ノア さん プロフィール

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ノアさん: 小説と物語の集う空間
ハンドル名ノア さん
ブログタイトル小説と物語の集う空間
ブログURLhttp://fanblogs.jp/akira715/
サイト紹介文1〜15分で読める短編小説です。 より良く書けているものだけを掲載し、ジャンルも様々あります。
参加カテゴリー
更新頻度(1年)情報提供29回 / 13日(平均15.6回/週) - 参加 2018/11/28 08:51

ノア さんのブログ記事

  • コンビニで
  • 積み上げられたカップラーメン。整然と並べられたポテトチップス。縛られた雑誌。 暗く、雑然としたコンビニの裏に僕は座っている。「何やったか、わかってるのかな」 三十をやっと越えたくらいの店長に聞かれた。「万引きです」 しおらしげに答える。 目には涙を浮かべてみせる。「悪いことなのはわかってるね」 声に同情の響きが混じった。 こうなればしめたものだ。 もう大丈夫だろう。「二度とこんなことするんじゃない [続きを読む]
  • もうひとり
  • 「いた……」 目の前にいる女性を見て、伊織は身体中の力を入れなおした。 昼休みは一時間もない。それなのに、この広いキャンパスでたった一人、彼女を見つけ出さなければならなかった。その焦りが伊織を足早にし、結局、ここまで走ってきた。そのせいか、ひどく重たいコートに包まれている体は湿っているようだった。 少ない時間というのは、伊織だけではなく、他の学生たちにとっても同じである。昼食を取る学生で混雑した食 [続きを読む]
  • 彼らが見る夢
  •  言ってしまえば。彼らは仲が悪かった。 バタバタと慌ただしく階段を下りてくる音が聞こえた。 あぁ、またか、と半ば諦めつつも、母は包丁を握っている手に一瞬何とも言えない嫌な汗をかいた。きっとまたあの二人だ。 そして、台所に入ってくるなり、息子は無惨にも真ん中の所で折れてしまったシャープペンシルをつきだして叫んだ。「お母さん!? ヒメがまた僕のシャーペン壊しよった!」「ユーがあんな所に置いとったんが悪い [続きを読む]
  • 幸せな笑顔
  •  僕は今、この旅最大のピンチを迎えている。 確かに今までも二人で野宿はしたことがある。 しかし、今日の「宿屋で二人部屋」は今までと勝手が違うんじゃないのか?「何ぽけぽけしてるの?」 湯上がりの髪をタオルで拭きながら、同僚のシュリは僕を蹴った。「ねぇシュリ、もう一度確かめるけど、本当に一部屋しか借りれなかったの?」 蹴られたすねをさすりながら、今日二度目の質問をする。 いくら僕でも好きな女の子と一緒 [続きを読む]
  • 夕暮れ
  •  空が赤く染まりだし、山の木々もそれに倣って赤く染まる。 菊乃は、サングラス越しに夕日に燃える山を見つめながら、その頂に向かって車を走らせていた。 山道には、菊乃の車以外に人の気配を感じさせるものも、音を立てるものもない。静寂に包まれた山道を走る中で、カーステレオから流れる彼女の最近のお気に入りとなっているオルゴールの曲と、彼女の運転する車のエンジン音だけが、心地よく彼女の耳に届いている。 菊乃が [続きを読む]
  • 鏡のかけら
  •  風が頬を撫ぜていった。 温度などまったく感じさせないのに、通り過ぎたとき、右手がなぜか少しだけ疼いた。大きさや色は異なるものの、十分に手入れされた墓石が八つ並んでいて、その延長線上には二列のお地蔵様が二十体ほど並んでいる。『霧島家之墓』と刻まれている文字を見つめながら、いつか自分もここに入るのだろうかと、夏は思った。一番新しい石は立派ではあるが、小さなもので誰が入っているのかすらわからない。それ [続きを読む]
  • 人形
  • ボクが初めて君のところに来た時、君はまだ幼稚園だった。「このブタさんのぬいぐるみがいい」 オモチャ売り場に並んでいたボクを手に取って抱きしめてくれた。 それからボクはいつも君と一緒だった。 旅行にも連れて行ってもらう。 いくつになっても君はボクを抱いて寝た。 「ピギーちゃんがいない」 飛行機が出る時間はせまっている。 あと十分でチェックインしなければならない。 彼女の顔が歪む。「預けてないよね」「 [続きを読む]
  • 訪れたもの
  • 眠っていても、その眠りが浅くなると人の気配は感じるものである。これは、眠ったときの話である。ある日の夕方、明は日ごろの寝不足がたたりうとうとと居眠りをしてしまった。しばらくすると、耳元で奇妙な音がするのに気がついた。とん とん とん とん誰かが枕元を歩く音だった。その音に気づいたとき、明は戦慄した。なぜなら、明は一人暮らしだったからだ。しかも、アパートの鍵は必ず閉めている。誰かが部屋に入れるわけが [続きを読む]
  • 巫女 (みこ)
  • 崇が小さいころの話である。ある年の正月、崇は家族と一緒に近くの神社に初詣に行った。崇は、初めて来る神社に最初のうちこそめずらしがっていたが、そのうち飽きてしまった。そして、お参りをする家族の元を勝手に離れて、ひとりで歩き出した。崇は、人の流れに巻き込まれ、押されるようにどこかに進んでいた。やっとの思いで人ごみから出ると、まったく知らない場所に出た。崇はしばらく家族を探したが、見つからなかった。そ [続きを読む]
  • かやくご飯
  • 「…何コレ?」 夕食の時間。食卓につくなり、僕から出た第一声はまさにそれだった。「かやくご飯よ」 母は台所でトントントン、と一定のリズムで材料を切りながら、こちらに振り返りもせずに言ってきた。「…かやくごはん」 僕は母の言ったことを反芻しながら、僕は今一度目の前に置かれているモノに向き直った。そして、母のほうを向いて聞いた。「…かやくご飯?」「かやくご飯よ」 振り返らずに答えた母の返事は、先程と変 [続きを読む]
  • 幸運を運ぶ猫
  • ある日、中年のサラリーマンが首を吊って自殺した。死んだのは、高田一良、45歳の会社員だった。高田の部屋からは、自筆の遺書も見つかった。刑事の前田は現場検証に訪れた。「首吊りの仏さんは、いつ見ても壮絶な顔していますね。」運ばれていく死体を見ながら、前田の後輩の今井が声をかけた。遺書に書かれていたことは、三年前に交通事故で娘を亡くし、妻にも病気で先立たれたことが、高田の心に大きな衝撃を与えたらしい。彼 [続きを読む]
  • 赤い箱
  •  雨が強く窓にあたっている。 さとしはその様子をいつまでも眺め続けていた。 どうして、雨は降るのだろう。 「かあさん、なんで雨はふるのかなぁ?」 「そんなこと知らないわよ。それより算数のプリントはやったの。他の子はもっとできるのよ」 最近、母親は塾の話しかしない。 宿題はやったの。 今度のテストはがんばるのよ。 たくさん勉強していい中学に入ってね。 ニ年生になって、塾に行きだしてからずっとそうだっ [続きを読む]
  • 夕暮れどき
  •  秋の風に揺られ、稲穂が頭を重たそうに垂らしている。今年も小金井家で端正込めて作った米は豊作だ。年老いた父親の義正、母のイクそして五人兄弟の長男、義一と三人で丁寧に刈り込んだ稲を荷台に乗せ精米しに小屋へと向かう。一年の中でこの時期が一番忙しく、体にこたえる刈り入れ時というわけだが、待ちに待った日でもある。これが、終われば、ほんの一時だが、休息出来る。「義一、これ、出来上がった米、小倉さんとこもって [続きを読む]
  • ある生徒会室にて
  • 「ねぇ、式はいつにする?」「ついに頭、沸いたか?佐々木」 淡々とした声で、姫宮は資料に落とした目も上げずに、佐々木の言葉をばっさりと切って捨てた。しかし、佐々木は全く頓着した様子も見せずに、変わらない調子で続ける。「ワタシ、ここなんていいと思うのよねぇ〜」 姫宮はそれに答えず、いつものように、あえて視界から佐々木をはずして、周りを見渡し、ちょうど通りがかった役員の一人を捕まえた。「ああ、渡辺、この [続きを読む]
  • マリオネット
  •  ある、大きな大きな街の片隅に、みすぼらしい服を着た、一人のマリオネット使いが住んでいた。マリオネット使いがマリオネットを操ると、大人も子供も、それを見物しようと集まって、マリオネット使いの周りには決まって人垣ができた。マリオネット使いのマリオネットは、いつも本当に生きているみたいに木箱の上を動き回り、帽子を揺らして踊ったり、とんぼ返りを打ったりして人垣を沸かせた。マリオネットのピエロは、いつも陽 [続きを読む]
  • 初めて見た時、鏡のような奴だと思った。…いや違うか、私を、鏡に映したような奴だと思った。なんというか、雰囲気が似ている、と。だけど…「あづさ?」「ん?」 はっと我に返って、目の前にいるあいつを見上げる。「何考えてた?」「別になんにもー?」あ、怒ってる。「俺といるのに?」「だから別に考え事じゃないって。」「俺といるのによそ事考えるんだ?」ここで、笑ってごめんて言えたらいいのに、言えない。…言わない。性格だし。しゃー [続きを読む]
  •  それはいつものように訪れた市場にあった。 普段なら通りすぎてしまうような露店の汚れたテントの下。暗がりに身を潜めるように座る店主の前に、テントと同じくらい汚れた布が広げられている。 そのはじっこに、ぽつんとそれは置かれていた。 それを見た時、心がはねた。 どうしてもほしい。 そんな欲求が心を満たす。 けれど、それにつけられたチケは、約半月分の生活費に匹敵した。 思わず手にしていた袋を握り締める。 [続きを読む]
  • ラブレター
  •       麻生拓也様へ   6月15日 私はこの手紙を、気が狂いそうになりながら書いています。出来れば今すぐにでも、自分のこの身を芯からズタズタに引き裂きたい。その存在の証拠や痕跡さえも残らず消滅させて、一気に楽になりたい。そんな衝動に、日々駆られながら生きています。あなたが好きです。死ぬほど好きです。いつもいつも、登下校のとき、昼休み、いえ授業中、貴方がいるはずもない自分の教室の中でさえも、私 [続きを読む]
  • ラブレター
  •    麻生拓也様へ   6月15日 私はこの手紙を、気が狂いそうになりながら書いています。出来れば今すぐにでも、自分のこの身を芯からズタズタに引き裂きたい。その存在の証拠や痕跡さえも残らず消滅させて、一気に楽になりたい。そんな衝動に、日々駆られながら生きています。あなたが好きです。死ぬほど好きです。いつもいつも、登下校のとき、昼休み、いえ授業中、貴方がいるはずもない自分の教室の中でさえも、私は熱病 [続きを読む]
  • 沈まない舟
  • 沖に並べられた小さな舟に隠れ、こっそり昼寝をして起きると、世界は海に沈んでいた。水中には自分の生活していた世界が見える。今日学校はあるのだろうか?と心配したが、水面下に揺らめく学校を見て、 これからずっと学校はないのだと気づいた。辺りを見回しても何も無い。ただ水面が日の光を受けてキラキラと輝いている。「これが世紀末か」と、口に出して言ってみた。何故か、もう他の人達は生きていない気がした。不思議と悲 [続きを読む]
  • 一枚の地図
  •  全ての荷物が運び出されてガランとした殺風景な部屋。過ごしている時にはあんなに狭いと感じていたのに意外に広かった私の部屋。 埃っぽい匂いに混じって窓から流れてくる春の香り。「この部屋とももうお別れかぁ」 感慨深げに呟いたその時。 部屋の隅に一枚の紙が落ちているのに気付いた。 四折りにされたそれを開いてみると、それは一枚の原稿用紙と中からもう一枚。「何これ?」『わたしのまち。 三年一組―――』 そう [続きを読む]
  • かくれんぼ
  •           みのり 若狭さんとこの実悧ちゃん、居なくなって仕舞ったんだと、 何でも神隠しに逢うたそうやない、      こ めんこい娘やったからのう、神さんに連れてかれたんやろ、 可哀想になぁ、 初めに誘ったのは実悧の方だった。                まさよし 幼い頃から、何故か兄の柾美だけには良く懐き、七つも歳が離れれば矢張り可愛いのか、とても仲の良い兄妹だったので、兄が大學へ進 [続きを読む]
  • 美しく燃える山
  •  散歩に行こう。 そう思ったのが間違いだった。 散歩をしたからって生活が変わるわけでもないのに。 本当に僕は馬鹿だった。 その日の朝は肌寒くて、冷え性の僕を不安にさせた。 不安なきもちはしかし、子どものような冒険心の興奮に変わり、僕は裏山に行った。 もし、晴れだったら。もし鳥が鳴いてたら。 せめて息子の圭太が目を覚ましていたら。 きっと僕は少しも変わらずに家族と過ごせただろう。 でも誰が予想できる [続きを読む]
  • ゴミ
  • ゴミ箱はゴミを捨てる場所。この世でゴミ箱は絶対無くならないものだ。だって、ゴミがいっぱい生まれるから―――。僕には父がいない。昔、愛人と出て行ってしまった。そのせいか、母は心が病んでいる。そして、僕を叩いたり、殴ったりする。世間で言う虐待だ。でも、僕はそれほど殴られない。ニ、三発ぐらい僕を殴り、母は一人泣いてぶつぶつ言っている。それが終われば、いつも通りの母になり平和になる。その後、母は僕を抱きし [続きを読む]
  • 始まりのない終わりのうた
  •            「ソナチネ、って皆が呼んでいた気がする。意味は知らない、誰かに何かを習った事なんて1度もないから」 最後のピザをたいらげた後、手を拭くものを探すふうにテーブルの上を見回しながらソナチネ――それが彼女の名前らしい――が、肩を竦めて僕に言った。 僕は彼女の伏せられた眼差しから目を逸らさないままで、胸ポケットを探ってみる。そこには今日、部屋を出る時に突っ込んだハンカチが入っている筈 [続きを読む]