古荘冬馬人 さん プロフィール

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古荘冬馬人さん: 文学カフェ「移動祝祭日」
ハンドル名古荘冬馬人 さん
ブログタイトル文学カフェ「移動祝祭日」
ブログURLhttp://anisaku1031.blogspot.com/
サイト紹介文詩歌、ヨーロッパの小説、漢詩、日本古典について記していきます。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供67回 / 87日(平均5.4回/週) - 参加 2018/02/21 12:31

古荘冬馬人 さんのブログ記事

  • 連載小説「あの夏の向こうに」第13話   by古荘 英雄
  • 小説と詩の創作と文学エセー今日は三年間で溜まった、イレギュラーな未処理案件を、整理に来たのだった。それは、表には出せないが、社内的にも正規の処理が出来ないという類のものだった。休日に一日取る必要があった。転勤の際には必ず必要な作業だった。 隠匿すべきメモや書類が積もりに積もっていた。一つ一つ今一度内容を確認して、シュレッダーにかけていくのだ。 発生した時には悩みの種だったが、転勤する身になってみれ [続きを読む]
  • 連載小説「あの夏の向こうに」第12話  by古荘 英雄 -
  • 小説と詩の創作と文学エセー あの兄弟は、山が好きで二人で夏山、冬山問わず登っていた、西野はまた思い出す。長くて二泊三日で帰って来るような軽いものが多かった。学生のころは兄の方は、本格的にあちこち登ったらしいが、卒業してからは、素人の弟を連れて、気晴らし程度の散歩代わりといった風だった。 あの年の夏、西野は玲子とのことを宮津に話した。そして、それからしばらく落ち込んでいた宮津を、兄の信一が山に連れ [続きを読む]
  • 連載小説「あの夏の向こうに」第11話  by古荘 英雄
  • 小説と詩の創作と文学エセー柏木と麻美が《校舎》に入った時、カウンターには信一がいて、何やら西野と深刻そうに話していた。 柏木は近寄りがたい雰囲気を感じて、いつものカウンターの席には着かなかった。代わりに、プラトン全集の並ぶソファーセットにと深々と座って煙草に火を点けた。「アイスミルクティーか?」と西野が尋ねると相づちを打った。「麻美ちゃんも?」西野は玲子の面影がうっすらと映る麻美の顔を凝視した。そ [続きを読む]
  • 連載小説「あの夏の向こうに」第10話  by古荘 英雄
  • 小説と詩の創作と文学エセーママはその夜、ラメールを開けるのはやめた。少し風邪気味で、結局開店時間になっても直らなかった。熱っぽかったし、咳も出た。しかし、ことのほか波音が聞こえる夜だったから、しばらくそれを味わってから帰ることにした。波音を聞くために、この店を買ったようなものだった。波音が響く店を自分で切り盛りするのは銀座時代の夢だった。今は満足していたが、これで満足してしまってはもうどこにも行か [続きを読む]
  • 自作の詩「季節を放浪するもの」BY 辻冬馬
  • 創作 詩と小説 エセーと随筆季節を放浪するものぼくは季節が変ると別のところへ行き 別の人間になった様々な場所があって 様々なものがあって様々な人がいてそれらを流れる「時」があって去りがてには 別れの歌を歌いもしたぼくの旅は 歌が支えるやくざな旅だ季節を越えるごとに 「日々」というものを身近に感じるようになった朝には 新しい勇気と決意とエネルギーが日と共にやってくることを知り夕方には 酒とおしゃべり [続きを読む]
  • 自作の詩「CAT キャット」古荘英雄
  • 創作 詩と小説 エセーと随筆1987年の詩キャット煙草を吸う男を見たキャットそれは初めて乗る電車でそして二度と乗らない電車でのこと京都発金沢行き北国へ向かう数時間ぼくは一人で夢を見たのだキャットとある窓の内側にいてどうでもいいことを毎日しゃべりやがて口を閉ざして大通りを行進するそのための世界のように大きな犠牲は断固としてしょうがないと興奮して叫んでいたキャット都市は未来へ向かうそれが間違いでもとに [続きを読む]
  • 連載小説「あの夏の向こうに」第9話  by古荘 英雄
  • 小説と詩の創作と文学エセー 本棚が空っぽになったら次は衣装棚の中、再び今度は服をダンボールに詰めて行く。こちらはもう詰めていくだけなので早かった。今、来ている五着のサマースーツと十枚の夏物のシャツ、それと靴下を別にして、さらに夏の私服と下着を残して残りはすべて整理した。 麻美は六畳の部屋に行き、クローゼットの中を確かめるべく、ドアと引き出しを全部開けてみた。「そっちは使っていなかったんだよ。開けた [続きを読む]
  • 自作の詩「様々な風の回想」古荘英雄
  • 創作 詩と小説 エセーと随筆様々な風の回想風 夏の神宮球場から  街のバーへ  失ったものについて  女友達と話す風 彼は出発点というあやふやな場所で  冬枯れの木々を眺め  ある種のコペルニクス的転回を  未来へ向けてばらまいた風 時速160?の車の中で  音楽を聴きながら煙草をくゆらせ  今 どこに向かっているかを忘れる  天国へのスピードだと気づくまで風 人々はいつも厳粛に歩いた  黒い服を [続きを読む]
  • 連載小説「あの夏の向こうに」第8話  by古荘 英雄
  • 小説と詩の創作と文学エセー 翌朝、麻美が来るまでに家主への挨拶を済ませようと、柏木は部屋を出た。家主の住む母屋までの二百メートルほどを、のんびりと歩いた。 スーツ姿でネクタイも締めて、ズボンのポケットに手を入れて、柏木はその道をゆっくり進んだ。今日のネクタイは地味だが、いつもシャツとスーツに対して目立つようにするのを原則としていた。濃紺のスーツに白のワイシャツに濃紺のポロのネクタイを締めた。 昨夜 [続きを読む]
  • 自作の詩「最後の回想」古荘英雄
  • 創作 詩と小説 エセーと随筆最後の回想一つの光景古い街を歩きながらふと自分を呼ぶ声がして振り返るそこには昔の友がいて笑っている振り返るために首を反転させている間は何も思わず何も見ていなかったが後ろを向き終わり視点を定めた時目に入る懐かしさは多くのものを思い出させる。再会するまでの間に30年が過ぎた別々の人を愛し別々の場所で暮らし別々の道を歩いたぼくらにはもうやることは残っていないそんな時に30年前 [続きを読む]
  • 自作の詩「夢の余生」by辻冬馬
  • 文学創作 小説 詩 ポエム エセーのためのカフェ習作時代の詩夢の余生抜け出す高みにこれは誇りこの存在の由来はそれを許す浜辺で彼女の声が押し寄せ消えて空も海も青いノスタルジーと明日の城が波で消されるこの世の全体と抱き合いそれだけで高みから自分を見下ろせることに気づく時間は青で止まり波音で縛られ海を前に何もかもが終わるやがて星が出て心もどこにもいかない命を忘れないそれへの執着を飽く事なき願望に手を伸ば [続きを読む]
  • 連載小説「あの夏の向こうに」第7話  by古荘 英雄
  • 小説と詩の創作と文学エセー信一は水割りを飲み、煙草を吸っている。ママに水割りを作らせない。キープしたボトルに加えて、氷と水を前に置かせて自分で作るのだった。信一はまずストレートで少し飲む。それから氷を入れる。そして、氷が大分溶けた所で追加を入れる。さらに氷が溶けていき、一杯目の最後は自然に水割りになる。二杯目は最初から水割りを作る。かなり薄めに作る。二杯の水割りのどの段階で煙草に火をつけるについて [続きを読む]
  • 連載小説「あの夏の向こうに」第6話  by古荘
  • 小説と詩の創作と文学エセー やがて、大きな信号音がピーっと鳴る。それに続いて、印字の音さえ大きく感じながら、打ち出されつつある文字を凝視する。 人事異動発令 これで皆一気に静かになる。柏木の緊張もピークに達する。話し声はなくなり、次の文字を見ようとするまなざしの群れがある。 S支社氏名 役職  新所属畑野信吾 課長役二級 札幌支社内務課長 柏木謙一郎 係長役一級 [続きを読む]
  • 自作の詩「笛を吹く者」by 海部奈尾人
  • 創作 詩と小説 エセーと随筆              墓地を抜ける細い道を広場に向かう一人の少年がいたそこに漂う多くの幽霊たちが帰り忘れた昼間のこだまたちと遊ぶ時刻そのゆらめく者たちが少年の瞳に光となって映り少年の耳の奥底ではその歌声めいたざわめきが響き それに併せて少年が笛を奏でるとその音色はそっと吹きかけるそよ風となり道端の草陰をかすかに揺らし木の枝を撫でる振動となり夜に漂うある種の空気の流 [続きを読む]
  • 連載小説「あの夏の向こうに」第5話  by古荘
  • 小説と詩の創作と文学エセー やっぱり変人で、嫌な仕事だと柏木は思った。今日もはぐらされたばかりか、嫌だと言うのを、無理矢理にでも払ってやろうというのに、皮肉まで言われた。この老人の保険契約は、ずっと昔にやめた職員が前妻の方と話しをつけて決めたので、おそらく本人と直接交渉していれば、保険など入らなかっただろう。おまけに、入院給付金の請求をずっと自分の方からはしないでいて、どうするかとこちらから聞いて [続きを読む]
  • 自作の童話 「 雲の妖精の物語 第5話」 by 海部奈尾人
  • 文学創作 小説 詩 メルヘン 童話 ポエム エセーのためのカフェ現代版「絵のない絵本」アンデルセンもどきに冬山に逃げた王様の物語④百人の武器を持つ男たちは、王国の栗の大木を次々に切り倒していくのに夢中で、持っていた武器をみな、王様に奪われました。そして王様に武器を返せと文句を言ってきたのですが、百人の武器をもたない男たちは、百人の武器をもつ家来に取り囲まれて、文句も言えなくなってしまいました。「き [続きを読む]
  • 連載小説「あの夏の向こうに」第4話
  • 小説と詩の創作と文学エセー 信一が、交通事故で足と腕の骨を折った老人の手伝いで、漁に出るようになってから半年が過ぎた。 朝、五時に起きて六時前には船を出した。皮膚に七十年分の潮が染み込んだ老人は松葉杖で必ず先に来ていた。 大通りから階段で五段降りると、港の船着き場だった。老人はその階段の上で毎朝信一を待っている。節くれだった指に煙草をはさんで、乾いた瞳で虚空を眺めながら、煙を吐いている。信一は慣れ [続きを読む]
  • 自作の童話 「 雲の妖精の物語 第4話」 by 海部奈尾人
  • 自作の童話「雲の妖精の物語」現代版「絵のない絵本」アンデルセンもどきに文学創作 小説 詩 メルヘン 童話 ポエム エセーのためのカフェ第二話冬山に逃げた王様の物語④百人の武器を持った男たちは、王国の大事な大きな栗の森に入ると、自分たちが食べる栗を取るだけではなくて、いえいえい、もともとそんなことはせずに、王様たちに、食べ物を食卓まで届けろという申し出を断られた腹いせに、森の木を切り倒していったので [続きを読む]
  • 連載小説「あの夏の向こうに」第3話
  • 小説と詩の創作と文学エセー 店はかつての学校の跡地にあった。一つの教室を丸ごと残し、教壇の上にはピアノが置かれ、廊下の部分が厨房であり、廊下との間の窓がカウンターだった。壁にはそこここに絵や写真が、それぞれにふさわしい額縁に収められて掛けられてあった。カウンター以外に、六ヶ所にテーブルが置かれ、それぞれにソファーや手作りの木の椅子が並べられ、また照明スタンドもそれぞれに凝ったものが配置されていた。 [続きを読む]
  • 連載小説「あの夏の向こうに」第2話
  • 小説と詩の創作と文学エセー 車で坂道を下って行く。山肌にぐるぐるとカーブする道が巻き付いていた。そこを、軽快にハンドルをさばきながら、さしてスピードをゆるめることもなく車を進める。 通勤前のスポーツのようなものだった。普段からがらがらの道であり、まして朝の六時半にはまず車は通っておらず、たとえ曲がりきれずに中央線を越えてしまったとしても、よほど運が悪くない限り、事故にあうことはなかった。だから柏木 [続きを読む]
  • 連載小説「あの夏の向こうに」第一話
  •  小説と詩の創作 随筆 車のシートに身を沈めて、リモコンのボタンを押す。暗かった車庫の中に、滲むように、徐々に光りが入ってくる。キーを回すと、狭い空間にエンジン音が響く。シャッターが開くまでの間に、目が明るさに慣れて来る。やがて、完全に視界が開けるとアクセルを踏む。 二十メートルほどの砂利道を徐行する。後方、二百メートルほど離れたところに、果樹園を営む家主の邸宅と、大きな作業小屋がある。柏木の借り [続きを読む]
  • 若き日はや夢とすぎ・・・・・・
  • 創作 詩と小説 エセーと随筆           元々ぼくには大事な友達がいた彼らと過ごした日々は濃い原液のようなものでありあの頃ぼくらは同じ空間やある種の心のムードを共有していた北海道で彼女が流氷に言葉を失う信州で彼が青空に郷愁を感じるそして東京にいたままのぼくが彼らが戻ってきたとたん彼らの記憶を分かち合えるでもそれは時がたつほどに薄くなる時の水かさが増え原液は薄められていくほおっておくと消えて [続きを読む]
  • 自作の詩「薄明の歌」by Amabe
  • 創作 詩と小説 エセーと随筆薄明の歌小鳥が薄明に歌う夜明けから飛び出し曙光と呼ばれ空の一風景に堕すまでは現れたことそのものが畏怖をもたらし静謐の中で森や山や海と 空との境目あたりで燃え上がる炎は人々を平伏させ 眼差しの奥底にまで差し込み続ける出現そのものが崇められ何が燃えているかは問題ではなくやがて登り切るとただの太陽でありもはや神でなくあの燃え上がる火の玉とあそこに浮かぶ太陽は同じ一つのものとわか [続きを読む]
  • 自作の小説「ひと吹きの風が語るもの」最終話
  • 小説と詩の創作 文学随筆エセー その日の夜、陽一は洋子から電話をもらった。裕也を野球に連れて行って欲しいという依頼だった。そして二日後に、裕也自身からのお礼状と野球を楽しみしているという旨のハガキを受け取ったのだった。 明日が裕也と野球観戦という日の夕方だった。陽一の営業所に香山本部長から電話が来た。陽一と向井は今回はずしたが次回を待てというようなことを長く話した。陽一は逆に次はないのだとはっきり [続きを読む]