massirona さん プロフィール

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massironaさん: 255字で巡らす愛おしい本たち
ハンドル名massirona さん
ブログタイトル255字で巡らす愛おしい本たち
ブログURLhttp://massirona4.blog.fc2.com/
サイト紹介文読んだばかりの、或いは過去に読んだ本の255字レビュー
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供80回 / 170日(平均3.3回/週) - 参加 2018/01/25 11:10

massirona さんのブログ記事

  • ダシール・ハメット『ガラスの鍵』
  • ダシール・ハメット著『ガラスの鍵』 池田真紀子訳 (光文社古典新訳文庫) 信念を持ち、孤独に身を置く人は魅力的だ。友人の窮地を救うべく行動するネッド・ボーモントただ一人が、不器用ながら正しく在ろうとしている姿に感じ入った。誰もが犯人を決めつけ、企み、決めつけられた友人すら自身やボーモントを騙そうとする中で、事件と政治、友情、恋愛とが絡みつくように人の心の裏側に渦巻く感情を揺さぶる。信じる、信じない [続きを読む]
  • カロリン・エムケ『憎しみに抗って 不純なものへの賛歌』
  • カロリン・エムケ著『憎しみに抗って 不純なものへの賛歌』 浅井晶子訳 (みすず書房) 想像の余地、という言葉が深く残る。すべての人間は同じではないが、同じ価値を持つことが現実となるべく、認識を求めること。憎しみに抗い、共に話し合い、共に行動すること。歴史的、文化的に別の価値観で向き合うとき、相手がどこから来て、どのような視点が別の価値観を生み出すのかを理解するべく、耳を傾けること。社会がどう在るべ [続きを読む]
  • イレーヌ・ネミロフスキー『孤独のワイン』
  • イレーヌ・ネミロフスキー著『孤独のワイン』 芝盛行訳 (未知谷) 若さと老成を揺らぎ、復讐と許しに揺らぐ。人生はこんなものだと巡らせてもなお、人生を愛している。不安に揺れ動く人生は、容赦なく愛する存在を奪う。両親から愛されず、幼すぎると遠ざけられた事柄も、その目はつぶさに見て、確信を深めてゆく過程が苦しい。歳月はエレーヌを早く老成させ、彼女から謙虚さを奪う。それでも、繰り返されてゆく関係の連鎖を断 [続きを読む]
  • パスカル・キニャール『アプロネニア・アウィティアの柘植の板』
  • パスカル・キニャール著『アプロネニア・アウィティアの柘植の板』 高橋啓訳 (青土社) 偽書であろうとなかろうと、思いを馳せる言葉や想像には、信頼を抱かせる歴史的背景と人物の人生を立体的に感じさせるような確かなぬくみがあった。日記は『枕草子』を思わせ、日々のごく断片ながら、記す単語一つ、死を含む心揺らす出来事まで、アプロネニアの繊細な感性と心を感じる。それは続く「理性」にも通じてゆく。ラトロの言葉は [続きを読む]
  • 堀江敏幸『曇天記』
  • 堀江敏幸著『曇天記』 (都市出版) 一つ一つの文章の終わりの余韻が、湿り気を帯びて心に馴染む。曇天の思念を追う散歩の目は、日常の光景にとけこむ視点を持ち、事の成り行きに身を任せながら、日常の心揺らす瞬間の機微を深くとらえる。たどり着く場所の淡さやその隙さえ、心に届く思索になる。何処へ向かい、何に目を留め、何を巡らすか。起こることに揺らされ、揺れた言葉でしか表せなくとも、遅効性の言葉を信じて歩く。そ [続きを読む]
  • 夏目漱石『硝子戸の中』
  • 夏目漱石著『硝子戸の中』 (新潮文庫) 人は思い思いの事情を抱え、誰もが死へ向かう。どんなものを抱えているか、他者も知らず、自分も知らないからこそ、幸せでいられる。晩年に来客を通じて巡らす言葉の深みと重みは、自分が今を生きていること、運命に翻弄される生と、その先に待ち受けている死を、近くに感じさせる。自分よりも先に死んでしまった人のことも、嬉しかったはずの記憶も、どこか淡くなり、それでもその陰影は [続きを読む]
  • ジャン・アメリー『罪と罰の彼岸 打ち負かされた者の克服の試み』
  • ジャン・アメリー著『罪と罰の彼岸 打ち負かされた者の克服の試み』 池内紀訳 (みすず書房) 思いを一歩一歩進めるほどに滲むのは、現実を見ようとする目だった。その重み、苦しさ。死は至る所にあり、精神は私たちを見捨て、言葉すら眠りつき、喪失を悲しむ感情すら残らなくする。アウシュヴィッツの真相。自己を失う苦痛に打ち負かされる、消し去れない拷問の体験。亡命によって運命から締め出される身と言葉。生の只中で死 [続きを読む]
  • ワシーリー・グロスマン『万物は流転する』
  • ワシーリー・グロスマン著『万物は流転する』 齋藤紘一訳 亀山郁夫解説 (みすず書房) ずしりと重い言葉が響く。人の不幸を望まなくとも、そうしなければ生きてゆけないなら、自らの弱さ、身の危うさ、粗暴さ、悪意から、人はよくないことをする。それでもなお、人間は人間であるのだった。望む、望まないに関わらず、自由を死なせなかった人々は、その最も恐ろしい者たちでさえ、歪んだ恐ろしい心でも、人間的な心の中で自由 [続きを読む]
  • 小池昌代『感光生活』
  • 小池昌代著『感光生活』 (ちくま文庫、筑摩書房) 自分の中に潜む感情が呼ばれるような気がした。著者を思わせる主人公の日常に浸って読み進めてゆくと、不思議な世界にいつの間にか深く深く入り込んでいる。そうしていつしか中心に抱く大きな不安が、何だか心地よくてほんのりあたたかく、物語を恋しくも愛しくもさせる。紡がれた言葉の美しさや絶妙な文章の区切り、リズム、漢字と平仮名の佇まいに惹かれて、音読して味わいた [続きを読む]
  • イヴァン・ジャブロンカ『私にはいなかった祖父母の歴史──ある調査』
  • イヴァン・ジャブロンカ著『私にはいなかった祖父母の歴史──ある調査』 田所光男訳 (名古屋大学出版会) 名もない死者の真実と向き合う姿勢は、祖父母が一つの悲劇の世代を象徴することから解放するように、生のために作られた存在として、彼らの生きた人生に讃嘆を惜しまない。あらゆることを想像すれば、語りには終わりがない。結局は死ぬこと。死ぬ機会は数え切れないこと。それでも歴史家として想像に頼る安易さを退け、 [続きを読む]
  • ジョルジュ・ペレック『人生 使用法』
  • ジョルジュ・ペレック著『人生 使用法』 酒詰治男訳 フィクションの楽しみ (水声社) 企みと形式と技巧を凝らした物語だ。集合住宅の移ろいをつぶさに描写し、様々な物語のジャンルの垣根をこえて、千五百人以上の登場人物が描かれ、現れては去る。一人がこの世から去るときでさえ、他者はそれぞれの人生の中にいる。生と死、現実の在り方は、多くの人物たちが描かれるほどに、一層鮮明に感じられた。移ろいゆく人間の生活の [続きを読む]
  • パスカル・キニャール『落馬する人々』<最後の王国7>
  • パスカル・キニャール著『落馬する人々』<最後の王国7> パスカル・キニャール・コレクション 小川美登里訳 (水声社) “わたしはそこで生きた”一文に含まれる沈黙の言葉を巡らせ、語るに至る引用を絡めた文章一つ一つに心掴まれていた。生きなおすための原初の苦しみを知る者だからこその思索は、落馬者たちの秘められた生、書く行為が生き延びた者の欲望の要請であり、なお生き延びるための手段であることを語る。人は生 [続きを読む]
  • アナイス・ニン『アナイス・ニンの日記』
  • アナイス・ニン著『アナイス・ニンの日記』 矢口裕子編訳 (水声社) 六十三年間の日記からは、愛の人に映った。深く刻まれた最初の喪失を埋めるべく、いくつも愛を集め、人生を創造し、高みを目指す心は、日記を通じて自己との対話を繰り返した。飽きもせず書き続ける日記の変遷は、一人の女性の中を巡る人生への洞察の深まりと内面の揺らぎを掬い上げる。愛する人たちが消えないよう、喪失に抗い、記憶の傷や歪みに抗って書き [続きを読む]
  • アナイス・ニン『リノット 少女時代の日記 1914-1920』
  • アナイス・ニン著『リノット 少女時代の日記 1914-1920』 杉崎和子訳 (水声社) 時は人を変化させる。変わらないことも含め、幼かった少女は、もう日記の中にしかいない。そう巡らすほどに、日記に語りかけ、書くことや物語を信じている心が、眩しく愛おしくなる。両親揃って生きる幸福を求め、いつも愛を探している。精神を強く保つすべは、自分自身にかかっていることをもう知っている。日記は巡らす考えの碇となり、頼る港 [続きを読む]
  • パスカル・キニャール『涙』
  • パスカル・キニャール著『涙』 博多かおる訳 パスカル・キニャール・コレクション (水声社) 断章を行く物語の変奏の濃密さに酔いしれるように、虚構と史実の混ざり合うたゆたいに身を任せた。生が人に与える、各人を越えた役割を巡らせば、死ぬことは容易ではないことが過る。世の歴史、私たちの物語の始まりは巡らせど、たえず生まれ泣く波の、いつ果てるとも知れない回帰の意味など、本当は誰も知らない。万物の涙に思いを [続きを読む]
  • トーマス・ベルンハルト『原因 一つの示唆』
  • トーマス・ベルンハルト著『原因 一つの示唆』 今井敦訳 (松籟社) 時を経ても、幼少期や青年期の人生の凄まじい時代は、死へと進む過程のごとく、町に到着し、歩みを進め、最初の思考を巡らせば、再び始まってしまう。それ程までに根深い、教育という名のもとの精神の殺戮の場の経験、戦時下の光景。恐怖も沈黙も日常としてあり、生まれついた故郷ザルツブルクの美しくも死に至らしめる土壌がつきまとい続ける。複雑な家庭環 [続きを読む]
  • ナサニエル・ホーソーン『緋文字』
  • ナサニエル・ホーソーン著『緋文字』 鈴木重吉訳 (新潮文庫) 倫理と人間らしさの狭間に立たされるように、読みながら巡らせる。私の中にあるのは、罪とて犯すこともできず、罰とて人に強いることができるほど正しくない自分の心だった。緋文字を胸に耐え、鍛えられること。罪を胸に掲げることもできず、苦悩の中にいること。物語の罪の中、巡る苦悩は違えども、年月は苦悩のもたらす心の変化を伝え、真実を歩ませる。そうして [続きを読む]
  • ライナー・マリア・リルケ『リルケ詩集』
  • ライナー・マリア・リルケ著『リルケ詩集』 高安国世訳 (岩波文庫) リルケの詩の変遷を辿りながら、その心に引き寄せられてゆく。事物を見つめる視線の先に満ちる大きな存在。そこから始まり終わる生について巡らせば、その儚さも寂しさも悩ましさも肯定するリルケの心の在り様や深い思索の言葉に、人としての深みを抱かずにいられない。其処彼処に広がる心がどう感じ、どう考え、どう見るか。私には解釈の及ばぬその果てを、 [続きを読む]
  • ライナー・マリア・リルケ『マルテの手記』
  • ライナー・マリア・リルケ著『マルテの手記』 松永美穂訳 (光文社古典新訳文庫) その目は物事をつぶさに観察する。感じ取る。見える以上に思い巡らす。過ぎ去ろうとするものを逃さずに語り尽くす手記は、読み手の心と近しい距離を感じさせながら、書かずにはいられない思いを伝えてくる。ぼく、きみ、あなた。とりわけその呼び名は、繰り返されるほどに近いところで語られている心地になるよう。そうして、マルテの心の在り様 [続きを読む]
  • ライナー・マリア・リルケ『フィレンツェだより』
  • ライナー・マリア・リルケ著『フィレンツェだより』 森有正訳 (ちくま文庫) 離れた場所にいるからこそ思い抱ける愛を端々で感じる。フィレンツェで見出す自己の内部にある郷愁、巡らす孤独の意志は、自分自身への道へと続く。芸術は孤独な者から他の孤独な者へと伝わり、人生の幸福や、一冊の本との向き合い方などにも語りは広がる。自分の時間の外側に身を置くことで、まだ春の力しか持てずとも、夏を望む勇気と幸福への信仰 [続きを読む]
  • マーガレット・ドラブル『昏い水』
  • マーガレット・ドラブル著『昏い水』 武藤浩史訳 (新潮クレスト・ブックス) 死の一つ一つ。生の一つ一つ。それらが自分の出来事として身にも心にも沁みてくる。生きて、生きて、もう生きられなくなる時まで、生きる。その境地に立つ思考の流れは、逃れられない老いと共に生きる人間誰もの生涯の課題のように迫った。たとえそう生きられたとしても、一番いい死に方ができる保証はなく、誰もが未知の目的地へ向かうのだ。選択肢 [続きを読む]
  • マーガレット・ドラブル『碾臼』
  • マーガレット・ドラブル著『碾臼』 小野寺健訳 (河出文庫) 愛や友情を求めずに生きてきた女性が、子を産み、育て、その過程で愛を知り、人とのふれあいを感じてゆく物語。人として、女性として、生まれて初めての愛を知る瞬間の、煌めくような感動とその気づきは、幸福の高鳴りを伝えてきた。そして覚えてゆく自分以外の者のために抱く感情もまた、母になってゆくことの証として印象的だ。愛は人を孤独にする。けれど、人の人 [続きを読む]
  • 『主よ 一羽の鳩のために 須賀敦子詩集』
  • 『主よ 一羽の鳩のために 須賀敦子詩集』 (河出書房新社) 端々に覗く厳しさが自らを律するのを垣間見る。主に語りかけながらも、自己との対話を繰り返すように、内なる声の言葉の翼を広げゆこうと、想いはときに大多数とは異なる色の動かぬ鳩を見つめ、その苦しみに寄り添い、ときに空の眩しい無限の広がりに恐れを抱く。日常的に為す言葉の中の言い訳も逃さない。待つべき時と待たせてはいけない時とを確かに刻み、心に持つ [続きを読む]
  • 小林康夫=責任編集『午前四時のブルー』
  • 小林康夫=責任編集『午前四時のブルー』 Ⅰ謎、それは自分 (水声社) 佇まいから惹きつけて止まないのはもちろん、どの文章も思いが込められ、尊く、愛すべき魅力を放っていた。パスカル・キニャールの言葉から喚起されたテーマは、人を介してさらに深まり、広がりを見せる。自分という謎は、この世界に生まれ落ちることに留まらず、人間への愛おしさの根源を巡る問いのようにも映る。フィリップ・ジャコテ訪問記も、大江作品 [続きを読む]