miraco さん プロフィール

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miracoさん: 黎明の森に深く沈む(完全版)
ハンドル名miraco さん
ブログタイトル黎明の森に深く沈む(完全版)
ブログURLhttps://ameblo.jp/oborozuki25/
サイト紹介文元親友3人がタイムスリップをして、途切れた絆を修復していく物語。 恋愛/友情/高校/全寮制/殺人
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供27回 / 23日(平均8.2回/週) - 参加 2018/09/24 09:59

miraco さんのブログ記事

  • 現在2ー6 【探検とゴースト】
  • さっきとは見違えるほど綺麗になっている立ち入り禁止の看板を通り過ぎ、私たちは石畳の道へ出る。やっと幅のある道へ出られたので、そこからは三人並んで歩いた。背の高い心美と理央に挟まれて歩くと、いつも私は宇宙人で、エージェントの二人に捕獲されてしまったみたいだ、と思う。それと同時に、守られてるみたいで安心もする。この温かくて優しい感覚も、十五年振り。「ね!道中長いし、近況でも教え合わない?」右隣から理 [続きを読む]
  • 現在2ー5 【探検とゴースト】
  • 「絵?」まず私の言葉に反応したのは、心美だった。「絵ってどういうこと?」「何言ってるのよ、心美…」私たちの様子に、理央が困惑した顔をする。「心美が気付いたのは絵じゃないの?」「違うわ。でも今はいい。絵ってなに?」心美に催促されて、私は二人を連れて再び玄関へ移動した。「この絵なんだけど…」玄関ドアの目の前に掛けられてある、三十号ほどの風景画の前に二人を立たせる。構図は、窓から見た森と空。「この絵、 [続きを読む]
  • 現在2ー4 【探検とゴースト】
  • 決死の思いで玄関へ飛び込むと、呆気なく開いたドアの外に三人一緒に放り出された。それぞれの乱れた息が、玄関ポーチに重なって響く。たった数十メートルのダッシュで、三人ともこの有り様。あまりの恐怖に息を止めて走ったものの、この心拍数はいただけない。加齢というのは、こういうふとした時に感じられる。ああ、確かに私たちはもう高校生ではないんだ。なんとか立ち上がった理央がフラフラとウッドデッキまで歩くと、焦っ [続きを読む]
  • 現在2ー3 【探検とゴースト】
  • 理央は軽快な足どりで廊下を進み、行き当たると左奥のダイニングルームをつま先立ちで覗く。がしかし、理央は私たちが結果を訊ねるよりも先に、期待が裏切られた顔でこちらを振り向いた。「ないわ…」念のため私もダイニングを見回してみたけれど、やはりメモらしいものはない。「手紙どころか、テーブルの上にごみ一つないとはね…」明らさまにがっかりする理央と私を見て、心美は苦笑しながら向かいのキッチンルームに入ってい [続きを読む]
  • 現在2ー2 【探検とゴースト】
  • まずは、お茶を飲んでいた部屋の真向かいの部屋から確認することにした。当時ここは、描きかけの作品を置いておく部屋になっていたはず。心美がノックをしてからドアを開ける。部屋には記憶どおり、複数のキャンバスがイーゼルに載った状態で置かれていて、油絵の具の匂いがより一層強く漂っていた。三人とも中に入り、それぞれの絵を見て回る。近づいてみると、それらにも誇りっぽさは感じられなかった。「ねぇ、この絵って、も [続きを読む]
  • 現在2 【探検とゴースト】
  • 部屋中に広がる重い空気を打破したのは心美だった。「なーんだ、あの人、子供がいたのか」てっきり綺麗な独り身だと思ってたのにな…と、心美はごくりと冷めた紅茶を飲む。「確かにね。藤堂先生って好きな人の前で冗談は言えても、自分からデートに誘えるようなキャラじゃなかったもの」誰もいないからって、理央までそんなことを言い出す。「セツナはずっと黙ってたんだね。先生がパパだって」私はそう呟きながら二人に熱い紅茶 [続きを読む]
  • まとめ≪プロローグ・現在1・過去1≫編
  • 最初から読んでくださってる方も、これから読まれる方も、このおさらいページで物語を確認していただけると嬉しいです。【プロローグ】keyword→『三人の日常』①心美主婦業の合間、葉桜を見ながら春という季節に思いを馳せる。半生を振り返りつつ家庭での問題に悩んでいると、旧姓で謎の手紙が届く。②真由妊娠をきっかけに年下の恋人との関係をどうしようか悩むが、やっと前向きに考えだした矢先に流産してしまう。③理央酔いつ [続きを読む]
  • 過去1ー9 【紗夜と茉莉子】
  • 文化祭終了後、キャンプファイアもパーティーも欠席して寮の書物庫で編み物の本を読んでいると、二人分の食べ物を持って先輩がやってきました。「具合が悪そうだけど大丈夫?」そう心配そうに顔を覗く先輩に、課題が終わらなくて徹夜続きだったとピースサインで返します。吐き気に襲われつつも、やっと小さなサンドイッチを食べ終えたところで、私は先輩に言いました。 この前、最優秀賞を取ったら一つだけ願い事を聞いてくれるっ [続きを読む]
  • 過去1ー8 【紗夜と茉莉子】
  • 梅雨も末期になった頃、顧問の先生に呼ばれて、先輩を含む美術部員の八人でログハウスへ行きました。私は二度目でしたが、先輩たちは何度か来たことがあるようでした。冬に訪れた時と違い、一階のリビングには夏用のラグが敷かれていました。い草の座布団に座り、私たちはさっそくクロッキー帳を開きます。先生はそれぞれに鉛筆を配り終えると、こう言いました。「今から三分ずつ時間を計るから、三分以内に相手の瞳を描きなさい [続きを読む]
  • 過去1ー7 【紗夜と茉莉子】
  • 山奥の全寮制であるこの学校は、毎年クリスマスの十二月二十五日には冬休みに入ります。数日前の電話でその日のうちに家へ帰れることを母に伝えると、「クリスマスは一緒に過ごせるのね!」と嬉々とした声が受話器越しに聞こえたので、私は終業式を終えたら一番のバスに乗れるように、早めに帰省の支度をはじめました。冬休みは課題が少ないので、荷物も少な目です。あとは貴重品を入れるだけ。そこまで準備を終えると、私は急い [続きを読む]
  • 過去1ー6 【紗夜と茉莉子】
  • 美術部へ入部したことを友人たちに告げると、次の日からあからさまに距離を取られ、いつの間にか昼食の時間ですら一人でいることが多くなりました。今まで気づかない振りをしてましたが、ここは厳しい芸術の世界へ入るための、激しい競争の場なのです。いくら難関を突破して入学したとはいえ、自らが望む場所で満足に生きていけるのはほんの一握り。まだ創作に関わる仕事に就けるだけ幸運です。そんなライバルたちの集まる場所で [続きを読む]
  • 過去1ー5 【紗夜と茉莉子】
  • コンクールの発表は毎年、文化祭最終日に体育館で行われます。私が父と母を連れて時間通りに行ったときには、すでに体育館には結果を今か今かと心待にしている生徒やその家族でごった返していました。体育館には暗幕が張られ、ステージ上には各学年の最優秀作品が布で隠されて置かれています。授賞式がはじまり、理事長が壇上に上がると、会場は一瞬で静まり返りました。まず一年生の作品が発表されました。選ばれたのは、父親が [続きを読む]
  • 過去1ー4 【紗夜と茉莉子】
  • 連れていかれた先は、美術部の部室でした。ここの学校の美術部といえば、エリート中のエリートしか入部できないと聞いていたので、先輩に招かれてもすぐに部室に入ることはできませんでした。ドアの前で戸惑っていると、先輩は私の手を取って中へ促してくれました。はじめて触る男の人の手に、心臓が跳ね上がりました。「窓の外に桜の木が見えるでしょ?」先輩はそれを指差し、待ってて、と奥の部屋へ行ってしまいました。今に誰 [続きを読む]
  • 過去1ー3 【紗夜と茉莉子】
  • 私は移植後から頻繁に受けている様々な検査を順調にパスしていき、周りも驚くような驚異的なスピードで体を回復させていった。胸を大きく分かつ手術の傷は生々しいけれど、もう傷自体の痛みはあまり感じない。この分では、来月末にでも仮退院ができるだろうという話しまで出はじめていた。「予想ではあと少しかかると思ってたんだけど…僕が見てきた患者さんの中で、一番成績優秀ですね!」学生の私にとって、先生の言葉は何より [続きを読む]
  • 過去1ー2 【紗夜と茉莉子】
  • 「紗夜ちゃん、どう?体調は」「良好です。自分の足で歩けるなんて、なんだか変な気分」「入院する前は陸上部だったんでしよ?目に見えない速さで廊下を走るのは禁止ですからね!」「陸上部員の端くれってだけで、別に速くないですよ!」一年以上も長期入院をしていると、院内散歩でナースステーションの前を通るだけで、誰かしら顔馴染みの看護師が声をかけてくれる。私の入院中に移動になった人もいれば、新しく入ってきた人も [続きを読む]
  • 過去1 【紗夜と茉莉子】
  • 目が覚めると、思わず顔をしかめるほど明るい光が視界に飛び込んできた。その眩しさを咄嗟に手で遮ろうとしたのに、たくさんの管に繋がれていてまるで身動きがとれない。朦朧とした頭で考える。ここはどこだろう。「紗夜ちゃん?」どこからか微かに母の声が聞こえる。「紗夜ちゃん、お母さんよ、分かる?」頑張って視線をずらすと、帽子とマスクをした母が私を覗き込んでいる姿を見つけた。ひどく心配そうな母の目に気づいたとき [続きを読む]
  • 現在1ー5 【心美31歳 / 春】
  • 【十五年前のことで、どうしてもお伝えしなければならないことがあります。来週の土曜日、あのログハウスまでお越しください。今までもこれからも、あなたの秘密は厳守します。】三人の話しから、共通して私たちの現在地を知っている可能性があるのは、ここの高校の理事長だけであることが分かった。しかし理事長が私たちへこんな手紙を書く理由が分からないし、なぜ差出人を伏せたのかも謎だ。仮に本当に理事長だとしたら、何故 [続きを読む]
  • 現在1ー4 【心美31歳 / 春】
  • このログハウスは面積の約半分が吹き抜けになっているので、二階へ上がっても一階の様子がよく分かる。私たちは手摺に体を預けて、二階から一階を観察した。「なんだか見るほどに昔のままね。カビの匂いもしないし、まるで今さっき換気したみたい」理央がぐるりと首を回して家のなかを見渡す。これで私たちが制服を着ていれば、十五年前と何ら変わらない光景だ。まだ私は高校生で、先生も生きている。夢幻のような、あの時代。「 [続きを読む]
  • 現在1ー3 【心美31歳 / 春】
  • 入り口の藪を越えると、細いながらも道が開けた。真ん中を歩いても両腕に草が触れるくらいの僅かな幅しかないが、踏み固められた地面が行き先を導いてくれている。良かった、ずっと藪のなかを進むとなると、全員途中でリタイアだ。足元に気を付けながら、理央、私、真由の順番で進んでいく。歩きにくい上、徐々に目的地へ近付いているからか、三人とも口数が極端に減る。無心に近い状態で十分ほど歩いたところで、理央が日向との [続きを読む]
  • 現在1ー2 【心美31歳 / 春】
  • 裏門まであと百メートルというところで車を降りた理央は、東京からここまで送ってもらった相手になんのお礼も言わず、軽やかに森の奥へ歩きだす。それを見ていた真由が慌てて止めようとするが、理央はこちらを見ようともしない。ここの姉弟仲は相変わらずらしい。「ご無沙汰してます。心美も真由さんもお元気そうで安心しました」整った顔に大きな瞳。理央にそっくりな双子の弟が、わざわざ車から降りて挨拶をする。「玲央も元気 [続きを読む]
  • 現在1 【心美31歳 / 春】
  • 歩を進めるごとに、木漏れ日がチカチカと点滅する。その眩しさに足を止めて頭上を仰ぎ見ると、青々と生い茂った木々の向こうに、春麗らかな青空が広がっていた。さすがにこれほど高地まで来ると、都会のように不快な湿気は感じられない。しばらく歩いて体は暑いのに、汗はかいていなかった。石畳の道を履き慣れたスニーカーでぐんぐん登っていく。あの頃はこんな坂道くらいじゃ少し走ったところで息も上がらなかったのに、今は普 [続きを読む]
  • プロローグ④ 〜?〜
  • 午後九時。ようやく仕事を終えて職員用の駐車場へ行くと、人目につかぬように車のトランクから保冷バッグを取り出す。それを胸に抱えると、なるべく敷地の隅を歩いて学校の裏門まで行き、心許ない夜の森へ踏み出した。鬱蒼とした森の中は夜鳥の声が幾重にも木霊していて、不気味なことこの上ない。興味本意で見上げれば、今にも箒に乗った魔女が頭上の木枝を横切りそう。耳に届く自分の足音がやや大きくなる。もしかしたら誰かが [続きを読む]
  • プロローグ③ 〜理央〜
  • 意識は一分前からある。周りの気配も香りも、なんとなくいつものそれだと分かっている。まぶたを透かす強烈なオレンジ色は、今日も快晴をアピールしていて、私は一刻も早く顔を洗い、入念に日焼け止めを塗りたくなった。しかし裏腹に、私は朝日を遮るために壁に向かって寝返りを打つ。それを実行に移せないのは、昨晩の私に原因がある。一軒目は友人が開いた飲み屋のオープニングパーティーだった。カクテルを作るためだけに生ま [続きを読む]
  • プロローグ② 〜真由〜
  • 病院の自動ドアの向こうは、幸せに満ち溢れていた。少なからず、私の目にはそう映った。だから私がその境界線のこちら側にいるのは、当然のことだと思った。春というより初夏に近い、湿気を含んだ暖かな風が私の髪を優しく撫でる。終わってしまえばなんてことない妊婦生活だった。多少の眠気と怠さはあったものの、それ以外は普段の体と何も変わらず。たった九週間の母親体験。そのお陰で、私の人生は激動のまっただ中にある。生 [続きを読む]
  • プロローグ① 〜心美〜
  • 目黒川沿いから見上げた空は、いつもより早く雲が流れていている。やっといい季節になったと思ったのに、この感じではあっという間に汗が流れ落ちる嫌な季節になってしまいそうだ。リビングの隅に洗濯物を干し終えた私は、ベランダに出てタバコに火をつけた。すぐ下の道では、大学生らしい男女が交互にカメラのファインダーを覗き込んでいて、女の子がはしゃいだ声でしきりに男の子に話しかけている。葉桜なんか撮って何が楽しいの [続きを読む]