にとってそれがあることが屈辱なのだ。とても許せることではない。手術をすれば傷跡が残る。それでも手術をして火傷の醜悪な瘢痕を消したいのだ。その気持ちは痛いほど正一郎には解かった。途中、給油するときに、首を左に傾けて給油所の人から火傷の瘢 [続きを読む]
  • 退院
  • 今度は向こうのベツトの富田さんが「退院ですか、よかったですね」と声を掛けた。「ええ」と答えて正一郎がリンゴをやると、富田さんは「ここの人は本当にやさしい」といって見えない目をこする。隣の高橋君は戸畑の実家に帰っている。別れも言えず去っていくのは辛いと思う。にほんブログ村人気ブログランキングへhttp://ping.blogmura.com/xmlrpc/5ma91pvhf5rs [続きを読む]
  • 池田さんの事
  • 年齢は64歳だそうだが、若者のように若い。顔色は良く肌はつやつやしている。池田さんに比べれば、正一郎の手術後の傷跡などたいしたことではない。歩けるだけで幸せである。池田さんを看病している奥さんは毎日ではなく時々来るが髪は真っ白で疲労困憊である。気の毒なくらい疲れた表情をしている。患者の方は元気一杯である。にほんブログ村人気ブログランキングへhttp://ping.blogmura.com/xmlrpc/5ma91pvhf5rs [続きを読む]
  • 退院
  • 2月8日井芹先生,朝、早々とやってきて「もう退院してもいいよ」と言う。早く帰りたいと思っていたので退院と聞いて嬉しかった。正一郎が退院すると聞いて元炭抗夫の池田さんが「寂しくなりますね」と言う。腐った睾丸を除去して何となく元気がなくなったが、それでも安物のポータブルステレオを胸の上に置いて演歌を聞きご満悦である。にほんブログ村人気ブログランキングへhttp://ping.blogmura.com/xmlrpc/5ma91pvhf5rs [続きを読む]
  • 暗い青春
  • 決して暗い青春を正一郎は望んだわけではない。心のふかい所ではいつも明るい輝く青春を夢見ていた。顔のケロイドはなくなったが、手術跡の大きな傷跡が今度は正一郎を苦しめる。これではやくざ者として間違われる。こころ優しい正一郎としてはこのイメージは困るのである。手術を受けても苦しみが消えるわけではない。生きている限り苦しみは続くのである。けれども手術を受けてケロイドを消したことは、消極的ではない。明るい青 [続きを読む]
  • 高橋君
  • 「背中の痣が消えない限り生活に対して積極的になれないんだ」と高橋君は言う。暗い表情だが必ず病気は治すという強い意志のようなものを正一郎は感じ取った。間もなく病気を克服して元気な姿で職場に戻ってゆくのだろう。ふり帰ってみると、正一郎は青春は暗く、楽しい思い出がない。小さい頃、掘り炬燵の中に飛び込まなかったなら、こんなに苦しまなくて良かっただろう。顔のケロイドのおかげで、青春は輝きを失い暗い洞窟の中に [続きを読む]
  • 高橋君の事
  • 2ゲームをやった後で二人はボウリング場の喫茶室に入って行った。「上手だね。ボウリングはよくやるの?」と正一郎は高橋君に尋ねた。「うん、時々ね」と高橋君は暗い表情で答えた。「体の具合は?」「あまり良くないね。早く退院したいんだけどね」高橋君はあまり元気がない。悲しそうだ。正一郎の場合も困るけど、高橋君の場合はもっと困る。背中に出来た黒い痣がだんだん広がって来たそうだから。「気になって仕方がないよ」と [続きを読む]
  • 夜の外出
  • 顔の痛みが軽くなった。顔を横に向けると痛みがぴりぴりと走るが、顔を動かさないと痛まない。ベットの中にいると退屈なので病室を出て小倉の街を眺める。夜になって正一郎は隣の高橋君と外出することにした。顔に大きな傷跡が出来たので外に出るのは恥ずかしかったが勇気を出して近くのボウリング場に行った。にほんブログ村人気ブログランキングへhttp://ping.blogmura.com/xmlrpc/5ma91pvhf5rs [続きを読む]
  • 入院患者
  • 中田さんは病室に戻ると不機嫌な顔をして布団の中に潜り込む。その中田さんの行動は不可解で不思議に正一郎は思った。ところがたまたま、診察室で彼女が治療を受ける場面を正一郎は目撃した。彼女の皮膚は全身が爛れており、彼女の衣服が辛うじて醜悪な皮膚を隠蔽していたのである。中田さんが彼女を避ける意味がよく解った。それは正一郎にはショツクだった。人間とは思えぬ皮膚。彼女を愛せるか。逃げ出したい気分だった。にほん [続きを読む]
  • 憂鬱
  • 人が人を愛せないのは悪徳である。悪徳であるけれども相手から逃げたいと思う気持ちは消すことはできないしこちらの気分は憂鬱である。そう言えばこんなことがあった。廊下で元国鉄マンの中田さんが廊下で話をしているとき、隣の病室からグラマ―な女性が出てきた。その女性が出てくると、中田さんは苦い顔をして自分の病室に戻るのである。にほんブログ村人気ブログランキングへhttp://ping.blogmura.com/xmlrpc/5ma91pvhf5rs [続きを読む]
  • 憂鬱
  • 2月4日朝起きて気分が重い。すっきりしない。憂鬱の一言。どうもその原因は診察室に行く度に出会う患者たちのせいらしい。体中にできものが出来た患者。皺だらけの皮膚の人。ピンポン玉のような皮膚の人。そんな患者たちを見ていると気分が悪くなる。これが人間なのか、まるで動物の皮膚である。異次元の世界に来ているような錯覚を起こす。こんな人たちを愛せるか。愛さなければいけないのだろうが、嫌悪が先に来る。にほんブログ [続きを読む]
  • 増田君
  • 手術が出来るなら手術を受けた方がいい。手術を受けることによって以前より顔が美しくなるなら大いなる前進である。その積極的精神は称賛に値する。美容整形については問題も多いが、火傷のような傷は醜悪であるから除去できるなら除去したほうがいい。手術によつてこれまで苦しめていた醜悪な傷跡がなくなるなら大万歳である。にほんブログ村人気ブログランキングへ [続きを読む]
  • 入院患者
  • 一階の売店で増田君の母親に会った。「あの子に顔のことを言われると身は細る思いがしますわ」と言う。母親にとってはその程度の問題としても本人にとっては死にたくなるような苦しみである。他人にとってはどうでもいい問題でも本人にとっては死にたくなるような苦しみである。人から嫌われ差別されるのだから本人は惨めな思いをしなければならない。にほんブログ村人気ブログランキングへ [続きを読む]
  • 入院患者
  • 井芹先生が来て抜糸する。首を動かすと痛みが走る。耳の後ろが痛みがひどい。電流の流れのように痛みが走り抜ける。この痛みは数年続くのである。大きな傷跡が残った。けれども醜悪なケロイドはなくなったので気分的には正一郎は楽になったのである。午後になってやはり顔に火傷の跡のある患者が来院した。名前は増田という。七輪で顔を火傷したと言う。そう言われてみると首の後ろの方に赤いぶつぶつが一杯ある。本人は非常に気に [続きを読む]
  • 入院患者
  • 頭は丸坊主で杖をついて歩く。夜になると体がかゆい、かゆいと言って騒ぐ。看護婦さんを呼んでかゆいところに薬を塗ってもらう。「この病院の看護婦さんはいつも優しい」と言うのが増本さんの口癖である。増本さんの隣のべッドには中田さんと言う元国鉄マンがいる。左の膝に皮膚病が発生、その治療のために入院していると言う。href="//novel.blogmura.com/novel_literary/ranking.html">src="//novel.blogmura.com/nov.. [続きを読む]
  • 入院患者
  • この病院には8つのベットがある。正一郎の隣には高橋と言って正一郎より一つ年上の北九州から来た男。腰の周辺にあざが出来てだんだん広がってきたそうである。心配になってこの病院に来たという。高橋さんの隣は空きベット。その空きベットの隣が今度来た新米患者の池田さん。正一郎の前のバットには増本と言って目の悪い70歳くらいのお年寄りがいる。href="//novel.blogmura.com/novel_literary/ranking.html">src="//novel.blo. [続きを読む]
  • 入院患者
  • おしっこは管を通して出す。寂しいのかやたらと一人でぺらぺらとしゃべる。胸の上に安物のポタブルプレーヤーを置いて、演歌を聞く。それが池田さんの唯一の楽しみである。周囲の者は哀れだと思っているが本人は一向に気にしない。自分を惨めだとは全然思っていない。演歌を歌ったり、一人ペラペラしゃべつたり、本人は元気いっぱいである。href="//novel.blogmura.com/novel_literary/ranking.html">src="//novel.blogmura.c.. [続きを読む]
  • 手術の傷跡
  • 手術の後の大きな傷跡にショックを受けながらも前に比べれば大前進だから、気分的には随分明るかった。鏡の前に立って正一郎は握りこぶしを作り生きるんだ、生きるんだと叫ぶ。その日の午後、新しい患者が入ってきた。池田さんと言って炭鉱で働いていた人である。昭和24年に炭鉱で大怪我をして以来、ずっと寝たきりである。64歳だが顔色はよく元気そうである。睾丸が腐ってきたので切除のためこの病院に送られてきたそうである。hr [続きを読む]
  • 手術
  • これではやくざ者に間違われる。傷が大きすぎる。顔の部分なので目立ちすぎる。顔の醜悪なケロイドはなくなったので、それで随分人相は改善され手術は成功と言うべきだろうが。悲痛な思いで手術に臨んだが、自分を苦しめたケロイドはなくなったので良しとすべきだろう。経済的には父親に随分迷惑をかけたが、自分がまともにこの娑婆で生き抜いていくためには避けることのできない手術だったと正一郎は思うのである。href="//novel. [続きを読む]
  • 病室にて
  • 耳の裏と顎の下がキリキリと痛んで寝るどころではない。ちょつとでも顔を動かすと電流のようにびりびりと痛みが走る。一晩中、正一郎は痛みでうんうん唸っていた。三日後、包帯の取り換え。トイレに行き、洗面所の鏡で初めて手術後の左の顔を見た。大きな傷跡、刃物で切ったような傷跡。正一郎は一瞬、戸惑うのである。>src="//novel.blogmura.com/novel_literary/img/novel_literary88_31.gif" width="88" height=.. [続きを読む]