文音 さん プロフィール

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文音さん: 童話の時間
ハンドル名文音 さん
ブログタイトル童話の時間
ブログURLhttps://douwanojikan.exblog.jp/
サイト紹介文自作の創作童話のブログです。 楽しんでお読みいただければ嬉しいです。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供33回 / 62日(平均3.7回/週) - 参加 2018/09/12 14:31

文音 さんのブログ記事

  • ある後家さんのお話(15)
  •  村長さんの号令で、村の人たちはみな手を合わせて「いただきます」と声をそろえると、一斉に料理を食べ始めました。 口々に、「おいしいね」「おいしいね」と言いながら。「こんなうまいものは初めてだ。うちの肉が、こんなにしゃれた料理になるなんて」 お肉屋さんが言うと、「本当だなあ。わたしは長い間牛乳をしぼってきたが、ただ飲むことしか知らなかったよ。それから、捨てていた脂肪も、役に立... [続きを読む]
  • ある後家さんのお話(14)
  •  さあ、おかあさんと坊やは大忙しです。 村中の人のごちそうを、限られた時間で二人きりで作るのですから。 狭い台所で、二人はくるくるとよく働きました。 おかあさんは、牛飼いが捨てようとしていた脂肪を瓶に入れてよく振って、バターを作りました。 牛乳を温めてお酢を加えてかき混ぜて、チーズもこしらえました。 三つのコンロには、お鍋とフライパンが入れ替わりかかりっぱなし。 坊... [続きを読む]
  • ある後家さんのお話(13)
  •  帰り道、おかあさんは重い荷物を抱えて、村長さんにお礼を言いました。「村長さん、ありがとうございます。 おかげさまで、こんなにたくさん食べ物を手に入れられました。 これだけあれば、当分、暮らしていけるでしょう」 ところが村長さんは意外なことを言いました。「いやいや、これはおまえさんと坊やだけで食べるのではないよ。 実はわたしにもうひとつ考えがあるのだよ」 そして、こう... [続きを読む]
  • ある後家さんのお話(12)
  •  そして二人は最後にもう一度、初めにもみがらをくれた、田んぼを持っているお百姓さんをたずねました。「やあ、村長さんにきこりの後家さん、これは大変な荷物ですな」 お百姓さんは、あれこれ荷物を抱えた二人を見て目を丸くしました。「いや、みんなあなたのおかげですよ」 村長さんが言うと、お百姓さんは、「はて? わしの? わしが何かしましたかいな?」と、首をかしげました。「... [続きを読む]
  • ある後家さんのお話(11)
  •  村長さんとおかあさんは、りんごと卵と牛乳の入ったバケツともみがらの袋を分けて持って、畑を通りかかりました。 畑では、お百姓さんがお芋を収穫していました。「やあ、畑を持ったお百姓さん、今日もご精が出ますな」「これは、村長さん、こんにちは。おや、きこりの後家さんも、こんにちは。 この間は大変なことでしたな。どうですか、もう、落ち着かれましたかな?」 お百姓さんは腰を伸ばしてあ... [続きを読む]
  • ある後家さんのお話(10)
  • 「村長さん、こんにちは」 牛飼いは牛にえさをやっていました。「きこりの後家さんも、こんにちは。 …先日は、とんだことでしたなあ。 坊やはどうしていますかな?  おとうちゃんを恋しがって、泣いてはいませんかな?」 牛飼いは、父親を突然亡くした坊やのことを案じてくれていました。「ええ、ありがとうございます。 本当は寂しいんでしょうけれど、頑張って元気にしてくれているんで... [続きを読む]
  • ある後家さんのお話(9)
  •  そこでふたりは、にわとりをたくさん飼って卵を集めている家にやってきました。「やあ、こんにちは。ご精が出ますな」「これは村長さん、こんにちは。きこりの後家さんも、ご一緒で。 ……ご主人はお気の毒なことでしたなあ。お優しい、いい方だったのに」  卵屋さんのご主人も、おかあさんを労わってくれました。「にわとりの様子はどうですかな?」 村長さんが尋ねると、卵屋さんが答えまし... [続きを読む]
  • ある後家さんのお話(8)
  •  ふたりはまず、りんごの木のたくさん植えられた家に行きました。 その家の人は、木からもいだりんごを、大きなおぼんに乗せて運ぼうとしているところでした。「りんごを急いで運んでおくれ。 傷つかないように、乾かないように、腐らないように」 けれど、いくら大きなおぼんでも、りんごはそんなに乗りません。 転がってしまうので、重ねることもできません。「やあ、こんにちは。ご精が出ますな... [続きを読む]
  • ある後家さんのお話(7)
  •  あくる日、後家さんのこれからのことを、さて、どうしたものか、と考えながら村長さんが村の道を歩いていますと、田んぼを持っているお百姓さんが大きな袋を運んでいました。「やあ、ご精がでますな」「これは、村長さん、今日は見廻りですかな。いや、いつもありがとうございます」「いやいや、恐れ入ります。ところで、何を運んでいらっしゃるのかな?」「これはもみがらですわいな。米をとった後の、稲の殻... [続きを読む]
  • ある後家さんのおはなし(6)
  • 「村長さん、奥さま、先日はお忙しい中、主人の葬儀に来てくださって、ありがとうございました」 おかあさんは村長さんの家に着くと、まず、お礼を言いました。「やあ、きこりの後家さん、もう、落ち着いたかね?」 村長さんは、少し言いにくそうに応えました。 おかあさんは「後家さん」と言われて、改めて、自分が夫を亡くしたのだと認めずにはいられませんでした。「坊やはお元気にしてらっしゃ... [続きを読む]
  • ある後家さんのお話(5)
  •  おかあさんは帰り道、また、家々の戸を叩いて訊きました。「何かお手伝いすることはございませんか」「何かお手の足りないことはございませんか」 すると、ある家の中でおばあさんが針仕事をしていました。「ああ、お願いしたいねえ…」 おばあさんは声をかけました。「どうしても針に糸が通らなくてねえ…。 あんた、ちょっと手伝ってくれないかね」 おかあさんは、すぐ針に糸を通して... [続きを読む]
  • ある後家さんのお話(4)
  • 「なにかお手伝いできることはございませんか」「なにかお手の足りないことはございませんか」  断られるのを承知で、おかあさんは村の家を一軒一軒廻りました。 すると何軒目かの家のおばさんが親切に教えてくれました。「川向こうの家の奥さんが、たちの悪い風邪をひいて困っているそうだよ。 子供たちが小さいのに、うつすといけないから世話ができないって。 ご主人は町へ出稼ぎに行っているしねぇ... [続きを読む]
  • ある後家さんのおはなし(3)
  •  おとうさんの上に倒れた大きな木は、村の男の人六人がかりでやっとどかすことができました。「しっかりしろよぉ」「気を強く持てよぉ」「おれたちみんな、ついてるぞぉ」  男の人たちは口々におとうさんを励ましながら、ようよう重い木をどけました。 それからおとうさんを担架に乗せて運びました。 誰かが町まで行って、お医者さんを呼んできてくれました。  ですが、お医者さんはおとうさんを... [続きを読む]
  • ある後家さんのお話(2)
  • にほんブログ村童話・昔話ランキング「おとうさん!」 男の子は驚いて、おとうさんの上に倒れている大きい太い木をどかそうとしました。ところが木はあまりに重くて、男の子の力ではびくともしません。 大きくて強いおとうさんが動かせないものを、まだ小さくて力も弱い男の子にどうにかできるはずはありませんでした。 男の子は泣きそうになりました。 でも、泣いている場合ではありません。... [続きを読む]
  • ある後家さんのお話(1)
  • にほんブログ村童話・昔話ランキング 後家さんというのは、ご主人を亡くされた女の人のことです。 このお話は、あるとき突然、後家さんになってしまったひとりの女の人のお話です。 昔、ある村に、とても仲の良い夫婦がありました。 きこりとその奥さんでした。 ふたりの間には六つになる男の子もありました。 三人はいつも、きのう幸せに過ごしたように、今日も楽しく日を送り、あしたも... [続きを読む]
  • 白い羊の八百屋(あとがき)
  • にほんブログ村童話・昔話ランキング 拙いお話を読んでくださったみなさま、本当にありがとうございました。  長いブランクを経て、童話を書くことを再開した時、さて、昔はどのようにアイディアが浮かんでいたか、という考えに行きあたりました。かつてはそれがどれくらいの水準だったかは別として、特に何かしなくても書きたいことが浮かんできていたからです。 すっかり錆びついて、何も思いつ... [続きを読む]
  • 白い羊の八百屋(9)
  • にほんブログ村童話・昔話ランキング その夜ふけ、大きな白い羊の家から、まだ若い白い羊が出て来ました。 若い羊は大きく手を広げてゆっくり深呼吸をすると、月に照らされた畑の黒い土の上をころころと転がりました。 白い巻き毛が畑一面にぼうっと散らばって、まるで雪が積もったようです。 羊はそれから家へ戻りました。 家の寝室にはあの鉢植えがありました。 違っていたのは、鉢に植わって... [続きを読む]
  • 白い羊の八百屋(8)
  • にほんブログ村 黒い羊は鉢植えをそのまま放っておきました。 野菜になる巻き毛が採れないのに、世話なんてするものかとでもおもったのでしょうか。 何日も知らん顔をして、見向きもしませんでした。 鉢の羊は眠っているのか、ぴくりともしません。 時々、閉じられた黒いまつ毛が風にふるえてかすかにゆれるだけでした。 ある日とうとう黒い羊はやりきれなくなって叫びました。「やめだ、やめだ!... [続きを読む]
  • 白い羊の八百屋(7)
  • にほんブログ村ある日の朝、白い羊の八百屋にやってきた動物たちはびっくりしました。 店は閉まったままだったのです。「白い羊さん、どこか具合でも悪いのかしら」 うさぎの奥さんが心配そうに言うと、「そういや、近頃、元気がなかったよなあ」 熊のおじさんが続けました。「品物もすっかり少なくなって、おまけをつけてくれることもなくなっていたわ」 きつねのむすめさんも言いました。「困... [続きを読む]
  • 白い羊の八百屋(6)
  • にほんブログ村しかし黒い羊は強情でした。「ちぇっ、そんなことがおれに何の関係があるんだ。 第一、盗みがすぐに見つかるものなら、おれのところにも神様が来るはずだろう。 でも、来ないじゃないか。 それが、おれが羊の鉢植えなんか盗んじゃいないって証拠だろうが」「でも……」「ええい、帰った帰った。 ぐずぐずしていると、お前の頭なんか叩き割ってしまうぞ」黒い羊は大きなバリカン... [続きを読む]
  • 白い羊の八百屋(5)
  • にほんブログ村「ずっと昔、まだ神様が地上で動物たちと暮らしていらした頃から、わたしたちは生きているんだ。 羊の木で命をつなぎながらね。 わたしたちは木から生まれて木になったまま大きくなる。 ほかの羊のようにおかあさん羊から生まれるんじゃない。 先に生まれた大きな白い羊が、木になった羊が大人になるまで育てるんだ。 大きな羊が死ぬと、鉢の羊が木からはずれて、その後を継ぐ。 そう... [続きを読む]
  • 白い羊の八百屋(4)
  • にほんブログ村 次の朝、目を覚まして大きな白い羊はぎょうてんしました。 大事な鉢植えがありません。 あたりには黒くて硬い巻き毛がたくさん散らばっています。「これは困った。 きのうの夜、わたしが寝ている間に黒い羊さんが鉢植えを持っていってしまったんだ。 あれはわたしにしか育てられないんだ。 なんとかして返してもらわないと……」 白い羊は大あわてで服を着ると、点々と落ちている... [続きを読む]
  • 白い羊の八百屋(3)
  • にほんブログ村 あくる日、白い羊の八百屋を除いた黒い羊は驚きました。  八百屋の店先には、よく実った新鮮な野菜がぎっしり並んでいたからです。「そんなはずはない。 昨日の晩、たしかに畑のほとんどの野菜をぬすんだのに。 これはいったい、どうしたことだろう」 黒い羊はふと、昨日盗んだとうもろこしとかぼちゃがいつもの味ではなかったことを思い出しました。 何か秘密があるんだ、と気... [続きを読む]
  • 白い羊の八百屋(2)
  • にほんブログ村その晩、大きな風呂敷を持った黒い羊は、白い羊の畑にやって来ると、手当たり次第に実っている野菜をもぎとりました。 おいもや人参も次々と掘り出しました。  そうして盗んだものをみんなまとめて風呂敷に包むと、どっこいしょと背負ってあまりの重さによろけながら帰っていきました。 ところが。 家へ着いて風呂敷を広げた黒い羊はぼう然としました。 野菜がみんなだめになっていた... [続きを読む]
  • 白い羊の八百屋(1)
  • にほんブログ村 広い畑の片すみに八百屋が一軒ありました。 白い羊の店でした。 ずっと昔からある店でした。 おばあさんの小さい頃にもありました。 そのまたおばあさんの小さい頃にもありました。 そんなずうっと昔から、白い羊が一匹で野菜を作って売っているのでした。 ですから動物たちはみんな、それを当たり前に思っているのでした。 小さい店でしたが、いつでもほしい野菜がそろって... [続きを読む]