kyomasato さん プロフィール

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kyomasatoさん: 鏡真人作品集
ハンドル名kyomasato さん
ブログタイトル鏡真人作品集
ブログURLhttp://kyomasato.hatenablog.com/
サイト紹介文大正11年生まれの鏡真人の作品集です。戦中戦後の激動の時代の思いを詩や短歌で綴っています。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供34回 / 28日(平均8.5回/週) - 参加 2018/01/28 16:06

kyomasato さんのブログ記事

  • あとがき
  • 戦死せし五来川上斎藤よわが青春の糧たりし友よ この詩集を思い立ったとき、敗戦まえに詠んだ作品は全部除くつもりで読み直してみると、そこには、かつての私にだけあって今の私にはないものがあると、改めて思い知らされた。今の私にないのは自ら捨てたためといってもいいが、詠まれた世界は私自身の歴史だから、敢てこれらも加えることにしたのである。 昭和戦争時代のこれらの詩や短歌は、ひどく粗雑でありまた稚拙であっ [続きを読む]
  • みいくさびと
  • ・・・S兄に捧ぐあまねくてらす つきかげにおほひてあまる くろくもをうちはらはむと みいくさにめされゆくなる ますらをのあかきこころの たふとさはなににたとへむ すべもなきそのゆかしさと きよらさをはなにもとめば さくらばなはるまださらぬ ひとのよのわかきいのちを きみがためすててをしまぬ まごころはたふとくもまた ゆかしけれそのたくましき ちからこそとりにもとめば わしににてかつはひろけき [続きを読む]
  • 見渡すかぎりの人の波であるこの広いスティションは出征兵士でそれを送る人で正に立錐の余地もないほどギッシリと埋まってゐる波 波 波である私はその人波の中を轟々たる 話声 雑音 騒音の中をそれらの 尊い 喜ばしいお目出たい喧噪の中をもまれ おされもまれ おされてあッち こッちとよろめいて歩いてゐる実際これは大変な人出である男 女 老人 子供母 妹 父 兄 弟 姉 友それらの雑然たる人の波である統一あ [続きを読む]
  • 神兵讃仰賦
  • アッツ島に散りゆける神の兵二千を思ひて作れる 天地(あめつち)の 極まるところ 膚(はだ)さす 荒ふく風の いや更に 膚さすところ 凍てつきの 涯なる山の いや更に 凍てつくところ 冬籠(ごも)り 春去りくれど 吹ききたる 風なぎもせず 氷柱(つらら)なす 氷もとけず 神護(も)らす やまと島根ゆ はるかなる 北の涯なる 人も吾(あ)も いまだ見ねども 伝へきく 氷の島に 天皇(すめろぎ)の  [続きを読む]
  • 第三次ブーゲンビル沖航空戦
  • 十一月十四日ラヂオ報道をききつつ詠める大勝の報道(しらせ) けふもあり 一度(ひとたび)は よろこびに満ちて 胸ふるへしが火となりて 敵艦(あだふね)めがけ 自爆せる わが友軍機を いま眼に見たり愕然と いま眼に見たり 轟沈(ごうちん)の しらせに続く 自爆三十機憤り 胸をつんざき 術(すべ)もなし わが三十機 未だかへらず自爆なり ああ自爆なり しかありて 敵(あだ)の艦船(ふねぶね) [続きを読む]
  • 鎌倉史跡詠
  • 鎌倉宮にて悲しきや 八畳あまりあるといふ み洞をぐらく 見きはめられず思ふだに いたはしきかも 天つ神日つぎの皇子の たほれ給ひぬ時ならば 大八州国しろしめす 日の皇子なるを ああ 時ならばいきどほり極まりて いま ひれ伏せば 吉野の皇子の み声きこゆる悲しみか あらず 怒りか またあらず 燃えたぎりたり われが心は鎌倉宮 いまも護(も)らすと 彦四郎義光公の 宮のおはしぬ右ひざの  [続きを読む]
  • 応召
  • 大方は うつりゆきけり 五年(いつとせ)まへの その面影の いささかもなし軒なみに 征(ゆ)きしと 小母の語るをば 殊更に聞く ふるさとの家万歳の声 ひびきけり この村の 最後のひとり 今 征きたるか世のうつり早きを 思ふ そのかみの 腕白小僧が 飛行兵たりひとつひとつ 尋ぬる家の 幼子が 今は 少年飛行兵たり石もなく 木も朽ちはてし 父上の墓は 悲しく 荒れにけるかな声も出でず ただ [続きを読む]
  • S君に自覚をすすむる歌
  • 朋友S君一日わがもとに歌稿を送り来るなかに一女性に捧ぐる歌あり大凡十篇なりその女性はわれ知らざるも同君の意中の人たりされど彼には故郷に約せし人ありて近きにめとらんとすよってこの歌を送る大天地 ただ一人の 妹(いも)なるに 何とて よその恋にまどへるあやまてる 身の科(とが)に泣け 正道(まさみち)の恋てふものは さにはあらざりふりすてよ 国学の子と みづからも われらも讃ふ 君にあらずや国 [続きを読む]
  • 出征する同志に
  • 川上茂市兄にいま更に 何をか言はむ み戦(いくさ)に 征くてふ 君は 君にしあれば(昭和十九年三月)山本繁隆兄にさくら花 背に負へる君 日の本の 神の怒りを そのままに 征け(昭和十九年十二月)斎藤良雄兄にまつろはぬ 夷(えびす) ことごと 骨たちて 神の怒りを 見せばやな君(昭和二十年一月)昭和19年9月19日 朝鮮平壌市外「美林」ポプラ林にて [続きを読む]
  • 出陣の賦
  • − この一篇を相楽(さがらか)の同志 神谷博君に献ず ー神武創業の源にかへさんとする帝国が悲願漸く近きに成らんとしてさんさんたる太陽昇天の朝草莽の臣此方に再び令状を拝す感全身にみなぎりて意述べんとして述ぶるに能はず噫我二十有四歳故ありて生を皇土にうけ四界洽き皇化に浴し幸ひにして心気清明再び執銃して奸夷を撃たんとす今省みてみづから思へば我初陣は即ち昨年初夏の候南海に決戦激烈を極むるの秋入隊せんと [続きを読む]
  • むかしがたり
  • むかしむかしと ゐろりべにむかしがたりを するおきないとどかみさび みづからのかたるおきなに にたるかなかのそふかたる くちもとのしらひげひそと みつめいるをさなわらべの まろきめもむかしがたりに にたるかなぱちぱちぱちと おとたててもゆるたきぎの いろあかしおきなはかたり わらべきくふゆのゐろりの あたたかきかな(昭和二十一年十月) [続きを読む]
  • 安岡正篤先生
  • 一冊の 本を求めて ひもすがら 神田の街を さまよひにけりほとほとに 疲れて いそぐ わが腰の 雑嚢にあり 漢詩読本世をおさめ 民を救はむ はげしくも 燃え立つ命 経世嗩言わが膝と 膝をまじへて ひたぶるに 教乞ひたし 安岡の大人(うし)今の世の 哲人なりと 友のいふ 大人(うし)の齢(よはひ)は 五十に満たず東洋倫理概論といふ 世を興す 書(ふみ)を得てより 半年すぎぬ(昭和二十二年 [続きを読む]
  • 春日遅々
  • 菅の根のながき春日をひたごころひとりしあれば欲しきもの更にいまなしうらうらと照る日の部屋は風のねのこそりともせずはるかなる人ぞ偲ばるうとうとと春日をねむるうらさぶるこころもなくて白ひかる子猫のごとくしんかんとま昼のなかにひとりして畳にふせば忘れけり夢もうつつも(昭和二十二年四月) [続きを読む]
  • 失意
  • 言ひ難きを つひに 言ひはつ ひょうひょうと 風ふきすさぶ 夜の銀座にそののちに 来るべきもの われ知らず いまはただ言へ 胸の思ひをあかあかと 街につらなる電灯の 光はげしも 眼にしみるまで大きなる しくじりをせし 思ひあり 俄に ほほに血ののぼり来ぬ高照らす月も かひなし くろぐろと 地に横たはる おのが影かも天みれば 天のこころに なりぬべしと くだちゆく夜を 立ちゐたるかも慰む [続きを読む]
  • 春のうたげ
  • われや歌びと ならずとも君い征く夜に ひらきつる四たりの友の かのうたげ心もしのに 偲ばれて風こそふかぬ 膚さむききさらぎの夜を 恋ふるかなかはるがはるに 飲め飲めと強ひられるまま 強ひるままさかづきかさね 五つ六つ九つ十と およぶほど頬のあかきを 撫でにつつもろ手をふりて 君云へりああわれいたく 酔ひにけりさくらかぐはし 春の夜を君らがすすむ うま酒のその嬉しさに 酔ひにけりこのうへ更に す [続きを読む]
  • 保元平治物語詠
  • 寵愛の ふかかりければ 幼帝を立てし それより 起りたる乱 ( 保元 )へろへろ矢 清盛ごときが 何せむと 肩ゆさぶりて 笑ひけむかも ( 為朝 )はるばると 敵となる子に 重宝の鎧 おくりしか 武将為義炎々と 御所は燃え立つ 烈風に 源為朝 歯がみして 立つその左手(ゆんで) 右手(めて)に 四寸を ながしとふ 鎮西八郎 弓ひきしぼるあにおとと 奇しくも 此処に 面(おも)あひて 闘わ [続きを読む]
  • 幼子に
  • 幼子よ!お前たちの生まれたのが間違っていたのだろうかお前はいまお前の貧しい母親のふところで無心にねむっているけれどお前のこれからを考えるとお前の両親の心は暗いお前の父と母とが根かぎり働いても生活を支えることが出来ないほどのこんなにも苦しい世の中に何故 お前は生まれたのだろうお前の両親はお前が早く成長して元気で立派な人間になることをどんなに望んでいるだろうだがだが そうなるまでにお前の両親はどん [続きを読む]
  • 志尚
  • われかつて友と住みにきその部屋狭く汚れて貧し六畳と二畳つづきに新聞紙 雑誌 灰皿ペン インク 鍋 電熱器反古 写真 屑かご 布団いささかの米 味噌 野菜整然と!乱れてありぬ乱れつつ散りたるなかに混沌と懐疑は住めり混沌はわが性(さが)にして懐疑とは彼が性なり大いなる高き望を混沌と懐疑語りぬ新しき二十世紀と古めきし歴史以前と情操と意志と叡智と美と善と真との世界!  芸術と政治と  自由と束縛と  [続きを読む]
  • 日本選手 ロサンゼルスに大いに奮ふ
  • 全米水上選手権大会 千五百予選 日本選手 全員一着ロサンゼルス 日本選手大勝の 快報とびぬ 昨日も今日も太陽が 輝きゐたり 水の上(へ)に 死力かたむけ 英雄二人全世界に ただ一人(いちにん)の英雄の 君や 日本男児なるかもロサンゼルス 昨日(きぞ)の勝利を 目によみつ 危ふく 涙のおちんとするもおとろへし 日本の国の くにぢから 奮ひたてんと 君ら競へる全世界の視聴 集まる この一瞬 [続きを読む]
  • 松籟
  • この山の ひょろりと高き いっぽんの 松のしたねに いこひてゆかなちち ち ち と鳴くに 仰げば ゆららゆらゆららと 松のゆれわたりつつ山にして まなこつむれば 山なりの ひょうひょうとして 烈しきものを持ちてこし 書(ふみ) かたはらに おきすてて 松風の鳴り きくこころかもみあぐれば 松のあひまゆ 秋のひの陽(ひ)は やうやくに 晴れてくるかも(昭和二十四年十月) [続きを読む]
  • 手記「きけわだつみのこゑ」に寄せて
  • 「わだつみのこゑ」 眠れぬ夜を 読みゆけば ごうごうとして 響きくるものさんさんと 涙ながれて 如何ともする すべ 知らず 遺書を わが読む学半(なか)ば 筆折り 剣(つるぎ) とりはきし ああ 学徒兵 若かりしかな新しき世は 来りけり わだつみに ほろびし人の 遙かなるかもたらちねに 妹(いも)に 幼なに 切々の こゑの叫びは いまぞ聞ゆる弾圧の 嵐のまへに 弱々しき 日本人われを 省 [続きを読む]
  • 桜を伐る音
  • 桜を伐り倒す音がする  とおあん たあん  とおあん たあん荒れ果てて だだっぴろい子供部屋だ窓という窓には ぎっしりと板を張りつめ扉という扉に 固く錠をおろし夜のように静まりかえった 地主の家だ  みんな 行ってしまった  わしの ことを 忘れて いったよ・・・油じみた杖で 寝台に歩みを運ぶこのしわがれた 世紀の影は何を 夢みようとしているのか  ええ!  おめえは 出来損ないめ!う [続きを読む]
  • 奔馬を思う
  • あのごうごうたる音は何だあの凄まじい怒号は何だまるで太陽そのもののようにぎらぎらした両眼に血をふかせ泡をふき 渦をまき 砂塵をあげ前進を汗みどろにして奔る素晴らしく巨大で闇黒な生きもの怒りと血と太陽と砂塵と盲目の意志とそれらをひと揉みに揉みくだいて奔馬は荒れ 奔馬は走り 奔馬は激情する人間の空しさを おのれに知りそのしらじらしさに 涙をたれああ 果てしない虚無の深淵のなかでわたしの心をゆり動かし [続きを読む]
  • 橋ながし
  • 俳句はこの三句よりほかにつくりたることなし秋桜子に多く興味ありし頃いまは亡き伊藤文章に誘はれ千葉多佳士とともに浦和さくら草田島原に遊びしとき橋ながし バスのほこりの ゆく彼方  今朝も微熱あるごとし希むこと 遠からねども 春を病む句に倦いて ひばりに 耳を 奪はれし(昭和二十六年四月頃) [続きを読む]