丗 さん プロフィール

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丗さん: 軒先の憂鬱
ハンドル名丗 さん
ブログタイトル軒先の憂鬱
ブログURLhttp://triari015.hatenablog.com/
サイト紹介文散文と短編小説を書いています。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供17回 / 15日(平均7.9回/週) - 参加 2018/09/01 18:13

丗 さんのブログ記事

  • 過去の記事 …
  • Future
  • 明日の夜、手術がある。以前の僕は、「あなたはアフリカの子供達に比べてはるかに恵まれているのだから感謝して生きなさい」と言われて、日々の小さな憂鬱を殺さなくて済むように病気になりたかった。病気になれば皆が優しくしてくれると思った。僕は感情に嘘をつかなくて済むと思った。今こうして実際に自分の生と向き合ってみると、別に悲しむための資格など要らないと思う。僕はどう生きていても自分のことを抱きしめてかまわ [続きを読む]
  • 乾酪壊死
  • 「とねり」「呉」「かりんとう」「剥離」「かたくりこ」などの言葉の響きが好きだ。ちなみに、きなこねじりも好きだ。ら行と、か行・た行の組み合わせは、コロンとした感じがしてなんだか可愛らしく思う。本を読むか、絵を描くか、この日記を書いてばかり。最近知ったことは外科手術のあと腫れるのは当然のことだとわかった。麻酔がきれたあとの鈍痛にも慣れてきた。自分が手術など受けずにいられる身体を持っていたら、いまの思考 [続きを読む]
  • Michel Nostradamus
  • 1999年、夏、ノストラダムスの予言通りに人類は滅亡した。あらゆる花が一面に浮かぶ湖と、僕だけを残して。世界の終わりに救世主など現れないことなど分かりきっていたが、「最期の日くらいは、完璧にしたいの」と常日頃から言っていた彼女くらいは救われても良かっただろうに。それは僕のエゴだけれど。彼女は高校の同級生で、教室の端で本を読む少女だった。おとなしい第一印象を与える彼女は、話してみるといわゆる「ノリの良い [続きを読む]
  • 狂おしく滅ぶ愛を
  • 日記を書く手がふるえて、書き残すことをあきらめた。文字がぶれただけタイピングのありがたみを感じる。自分がだんだんと弱ってきていることは知っていたが、静観と諦念というのが最も正確だろう。年の割にぶれない感情が、自分らしいなと思う。一年前の自分に知らせたら、何て言うのだろう。昨年の僕は、自分のおわりが近づいていることを、それでも切実に生きることができないことを知らなかった。まだ実家のネコを撫でて、サボ [続きを読む]
  • a priori
  • わたしなんかは、いつも、そうだ。憎さを増しては、世話をして、とてもばかばかしい。寄りかかるのは、この肩にしなさい。他の人には、迷惑かけないように。失うものばかりが目新しくて情けなくなってしまうね。アルコールでぼやけた世界はこんなにも美しいのに。キウイの色味がきみを騙す。失うことができない何かに怯える。全然空いてもいない腹が、愛情を受け取れる瞬間は今しかないとよじれて脳はふるえるのだ。 その全てを忌 [続きを読む]
  • 母譲り
  • 先ほど親知らずを抜いたせいで血の味がする。一人暮らしが一週間やっていける程度の流動食を買い込んだ。食い込むビニール袋が痛い。部屋の鍵を開け、リビングに入ると黒髪の女子高生が壁にもたれかかってすうすうと寝ていた。一瞬当惑したものの、思い出した。昨晩駅前をうろついていた家出少女を部屋に入れたのだった。名前は確かコトリといった。「ただいま」と小さくつぶやく。「お兄ちゃん・・・」声からして寝ぼけているのだ [続きを読む]
  • It’s all OK
  • 電球が切れそうなことに気付き、目障りなので電気を消した。氷が溶けて、カランと鳴った。暗闇のなかで考える。人生にセーブポイントを設定できるなら、どこに戻ろうか。「戻るべき時代」は明確だけど、そうしたいとは全く思わないのは、今が最高だから。あるいはずっと最低か。戻るべき時代に戻ったとしても、同じようにしか生きられないだろう。大学時代、好きになってしまった女の子には彼氏がいた。少しでもマシになりたいとい [続きを読む]
  • 夢幻泡影
  • カーステレオから、FMラジオをいつもより大きな音量で流す。ファミレスで買ったおもちゃのサングラスをかけて気持ち良さそうに歌う妻を見て幸せに包まれる。最初から諦めて欲しがりもしなかったものだということを思い出し、胸がつまった。「ねえ!お盆ってこれで合ってるんだっけ?」とけらけら笑いながら聞いてきた妻に、僕は「君が全部正解だよ!」と声を張って返す。洋楽ポップスのミュージックビデオのように大げさに身体をく [続きを読む]
  • Invalid
  • 「2年です」身体を半分モニターに向けたまま、淡々と医者は告げた。彼はパタパタとうちわを仰ぎ、額の汗をぬぐった。「2年ですか」言われて妙に納得し、ちょうどいいとさえ思った。最近越したマンションの契約、それと同時に飼い始めたハムスターの寿命、一定期間勤めれば付与される社内の資格、携帯電話の契約、すべてがあと2年なのであった。ここで家族なんかがいれば、まだ生きなければとでも思うのかもしれないが、わたしは天 [続きを読む]
  • 魔女の葬式
  • わくわくするのはいつだって最初だけだった。認識が誤っていたことを知るころにはすべてが終わっている。「ふふ、恥ずかしいなあ」甘ったるい声を作り、首を少し傾けた。1日に1人だけ客をとると決めて、昼間のアルバイトを辞めた。ファミレスのテーブルを拭くことと、知らない誰かにべたべたと触られて人形になることの間に大差はなかった。「ゆみちゃん、ゆみちゃん、あっ」架空のわたしを呼ぶおっさんの手をぎゅっと握 [続きを読む]
  • 「お腹いっぱい。あなたの料理で満腹になるのって、心も満たされて最高に幸せ!」菜穂子は表情豊かな妻だった。付き合っている時から、いい時も悪い時も感情を素直に出していた。生きるために磨かざるをえなかった料理の腕も、思考を挟む余地なく決まった仕事も好きではなかった。そうした俺の根深い憂鬱も、仕事の疲れも、にこにこと頬張る菜穂子を見れば霧散したものだ。拗ねたときに膨らませた頬が、透き通るような声が、小ぶ [続きを読む]
  • 純化
  • 吐息が重なる。鏡張りの天井に映し出されたはだかの女は、わたしではない誰かのようだった。仰向けのわたしに重なる、知らない男の広い背中。男性にしては長めの毛先が、私の耳元を擦る。男の顔を見上げる。快楽に歪む顔は、苦悶の表情と似ている。「夏だから」という理由で、わたしは大事にしていたはずのものを呆気なく手離すことができた。それでも、私は少しもすり減らなかった。天井に映された自分が揺さぶられているの [続きを読む]
  • 君へ
  • 今日は君の誕生日だね。君は毎年「嬉しくないから」とプレゼントを受け取ってくれないけれど、僕は君が生まれてきてくれて心底嬉しかったんだ。周りにはクールと言われる君が、本当は鼻の形や睫毛の量に悩んでいること、肌荒れでこの世の終わりのように落ち込むこと、それでも普段は何もないかのように振る舞うこと。「そんなことくらいで」と僕は思うし、僕は君のパーツ全てが好きなのに。それでも自分の理想と合致しないことに [続きを読む]
  • 見ている景色に見覚えがない。私は西新宿で同僚と呑んでいたはずで、あいつは仕事も上手くいかず、帰ったら帰ったで妻に小言を言われることを嘆いていたはずだ。彼は酷く酔っ払っていて、焼き鳥の串を串入れに上手く入れることすらできていなかった。笑って私は宥めていたのだが、退店した記憶がない。気付けば眼前には透明度の高いブルーが広がっていた。周囲を取り囲む木々の深い緑と、美しいコントラスト。私は泥のついたスー [続きを読む]
  • 泡沫
  • 湖の中に沈んでいく。服が水を吸って重たい。水に抗うことをやめた。救われても、もう一度殴られ、沈められるだけなのだから。私は何ひとつ間違わなかった。全ての選択は正解だった。だとすれば、何がおかしいのか?初めに是としてしまった前提だ。誤ったレールの上を正しく進んできてしまった。こうして見知らぬ男たちに殴られ、両手を縛られて、湖に突き落とされ死にゆく訳は?私が人間を信じてしまったからだ。ただ、そ [続きを読む]
  • 脱臼の旋律
  • 「レヴェ、君はまだ星をなぞったり集めたりしているの」「そうさ。何かおかしいとでも云うの?」「みんな、そんなことは7齢のときにやめているんだよ。君はロマンチストなんだね」「シュロだけは笑わないと思っていたけれど」「笑ってはいやしないよ。でも、星集めなんて骨折り損じゃない」「そんなことないよ。僕は星集めが好きなんだ。美しくて楽しいから」「意味のないことをしても仕方ないと思わないの?」「僕にとっては意味 [続きを読む]
  • うどん打ちの娘
  • 娘はうどんを打っていた。うどんを叩き延ばすことが、その娘の仕事であった。隣の作業場にいる、うどんこねの息子からうどんのたねを受け取り、毎日毎日ていねいに延ばす。粉まみれの白く小さい手で、力強くていねいに仕事をした。「はかり」「混ぜ」「こね」「打ち」「きり」「ゆで」「盛り」といった各工程の作業場は横一列に並んでいる。左からきたうどんのたねを受け取り、担当の作業を施しては右に流す。娘のいる「打ち」の隣 [続きを読む]
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